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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
312/375

ダマハラダ砂漠の戦い(30)

 「ウォーター・マグナム!」


______ドドドドドン!!


サレンから5発の水弾が飛ぶ_____


「____やはりか!」


だが、それを予期していたフレイスは氷の壁を用意できていた。


______パキィイイイイン!!


水弾が氷の壁に当たり、凍り付く_____


「まだです!」


______スゴォオオオオオ!!


サレンの攻撃はそれで終わらない、炎魔法の追撃は既に用意されていた______


「ッ!?」


______ボジュゥウウウ!!


火炎球が氷の壁に当たり水蒸気が発生する。

サレンの火炎球は、氷の壁を蒸発させたが消火されてしまい、フレイスに届くことは無かった。


「_______」


 その状況でフレイスの思考が止まる_____考える事を止めたのだ。

諦めたわけではない。サレンの炎魔法を受けて、この次の展開を勘が教えてくれていたのだ。

フレイスはその勘を頼りに迎撃態勢に入る。


______ドドドドドン!!


後ろに飛んだフェンダーは既に金属性魔法で弓矢を錬成していた。

そして黄金の矢を放つ______炎と氷の衝突で生まれた水蒸気が、いい目隠しになっている_____


「_______」


______ガガガガガン!!


 レーベン・シュトロームで見た他の勇者候補と違い、フレイスはフェンダーの能力に関する情報を持っていない。故に、フェンダーが弓矢を扱えるという事は知らなかったはずである。

だが、それでもフレイスは金属性魔導士を知るが故か、勘が働き、中距離攻撃を予測出来ていた。

そしてサレンのお膳立ても虚しく、フェンダーの放った矢は全てフレイスに打ちを落とされてしまうのだった。


「なんと・・・」


弓の腕前に自信があったフェンダーは、素直に落胆していた。


(フレイスの頭の中に私が弓矢を扱えるという情報はなかっただろうに・・防がれてしまうとは・・・・)


 これまでフェンダーは、自身の弓矢を初見で完璧に防がれたことは無かった。

だというのにフレイスは、ジェネリーに削られた状態で、ベルジィのドーピングとサレンの援護を受けたフェンダーの弓矢を完璧に防ぎ切ってしまった。

フェンダーの背中から冷たい汗が流れる・・・・。


(二人なら確実に勝てるなどと言った、先の自分が恨めしいな・・・)


目の前の女性騎士は、サレンと自分の二人掛り(しかも両者ベルジィのドーピングを受けている)でも勝てる保証が無いのだと感じた。

 そして、サレンもフェンダーと同じ思いを抱くことになる_____


「ヒリアイネン・バロ!」


サレンは溜めていた魔力で水弾と炎弾だけでなく、静寂の力も準備しており、その力でフェンダーの弓矢攻撃の後に追撃_____フレイス自身に直接魔法封じの魔法を仕掛けた。


「!」


_____ダンッ!!


「な!?」


だが、フェンダーの弓矢を防いだ後のタイミングを見計らって静寂の力を発動したものの、フレイスはその静寂の力の射程外に逃げ切った。


「はあ!」


_____ゴウッ!!


「!?」


そしてフレイスから、カウンターで手斧が放たれる_____


「_____フッ!」


サレンは横っ飛びでこれをなんとかギリギリのところで躱す。


「アイスブレイド!」


______ドンッ!


「なっ!?」


だがフレイスも追撃してくる。サレンが躱した直後に氷の剣投げ放つ_____


(まずい!)


サレンは横に飛んだまま着地していない_____つまり、躱せない。

フレイスの追撃のタイミングは、サレンの追撃のタイミング以上にベストだった。


「はあ!」


______ガキィイイン!!


「フェンダーさん!?」


だが、この氷の刃はフェンダーが打ち落とす。サレンは無事だった。


「す、すいません。足を引っ張ってしまって・・・」

「その様な事は有りません。今のフレイスの速攻、サレンさんが万全だったなら私に飛んで来ていたでしょう」

「・・・・」

「手強いです。気を引き締めて行きましょう」

「はい!」


フェンダーとサレンの二人は、自分達の連携攻撃が通用していない状況に落胆するも、気を引き締め直す。


 だがこれは、実はフレイスの方も同じだった。


(結局、仕留められなかったか・・・ここまで余裕のない戦いはいつ以来だ?バークランド大戦?ロルグとの訓練(決闘)?いや、無かった気がする・・・大した二人だ」


フレイスから見れば、余裕なく攻められ、反撃できたとしても対処されて、揺さぶりをかけても一切ブレない強敵だ。

しかも不意を突かれたとはいえ、フレイスは二回被弾している。

そしてフレイス自身は、まだ二人にかすり傷一つ負わせていない状況なのだ。

こんな事は、集団戦だろうが一対一だろうが、戦争だろうが暗殺だろうが、“戦う”というあらゆる状況でフレイスは経験したことが無い。

フレイスの方も実は余裕が有るとは言えない状況だ。

この二対一の戦いは、それだけ実力が拮抗しており、この戦いもしばらく消耗戦となるのだった_____。






 ミューラーはイワナミに暗殺を仕掛けた後、再び隠密魔法を発動して、戦場に舞っている砂煙に紛れて身を隠していた。


(サンダーラッツは、まだフレイス様に対抗するカードを持っていたのか・・・・)


ミューラーは、隠れてフレイス達の戦いの場から離れる中で、先の光景を思い返していた。


 自身の暗殺が失敗した事、それはまあ、仕方が無い・・・。

ミューラー自身のプライドは傷ついたが、相手のジェネリーはフレイスと同じ勇者候補、まともには戦えないほどミューラーとは実力に開きがある相手だ。

フレイスがあの状況を打破する切っ掛けを作って、アシスト出来ただけでも良しとすべきだろう。

 だが、その後が良くない。

フレイスがそのまま敵の通信網ミクネも落とすとミューラーは踏んでいたのだが、これは阻止された。

しかも、こちらの想定していない援軍で、だ。


(ドネレイム帝国最強の騎士フェンダー・ブロス・ガロンド・・・勇者候補に迫る強さとは・・・しかもフレイス様の時空魔法に対応した?)


 思わぬ援軍の思わぬ強さに、当初の自分達の作戦が完璧に瓦解したとミューラーは判断する。

フェンダーが居なければフレイスはミクネを落とし・・・仮にサレンが一人でミクネを護ったとしたら、そのサレンもフレイスは落としていただろう。

だがフェンダーが現れたとこで、どちらを落とすことも容易ではなくなった。

 こうなって来るとむしろ、フェンダーとサレンの二人をフレイスが一人で抑えてくれていると解釈し、ありがたいと見るべきだろう。

そうと見れば、ミューラーの役割は、これから更に重要になる。


(アーグレイ副長がオーマと変態女を抑え、フレイス様がフェンダーとサレンを抑えてくださっている間に、この状況を変える一手を打たなければ・・・)


ミューラーは弩の次弾を装填しつつ考える_____


(今の状況・・・右翼はサスゴットが敵の遊撃隊長の挑発に乗って膠着状態、左翼はロルグ様が戦死したが、向こうの指揮官も重傷で膠着状態。で、中央はフレイス様とアーグレイ副長が動けず、アデリナ姉さんも戦闘に参加は出来ない。向こうは勇者候補と重装歩兵隊長が戦闘不能・・・残る主だった人物は、こちらが私とコレル・・・敵側が砲撃隊長、突撃隊長、そして振動使いの勇者候補と幻惑使いの勇者候補・・・やはり危険なのは勇者候補だ。特に通信網を担っている振動使い・・・奴を落とせれば最高なのだが・・・)


 そう考え、ミューラーは先の自身の一撃を思い出す_____


(仕留める事こそ叶わなかったが、不死身の騎士の手は潰すことが出来た・・・潜在魔法に最も長ける彼女は、タフネスだけならフレイス様も含めて勇者候補で最高のはず・・・その相手の肉体を貫けたのだ、なら理論上は急所にさえ当てれば、他の勇者候補なら仕留められるはずだ。それに、あの振動使いは通信網を維持しながらでは俺を探せない様子・・・・暗殺を仕掛ける価値はある!)


ミューラーは決断した。

標的をミクネに定めて、乱戦の中を縫う様に動き、ミクネとの距離を縮めて行く______。

 そうして、そろそろ狙撃ポイントを見つけようかと、追って来る者がいないかの確認も含めて、周囲の様子を改めて確認した。その時______


(____なんだ?)


自身の隠密魔法を見破ったのか偶然か、サンダーラッツの突撃隊長と目が合った______。

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