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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
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ダマハラダ砂漠の戦い(最終戦2)

 ラヴィーネ・リッターオルデンと戦う前に聞いたオーマの言葉が脳裏を過る中、フェンダーの頭の中には別の心配も過っていた。


 チラッと横目でサレンの様子を窺う_____


「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」


(_____やはり)


フェンダーは、自分の心配が的中した事を理解した。

サレンはフェンダーの予想通り疲弊していた・・・・・フレイスより、フェンダーよりも、だ。


 戦わずに援護に徹していたサレンが、何故フレイスやフェンダーよりも疲弊しているのか?

この理由は大きく二つある。

 一つは、サレンの性格が関係する。

人が良く、心優しい性格のサレンは、その性格のせいか、極端に同士討ちを恐れる傾向がある。

本来、サレンは絶対の自信がないと、強く援護に出られない性格だ。

だが、フレイスとフェンダーの二人の戦いには、“絶対”なんて存在しない。

普段、アラドやデティットにしている援護とは、わけが・・・いや、次元が違うのだ。

フレイスとフェンダーの戦いに援護を入れる事は、タイミングがコンマ遅れるだけで、フェンダーに誤射してしまう可能性が有り、それを恐れるサレンの心の負担は非情に大きい。

 そしてサレン自身、自分のこの性格を理解しているものの、“フェンダーさんに当ててしまったら、取り返しがつかない・・・”という気持ちが出て、援護を躊躇してしまうのを奮い立たせるのが精一杯で、自分恐怖心を克服している余裕も無い。

 サレンが疲弊しているもう一つの理由は、経験不足だ。

サレンは生まれながらに卓越した魔力を持っていて、狩りや軍の訓練にも幼少の頃から参加していたが、オンデールという国の特性上、実戦経験はそう多く積んで来られたわけではない。

人並ではあるが、フレイスやフェンダーの経験値とは比べ物にならない。

 中でも味方との連携だ。

“仲間”や“友人”がいなかったサレンは、互いの命を背負い合って誰かと連携して戦った経験が殆ど無い。

命懸けの戦いとなれば、初めての経験はオンデールとゴレストだけで行ったタルトゥニドゥ探索での、ベヒーモス戦。その経験を多くする様になったのは、サンダーラッツ一同と出会って共に行動するようになってからだ。

だがそれも、戦った相手は全てサレンより格下の相手だった。

ギリギリ対等と言えなくもない相手に、准魔王のディディアルとシーヴァイスが居たが、ディディアルとは直接対決しておらず、シーヴァイスとは一対一だった。

自分と同格、或いはそれ以上の存在との戦闘、連携の経験はサレンにはない・・・・というより、同格以上の存在と出会った経験すら、これまでのサレンにはなかった。

 そういうわけで、サレンは同士討ちを恐れるそのお人好しなその性格と、同格以上の存在との戦闘経験、連携経験の不足がたたり、フレイスやフェンダーより激しく神経を使う事になってしまい、体力と魔力にはまだ余力があるものの、集中力と精神力の方は限界に近かった。




 (このまま行けばいずれ、こちらが先にミスを犯すことになってしまう・・・)


それは恐らく、ほんの些細なミスでしかないだろう。相手が並の相手ならば、気にする必要すらない。

だが、フレイスにはその些細なミス一つが致命傷になる_____。


(こちらから先に仕掛けるしかない!タイミングもそう悪いモノではないはずだ!)


ジェネリーが想像以上に奮闘してくれたおかげで、フレイスは気力と集中力こそ保てているが、魔力の方は大分消費している。

フェンダーは自身の奥の手を使って勝負に出る決断をする______。




 「はあっ!」

「_____フッ!」


______ガキィイイイイイイン!!


フレイスの手斧での上段斬りを、フェンダーは剣の腹で受けた_____。

そして次の瞬間、魔力を込めて剣の形状を変える。


「ぬっ!?」


その形状は刀の形・・・刀では無く刀の形だった。つまり刀の鞘だ。

そして_____


「______ハッ!!」


鞘から刀を抜いて一回転。抜刀術を放つ______


「_____フンッ!」


______ガキィイイン!!


_____が、これはフレイスが残った方の短剣で防ぐ。ダメージは無い。

だが、これでいい。


 (____フェンダーさんからの合図だ)


 金属性魔法で刀を錬成しての抜刀術は、フレイスに対するカウンターであるのと同時に、サレンに対する合図でもある。


“奥の手の召喚魔法を使います。援護を______”


「・・・・・」


 サレンは魔法術式を展開する。その数は3つ、土属性が二つと炎属性が一つだ。

フェンダーの奥の手は召喚魔法だ。そのため、術式の完成には多少時間が掛かる。

サレンはその時間を稼がなければならない。


 「ぅぉおおおおおお!!」

「はぁああああ!!」


_____ズガガガガガガンッ!!


「・・・・・」


フレイスとフェンダーが繰り広げる攻防を見ながら、サレンは援護のタイミングを見定める____


「・・・・・!!」

「ッ!?・・・ッ!!」


_____ガガガギギギギギンッ!!


(フレイスさん・・・・)


二人の攻防の最中でフレイスの気配が変わった_____警戒している、サレンを。

フレイスの戦闘勘が、サレンから不穏な気配を感じ取っていた。


(思った通り警戒された・・・・でも、構わない)


だが、その事にサレンは気落ちしない。分かっていた事だ。

 フレイスは、こちらから仕掛けようと少しでもその気配を見せれば、必ずそれを気取って警戒するのだ。

だから今更だ。サレンもそれを想定して、警戒されても時間を稼げる魔法の準備をしている_____。


 「ぅおおおおおお!!」

「はぁあああああ!!」


_____ズガガガガガガンッ!!


「_____はぁあ!」


_____ズドドンッ!!


サレンがフレイスとフェンダーの攻防にダイアモンド・ショットで援護を入れる_____


「____フンッ!」


_____ギギン!!


_____フレイスはそれ打ち落とす。

その終わりを狙って、フェンダーは追撃に出る_____


「おおッ!!」

「っ!・・・はぁあ!!」


_____ズガガガガガガンッ!!


再び二人の攻防______


「____ハッ!」


_____ズドドンッ!!


再びサレンの援護_____


「くそ!」


_____ギギン!!


_____またもフレイスに防がれる。

だがそこで、またもフェンダーが追撃______


「もらった!」

「____チィ!」


_____ガキン!!____ズガガガガガギギギギギン!!


フレイスは、かろうじで追撃を防いだ・・・・


「_____ハッ!」


_____ズドドン!!


サレンはめげずに援護_____


「ぬう!?」


_____ガギンッ!!


フレイスはこれも乗り切ってしまった・・・・が


「うぉおおおおおおお!!」


_____バギャンッ!!


「ぐっ!?」


フェンダーが執拗に追撃を繰り出す・・・フレイスはなんと、これも防ぎ切ってしまった。


(よし!)


_____だが、作戦成功。


 時間は掛かったが、サレンはダイアモンド・ショットの援護三回で、ようやくフレイスの態勢を僅かにズラすことが出来た。

そこまでやって出来たのは、本当にほんの僅かなズレでしかなかったが、フェンダーはその僅かなズレで出来たフレイスの防御の隙間に攻撃を入れる。


「ぅぉおおおおおおお!!」


_____ズガガガガガガンッ!!


「ぅぬう!?」


それでもフレイスは崩れない。だがそれでも、形勢は僅かにフェンダーに偏り、フレイスは防戦となる____。


 (_____決める!)


 それを見たサレンは、そのチャンスを活かして、残りの二つの術式を一気に完成させる。


(____何だ!?大技!?)


 フレイスはサレンの術式から漂う“ヤバさ”を感じ取る____が、フェンダーに釘づけにされて抑えに行けない・・・。


「行けぇえ!!」


______カッ!


サレンはこのチャンスを活かし、残り二つの魔法も発動した______。

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