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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
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ダマハラダ砂漠の戦い(26)

 「ぐぅうおお!!こ、これは____!?」


爆発が起きて、ようやくアーグレイの中で先程の黒い粉の正体が判明する。


「火薬か!?」


____正解。サンダーラッツ本隊が使った魔法は、“ブレイキング・ブラック”。

半年前、ホウジョウ・ハグロ・ハツヒナの東方防衛軍第二師団がスカーマリスで魔族との戦いで見せたものだ。

土属性と炎属性のコンビネーションであるこの技を見たとき、オーマは自分の部隊にとっても相性が良い技だと考え、それ以降、兵士達に特訓させていたのだ。

半年という期間では、一部の兵士しかこの性質変化の魔法を修得できなかったが、この場面においてはその一部の兵士達のおかげで効果的な成果を上げることが出来た。


(いつの間にそんな技を・・・先の“いつもの”はフェイントか!?)


そしてアーグレイは、先のオーマの発言が自分に対するトラップであった事も理解する。


(“いつもの”と口走って、私に自分達の作戦が今までの戦闘で見せたものだと印象付けるたな?)


オーマのトラップにハマって、アーグレイは黒い粉を見ても“こんな戦い方が有ったか?”と、頭の中を過去の戦いのデータ参照に使っていた・・・・オーマの一言で使わされてしまった。オーマの隠れた好プレイだ。

 そして、その成功報酬は大きい。

爆発に巻き込まれた氷演武隊の兵士達の中で、ガードしきれなかった者が4名、戦闘不能になり包囲が薄くなる。

突破するのは容易いだろう。


「今だ!!副長!」

「ええ!!分かっているわ!」


 ヴァリネスがチャンスと見て勢いよく地面を蹴る_____そして氷演武隊の包囲を抜けた。

この駆け引きは、作戦が成功したオーマ達に_____


「_____甘い」


____軍配が上がるかというところで、アーグレイが呟く。

駆け引きは二転三転して尚、まだ終わっていなかった______


______バシュン!_____ドスッ!


突如として、一条の矢がヴァリネスに向かって走る____。

そして、それがそのままヴァリネスの太ももに突き刺さった。


「あぐっ!?」


ヴァリネスの足が止まる。だが、ヴァリネスは激痛に顔を歪めながらも魔法術式を展開____。


「サ、サンド・ウェイブ!」


 ヴァリネスが速攻で魔法を発動し、砂を噴射する。

狙った効果は、視界を悪くして自分に的を絞らせない事。それともう一つが、敵の捕捉だ。

 ヴァリネスが周囲に砂を巻くと、何もないところで砂が浮いている。

その砂はハッキリと人の形をしていた。


(保護色で隠れていた!?視暗弓隊だな!?)


 オーマの推測通り、敵の正体は視暗弓隊。

アーグレイが呼び寄せていた小隊は氷演武隊だけではなかったのだ。

この包囲は、氷演武隊と視暗弓隊によって、二重に包囲されていた。


「手前の氷演武隊で意識させておいて、その後ろに視暗弓隊を忍ばせていたか・・・副長!」

「大丈夫よ!このクソがぁああ!!」


足の痛みと包囲突破を阻止されて怒ったヴァリネスが、半ば棄になって強引に魔法を発動した。


_____ズドドドドドドドドドン!!


「ごっ!?」

「があ!」


金属性のSTAGE5(発生)で、浮いている様に見える砂を目印に、敵の足下から鋼の槍を突き立てる。

その兵士達は打倒できたが、流石に強引過ぎた。


「もらった!」


強引な魔法発動でヴァリネスにスキが出来たのを見て、氷演武隊の数名がヴァリネスの懐に飛び込む_____


「_____ッ!バカもの!よせ!」


アーグレイが軽率だと兵士に怒号を飛ばす。だが、もう遅い____


_____バリバリバリィイイ!!


「「ぐぅああああ!?」」


電撃の一閃____。オーマの電撃魔法がヴァリネスを狙う氷演武隊を感電させた。


「はあ!」


______ブンッ!!


そして例によって、ヌティール・アーマーで感電を免れていたヴァリネスが、手に持っていた鎖鞭を振るって敵を掃討した。


「今だ!固めろ!」


「「了解」」


オーマは直ぐに号令を発し、サンダーラッツ兵達と共にヴァリネスの下に集結。陣形を固めた。

 アーグレイはその様子を、苦虫を噛みながら見ている事しか出来なかった。


「焦りおって・・・ヴァリネスはまだあの対電撃用の鎧を着けたままなのだぞ・・・」


アーグレイは、焦って先走った兵にもだが、それ以上に自分に対して憤っていた。


(先程の爆発で数名が動けなくなった。それが兵士達のプレッシャーになってしまっていた・・・)


その原因がアーグレイには分かっている。つまり____


(_____私の責任だ)


アーグレイはこの一連の出来事の根本の原因が、自分がオーマのトラップにハマって先程の爆発に対処できなかった所為だと理解していた。


(オーマ・ロブレム・・・昔より強くなっている。昔は指揮能力と戦闘力にモノを言わせることが多い戦い方だった。そして、ときにヴァリネスが指揮する事で、意外性を持たせられるのがサンダーラッツだった・・・。だが今はそれだけではない。やつは今、何気ない一言でこちらの読みを自分の思惑から外して見せる老獪さも備えている)


 以前に比べて、強かさも身につけて成長しているオーマ・ロブレムに、アーグレイは緊張感を高める。

まだアーグレイ達の方が人数も多く、足止めも出来ているとは言え、アーグレイ達は氷演武隊が7名、視暗弓隊が3名と、10名もの負傷者(戦闘不能)が出ている。

対してオーマ達は負傷者一人(戦闘可能)という状況だ。

ヴァリネスの足を撃って足止めには成功したが、決してこの状況は楽観できるものではない______。


 「大丈夫か?副長?」

「ええ・・・。走るのは難しいけど、まだ戦えるわ」

「そうか、なら当てにさせてもらう。すまないが、まだ相手の方が数が多いからな」

「構わないわよ。・・・それにしても、相変わらずやらしい戦い方するわね、あのおっさん」

「ああ・・・状況が二転三転しても対処できるように、しっかり備えていやがった・・・手強いな」

「しっかりしなさい。あのおっさん相手に駆け引きできるのは団長だけなんだから」

「分かっている」


ヴァリネスにはそう言ったものの、オーマは内心では緊張していた。


(人数は削れたが、その分魔力も使っちまっている・・・ヴァリネスも結局包囲を抜けられなかったし・・・)


何より足に怪我を負ったのでは、包囲を抜けたとしてもミューラーの暗殺を阻止するのが難しくなる。


(なら、今度は俺が______)


と、オーマが怪我をしたヴァリネスに代わって包囲を抜けてミューラーを探しに行こうかと考えた瞬間___


「氷演武隊、前に出ろ!狙いは団長だ!」


「「了解」」


こちらの考えを読んでいたかのようなアーグレイの指示が飛ぶ。


「_____チッ、防御陣形!応戦するぞ!」


「「おう!」」


これにオーマは応戦せざるを得ない。

オーマは直ぐに部下に指示を出し、それからミクネに呼びかける_____


「_____ミクネ!聞こえるか!?」

「ああ、どうした?オーマ?」

「こちらはアーグレイに足止めされて、ミューラーを探せそうにない。各隊長達に注意を呼び掛けてくれ!」

「分かった____」


オーマはやむを得ず、ミューラーの捜索を諦め、アーグレイ達との戦いに集中する。

 そうして、その後のオーマとアーグレイの駆け引きもほぼ互角の内容となり、両隊の戦いはそのまま消耗戦となっていくのだった______。

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