表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
319/376

ダマハラダ砂漠の戦い(37)

 サンダーラッツ兵達が感電した氷演武隊を打倒していく事で、その周囲の視界が開け、ヴァリネスには視暗弓隊の姿が鮮明になっていた。

オーマの指示を受けたヴァリネスは、ターゲットを彼らに絞って、魔法を発動する______。


「クリエイト・ウェポン!」


____ガチャンッ!____ガチャンッ!____ガチャンッ!


「くっ!」

「うおっ!?」

「な、何だ!?」


ヴァリネスは、トラバサミ、マキビシといったトラップを金属性魔法で錬成して、視暗弓隊らの足下に仕掛けてその動きを止めて行く。

指揮を執るオーマはそのスキを見逃さず、味方に指示を出す_____。


「よし!第二小隊!突撃!!」


「「おお!!」


ヴァリネスのトラップに掛かった視暗弓隊に向かって、サンダーラッツの一小隊が突撃開始____


_____ズガガガガガガーーーー!!


 視暗弓隊は氷演武隊に次ぐ精鋭ではあるが、氷演武隊とは違い接近戦は専門分野ではない。

その上でヴァリネスに足を取られてしまっては、突撃してくる歴戦の猛者揃いのサンダーラッツ小隊を抑え込む事など出来るはずも無く、次々と陣形を切り裂かれて行った。

 氷演武隊はオーマに感電させられた部隊から切り崩され、視暗弓隊はヴァリネスのトラップにハマった部隊から狩られて行き、状況はあっという間にオーマの思惑通りの乱戦となって、敵味方が入り乱れた_____。




 「してやられたな・・・」


アーグレイが眉間にシワを作りながら呟いている・・・・そのシワは、これまでの戦いで作ったどのシワよりも深い・・・。


(どうやら、認めなくてならない様だ)


 ここまでのオーマとの駆け引きで、アーグレイはことごとくオーマに上を行かれてしまった。

その上、アーグレイ達の方が兵数は多いというのに、アーグレイは一度として戦いの流れを引き寄せる事が出来なかった。

一度も盛り返せず、只々オーマの策に食い下がっていただけだった。

なら、もう流石に言い訳できない・・・。アーグレイも、もう言い訳する気が無い・・・。


(指揮官としての力量は奴の方が上だ______)


アーグレイは心の中で、指揮官としての勝負に対してオーマに敗北を宣言した。


(_____だが、この戦いまで敗北する気は無い!!)


 アーグレイはオーマに指揮官としての敗北を素直に認めた上で、改めてこの戦いの勝利を目指す。

当然だ。アーグレイはラヴィーネ・リッターオルデンの副団長、フレイスの一番の腹心だ。

ラヴィーネ・リッターオルデンの幹部達の中で、フレイスと過ごした時間はロルグが一番長いが、それでも忠誠心と献身ならば自分が一番だという自負がある。

自分個人の敗北を認めることは出来ても、フレイスとラヴィーネ・リッターオルデンの敗北を認める事など、魔王に地獄に落とされることになったとしても出来る事ではない。

アーグレイはこの状況を覆すため、自身が攻撃に打って出る決断をする。


 アーグレイは駆け出した______。

鎧を着こんだ40歳を過ぎている男の速度とは思えぬ足で、アーグレイは乱戦の中をひた走る。

そのターゲットは_____


(オーマを狙うのは危険だ_____)


 オーマやヴァリネスも警戒している強さを持っているアーグレイだが、アーグレイ自身はオーマと衝突する事にリスクを感じていた。

アーグレイは、RANK2までの全ての信仰魔法の属性に対抗策を持っていて、その技量でオーマとヴァリネスの二人を同時に相手にしても抑え込む実力が有り、本人もその自信が有る。

 だが、一対一で勝利するという事になると、少し話が変わって来る。

 アーグレイはその能力で相手の動きを封じる事は得意だが、その分決定力に掛ける。

並の兵士が相手ならそこまで気にする必要は無いが、相手が自分と同等以上の存在となると話は違う。

オーマとアーグレイ、信仰魔法の技量は間違いなくアーグレイの方が上だが、武芸の技量とそれを強化する潜在魔法の技量はオーマの方が上だからだ。

この乱戦では、味方の援護を得られる保証が無い。

そんな中で、もしオーマと接近戦になれば、敗北する可能性は十分に有った。

疾風槍隊と聖炎刃隊が担う両翼は膠着状態なのだ、中央を支えるアーグレイには必勝が求められる。

リスクの高い賭けをするべき段階ではないと、アーグレイは判断している_____


(_____ならば、やはりヴァリネスだ!)


アーグレイにとって、アーグレイとヴァリネスとの相性は、オーマとの相性よりもいい。

何よりヴァリネスは今、足を怪我していて動きが鈍い。




 アーグレイは魔力を溜めながら、敵味方をかき分けていく。

そして、タイミングと距離を測り終えると、助走をつける様に速度を上げてヴァリネスに突進した____。


 「あっ!?ちょ!?く、来る来る来る!!団長!あのおっさん、私に向かって来るぅう!!狙われているぅう!!」

「オーマ______!」

「_____チッ!」


ヴァリネスの声を拾ったミクネがオーマにヴァリネスの救援を伝える。

オーマは考える間も惜しんで駆け出した_____。




 「ヴァリネス!」

「ぎゃーーー!!来るな!この痴漢!私は若くてカワイイ男限定なの!!」

「安心しろ!私は死体を犯す趣味は無い!」

「殺す気満々じゃない!!安心できるか!!」

「くらえ!!」

「ぎゃーーーーー!!」


ヴァリネスはしっかりと金属性魔法で剣を錬成して応戦の構えを取るも、アーグレイに対して苦手意識が強いせいか、ビビり散らかしていた。


 「ふん!」


_____ズゴゴッ!!ゴゴッゴゴ!!


「!?」


逆にアーグレイの方は冷静で、先ずは樹属性魔法を速攻で発動し、ヴァリネスの足下に木の根を絡ませて、逃がさないようにする。

それから左腕に装備した盾を正面に構えて突進_____


「おおっ!!」


_____ブゥオオ!!


体ごとヴァリネスにぶつかって、ヴァリネスの態勢を崩しに行く_____


_____ガシャーーー!!


「くっ!」


ヴァリネスはアーグレイの突進にグラつかされながらも、足元の木の根を速攻の炎魔法で焼き払い、態勢を立て直すために横へと逃げる_____


「_____フッ!」


それを逃すまいと、アーグレイはヴァリネスの逃げる軌道を読んで、右手に持ったレイピアを鋭く振るってヴァリネスを牽制する______。


「あー!!もう!鬱陶しい!!」


 これがアーグレイの肉弾戦での戦い方だ。

少しアデリナの戦い方に似ていて、重量のある左手の盾で防御と突撃。

アデリナとの違いは、右手のレイピアを使って、鋭く細かい攻撃で隙を埋めて相手を牽制する事。

盾をメインにして戦いを組み立てながら、レイピアを起用に使って微調整するのだ。

それから_____


「_____はぁあ!」


_____ブンッ!!___ズルッ!


「あーー!もう!」


ヴァリネスがカウンターを狙うも、アーグレイは樹木を錬成してその斬撃をいなす_____


_____と、盾とレイピアで相手の動きを抑え込み、信仰魔法で相手の魔法を封じるのだ。

防御重視で、基本的に相手を抑え、封じながら追い込んで行く戦闘スタイル。

無駄も隙も無いため、アーグレイの裏をかかない限り、並の者では切り崩す事が非常に難しい。

だがアーグレイは頭もキレて戦闘経験もあるため、そう簡単に裏をかくことは出来ない。

そのため、アーグレイの肉弾戦はかなり安定した戦いぶりを見せる。

敵からすると非常に厄介で、味方からすると非常に頼もしい。


「だーーーー!!ちくしょーが!!」


そして、アーグレイとの相性が人間的にも魔法属性的にも良くないヴァリネスにとっては、最高に厄介な戦法である。

ヴァリネスでは、アーグレイを相手に盛り返すことは難しい・・・。

 今の段階でヴァリネスが落とされるのは、サンダーラッツにとって非常にマズイ。

中央を氷演武隊と視暗弓隊に支配されてしまう____


 「副長!待たせた!」

「おっっっそい!!団長!!ヘルプ!!」


____以上の事を把握しているからこそ、オーマは即座に二人の戦いに割り込むのだった_____。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ