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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
332/375

ダマハラダ砂漠の戦い(最終戦5)

 フェンダーとサレン、それにエインヘリアル召喚によって、もう一人フェンダーが加わった。


(かつて無い程のピンチだ!!良い!好いぞ!!)


 だがフレイスは己に降りかかったこの絶望的な状況に、歓喜していた。

そうして盛り上がるフレイスの闘争心は、しっかりと肉体と魔力に影響を与えている。


(また強くなった・・・いや、強くなり続けている?)


笑いながら自分を奮い立たせるフレイスを見て、フェンダーはフレイスの闘気がここでまた更に上がったように感じた。


「______?」

「____ッ、ッ」

「・・・・・」


 フェンダーがチラリとサレンの方を向けば、サレンはコクコクと頷いてフェンダーの頭の中の考えに同感していた。

サレンの感想も同じだった。フェンダーの気のせいではない。

フレイスはこの絶望的な状況でも、さらに強くなって這い上がろうとしている・・・。


(・・・まさに勇者だ)


 どんなに絶望的な状況でも諦めることなく立ち向かい、困難を乗り越えて強くなる_____これはまさに勇者の素質だろう。

“戦いを楽しむ”というフレイス特有の感性こそあるが、フレイスのこの気質と資質は、勇者と呼ぶにふさわしいモノだというのが、フェンダーの率直な感想だった。

 真の勇者が誰なのかは今はまだ分からないが、フェンダーは心の中で、このフレイス・フリューゲル・ゴリアンテを勇者だと認めた_____。


(_____だが負けられん!!)


だが、だからと言って・・・いや、だからこそ、負けるわけにはいかない。

 フェンダーはオーマのため、すなわち皇帝ルーリーのため、自身にとって史上最強の相手であるフレイスにエインヘリアルと共に立ち向かった______。


 「「うぉおおおおおお!!」」


 二人のフェンダーが闘志をむき出しにしてフレイスに襲い掛かる。

フェンダー二人分の闘気は、本当に物理的な作用を起こし大気を震わせ、その標的であるフレイスにビシビシと鞭を入れていた。


「クヒッ♪____アッッハァーーーーー!!」


自身の臓腑さえも揺さぶってくる二人の闘気にフレイスは興奮。いよいよ我慢ならず駆け出した_____


________ッギャン!!______ズバァアアアアアアアアア!!


 フェンダー二人の同時攻撃、フレイスはこれを正面から受ける。

その動きの後から、遅れて“風魔法でも発動したのか?”と問いたくなる様な衝撃波が発生する。


 「おう!!」


次いで、フェンダーが振り下ろした剣を返して、突きを放つ______


「ッ!!」


 フェンダーの突きは、肩や肘を無駄に動かさない。

そのため軌道がブレることなく、切っ先は正確に真っ直ぐ最短を走る。そして予備動作も無い。

フレイスから見れば、自分に向いている切っ先が突然そのまま巨大化したように見える。


______ギャリィイイイイン!!


この恐るべき突きに、フレイスは突きと自身との間に短剣を挟み、フェンダー剣を短剣に滑らせ軌道を逸らす。

予備動作も軌道のブレも無い突きに対して、受け流しを成功させる。

誰もが神業と呼ぶであろう所業だった。

だが、それほどの事をしてもフレイスのピンチは続く、油断は許されない。

どころか、瞬きすら許されない。


「____フッ!」


 エインヘリアルは、フェンダーが突きを放つ前から体を一回転させており、フェンダーが突きを受け流された頃には、十分に遠心力のついている薙ぎ払いをフレイスの喉元まで迫らせていた。


「ッ!?」


______シギャン!!


フレイスはこれも防ぐ、エインヘリアルの薙ぎ払いが自身の首に触れようかという瞬間、氷結魔法で固めた腕で内側から円を描く様にエインヘリアルの薙ぎ払いを下から払う。

これも神業。大抵の相手なら、ここからカウンターを入れてフレイスに軍配が上がる。

 だが当然というか、そうはならない______。


「はあ!」

「ぐぬぅ!」


体勢を立て直したフェンダーがフレイスを牽制、フレイスのカウンターを封じる。

そして____


「「おおおおおおおお!!」」


そのままフェンダーとエインヘリアルによる怒涛の攻撃が続く。


______ズガガガン!!ギギギギギンッ!!ズガガガギン!!


 フレイスはその一撃一撃を受ける度、自分の腕の骨がギシギシときしむ音を聞かされる。

だがそれでも、二人のラッシュを全て捌いて見せる。


「な、なんと・・・・なんと素晴らしい!!」


 二人の攻撃の間に隙間はない。この事実にフレイスは、称賛、緊張、高揚を隠せない。

 エインヘリアルは、契約者のフェンダーの記憶を持っている、完全にもう一人のフェンダーだ。つまり考え方も一緒だ。

そのため、連携する上での取り決めも合図も必要ない。

同じ思考パターンなので状況判断は100%シンクロし、その連携は完璧と言える。


______ズガガガン!!ギギギギギンッ!!ズガガガギン!!


(何という連携!!本当に全く隙間が出来ない!?)


元々一人でも強敵だったフェンダーがもう一人、しかも同じ思考パターンであるためコンビネーションは阿吽の呼吸・・・。フレイスが今、二人の攻撃を凌げている事だけでも奇跡と呼べるだろう。


「「はぁああああああ!!」」


______ズガガガン!!ギギギギギンッ!!ズガガガギン!!


「ぬぅ・・・くっ!」


だがそこまで食い下がるフレイスに、更に絶望的ない追い打ちが待っていた。


「_____サレン!?」


 サレンが魔法術式を展開している_____。

 フェンダーが二人になった事で、サレンの援護がなくてもフレイスと戦えている。

むしろ、先程よりプレッシャーを掛ける事が出来ている。

それゆえ、サレンはフェンダーへの援護以外_____フレイスへの直接攻撃に魔法を使える。

また、フェンダーがエインヘリアルを発動した後のサレンとの連携については、詳細を詰めていないため、サレンが連携に加われば、かえってリズムが狂う可能性も有るというのも、サレンが攻撃に転じている理由だ。

 だから、フェンダーが奥の手を使った後のシナリオは一つだけだった。

サレンの持つ魔法の最高峰、これで勝負の決着を狙う_____。

この力なら、万が一フェンダーに誤爆しても、フェンダーの命が奪われる心配はない。


(静寂の力!!)


 フレイスに戦慄が走る_____。サレンは静寂の力を準備している。

運よくフェンダー二人を退けても、サレンの静寂の力が待っているという状況。

決まれば例えフレイスでも、魔法が使えなくなり、勝敗が決してしまう。


(ただ普通にこの二人の攻撃を凌いだだけではダメだ!)


この二人を退けるために力を使い過ぎれば、その後のサレンの静寂の力に対応できない。

フレイスには、このフェンダー二人掛りのピンチに対して、後のサレンに対応する余力を持って対処することが求められている・・・。


(大層な要求だな!!)


この難度の高さには、流石のフレイスも冷たい汗を流し、愚痴がこぼれてしまう・・・が、その表情はやっぱり笑顔で狂気を宿し、その動きは躍動していた。


「面白い!!やってやろうじゃないか!!」


「「ッ!?」」


______ズガガガガガガンッ!!ガガガギギギギギン!!


 この状況で俄然やる気を見せたフレイスに、フェンダー二人は一瞬気圧されて動揺してしまった。


(______ッ!)


フレイスはその一瞬の二人の表情を見逃さなかった。


(そうか・・・そうだ!そうだったな!!)


 そして見つけたフェンダー二人を退ける突破口_____。


(このエインヘリアルとかいう召喚された英霊は、本当にフェンダーと全く同じなのだ!)


その通り。

何度も言っている事だが、姿形だけでなく、能力、人格、記憶、思考パターン、全て全く同じだ。


(それはつまり、こちらのアクションに対して、全く同じリアクションをするという事!)


その通り。

先程、フレイスの気迫に押された時のリアクションから見て、間違いないだろう。


(ということは、隙を見せる瞬間も全く同じだ!!)


つまり____


(____スキを作れれば、二人同時に倒すチャンスがあるという事!!)


 複数を相手にする場合、相手の連携のタイミングが少しでもズレていたならば、フレイスはどちらかに攻撃、どちらかに防御と、力を分けて分担作業をしなくてはならない。

だが、能力から何から全て同じなら、どちらに対しても攻撃できるタイミングがあるという事だ。

これはつまり、フレイスは、フェンダー二人に攻撃と、サレンに対する防御の分担作業が出来る可能性が有るという事だ。

 同じ人間二人だからそこ連携は完璧、タイミングも完璧になる。だからこそ、隙を見せるタイミングも完璧に同じになってしまうという事だ。

まったく同じ人間でコンビが組めるという事は、全てがメリットというわけではない。

戦闘の天才フレイスは、これを一瞬で見破った______。

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