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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
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ダマハラダ砂漠の戦い(最終戦7)

 ダマハラダ砂漠でのドネレイム帝国とココチア連邦の戦争。その中で行われたサンダーラッツ対ラヴィーネ・リッターオルデンの戦い。

 その最終局面で、サレンはフレイスの魔法を封じ込める事に成功した。

フレイスの魔力が無くなり、体からは潜在魔法を使っている時の独特な“力感”も見えない・・・。


(勝った____!)


 フレイスの信仰魔法、潜在魔法を完璧に封じ込め、サレンは勝利を確信する。

静寂の力を維持するのに意識の大半を費やしているため、大技を使うのは困難だが、それでも十分だろう。

 もうフレイスは生身。武芸の達人ではあるが、サレンが勝利する上で障害にはならないだろう。

サレンが静寂の力を維持しながら魔法でフレイスを削って行けば、この勝負は決着が付く。


 「ハイストーン・ショット!」


サレンがこの戦いを決めるため、土属性魔法の攻撃魔法を、回避の難しい散弾式で放つ。


「うぉおおおおお!!」


_______ズガガガガガガ!!


 だが、フレイスは諦めない。

サレンの石弾を自力で払うと、そこからカウンターで手斧を投げ放ち、更にサレンとの距離を詰める。


「_____フッ」


 サレンはフレイスから放たれた手斧を、次の魔法術式を展開しながら杖で弾く。

フレイスの手斧投擲はそれなりの威力だったが、やはり潜在魔法を使っていない地力だ。

潜在魔法を使っているサレンは、これをモノともしていない。


「はぁあああああ!!」


 それでも距離を詰める事に成功したフレイスは、残った短剣でサレンに襲い掛かる______


「・・・・・」


フレイスはいまだ獰猛な殺気を放ち、その動きにもキレが残っている。

だが、それだけだ。

サレンは冷静だ。

いくらフレイスとは言え、 “いつ魔法を使って来る!?”という魔導士との戦闘特有の緊張感と恐怖心がないのでは、サレンが動揺することは無い。

殺気と動きのキレだけでは、サレンにとって脅威にならない。


_______ガキィイン!!


フレイスの上段斬りをサレンはしっかり杖で受ける。

その衝撃が二人の動きを一瞬だけ硬直させる_____


(_____もらった!)


だが、サレンの方は魔法が使える。


「ファイヤーボール!」

「ッ!?」


_____ズゴォオオオオオオ!!


サレンの特大の火炎球を食らい、フレイスはその身を焼かれながら吹き飛ばされる。


「ぐぅうう・・・」


 これまでの戦いでフレイスに初めて、はっきりとしたダメージが入る。

魔法無しの生身でサレンの魔法の直撃を受ければ、例えフレイスでもそうなるだろう。

むしろ、生身でサレンの魔法を受けても死ぬどころか戦闘不能になっていない事が驚きだ。


「よし!」


だが、まだフレイスを戦闘不能に追い込めないと予測出来ていたサレンは、めげる事なく追撃のための魔法を発動するべく、意識を集中した。

その瞬間_____


「_____フッ!」


_____シュババ!


 フレイスが火炎球に吹き飛ばされながらも、あらかじめ拾っていたのか、懐から石を二つ取り出して投げ放つ。


「!?」


サレンは魔法に意識を集中したせいで、反応が一瞬遅れる。フレイスはそれを狙っていた。


(膝と顔!?_____なら!)


反応が遅れたサレンは、回避は勿論、二つを同時に防ぐのも無理だと判断し、顔面に飛んで来た方の石を杖で弾いた。

ただの石礫なら、潜在魔法を使っている状態でなら、大したダメージにはならないだろう。

膝への被弾は覚悟する。


______ガッ!!


(______つぅ!)


 フレイスの石礫はサレンの膝に被弾。

潜在魔法無しの生身の力、且つ不十分な態勢だというのに、サレンの膝に痛みが走る。

だが、それだけだ。潜在魔法を使用しているサレンの肉体、その身体機能に影響を及ぼす様なダメージにはならない_____はずだった。


(______!?)


 にも拘らず、サレンの身体に異変が起こった_____。


「あ・・・が、がぁ!?」


身体が震え、歯がカチカチと鳴る・・・この暑い砂漠の中で、低体温症の症状が出始める・・・。


(あ、あの石・・・!?)


 警戒すべきだった。

フレイスは石を地面から拾って投げたのではない。懐から出して投げたのだ。


(魔法が付与されていた!)


 魔法技術STAGE6(付与)______。

フレイスは事前に拾った石に氷結魔法を付与し、自身が魔法を使えなくなっても、相手の温度を奪う効果を発動する魔道具を作っていた。


(体・・まず・・・)


フレイスの魔法を受けて、低体温症の症状がどんどん進行していく・・・。指先の感覚が無くなり、動きもぎこちない・・・・だが今、何よりも深刻なのは_____


(い・・しき・・・・が)


 低体温症は症状が進むと、思考もぼんやりとして来て、最終的には昏睡状態に陥ってしまう。

そうなれば、サレンは静寂の力を維持できなくなる。

もしそうなれば_____


「・・・くっ」


サレンのファイヤーボールを食らって吹き飛ばされたフレイスが起き上がる・・・ダメージは十分。

だが、戦闘不能というわけではない。


_____ならばサレンの静寂の効果が無くなり、フレイスが再び魔法を使えるようになったとき、状況は再度ひっくり返るだろう。


(な・・んて、よう・・い、しゅ・・・・うとう。油・・・断・・・・したつも・・・りない・・に・・・)


 サレン自身、油断しているつもりもフレイスの動きを見落としているつもりもなかった。

 でも何故そうなってしまったのかと原因を上げれば、それは“限界”だろう。

初めての自分以上の存在との戦闘。

初めての自分と同等の存在との連携。

初めての砂漠、暑さ、初めて置いた環境。

それらが相まって生まれた緊張感、緊迫感が想像以上にサレンの集中力を削っていた。

そうやって削れた僅かな集中力の隙間が、フレイスのこの仕掛けの見落としに繋がってしまった。

フェンダーの“サレンの限界が近い”というのは、全くの妥当な判断だったというわけだ。

 最後の最後で、フレイスが経験の差でサレンとの根競べに勝っていたのだ。


 「サレン・・・」


_____カチャ


フレイスが転がっていた自分の手斧を拾い上げ、再び二刀流で構える。


「・・・・決着だ」

「あ・・・・い・・・・・・」


フレイスは待っている_____サレンの意識に限界が来るのを。

サレンは猛烈な睡魔に襲われながら、必死に意識を繋ぎとめようとする。


「・・・・ぁが!」

「ぬ!?」


 サレンが魔法術式を展開し、フレイスに手をかざす。

フレイスに緊張が走る____。

フレイスはまだ生身、魔法の直撃を食らえば、どうなるか分からない。


(あの状態で魔法を使う!?・・・なんという!?)


魔法を繰り出そうとするサレンに、フレイスは驚愕と感心をよせながら警戒する。

だが_____


「あ!・・・ぁあ・・・・」


 サレンのかざした手が、その重みでダラリと下がり、魔法術式は完成することなく消えて行った・・・。

サレンは撃てない。限界だった。

そして、そのまま膝を折って体の角度を下げて行く_____もう静寂の力も限界だろう。


(_____勝った)


その様子を見てフレイスは、サレンの攻撃が来ない事と、自分の勝利が決まった事で安堵した_____。


 __________ズッ!!


「がぁあ!?」


瞬間、フレイスに向かって赤い線が伸び、そのままフレイスの胸を貫いた_____。


(_____ながぁ!?にぃ!?)


 フェンダーとサレン、二人の超強敵との戦いを制したという、ほんの少しの安心。

サレンの静寂の力の効果がもう消えるかという、その一瞬を狙われた。


(そ、狙撃ぃ!?熱ッ・・・撃たれたから!?違う!!炎魔法だ!炎魔法による狙撃!?だが、この威力は・・・・一体誰!?)


 その疑問の所為か、静寂の力が解除されて魔法が使えるようになったフレイスは、真っ先に潜在魔法を使って視力を強化した。

そして、今の狙撃の射線を、強化した視力で辿っていく_______




(_____クシナ!?)




その射線の先の崖の上、そこにはオーマが対フレイス戦に用意した最後の奥の手、サンダーラッツ砲撃隊長、クシナ・センリの姿があった_____。

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