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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
327/376

ダマハラダ砂漠の戦い(45)

 コレルは勇者候補のベルジィを前に、恐れる事なく突撃した_____。


(____別に舐めているわけではありませんわ)


コレルは決して勇者候補の力を、過小評価しているつもりは無い。


(でずが、フレイス様の話しでは、彼女の持つ属性は、幻影、薬物、樹、水だったはず。ならば属性の相性はそう悪くないですわ)


_____と、言うより、コレルの持つ氷属性は攻防共に利便性が高く、基本の四属性とRANK2までのどの属性とも相性は悪くない。

潜在魔法に対しても、デバフ効果で相手の身体能力を低下させることが出来るので、相性がいい。

そして、デバフ効果を与えられるなら、薬物属性のドーピングにも対抗できるし、毒物を盛られても最悪、自身の身体を凍らせれば毒が体に廻るのを止める事だって出来る。

唯一、対抗手段がないのが幻影属性だが、コレルの憧れるフレイスが扱えるため、その効力は把握できている。


(やってやれない相手じゃないはずですわ!!)


相手は勇者候補。文句なしの強敵だが、それでも勝機は有ると、コレルは自分を奮い立たせる。

いや、仮に勝機がなかったとしても、フレイスを見捨てるという選択肢はコレルには無い。絶対に、だ。

 ベルジィとの距離を詰める中で、コレルは氷結魔法の準備をする。

コレルはベルジィの呼吸、髪の毛一本までその動きを見落とすことなく、警戒しながら襲い掛かった_____


「_________」


_______パンッ


「______!?」


一瞬だった・・・。距離を詰めたコレルは、完璧なタイミングでベルジィを捉えたつもりだった。

だが、振り下ろした手斧は空を斬っただけで、コレルはカウンターでベルジィに顔を叩かれた。


「・・・・・は?」


ベルジィの攻撃は、何でもないただのビンタだった。普通に顔を手の甲で叩いただけだ。

だがそれだけでコレルの視界は塞がっていた_____


_____ガクン


そしてそれだけで膝も折れた_____


「!?・・・・ッ!______ッ!?」


そして声も出なくなった______


(どうなっていますの!?)


視界が真っ暗で体に力が入らない・・・おまけに声が出ないという状態に、気の強いコレルでさえ困惑することしかできない・・・。


(ど、毒!?でも、まさか・・・どんな?)


原因が先程のベルジィの一撃だという事は察していたが、理解が出来ていない。


「毒ですよ、毒」


何も見えない、何も言えない、何も感じないコレルに、ベルジィは優しく語りかけた。


「一つの毒では防がれる可能性も有ったので、シアン化水素、サキシトキシンの二つの毒を投与しました。もう、私が解毒するまで戦闘不能でしょう」


ベルジィの説明は簡潔だった。コレルはすぐに理解できた・・・はずだった。


(そんなバカな!!一瞬で二種類の毒を盛ったのですか!?有り得ませんわ!!)


ベルジィが言った事は理解できるが、どうしてそれが実現できているのかの理解が出来ていない。

ベルジィのやったことの理解が出来るのに、理解が及ばないという訳の分からない状況に、コレルは益々混乱していった。


 薬物属性はRANK3の上位派生属性だ。

派生属性の扉が開いたからと言って、そう簡単に扱えるモノではないはずだ。

昔、バークランド帝国にも、薬物属性を扱えた魔導士が居たらしく、その記録が残っている。

それによると、一つの薬物を錬成するのも困難な作業だったと記されていた。

 二種類の毒を一瞬で相手に投与するという事はつまり、今ベルジィがやったのは、RANK3の薬物魔法を速攻で二つ同時に発動したという事だ。

RANK3の二つ同時速攻など、恐らくフレイスでもできないだろう。


(ば、化け物ですわ・・・・)


混乱する中で、ようやくこれを理解したコレルは、盲目、全身麻痺、失声症という絶望的な状況の中で、ベルジィによってそれ以上の絶望の淵へと落とされてしまうのだった______。


 「コ、コレル様ぁあああ!?」

「お、おのれぇえ!!」

「_____ぶっ殺す!!」

「アーグレイ副長とコレル隊長の仇だ!!」


「「うぉおおおおおおおお!!」」


倒れたコレルを見たラヴィーネ・リッターオルデンの兵士達は怒り狂い、ベルジィに狙いを定め、すぐさま陣形を整えて突進した_____。


「へぇ・・・流石ですね。自分達の指揮官が二人も落とされたというのに、戦意を失うどころか、逆に奮起するとは・・・」


感心する言葉と表情とは裏腹に、ベルジィは極悪とも表現できる魔力で魔法術式を展開。

突進して来るラヴィーネ・リッターオルデン兵を迎え撃った_______




_______________________________________________________________。




 「ふぅ・・・これで中央は掌握出来たも同然ですね」

「そ、そうですね・・・」

「それはよかったです・・・けどぉ・・・」

「え、援護に来てくださって、感謝いたします。ベルジィ様」

「いえいえ、どういたしまして。後、“様”なんて要りませんよ」

「は、はぁ・・・」

「そ、それで・・あの、ベ、ベルジィさん?」


 ベルジィは、この辺一帯のラヴィーネ・リッターオルデン兵士達を、コレルと共に制圧(毒漬けにして、戦闘不能に追い込んだ)した。

その事に安堵し、ベルジィに感謝の言葉を述べるサンダーラッツの兵士達だったが、その口調と態度はどこかぎこちない・・・。


「うん?・・・どうしたのですか?」

「あ・・いえ、そ、その・・・すごい力だな、と・・・」

「はあ・・・私の力に驚いていたのですか?他の勇者候補の方の力も見ているのでしょう?」

「あ、いや、違・・いえ、それもありますが・・・・」


サンダーラッツの兵士達がぎこちないのは、ベルジィの力に驚愕しているからだけではないようだ。


「うん?なら、何だというのですか?ハッキリ言ってくださって構いませんよ?」

「そ、そうですか?じゃあ・・・その、何故・・・」

「?何故?」

「何故に突撃隊も毒漬けにしたのですか?」


そう言ってサンダーラッツ兵の一人が指差した方には、ラヴィーネ・リッターオルデンの兵士達と共にベルジィの毒を受けて動けなくなっているサンダーラッツ突撃隊の姿があった・・・・。


「・・・・・・」


「「・・・・・・・」」


「・・・・・・」

「・・・・な、何故なのですか?」

「・・・・・・」


「「・・・・・・・」」


「・・・・・・・」


「「・・・・・・・」」


「・・・・・・き」


「「・・・・・・?」」


「気持ち悪かったので・・・つい・・・・・」


「「__________」」


「すません・・・・」


「「はぁ・・・・」」


“気持ちはわかるけど、それはさすがにどうよ?”と、サンダーラッツ兵一同の心の声がハモった_____。


_____________________________________________________________。





 「さて、それはそれとして______」


((誤魔化した・・・・))


「イワナミさんと突撃隊の皆さんを回復する前に、状況を確認しましょう」

「そ、そうですね・・・」

「確かに・・・えーと、左翼もだいぶ落ち着いたように見えます。恐らく副長がやってくださったのでしょう」

「ならば、フレイスを除けば、後は後衛のみですね」

「ベルジィさん、仕掛けますか?」

「お待ちを・・・ミクネ?聞こえますか?」

「おう、なんだ?ベル?」

「例の娘を無力化して中央は押さえました。後衛も叩くべきかと考えていますが、どうでしょうか?」


もし行く必要が無ければ、無駄に死人を増やすだけなので、後々の反乱の事を考えると上手い手ではないだろう。

そう思ってミクネに相談したベルジィだったが、ミクネからの言葉は全く予想外のセリフだった。


「必要ない。フレイスとの決着はもう付いたからな」

「え!?」


そうミクネから聞かされた瞬間、フレイス達の居る方向から、停戦の信号弾が打ち上がった_____。


 「勝負は!?勝負はどうなったのですか!?オーマ・・・団長は無事ですか!?」


居ても立っても居られないベルジィは、叫ぶようにミクネに問いただす。


「それは______」




 それは、ベルジィがアーグレイを退かせた辺りまで時を遡る_______。

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