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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
333/377

ダマハラダ砂漠の戦い(最終戦6)

 「アッハーーーーーー!!」


_____ズギャギャギャギャギャガガガガガーーーーーー!!


((ッ!?ま、また!?))


_____手応えが上がった。

フェンダーは最初一人だった時、二刀流のフレイスに対して手数で劣るため、一撃一撃の重さで対抗していた。

それからエインヘリアル召喚を使って、実質フェンダーは二人となり、手数も倍に増えた。

単純に考えて、一撃の威力がフェンダーの方が上ならば、手数が同じになれば戦いは有利になるはずだった。

実際になってもいた、さっきまでは_____


「おう!」

「______フッ♪」


 エインヘリアルの方のフェンダーが両手持ちで剣を振り下ろす。

これをフレイスは、本物のフェンダーを手斧で牽制しながら短剣で受ける


_____ガキィイイン!!


「_____ッ!?」


_____振り下ろせない。

エインヘリアルが両手で力を込めているのに対して、フレイスは片手で受けているのに、押し切れない。


((こ、これか・・・?))


「アッハーーーーーー!!」


______ズガガガガガガン!!


そしてなんと、フレイスはそこから反撃に出る。


((ッ!?・・・こ、これが!?))


「しゃあ!!」


フェンダー二人になってから、防戦一方になっていた乱打戦。

フレイスはその底力で、防戦から盛り返し戦いを拮抗させ、更には攻勢に出始めている。


((こ、これが!?これが勇者の底力なのか!?))


フェンダー二人というこの逆境を跳ね返そうとするフレイスの底力に、フェンダー二人は真の勇者の力を感じ取る・・・・・


 追い詰められても己を見失う事の無い精神力。

天才と呼ばれる戦闘センス。

魔獣が変身しているのかと思う程の体力。

無尽蔵に感じる魔力。


「心技体魔」


フレイスにはその全てが備わっている。だが真実はそれどころではない______。

 一撃一撃、フレイスの骨をギシギシと鳴らすフェンダー二人の猛攻。

一瞬でも気を抜けば、戦いを終わらせてしまうであろうサレンの存在。

その三人から放たれる殺気。

フレイスはそれらを楽しめる気質を持っているが、消耗しないわけではない。

この理不尽な状況に消耗して、どんどん絶望的になっているはずだった。


 だが、それらの理不尽を根拠なく押し返す、理不尽な底力______勇者の底力。


 そもそも魔王という存在は、人々の理不尽な目に遭った負の感情によって誕生する存在だ。

そのため魔王は、その強さ・・・場合によっては、その存在そのものが理不尽となる。

 この世界における勇者とは、その理不尽を跳ね除けて魔王を撃ち滅ぼさなければならない。

つまり、この世界の勇者には、どんな逆境も根拠なく跳ね返す理不尽な底力が求められる。

フレイスはそれすらも備えた、「心技体魔勇」を持つ騎士なのだ______。


 「「ぬぅぐうおおおおおおおお!?」」


______バギャギャギャン!!


 遂にフレイスはフェンダー二人を押し返して跳ね除けた______。

弾かれたフェンダー二人は、全く同時に体勢を崩してしまう。


(_____決める!!)


たった一人・・・そう、たった一人で、フレイスはここまで活路を切り開いた。

それだけでも凄まじい・・・だがフレイスは、この瞬間の出来事にも、この瞬間の後に起こるであろう出来事にも備えている______。

 フレイスはその勇者としての底力で、手斧と短剣に宿らせていた氷結魔法を強化。

宿らせている冷気の温度を絶対零度まで下げ、武器を縦と横に振るう_____

そして、手斧と短剣が十文字に交差した瞬間、冷気の範囲を一気に広げ、放出魔法(STAGE4)で絶対零度の冷気を撃ち放つ。

その十文字から放たれる冷気の先にはサレンもいる。

フレイスの近距離から遠距離にまで及ぶ、魔法の奥義______


「______グランドクロス!」


______カッ!______ィイイイイイイン


 鋭い殺気の込められた美声で呟き、フレイスが最上級魔法を発動する。

フレイスが魔法を発動すると、フレイスの足下の術式がカッと白く光りを放ち、フレイスの正面の世界だけが白く刳り貫かれた様に凍り付いて行く_____。

フレイスはほんの数秒ほどで、生物が何人も生きられない凍結された世界を造り出して見せた。


 そして十字の斬撃は、縦横でそれぞれフェンダーとエインヘリアルを捉えている______。


_____バギャァアアアアン!!


フレイスの渾身の零度斬撃は、二人の破邪研匠の鎧を破壊した。

完全魔法耐性の鎧を失った二人は、その絶対零度の冷気を近距離で浴びてしまった。


「「ぁ!?」」


 フェンダーは戦闘不能。エインヘリアルは消え失せる______。


(____サレンは!?)


ここまでは予想通り。問題は静寂の力を備えているサレンだ。

フェンダー二人もろ共グランドクロスでサレンも攻撃したわけだが、静寂の力を使えば無力化できる。


(だが、サレンが静寂の力を使ったのなら、立ち上がりは私が先だ!)


大技はフレイスが先に放っている。ならば、そこからの立ち上がりはフレイスの方が速い。

例えサレンがグランドクロスを防いだとしても、フレイスがコンマ数秒の差で先手が取れるはずだ。

それはフレイスにとって、勝利を決定付けるチャンスとなる。


(_____行けぇえ!!)


______ドンッ!!


大技発動後の硬直から立ち直り、フレイスは爆ぜる様に駆け出し、まだ視界のおぼつかない凍結世界の中を走る。

そしてその先でサレンの人影を見つける。サレンはグランドクロスを乗り切っていた。


(防いでいた!?だが、構わない!!)


 フレイスはサレンを叩き伏せるために、更に加速_____そしてサレンを捉えた。


「_____なんだとぉお!?」


 サレンを捕捉したところでフレイスは悲鳴を上げた。

これまでのピンチを楽しむノリではない。本気で焦って動揺している悲鳴だった。

サレンは無事だった。

だが、それだけでなく、そこから更にカウンターも用意していた。


(それは分かる!・・・だが!)


そこまではフレイスも予想していた。

サレンがグランドクロスを乗り切ったのなら、自分の追撃を予想して反撃か防御を選択して魔法を準備するだろう____と、


(だが!・・・何故だっ!?)


 フレイスが動揺したのは、その肝心のサレンの用意している魔法だった。


(なぜ、何故よりにもよって_____!!)


フレイスは、サレンは静寂の力を使った後では、そこまでの大技の準備は出来ないと思っていた。

だが______


(何故魔法封じの術式が完成している!!?)


サレンが用意していたカウンターは、静寂の力だった_____。


 サレンはグランドクロスを乗り切ったっ後の短い時間で、静寂の魔法術式を完成させていたのではない。

フレイスのグランドクロスを、静寂の力を使わずに乗り切っていたのだ。

 フレイスがフェンダー二人を押し切って二人のスキを作った瞬間、フレイスはサレンをグランドクロスの射程に捉えるため、サレンの姿を確認した。

それでサレンは感じ取ったのだ、“自分にも氷結魔法が来る_____!?”と。

そう感じた瞬間サレンは、即座に術式を展開、そこで自身の才を見せつけたのだ。

 フレイスは確かにスゴイ。だが、サレンとて“神の子”とまで言われる勇者候補、その能力と素質は間違いなく“勇者”と称されるに値する。

特に、源属性を持つサレンの魔法の才は、フレイス以上とも言える。

環境と経験の差で現時点での戦闘力こそフレイスに劣るものの、決してフレイスに届かぬというわけではない。

 そしてなにより、逆境で強くなるのはフレイスだけの専売特許ではない。

サレンもまた、フレイスとの戦いという絶対的窮地の中で、その勇者の素質と魔法の才を覚醒させ、フレイスがグランドクロスを放つまでに防護魔法の術式を完成させていた______。


「ヒリアイネン・バロ!」


______カッ!


サレンが全ての魔法を静寂へといざなう光を放つ。


「しまッ!」


そして、サレンの放った光がその身体を包み込むと、フレイスに静寂が訪れるのだった_____。

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