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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
313/378

ダマハラダ砂漠の戦い(31)

 (ロジ・レンデル・・・か?)


 隠密魔法を使って身を隠していたミューラーだったが、ロジと目が合った_____これは偶然だろうか?


(あの男に俺の隠密魔法を看破する術は無いはずだが・・・・・)


 サンダーラッツの主だったメンバーの能力は、当然ラヴィーネ・リッターオルデンの幹部たちは全員頭に叩き込んでいる。ミューラーも例外ではない。

そのデータでは、ロジは水属性魔法に長けていて、攻撃と防御をそつなくこなせる上に回復も出来る人物と、高評価が付けられている人物だが、隠密系の能力に長けているという情報は無い。

 サンダーラッツの幹部達の中で、ミューラーが気を付けるべき隠密系の魔法に長けている人物は、ウェイフィーとフランの二人。後は全体的に魔法の技能に長けるオーマと変態女ヴァリネスくらいだろう。

何より、今の状況は勇者候補でもそう簡単に自分を見つけられないのだ。

ロジが自分を見つけられるとは、どうしても思えなかった・・・


(・・・なのになんだ!?こっちに近づいて来ているのか!?)


だが、そう思うミューラーの考えとは裏腹に、ロジは真っ直ぐミューラーに向かって来ていた。


(どうしてだ!?というか、そもそも奴は不死身の勇者候補とイワナミの応急処置を_____ッ!!)


 ミューラーはそこまで考え、その後のことを考えるのは止めた。

ロジは自分を認識している_____そう確信したのだ。


 サンダーラッツの中でもロジは人が良く、仲間想いな人物だという事はミューラーも知っている。

そんな人物が、瀕死の仲間を置いて、闇雲に乱戦の中を走り回るだろうか?_____有り得ない。

ということは、ジェネリーとイワナミは応急処置を終えた、或いはロジ以上に回復に長ける者が引き継いで、ロジは自分を止めに来たのだ。

二人が無事な理由も、ロジが自分を認識出来ている理由も分からないが、そうと見るべきだろう。


(ならば_____)


 そう判断してからのミューラーの行動は早かった。

どうして自分を認識できているのかを探るために、索敵魔法を発動する_____。


(_____何だ!?この糸は!?)


ミューラーが索敵魔法を発動すると、ロジから自分に向かって伸びている糸の様な魔力の光が見えた。

その糸を追ってみれば、自分の左足首にまで伸びており、ロジの右手首とミューラーの左足首を結んでいることが分かった。


 ミューラーが左足を上げる_____


(_____)


______答えが出た。


(水だ・・・水魔法で俺と自分を結んでいた!)


自分とロジを結んでいたモノの正体は分かった。だが____


(いつの間に!?どうやって!?)


だが、ロジがいつ、どうやって、この水の糸を自分に付けたかの答えは出なかった。

 この答えは、少し前にフレイスとフェンダーたちが戦うことになり、フレイスが時を止める時空魔法を解除した直後に遡る_____






_______ズガガガガガギィイイン!!・・・・・




 「フェンダーさんとサレンさんが、フレイスさんとの戦闘に入った・・・よかった・・・」


ロジは、先程まで自分のすぐそばにいたフレイスが突然目の前から消え、少し離れた所でフェンダーと戦っている姿を見て、驚きつつも直ぐに状況を把握できていた。


(なら、急がないと_____!)


 憂いが無くなった事で、ロジはいよいよ本格的に二人の容態を気に掛け、全力で回復魔法を掛け続けた。

だが、ロジが自分で出来る最高の処置を施し続けるも、それでも二人の状況は厳しいままだった。


「くそ!ボクとフレイスさんとじゃ魔力に差が有り過ぎる!氷を融かすことすら出来ない!」


フレイスの渾身の一撃は、前回のバージアデパートとは違い、ロジでは回復するどころか、氷を融かす事も出来なかった・・・・・。


 だが、救いの手は直ぐに現れた______。


「____代わりましょう、ロジさん」

「ベルジィさん!!」

「私ならお二人を助けられます。回復後に戦闘に参加できる保証は有りませんが・・」

「是非!お願いします!」

「分かりました。代わりと言っては何ですが、“これ”をお願いできますか?」

「これは?」

「はい、これは_____」


 _____ベルジィはこの戦いが始まってからずっと、フェンダーとサレンが対フレイス用に魔力を温存できるように、幻惑魔法で二人と自分を隠し続けていた。

そして先程、フレイスがミクネに時空魔法を使おうとした時に、幻惑魔法を解除し、フェンダーとサレンの二人はフレイスを止めに行ったというわけだが、その時ベルジィの方は、ミューラーが再び隠密魔法で姿を隠しても追跡できるようにと、水の糸を錬成してミューラーの足首に巻き付けて置いたと言う。


「帝国軍人の方は、皆が連結魔法を扱えますよね?なら、この魔法の魔力はそこまで高いものではないので、ロジさんならこの魔法を引き継げるはず。私の代わりにミューラーを止めてくださいませんか?」

「はい!分かりました!」


 そうしてロジは、ジェネリーとイワナミの事をベルジィに任せ、自身はベルジィの水の糸を引き継いで、ミューラーを追って来たというわけである______。




 (_____どうやったのかは分からないが、ロジは私を認識している・・・どうする?この水の糸を断ち切って、振り切るか?いや、ここでは無理か・・・狙撃ポイントを探すために、乱戦から離れすぎた。奴は範囲攻撃も上手い。逃げるにしても、状況を整えないと・・・)


ミューラーは諦めた様に隠密魔法を解除した_____。


(迎え撃つ____!ロジ・レンデル。サンダーラッツの突撃隊の強さは大したもので、指揮官として優秀なのは分かる。だが、個人の力量ならそこまでではない。奴は元々支援部隊の隊長だしな。他のサンダーラッツ幹部の方が強い。彼なら私でも戦えるはず!)


真正面での戦闘には、他のラヴィーネ・リッターオルデンの幹部達ほど自信が持てないミューラーだが、それでもロジ一人が相手なら勝算はあると判断する。


(奴は水属性と風属性を扱えるが、主力は殆どが水属性。私との相性は決して悪くない!)


こちらに向かって来るロジを迎撃するため、ミューラーは風属性の魔法術式を展開して迎撃態勢を整える。

 ロジの方はと言うと、ミューラーが隠密魔法を解除して姿を見せるや否や、ミューラーの予想通りに水属性魔法の術式を展開しながら、潜在魔法も使って加速してミューラーに向かって切り込んでいく______。


「ミューラー!もう好きにはさせません!」

「ふん!来い!!」


 互いの距離は、残り約8メートル。

ロジの潜在魔法で加速した足を考えると、魔法を発動するのにベストの距離だ。

二人はこのタイミングを逃すことなく、用意していた魔法を発動した_____。


「アクアランス・ウェイブ!!」

「ハリケーン・ウォール!」


______バッシャァアアアアアアアン!!


 ロジが呼んだ津波が、ミューラーの作った風の防波堤にぶつかって水しぶきを上げる。


「もらった!」


水しぶきで視界が覆われた二人だったが、ミューラーの方はロジの攻撃を予測出来ていたため、動揺することなく弩を構えて、突撃して来たロジを狙い撃った_____。


______ドン!!_____バシァアン!!


「!?」


_____手応えが無い。

水しぶきが上がる中で、人影に向かって矢を放ったわけだが、矢はそのまま通り抜けてしまった。


(人影はフェイク!?一部分だけ水圧を変えて人影に見せていた!?だが、なんのため?いくら相手の裏をかく為とはいえ、突撃で大技を出して、その後にも部分的に水の水圧を変えるなどと言う手の込んだフェイントを入れては、スキを作れたとしても効果的な攻撃は一人では不可能なはずだろう!?)


だが、そう考えるのとは裏腹に、いや、それだからこそミューラーは嫌な予感を覚え、思わずバックステップで後ろに下がった。


______バシァアアアン!!


「!?」


 そしてその次の瞬間、水しぶきの中から水の鎖が飛んで来た______。

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