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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
330/377

ダマハラダ砂漠の戦い(最終戦3)

 サレンが発動した二つの魔法は、どちらも召喚魔法だった。

サレンの召喚魔法で現れたのは、二頭のオオカミ・・・の様な見た目の精霊と幻獣だ。

二頭とも、体高は約4メートル、体長は約5メートルというサイズで、大陸に生息する四足歩行の動物のサイズではない。

 一頭は、小麦色の毛並で目が細い。大きくて魔力を宿した枝角が生えている。

獰猛さがあるためオオカミの様な印象を受けるが、オオカミというよりキツネに似ている。

キツネの頭部にトナカイの枝角が付いている様な見た目だ。

 大地の精霊、ランドヴェッティル_____。

オンデールとゴレストで普及している、土の神マガツマを信仰するマガツ教で、豊穣を見守る守護神として崇められている大精霊だ。

 もう一頭は黒い毛並に赤い瞳。こちらはオオカミや犬の様に見える頭部だ。

ただ体型はオオカミと呼ぶには少し違和感がある。

背中が猫背で、足の爪も鋭利に生えているため、どちらかと言えば、ネコ科の動物だ。

ただ放つ気配は魔獣の様・・・いや、魔獣ケルベロスすら超えて獰猛だ。

 そしても最も特徴的なのが、黒く長い毛並の先からチリチリと火花が散っていることだ。

見方を少し変えるだけで、獰猛な魔獣から、闇夜で輝く幻想的な美しさを持った線香花火の様に見える。

サレンの炎属性の召喚魔法で召喚されたこの獣の名は、フェンリル______。

魔族と女神との間に産まれたという伝承のある、炎を操る幻獣だ。

 ランドヴェッティルもフェンリルも、タルトゥニドゥ探索をしていた頃のサレンでは制御できなかった(契約魔法で同族と認めてもらう事ができなかった)超強力な獣だ。

最上級魔族クラスの強さで、二頭ともスカーマリスの准魔王に匹敵すると格付けすれば、分かり易いか?

タルトゥニドゥ探索、スカーマリス捜査を経て成長したサレンが手に入れた、新しい切り札だった______。


 「お願い!フェンリル!ランドヴェッティル!」

「グルゥオオオオオオオ!!」

「クゥオーーーーーン!」


フェンリルは正に獣らしく獰猛に低い声で喉を鳴らし、ランドヴェッティルは甲高い雄叫びで契約者のサレンの声に応えた______


 「_____ヒッ!?」

「うおっ!?」

「な、なんだよ一体!?」

「や、やばいぞ!!あれ!!」


その雄叫びの雄々しさ、その圧倒的で幻想的な存在感、そして放たれる獰猛な殺気・・・強者揃いのはずのラヴィーネ・リッターオルデンとサンダーラッツの兵士達の中には、フレイスとフェンダーの戦いから距離を置いていたにも拘らず、足を竦ませてしまう者も出ていた。

が_____


「____フフッ♪・・・来いっ!!」


「「ッ!?」」


_____その標的であるフレイスは、やはりと言うべきか恐れるといった様子は無く、その二頭の放つ殺気に嬉々とした反応を見せていた。

そして、そこから漂うフレイスの闘気は、ランドヴェッティルとフェンリルでさえ、駆け出すのに躊躇させるほどだった。


(やっぱり・・・すごい)


 その事にサレンは驚かない。

自身の最新の超大技である最上級召喚魔法だが、フレイスに対してはどこまで有効かは疑問があり、そう大きな期待はしていなかった。


「行けぇえ!!」


_____ズドドドドン!!


 サレンは二頭が戦い易いよう、牽制でダイヤモンド・ショットを放つ_____


「ふん!」


_______ガキンッ!!


フレイスがサレンのダイヤモンド・ショットを弾く______。

僅かにフレイスの闘気が二頭から逸れた_____


「クゥオーーーーーン!」

「グルゥオオオオオオオ!!」


______瞬間、二頭はフレイスに襲い掛かった______




_____ズンッ!!




「_____なっ!?」


 フレイスが“来る!”と感じたのとほぼ同時、二頭はもうフレイスと距離を縮め、左右に立って挟撃の形を取っていた。


(速い!!・・・いや、早い!?)


まるでフレイスの時空魔法“ツァイト・ディカイン・ツァイト(時間ではない時間)”で時を止めたのかと思う程、一瞬だった。


(これは・・・“速度”という概念ではないな!!)


_____正解。

二頭の動きが速すぎて、フレイスが二頭の動きを見切れなかったわけではない。

二頭はフレイスのすぐ隣に瞬間移動したのだ。


 大地の大精霊ランドヴェッティルの特殊能力、“縮地しゅくち”______。

大地を伸縮させる事で対象を瞬間的に移送するという、ランドヴェッティルの“特殊能力”だ。


「グルゥオオオオオオオ!!」


 そして、そのままフェンリルが襲い掛かる。

巨体のフェンリルが剥き出した牙は、人間からはサーベルと見紛うサイズ。

その鋭さと顎の強さも言わずもがな強力で、上級魔獣の攻撃を簡単に上回る。


_____ガキィイイイイイイン!!


「_____なるほど!!いいな!」


 フェンリルの牙を受けたフレイスは、その申し分ない威力に歓喜する。

そして“防御の方はどうだ?”と、反撃に出たいところだったが、その気持ちは抑えてバックステップ_____


「クゥオン!!」

「くふ♪」


 ランドヴェッティルの枝角を使ったアッパーカット。

その巨大で硬度も高いランドヴェッティルの枝角は、パワーがどうのというより、そもそも“規格が違う”と表現すべき攻撃だった。

フレイスがバックステップしたことで空振りに終わった攻撃だったが、そのスウィングは、フレイスの狂気を狂喜させるのに十分なものだった。

 そして、召喚魔法のせいで、ここまで来てもまだフレイスの防戦は終わらない。


「_____ダイヤモンド・ショット!」


_____ズドドドドン!!


サレンの追撃_____。金剛石の弾丸が四発、バックステップしたフレイスが着地する前に飛んで来た。


「____チィ!」


_____ズガガガン!!


フレイスはやむを得ず、これを防御。


「いいタイミングだな!サレン!!最高にうっとおしいぞ!」


このサレンの援護一つで、自身がどれだけ不利になるのかを自覚しているフレイスは、そのサレンのうっとおしさに最大の賛辞を送った。

そしてフレイスの予想通り、フレイスの防戦は続く______


「グルゥオオオオオオオ!!」


フェンリルが突進してくる_____


「_____チィ!やはりな!」


フレイスはこの事に加えて、フェンリルが魔力を練り上げて魔法の準備をしている事にも、先のサレンの援護の時点で予想がついていた。


______ガンッ!!


「_______」


______ドゴォオオオオオオオン!!


「ッ!?」


フレイスがフェンリルの突進を受けたその瞬間、それが起爆装置だったとでも言うかのように、フェンリルの身体が爆発した。

 “飛火爆花とびひばっか”_____。

フェンリルの黒い体毛から散っているその火花は、フェンリルが何かと接触した瞬間、フェンリルの自由意思で、半径5~10メートルほどの規模の爆発を起こすことが出来る。フェンリルの“特殊能力”だ。

これはランドヴェッティルの縮地と同じ、本人達の特殊能力で、魔法による現象ではない。

つまり_____


「グルゥオオオオオオオ!!」


フェンリルの魔法攻撃はここからというわけだ。


「なんだと!?」


これにはフレイスも予想がついていなかったのか、驚きを隠せなかった。


「な、舐める_____なっ!?」


驚愕しつつも、フレイスは回避行動をとろうとした。

だがその時、足が何かに囚われている事に気が付く_____。


(・・・大地!?地面に足が!!)


フレイスの足は地面に埋まっていた。ランドヴェッティルの縮地の効果だった。


「くそ!この獣がぁあ!!」


フレイスは逃げられない______


______ズゴォオオオオオオオオオオオン!!!


フェンリルの錬成した超爆発、魂さえも焼き尽くす最上級炎魔法“煉獄托生れんごくたくしょう”が、フレイスとその周囲を獄炎で包み込んだ______


 「クゥオーーーーーン!!」


そして、ここで念を押すように、ランドヴェッティルがこれまで練り上げて溜めていた魔力を使い、追撃の土属性魔法を発動した______。

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