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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
317/379

ダマハラダ砂漠の戦い(35)

 ミューラーの中で、全ての疑問が氷解する_____。

何故、瀕死の仲間を置いて追って来られたのか?あの水の糸は、いつ、誰によって、付けられたものなのかを・・・・


(あの幻惑の勇者か!?これが幻惑の勇者のドーピング!?)


ミューラーは全てを理解する。

だが、それはそれだけのことで、今のミューラーの危機を脱するものではなかった。


「く、くそっ!」


ミューラーは短剣を取り出し、防護魔法の術式も展開して、応戦する構えを取る。

だがミューラー自身、薄々この戦いの結末を察していた_____。


 ロジは矢を受けた際に回復魔法を発動し、ベルジィのドーピングも発動させた。

その魔力で何とか戦闘復帰できるところまで傷を回復する。

 そして残りの魔力で攻撃魔法の準備をする_____。

準備している魔法はロジの最も得意とするアクア・ランス・ウェイブ。

近距離から中距離で使用するのに適し、小・中隊規模の人数を巻き込める範囲型の攻撃。

ミューラーでは、この距離でアクア・ランス・ウェイブの射程からは逃げられない。

更にこの攻撃は、無数の水槍を津波に加えて襲って来る。ミューラーでは、その槍の手数に応戦する術が無い____と、いうより、そもそもミューラーの防護魔法は間に合わない。

ミューラー自身が一番理解できていた________


「____クソぉおおおお!!一対一の勝負なら勝っていたんだ!!」

「そうですね!でも、これ、“勝負”じゃなくて“戦争”ですから!!」


______ズドドドドドドドォオオオオオオオオ!!


「ちくしょぉおおおおおおおおお・・・・・_________」


ロジの生み出した津波が、ミューラーの絶叫と共にその身体を攫って行った_____。




________________________________________________________________。




 「はあ・・・はあ・・・」


ドーピングを使ったその反動なのか、その効果が切れるとロジの体はずっしりとした倦怠感に襲われていた。


「はあ・・・はあ・・・」


今すぐでも倒れ込みたい衝動にかられながらも、ロジはミューラーの下へと歩み寄る。

ミューラーが波に攫われた距離は約10メートル程度だというのに、今のロジには途方もない距離に感じる・・・。


「はあ・・・はあ・・・は」


それでも使命感の強いロジは、オーマの要望に応えるため、鉛の様な体を引きずってミューラーの下へと辿り着いた_____。


 「よかった・・・まだ息は有る。でも、危険な状態だ・・・」


ロジがしたかったのは、生死の確認_____。

それから、ミューラーが瀕死の状態だと分かると、もうほとんど魔力は無いというのに、回復魔法の術式を展開する。

 オーマの要望____フレイスと共にラヴィーネ・リッターオルデンの幹部達も反乱軍に加えたい。

ロジは、このオーマの望みを叶えるべく、回復魔法を発動してミューラーを瀕死の状態から回復させようとしていた_______。




 「____ふぅ・・・これで何とか・・・・」


ミューラーの応急処置を終えて、ロジはホッと溜息をつく。

魔力はもう無い・・・完全に限界である。


「・・・ミクネさん?聞こえますか?」

「ああ、聞こえている。状況も把握しているぞ。もう既に人を回す様にオーマに伝えてある。守ってくれてありがとうな、ロジ」

「いえ、ミクネさんは今、この場のサンダーラッツ全員を護ってくれているのですから当然です。引き続きお願いします」

「おう!任せろ!ロジはゆっくり休め」

「は・・い・・・・__________________」


完全に力尽きたロジは、ミクネの言葉に従うかのように、ミューラーと重なって眠りについた。


 ロジ、ミューラー共に戦線離脱______。









 「そうか・・・ロジがやってくれたか・・・」


ミクネからの報告で、ロジがミューラーの暗殺の阻止に成功した事を知ったオーマは、大きく安堵した。


「どうしたの団長?ミクネは何て?」

「ああ、副長、ロジがやってくれた。ミューラーの暗殺の心配はもう無い」

「や~~ん♪さっすがロジくんね♪もう素敵すぎ!______って!はぅあ!?」

「うおっ!?な、何だよ、急に・・・」

「じゃ、じゃー、ミューラー君は!?ミューラー君はどうなったの!?」

「ああ・・・生きているらしいぞ。何とか殺さずに無力化できたそうだ」

「うっしゃーーーーーー!!第二夫ゲットォオオオオ!!」


「「うわぁ・・・・・」」


ミューラーの事をもう夫にしている事にも、第二という事は第一もすでに決めている(当然ロジ)事にも、オーマ含むサンダーラッツ兵の面々はヴァリネスにドン引きだった。


(ロジ、ミューラー、すまん・・・・)


ヴァリネスを焚き付けたオーマは、後悔と二人に対する罪悪感で一杯になってしまい、上機嫌のヴァリネスを置いて一人、遠い目をしていた・・・。


 「だ、団長?・・団長!」

「うお!?な、なんだ?」

「いえ、ここ戦場ですから・・」

「そうです。副長の事で現実逃避している場合じゃないです」

「ああ、そ、そうだったな。何はともあれ、後顧の憂いは無くなったんだ。これで目の前の相手だけに集中できるってもんだ」


 兵士達に叱咤されて、オーマは気力を奮い立たせる。


「そうね。こんな戦いはさっさと終わらせてしまいましょう。私、これから忙しくなるし♪」

「・・・・・・」


オーマの奮い立たった気力が萎えた・・・・


「何よ?団長」

「いや・・・何でもない」


“何で忙しくなるんだ?”と聞こうとしたが、答えは分かり切っているし、聞きたくないので放置した_____。


 「それで団長?この状況どうするの?」

「ああ、そうだな。ミューラーを止める必要が無くなったから、こいつらの撃破に集中できるようになったわけだが______」


言いながらオーマは、頭をフル回転させる______。


 ミューラーの暗殺を心配する必要が無くなって、目の前の相手に集中できるのは結構な事だが、そうなったからと言って、今の状況を容易に覆せるようになるわけでもない。

目の前の相手は、オーマ達が全力でぶつかる事が出来るようになっても厳しい相手だ。


(アーグレイの指揮下に氷演武隊の小隊だけでなく、視暗弓隊の小隊も加わっているのがな・・・)


アーグレイの指揮の下、兵士として全体的にクオリティの高い氷演武隊を前に置いて、後ろで隠密の視暗弓隊が隙間を埋めている。

そして、アーグレイ自身は、最後尾で全体のバックアップという形だ。


(嫌な陣形だ。アーグレイと氷演武隊だけでもめんどくさいのに、視暗弓隊が入っていやらしさが増している・・・)


その上で、人数も向こうの方が多いと来れば、後顧の憂いが無くなった事も、現状ではこちらが多くの人数を削れているという事も、オーマ達が有利になる要素にはなり得ない。

まだ、サンダーラッツ側が不利で、予断を許さぬ状況だろう_____


(____だが、やってやれないワケじゃないからな!見とけよ!)


 だが、それでも・・・と、言うより、当然と言うべきか、オーマの闘志は萎えていない。

この戦いに、こんな事で萎えるモチベーションで挑んではいない。

これ位・・・いや、もっと不利な状況も覚悟していた。

それに____


(副長が連れて来たメンバーも良いしな・・・)


 ヴァリネスが近衛として連れて来た者達は、デネファーのフレイム・ベア・ウォリアーズ時代からの戦友たちだ。

他の隊長達と同じ位、或いはそれ以上に長い時間戦場を共にしてきた者達なので、お互いに阿吽の呼吸で連携が取れるし、相手の氷演武隊の兵士にも後れを取ることは無い。

そして何より、今、オーマがこの状況を打破するために取りたい作戦に最も適しているメンバーでもある。


(勝利条件は時間を稼げば満たされる・・・だが、今以上に時間を稼ぐなら、もう消耗戦は止めて、乱戦に持ち込む必要が有る・・・)


 ヴァリネスが脚をやられた後、敵は攻撃をオーマに集中して来て、オーマ達は防戦一方だった。

そのため、短い時間の間に数をゴリゴリと減らされて、敵との人数差が開き始めている。

人数が少なくなれば、より数で押されることにもなるし、視暗弓隊も暗殺し易くなる。更に、アーグレイも味方を巻き込まずに大技を出せるようになる。

それらを封じるために乱戦に持ち込まないと、一気に決着を付けられてしまうかもしれない____というのがオーマの考えだ。

 そして、乱戦に持ち込むなら、こちらから敵陣に切れ込む必要が有り、今オーマの周りに居るメンバーは、フレイムベアーズ時代にオーマとヴァリネスと共に突撃隊をしていたメンバーであり、敵陣に切れ込むのに打って付けのメンバーというわけだ。


(この面子となら、人数差を逆手にとって・・・・よし!!)


 作戦を決めたオーマは、敵陣に切り込むために、レイムベアーズ時代からの戦友たちに突撃命令を出すのだった____。

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