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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
303/379

ダマハラダ砂漠の戦い(21)

 (こ、ここで決めなくちゃ・・・)


 ロルグが幻影魔法を扱うウェイフィーを改めて強敵と認識して緊張を高める一方で、ウェイフィーの方もロルグに有効打を入れたが、緊張感を強めていた。

初めて有効打を入れられはしたが、自分は瀕死、ナナリーも重傷で動けない。ピンチなのは変わっていない。

 それにロルグは高い潜在魔法を持っているため、傷の回復も出来る。

まさかジェネリー並に直ぐに全快という事は無いだろうが、RANK5まで扱えるのならば、応急処置くらいの回復は直ぐに出来てしまうかもしれない。

 何より、速攻の初級・中級魔法で攻め立てていたとはいえ、あそこまで連発して来ために、ウェイフィーとナナリー二人共に魔力の底が見え始めてもいる・・・。


(次がラストチャンス)


状況を整理して、ウェイフィーは次の攻撃が勝負の決着になると判断する。


(_____で?どうする?)


的確に状況判断は出来たものの、肝心の策が浮かばない。


(必ず勝てるはず・・・)


先程のまでの諦めないという気持ちで言っているのではない。

今度は幻影属性を得た事で、実際に勝つ可能性が生まれたのだ。

だから、ウェイフィーは冷静に策を考える_____


_____ヒュゥウウウウ・・・・


 一陣の風が吹き、ウェイフィーの顔をなぞる・・・・ウェイフィーの中で策が決まった。

ウェイフィーは口から血が出るのもお構いないしに、胸の激痛に耐えながら声を張り上げた。


「ナ、ナナリー!“頼って”!」

「!」


 そして魔法術式を展開_____。

残りの魔力を全て注ぎ込んで、しっかりとタメを作る_____。


 「く、来るか!?」


もちろんロルグは直ぐに反応する。だが_____


(____ぐ!?)


ウェイフィーの攻撃を潰しに行こうとした瞬間、背中に激痛が走る・・・体を動かせない。


(傷が骨にまで達している・・・間に合わん。かといって____)


 先程の様に炎や剣を飛ばすのも良い選択とは言えない。

こちらも間に合わないかもしれない。それだけでなく、今のウェイフィーには幻影属性が有るため、先程の様に幻影属性と樹属性を組み合わされたら、ウェイフィーの本体を感知して攻撃するのは、近距離でないとロルグでも難しく、この距離では失敗する可能性が有る。

失敗すればスキが出来る・・・そして、この状況でスキを作ってしまうのは敗北を意味する。


(相手を翻弄する事に長ける幻影属性魔導士を相手に、後手には回りたくは無いが・・・仕方が無い)


ロルグは魔力を練り上げて、潜在魔法を強化。強化した肉体での回避・防御____つまり“待ち”を選択して、ウェイフィーの攻撃を迎え撃つ_____。


 「デシーブ・フォレスト」


ウェイフィーが魔法を発動。

ウェイフィーの姿をした存在が5体出現する。


「先程と同じか!?」


ロルグが言う様にウェイフィーの魔法は先程と同じで、樹属性で木の人形を作り、幻影属性でその木に自身の姿を映し出したものだった。


(舐めているのか?いや、それは無い・・・瀕死でこれしか出来ないのか?それとも、別の攻撃か?いずれにせよ_____)


 ロルグの中で幾つかの疑問が浮かぶも、直ぐに頭の外へと追いやる。

ロルグがやる事は変わらないからだ。


「己を信じるのみ!」


 ロルグはウェイフィーの攻撃の対処を自身の能力に委ねる。

魔力を上げて、自身の潜在魔法で強化し得る限界まで肉体を強化。

その中で、ウェイフィーの幻影を見破るため、特に神経を強化して感覚を鋭く研ぎ澄ませる。


(気配____在る。やはり木の人形を使っている・・・。匂い____在る。5体全てにだ。衣服の切れ端でも混ぜ込んだか?抜け目のない・・・。だが、呼吸はどうだ?人形では誤魔化せまい?)


聴覚を強化して、集中、ウェイフィーの呼吸音を聞き取る_____


(_____在るだと!?5体とも呼吸をしている!?)


5体のウェイフィー全てから呼吸音が聞こえ、ロルグは困惑する。だが困惑したのは一瞬____


(____ハッ!)


ロルグは直ぐに、先程のウェイフィーの“頼って”という叫びを思い出す。


(なるほど。あの通信兵か?風魔法で人形に呼吸をしているように見せかけているな?大したものだ)


それが出来る技術にも、あの一言でそれを察して実行する連携にもロルグは感心し、尊敬の念を顕わにする。


 だが同時に、自身の勝利も確信した______。


(このロルグを舐めてもらっては困る。ただ人形の口元に風を起こせば欺けると?娘の呼吸はもう既に掴んでいる。人形に呼吸している様に見せかけているのは通信兵。通信兵がフェイントに加勢したならば、私に止めを刺しに来るのは娘本人!5体の中に必ず娘が居る!)


武芸の達人であるロルグは、相手の呼吸や間を計る事に長けている。

これまでの戦いでウェイフィーの呼吸のリズム、吐く息の量、その音程と、すべて把握している。

魔法で口元から息をしている様に風を送っただけでは、ロルグは欺けない。


(_____いた!一番左!!)


そして潜在魔法で強化した聴覚で、迫る5体のウェイフィーの呼吸を聞き取り、本物と同じ呼吸をしている1体を見付け出す。


「はぁああああああ!!」


______ザザザザン!


 向かって来たウェイフィーの姿をした木工人形4体を軽く切り捨てる。

ロルグの予測通り、4体全て木材_____人の手応えではない。

そして一番左、本物のウェイフィーに渾身の一撃を振り下ろした_____


______ザンッ!!


「仕留め____ッ!?」


斬った瞬間に分かる違和感、“人”ではない手応え・・・


(これも人形!?バカな!?ならば娘は何処だ!?何処から攻撃してくる!?)


5体の人形を全て切り捨てて、改めて周囲に気を配る。

そして分かるウェイフィーの存在____


(____動いていない!?)


本物のウェイフィーはその場から動いておらず、幻影魔法で保護色を生み出して景色に同化していた。


(瀕死で動けなかった?だが何故、攻撃準備をしていない?攻撃役ではないのか!?ならば誰が私に___)


_______ズバンッ!!


“誰が私に攻撃するのだ?”と疑問を抱き終える寸前、ロルグの背中に再び激痛が走った____


「があ!?」


そして倒れ込むその刹那、後ろを振り返る。それだけで疑問は氷解した。


(な!?・・・通信兵か?バカな・・・)


____だが、やはりおかしい・・・


(では人形の呼吸をやっていたのは誰だ?通信兵がやっていたのなら、この攻撃は出来ないはず・・・おかしい・・・まさか娘自身?いや、彼女は風属性を持っていないはず・・・魔道具を使う様子も無かった・・・誰が?)


この乱戦の中で、自分とウェイフィー、ナナリーの戦いの状況を把握し、ウェイフィーの作戦の意図を理解していた者。

しかも、ウェイフィーの作った人形の5体中4体を、わざと “呼吸している様に見せた風魔法”にして、残りの1体を本物のウェイフィーと同じ呼吸にみせかける魔術の技能を持つ者。


(そんな存在・・・私はあの娘の呼吸を完全に把握していたのだぞ・・・リズム、肺活量、そして音程まで・・・・音程!?音だと!?)


激痛の中で考え、ロルグは自力で答えに辿り着く。

一見、難しい疑問だと思えたが、そんなことは無かった。

一人だけ居たのだ____いや、たった一人しかいなかったのだ。だから答えは簡単だった。


(振動使いの勇者候補か!?)


_____そう。こんな状況で、こんな芸当が出来るのはヤトリ・ミクネただ一人だけだった。




 「ふぅ・・・オーマの頼みとはいえ、どうやって援護したものか迷っていたが、上手く行ったな」




 それは少し前、突然ウェイフィーに吹いた一陣の風だった______。


「____ウェイ」

「!?・・ミクネ?」

「そうだ。苦戦しているな」

「うん、大ピンチ。助けて」

「ああ、オーマからも二人の援護を頼まれた」

「そう・・・団長が」

「でも結界を維持しながらだし、ちょくちょく敵の砲撃隊が狙って来るから、乱戦しているお前達に簡単に援護できるわけじゃない。どうしたものかと思ってな」

「そう・・・それだったら_____」


ウェイフィーに吹いた一陣の風。それはミクネからの通信だった。

 そうしてウェイフィーは、自身の策にヤトリの援護も加え、見事にロルグを欺いて、ナナリーに決定打を入れさせたのだった______。

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