表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
324/376

ダマハラダ砂漠の戦い(42)

 水突弾隊の水弾に乗っているコレルは、ボード代わりの氷とは別に、魔法の準備ができていた。


「うぉおおおおおおお!!」


コレルの意図が理解できたイワナミは、直ぐに準備していた炎魔法を発動する______


「ファイヤーボール!!」


このタイミング、この間合いで出せる最大出力のファイヤーボール_____。

だがコレルの準備している魔法術式の規模と魔力はその上を行っている最上級魔法だ。


(炎の防壁さえ守れればいい!!)


______ズゴォオオオオオ!!


イワナミが祈る様な気持で放ったファイヤーボールはコレルに直撃した_____。


「なっ!?」


直撃したものの____いや、直撃だったからこそ、イワナミに生まれた感情は困惑だった。

コレルはイワナミの予想に反して、ファイヤーボールを避ける事も防ぐ事もせず受けて、火だるまになっていた。

そして_____


「タイダルウェイブ!!」


コレルはその身を焼かれるのもお構いなしに、炎の防壁に向かって最上級魔法を撃ち放った_____


______ザッッッパァアアアアアアアアン!!


「「っ!?」」


 総勢50人の集団魔法で作られた炎の防壁は、たとえコレルの最上級魔法をもってしても鎮火することは無かった。だが、その大津波は確かに巨大な炎の壁を弱らせており、中央には大きな隙間が出来ていた。


「さあ!氷演武隊は突撃なさい!!それと、視暗弓隊は一斉射撃!!」


「「おおおおおお!!」」


「「了解!」」


 コレルの怒号で氷演武隊が加速。一気に壁を抜けようとする。

そして、その前に視暗弓隊が氷演武隊の突撃を援護するため、氷演武隊が炎の壁の隙間に突入る前に、弩で矢を滑り込ませてサンダーラッツを牽制する。

 サンダーラッツにとっては、集団魔法を発動していたところに矢を撃ち込まれた形。

前に居たのは、防御力の高いサンダーラッツ重装歩兵隊で、全員が何とか防いで死傷者こそ出なかったが、その動きを止められてしまう______。


「発動!」


「「おお!!」」


 それを確認したコレルの号令により、氷演武隊が防壁に入る寸前で、アクア・アーマーを集団魔法で発動する。

コレルはそこにジャストのタイミングで着地して、自身の身体を焼くイワナミのファイヤーボールを消火した。

 そして_____


「行きますわ!!」


_____そこから更に氷結魔法を発動。

氷の鎧を身に纏い、突撃する氷演武隊の先頭に立って走り出した。


 「くそ!あいつは砲撃隊長だろう!?何て奴だ!!」


コレルの砲撃隊長とは思えぬ突撃術に、イワナミは思わず悲鳴を上げる。

だが、イワナミはそう戦々恐々としながらも、部下達への指示は忘れていない。


「重装歩兵隊はそのまま氷演武隊を迎え撃て!!本隊は迂回して後方の水突弾隊を撃破せよ!!」


「「おお!」」


「「了解!」」


そして、イワナミは術式を完成させたまま、温存しておいた突撃隊に号令を出した_____。


「突撃隊!!迎え撃つぞ!!私に続けぇえ!!」


「「は~~~い」」


「・・・・・・」


「「・・・・・・・」」


「活躍した者には、後でロジに特別なご褒美を用意するよう言ってやる!!」


「「ゴガガゼグバババィイイイイイイイイ!!(お任せくださぃいいいいいいいいいい!!)」」


______ズドドドドドドドドド!!


号令を受けた突撃隊は、凄まじい勢いて“イワナミを置いて”突撃した______


「・・・・・まあ・・・分かってはいた・・・・」


何となく、やるせない気持ちになりながらも、イワナミも突撃隊に続いた・・・。




 _______ズガガガァアアアアアンンン!!


 ラヴィーネ・リッターオルデン氷演武隊とサンダーラッツ突撃隊が正面衝突する。

人間同士がぶつかったとは思えぬ衝撃音が砂漠に響き渡る。


「「グババババババァアアアアアアア」」


「ぬっ!?」

「なんだぁあ!」

「くそぉ!」

「やるじゃねーかぁあああ!!」


 形勢はサンダーラッツ突撃隊が有利。

ラヴィーネ・リッターオルデンの精鋭中の精鋭である氷演武隊ではあるが、サンダーラッツ最強部隊である突撃隊の生み出す“人外の勢い”は抑えきることが出来ず、じりじりと押し込まれてしまう・・・。


 だが、その中で、そんな人外達を蹴散らす人物がいる_____


「____しゃらくさいですわ!!このオタク共ぉお!!」


「ヒィ!」

「うぎゃあ!?」

「アバーーーーー!!」


ラヴィーネ・リッターオルデンの先頭に立つコレルだった。


「フレイス様が向こうで私の援護を待っておりますの!!邪魔するなら容赦しませんわ!!」


_______ドドドドドン!!


「「ぎゃーーーーーーー!!」」


水属性に耐性のあるはずのサンダーラッツ突撃隊を、水弾で蹴散らしながら敵陣を切り裂いて行く。


(アーグレイ様がああなってしまったのなら、ミューラーも恐らく失敗したでしょう。アデリナ様は重傷。ロルグ様は戦死なされた・・・。サスゴットさんも時間の問題でしょう。戦況は完全に向こうに傾きましたわ。それなら_____)


_____ギッと、コレルは歯を噛み締める・・・コレルの魔力と殺気が一段階上がった。


(_____それならもう、フレイス様を援護できるのは私だけですわ!!)


 コレルは一見すると冷徹なイメージを与える人物だ。だが、それは外見だけだ。

中身はラヴィーネ・リッターオルデンの中でも、かなりの激情家で情熱家だ。

そんなコレルは、その感情がもろに戦闘に影響するタイプで、コレルの戦闘力は、本人のモチベーション次第で大きく変わる。


“今この戦場でフレイスを支えられるのは自分しかいない”


 そのフレイスと仲間に対する思いがコレルを奮い立たせ、コレルのテンションは最高潮に達していた。

テンションが最高潮まで達したコレルの戦いの“ノリ”は、人外よろしくのサンダーラッツ突撃隊さえ全く寄せ付けていなかった_____。


 「そうそう好きにはさせん!!」

「!?」


ノリよくサンダーラッツ突撃隊を蹴散らしていたコレルの前に、炎の防壁と見紛う何かが、凄まじい勢いで迫って来る・・・。


「イワナミ!指揮官自ら来るなら願ったり叶ったりですわ!直ぐに終わらせて差し上げます!!」

「やってみろぉおおお!!」


 イワナミはアデリナやサスゴットより体格がある。

小柄なコレルにとって炎の鎧を纏ったイワナミは、正に炎の巨壁そのものと表現できる。

だが、コレルは怯むどころか、最高潮だったテンションをさらに上げてイワナミに襲い掛かった_____。

 イワナミに、そのコレルの決断を驚いた様子はない。

コレルの気質はサンダーラッツの間でも有名だ。

見た目は一番大人しそうでクールにも見えるが、ラヴィーネ・リッターオルデンの誰より・・・ひょっとしたら、フレイス以上に激情家で好戦的な性格をしている。

ここに来て、そんなコレルが怯むなどとは、イワナミは1ミリも思っていなかった。

 だからむしろ、そう来るだろうと思って、カウンターを用意していた_____。


______ズゴォオウ!!


 鉄をも融かす業火を纏った、イワナミのバトルアックスによる振り下ろし_____。

潜在魔法で強化したイワナミの筋力、武器の重量を計算すれば、その一撃の重さはオーマのハルバードを上回り、一撃の威力だけならば、勇者候補を除いてサンダーラッツで一番だ。

また、そのゴツイ姿に似合わず器用なイワナミは、間合いの取り方もタイミングの合わせ方も上手く、懐に入ろうとしたコレルを完璧に捉えていた_____


_____ガキィイイイイイン!!


_____凄まじい衝撃音。当たり前だ。身長2メートル超え、体重も100キロを超えるイワナミが、潜在魔法を駆使して振るった一撃だ。威力は申し分ないに決まっている。


「「ッ!?」」


だが、だからこそ、イワナミは“衝撃音が鳴った”こと自体に驚いていた。


(受け止めただと!?)


_____そう。衝撃音が鳴ったという事は、コレルはイワナミの一撃を正面から受けたという事。

躱したわけでも、信仰魔法を使ってもいない・・・。

150センチくらいのウェイフィーと似た体格の娘が、己の潜在魔法と肉体のみで、イワナミの剛撃を受け止めたという事だ。


 「はぁあああああああ!!」

「ッ!?」


そして、そこから更に押し返してくる力に、イワナミの汗は一気に冷たいモノになるのだった____。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ