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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
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ダマハラダ砂漠の戦い(18)

 「二対一とはいえ、戦力把握に随分と時間を取ってしまった・・・これはこの二人の強さだな。だがもう術式の速度、連携のリズム、魔力量、使用する魔法の傾向と、大体把握できた。まだ戦い自体には先が有る・・・終わりにするぞ!」


「「ッ!?」」


 ロルグから二人に殺気が放たれる____。

明確に“打って出るぞ!”という意思表示だった。


(やれるものなら!!)


 そのロルグの殺気を、ウェイフィーはロルグの顔を睨みながら正面から受けとめる。

これまでの戦いで、二人で距離を置いてロルグに攻撃だけはさせて来なかったウェイフィーは、内心で一抹の不安を抱えながらも、強気の姿勢を崩さない。

それは、この状況からロルグが攻撃に転じられるほど自分達の連携攻撃は安くは無いというプライドも有ったが、それ以上にこの戦力差で気持ちまで負けてはいけないという危機感もあるという事だ。


 「そっちこそ____くらえ!!」


ウェイフィーは珍しく殺気を剥き出しにして、自身の速攻ができる攻撃魔法の中で一番威力の高い棘の散弾を撃ち放つ_____


_____ズドドドドドドン!!______命中!


「え?」


 自身の攻撃魔法がロルグに直撃した_____この事にウェイフィーは、表情こそ殺気を剥き出しにしたままだが、内心で困惑する。


(何故防御しない!?)


 ウェイフィーの攻撃が直撃した理由は、ロルグが防御をしなかったからだ。

ロルグが防ごうとして防げずに直撃したのなら何の問題も無いが、回避も防御もせずにただ黙って直撃を受けたのなら、それは不可解でしかなく、その事にウェイフィーは警戒を強める。

 そんなウェイフィーの抱いた疑問は、ロルグが炎属性の魔法術式を展開した事で氷解する____


「____大技!?」


ロルグはしっかりタメを入れて炎魔法を発動しようとしている。


(まずい!)


 ロルグの攻撃はいきなりの大技だ。

戦闘開始序盤なら怖くは無いが、中盤戦に入って相手の力量を把握した上でのこの行動に、ウェイフィーの長年の勘が警報を鳴らす。“撃たせてはいけない!!”____と。


「ナナリー!阻止する!!」

「はい!」


____ズドン!!


 ナナリーもウェイフィーと同じ様に、ロルグの動きに危機感を抱いていたのか、ウェイフィーの指示が出たとほぼ同時に風の刃を撃ち放った_____


____バシィイイイイン!!


これも直撃____ロルグは動かなかった。


「・・・・・」


だが、ロルグにダメージを負った様子は無い。魔法術式も展開したままだ。


(このまま術式が完成するまで耐える気!?)


 ウェイフィーの予想は当たっていた。

ロルグはこれまでの攻防で、自分の潜在魔法なら大技を出すまでの間、二人の攻撃に耐えられると踏んでいた。


(_____なめるな!!)


ウェイフィーは先程以上に殺気立ち、ロルグの防御を打ち破るため魔力をタメ、戦いの序盤で見せた人間サイズのスリングショットから鉄鉱石を発射した____


「・・・・・」


_____スゥ・・・


「あっ!?」


だが、この攻撃は簡単に避けられてしまう。


(私のバカ!!いきなりのこんな攻撃は当たらないから細かい連打を重ねて来たのに!!)


こちらが大技で来るなら、ロルグは自慢の潜在魔法でその攻撃を感知し回避するだけだ。

ウェイフィーに焦りが出ているからなのか、この攻撃は本末転倒だった。

 ロルグは剣と信仰魔法を攻撃に使用するため、二人の速攻に対しては潜在魔法の肉体強化で、タメの入った強攻撃に対しては潜在魔法の感知能力で回避している。

これまでの二人の攻撃を見て、それが出来ると判断したのだ。

そしてその考えは正しく、ロルグは魔法術式を完成させた。


「バーニング・ピラー!!」


_____ズゴォオオオオオオ!!


「「ッ!?」」


 ロルグは炎属性の上級魔法をSTAGE5(発生)の技で発動。ウェイフィーとナナリーの足下から火柱が伸びた。

突然足下から発生した火柱は、速度もそうだが規模も大きい。


「サンド・ウォール!」


 ウェイフィーが取った行動は防御と回避の両方。

砂の壁を作って炎を出来るだけ防ぎつつ、火柱から転がる様に脱出を試みる_____成功。


(危なかった・・・火力がもう少し強かったら焼け死んでいた)


戦士として、魔法は剣を活かす事に重点を置いているロルグは、そこまで攻撃魔法が得意ではない。

そんなロルグが上級魔法をSTAGE5(発生)で発動してしまっては、炎の速度と規模は出せても、肝心の火力がウェイフィーを焼き殺すだけのものにはならなかった。

 これはナナリーに対してもそうだった。

ナナリーも風の防護魔法で、ウェイフィーと同じ様に少しの火傷を負いながらも、ロルグの魔法から逃げ延びていた。


 だがロルグの攻撃はこれで終わりではなかった。


(ッ!?次が来る!!)


ウェイフィーが転がりながらロルグの姿を捉えると、そこにはもう剣を振りかぶって攻撃モーションに入っているロルグの姿が有った。


(まさか!?)


ここでもウェイフィーの予想通り、ロルグは鋼の剣を二人に向かって投げつけて来た____


____ゴゴゴゴゴウッ!!


それも一本ではない。鋼の剣の錬成のみに特化したロルグは、他の金属性魔法は扱えないものの、その鋼の剣の錬成は何度も修練してきたため、一瞬で何本もの鋼の剣を錬成できる。


「___くっ!」


 ウェイフィーは咄嗟に樹属性魔法を速攻で発動。

地面から生やした木の幹で転がっている自身の体を更に転がして逃げ果し、何とかロルグの連続攻撃を乗り切った_____。


 だが、ナナリーの方は上手く行かなかった______。


_____ザクザク!!


「あぐ!?」

「ナナリーーーーー!!?」


 ウェイフィーがナナリーの鈍い声に反応して見てみれば、ナナリーの右太ももと右肩にロルグの剣がざっくりと突き刺さっていた。

帝国の精鋭とはいえ、ウェイフィーほど信仰魔法に長けていないナナリーでは、追撃の鋼の剣を防ぐだけの魔法を発動する余裕が無かったのだ。


(まずい!!)


二か所の傷は大きいが、戦闘不能というほどでは無い。

だが、太ももを貫かれてはその場からは動けないだろう。次のロルグの攻撃に対応するのは不可能だ。


「はあっ!」


案の定、ロルグはナナリーに止めを刺すため、地を蹴って距離を詰める。ナナリーは絶体絶命だ。


(私の所為だ!私の所為でナナリーが!!)


“ナナリーには防御を優先させるべきだった”_____と、ウェイフィーはこの事態を引き起こしたのは、指揮官としての自分の判断ミスだと思った・・・・・・思ってしまった・・・。

仲間思いなウェイフィーが、自分の所為で仲間を窮地に立たせてしまったと責任を感じた時に取る行動_____それは自己犠牲だ。


「グランド・ウッド・シェル_____」


ウェイフィーは、先程ロルグの剣を防いだ樹属性上級防護魔法をSTAGE5で発動____ほとんど溜め無しでやってのけ、強固な樹木のシェルターにナナリーを格納する。


「見事だ!!」


仲間の窮地に地力をふり絞ったのだろう、それが出来た事は素晴らしく、ロルグも素直に称賛を送った。

だが_____


「もらった!!」


 だが、それをしてしまったウェイフィー自身はどうなるか?

無理な魔法発動で、新たに魔法を使うのは勿論、体にも負担が出て、動くことも難しくなってしまった。

____ロルグにとって格好の的だ。


_____ダン!!


 ロルグはナナリーの手前で思い切り踏み込み、攻撃態勢に入る。自身の渾身の一撃を打つつもりだ。

ただし、標的は樹木のシェルターに格納されたナナリーではない。


______グンッ!!


 ロルグは踏み込んだところから体をねじって、真後ろを向く。

下半身はナナリーに向いていて、上半身はその逆のウェイフィーの方を向いているという異常な態勢_____だが、高い潜在魔法の能力で柔軟性まで備えるロルグには不可能な事ではない。

そして、そこまで体をねじる事によって遠心力が付いて、攻撃の威力も増す_____


「____はぁあ!!」


_____ブン!!ブン!!ブン!!


3本____。両手に持っていた鋼の剣に加えて、念を入れたのか余裕が有ったからなのかは分からないが、もう1本追加してウェイフィーに投げ放った_____。

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