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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
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ダマハラダ砂漠の戦い(20)

 ラヴィーネ・リッターオルデン聖炎刃隊の隊長、ロルグ・シュナイダーは強い。

ウェイフィーがこれまで直接戦ってきた相手の中で一番かもしれない。

 そのロルグの強さによって、ウェイフィーは瀕死まで追い詰められた。

だがそれでも、“死にたくない!まだ仲間と一緒に居たい!”と渇望し、気力、体力、魔力、自身の持てる全てを振り絞る____


「___________!!」


だが、それで出来た事は、ロルグを睨みつけることくらいだった______。


「_____ッ!?」


それでも、その事にロルグは驚きの表情を見せた。


(まだ生気が有るだと!?)


ウェイフィーは瀕死でも、表情は戦う者のそれだった。

ロルグはこの状況でまだ勝負を捨てていないウェイフィーに、驚きと感心を持った。


「______」


 それと警戒も生まれて、ロルグは足を止めた。

その代わりに、魔法術式を展開。両手の剣に炎を纏わせ、火力を上げていく。


「_______」

「_______」


 睨み合う両者_____。

その時間はひどく短い時間だったのだが、両者には途方もなく長く感じられていた_____


 (どうすれば______)


長く感じる時間の中で、ウェイフィーは考える。


(どうすれば、このおっさんに勝てる?)


諦めることなく考える。


(絶対、何か手は有るはず・・・)


諦めない。


(もし・・・本当に打つ手が無いなら_____)


______諦めない。


(無いなら作ればいい!!子供の頃から欲しいモノは自分で作って来た!物だってチャンスだって!!)






 尚も諦めないウェイフィーの前に、突如として二つの扉が現れた_____






 「あ_____」


意識が飛んだのだろうか?それとも考えている間にロルグに殺されてしまっていたのだろうか?


(違う・・・・)


そうではない。

ウェイフィーには、今のこの状況を説明する術が無いが、そうではない事だけは分かっていた。


(同じだ・・・・)


ウェイフィーには一度、この状態になった経験が有ったからだ。


(信仰魔法のRANKが上がったときの______)


この体験をしたのは数年前、バークランド大戦中の時だった______。


 火の神ファーブラ、水の神ウォルス、風の神ジンクウ、土の神マガツマの四大神の神々を信仰する事で修得できる魔法という奇跡。神々がその熱心な信仰と、その者の強い意志に応えるように与える恩恵。

その恩恵の中で、時に与えられる新たな属性______。


(派生属性の扉・・・)


 目の前には二つの扉______。

神々が今のウェイフィーを見て憐れんだのか、ウェイフィー自身が窮地の中で自身の才能を開花させたのか、それは誰にも分からない。

人間、エルフ、魔族でさえ長い時をかけて魔法を研究しても、派生属性の扉の仕組みは解明できていない。

それこそ、神の御業だろう。


(・・・何だっていい)


だが、そんな事は今のウェイフィーにとって、どうでもいい事だった。


(あのおっさんに勝つ力を!!)


今のウェイフィーにとって大事な事は、目の前にロルグに勝つチャンスが有るという事。それだけだ。


(______お願い!!)


ウェイフィーは正に神に祈る様な気持ちで、片方の扉に手をかけた______





 「_____もらった!」


ロルグは十分に魔力を溜めた炎の剣を両手に持ち、ナナリーとウェイフィーにも十分な警戒をして、ウェイフィーのいる5メートル手前から剣を投げつけた______


_______ドスドスッ!!_____命中


ロルグの剣は二本ともウェイフィーの頭部に勢いよく突き刺さる。

ウェイフィーはその剣の刺さる勢いに押されて、大の字に倒れてしまった______。


「「ッ!?」」


 そのウェイフィーの姿に、ロルグとナナリーは目を見開いて驚愕した。

これは、ロルグが勝ったことを理解したわけでも、ナナリーがウェイフィーの死を受け入れたわけでもない。

予想とは全く違う結果に、二人は驚きを隠せなかったのだ・・・。


「出血が無い・・・・」

「ニ、ニセモノ?」


二人共、違和感には直ぐに気が付いた。

剣が顔を貫いたはずなのにウェイフィーは出血していない・・・。

間違いなく信仰魔法による効果だ。

だが、ウェイフィーの持つ水属性にも、土属性にも、樹属性にも、そんな効果を発揮する魔法は存在しない。



 つまり、ウェイフィーが新たに手に入れた派生属性とは______



「_____幻か!?幻影属性の魔法を使ったのか!?」


ロルグは直ぐにウェイフィーの魔法の正体を見破る。自分の主の持つ属性だ。その特徴は良く知っている。


 「_____行け」

「_____!?」


直ぐにウェイフィーの違和感に気が付き、その魔法の正体にも気が付いた。

だが、そのわずかな時間の間に、ウェイフィーは反撃の用意をしていた。


_____ゴウッ!ゴウッ!ゴウッ!


ウェイフィーの姿が三体現れ、正面、左右の三方向からロルグに襲い掛かる_______


「やはり幻影魔法!」


 ロルグにはそれが、ウェイフィーの温存していた奥の手なのか、今まさに手に入れたものなのかは判断できなかった。

するつもりもない。それは今はどうでもいい事だ。

肝心なのは、自分が幻影属性を扱う魔導士に襲われているという事実_____。


「幻影ならば実体は無いはず_____」


 ロルグは三体のウェイフィーのどれが本物かを見極めるため、潜在魔法で感覚を強化____


「実体は無いはず・・・はず・・・____!?」


感覚を強化して、三体のウェイフィーの気配を感じ取る・・・そして再び違和感____


(全部に実体が有るだと!?何故!?そんなはずは____ハッ!)


そして自分の思い違い・・・・考え足らずに気が付いた。


(そうだ。この人物の得意な属性は_____)


_____樹属性魔法だ。

ロルグは感覚を強化した事で、ウェイフィーがただ幻を見せて来たのではなく、樹属性魔法で樹木を人型に錬成して人形を作り、それに幻を映し出していた事に気が付いた。


(幻を見せて惑わせようとしているのではなく、幻を見せて惑わせようと見せかけた樹属性魔法の攻撃だ!)


 幻影属性と樹属性を組み合わせたコンビネーション_____。

同じ幻影属性持ちでも、水と氷属性から派生した幻影を扱うフレイスには無い魔法で、ロルグの反応が遅れた。


(幻影属性を扱いなれている!やはり奥の手として温存していた!?)


勿論違うのだが、初手から応用を利かせた魔法を見て、ロルグはそんな考察をしてしまう。

 ウェイフィーが突然手に入れた幻影属性を咄嗟に応用できたのは、本人の癖だ。

物作りが趣味で、色々な物を考えて作って来たウェイフィーは、戦闘でも魔法でも、“アレが有ったらなぁ・・・”とか、“もしこういう物が作れたら・・・”等と考えて過ごして来た。

信仰魔法に関しても、“もし、また派生属性が手に入ったら_____”と考え、その扱い方についてアイディアを考えるのは日常のことだった。


 (やる・・・だが、防げぬという事は無い!!)


_____ズババババ!!


反応が遅れてしまったものの、ロルグはその剣の腕前と、潜在魔法の肉体強化で強引に防御を間に合わせた。


 だが、ウェイフィーの攻撃はこれで終わりではない____


_____グゥオオオ!!


「追撃!?」


ウェイフィーも防がれることを想定していたのか、ロルグの足下から樹木の槍を生やして追撃する。


「はッ!」


また絶妙なタイミングで撃ち終わりを狙われたロルグだったが、魔力を練り上げ、潜在魔法で柔軟性を強化して、不十分な態勢で有りながら、生えて来た樹木に刃を合わせた____


_____スゥ・・・


「ぬ!?」


_____ロルグが刃を合わせた瞬間、樹木が消える。


「幻!?これも!?」


 今度は樹属性の攻撃に見せかけた幻影属性のフェイント。

事前に幻を使うと分かっていれば防げそうなものだが、ウェイフィーの幻を見せるタイミングが本能的に反応せざるを得ないタイミングだったため、ロルグは翻弄されてしまった。

 実際のところは、瀕死のウェイフィーでは、ロルグにダメージを与える火力を出せないだけだったのだが、それが却って良い方に転んだ。


 そしてロルグは本命の追撃を許してしまう_____


_____ズバンッ!!


「があっ!?」


ロルグの背中に焼けるような痛みが走る_____斬られた。


「や、やった・・・初めてまともに当たった・・・」

「く・・・通信兵の方が本命だったか・・・」


 今は二対一_____。

ロルグはウェイフィーの幻影に気を取られ、背後に居るナナリーの存在を失念していた。


(愚か者が!戦場だぞ!何故周囲の警戒を怠った!!)


迂闊な自分を呪う・・・だが、直ぐに考えを改める。


(____いや、私が迂闊だったのではない。あの娘にそこまで引き付けられたのだ・・・。相手が一枚上手だったという事。この娘は強い_____命を懸ける必要が有る!!)


ロルグは考えを改め、幻影魔法を扱うウェイフィーは今まで以上の強敵なのだと理解した_____。

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