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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
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ダマハラダ砂漠の戦い(17)

 潜在魔法RANK5(内臓)_____。この力で内臓の強化が出来る事の恩恵は非常に大きい。

 例えば、感染の防御やアレルギーの抑制といった免疫の維持に関する働きをする腸や、有害物質の解毒・分解を行う肝臓を強化すれば、今のロルグの様に毒に対して高い耐性を備えることが出来る。

それに加え、肝臓は栄養の貯蔵庫でもあるので、強化すれば数日間は飲まず食わずで活動する事も出来る。

更には、胃腸を強化すれば栄養の吸収率を高めることもできるので、一般の人よりも肉体を強化する事が容易になる。

つまり、内臓自体が肉体を作る機能なので、それを強化できるという事は、これまでのRANK1~RANK4といった潜在魔法から、頭一つ抜けた肉体の強化が可能になるのだ。

 実際、ロルグは潜在魔法RANK5を扱える様になってから、そういった内臓の機能を強化して肉体作りを行っており、その結果、潜在魔法を使用していない状態でも常人の域を超えた獣並みの身体能力を備えている。

 魔力に関しても、潜在魔法RANK5の使用量自体は高いものの、潜在魔法は信仰魔法と違って肉体の内側にある力なので、潜在魔法RANK5を使えば魔力量も常人より増やし易かった。

その結果、ロルグは魔力量に関しても常人を超えており、フランと違って潜在魔法RANK4を扱うのにそこまでの負担は無い。


 だが何よりも特筆すべきは、ロルグが最も得意とする、直で戦闘の役に立てられる肺の強化だ。


 肺を強化する事で肺活量を高めると、ロルグは人間の域を超えた無呼吸運動が可能になる。

これが、ウェイフィーとナナリーの連続攻撃を捌き切れた理由だ。

 ロルグが潜在魔法RANK5を最大まで発揮すると、約30分もの間、無呼吸で威力やキレを衰えさせることなく攻撃を続けることが出来る。

通称で“無呼吸連斬”という技の名が付いているのだが、これこそが、ロルグがフレイスを除くラヴィーネ・リッターオルデンで最強と言われる最大の要因だった。

 これまでに、このロルグの“無呼吸連斬”を打ち破れた者はフレイス以外にいない。

そのフレイスでさえ、氷属性を扱える様になって相手の身体機能を低下させる魔法を使いこなせるようになるまでは、ロルグの無呼吸連斬を破ることが出来なかった。

ロルグがフレイスの教育係で居続けられた理由でもある。


 比類なき剣の技、その剣技を活かす事に特化した金属性魔法、そしてそれらを人間の域を超えて使用できるようにする潜在魔法RANK5。

この三つを備えているのが、ロルグ・シュナイダーという猛者なのだ。


 ウェイフィーは、肺を侵す毒を使ってロルグの内臓の強度を量り、この答えを導き出したのだった_____。




 「ずるい・・・」

「うん?どういう意味だ?」

「その強さ・・・一軍の隊長のものじゃない」


ロルグという戦士の個人戦力を知ったウェイフィーは、素直にその力を妬んだ。

 ロルグの個人戦力を帝国の基準に定めれば、信仰魔法はRANK2で、それぞれ炎属性STAGE5(発生)・金属性STAGE2(形成)、潜在魔法はRANK5(内臓)のSTAGE3(回復)となり、スペックだけならオーマやヴァリネスを超えている。

分かり易くロルグの強さを格付けするならば、ロルグはドネレイム帝国の第一貴族クラスになる。

 約半年前、オーマは、自身の一対一の決闘史上で最大最強の相手である第一貴族ホウジョウ・ハグロ・ハツヒナとの決闘に何とか勝利できたわけだが、仮にロルグがハツヒナと戦った場合、ロルグはハツヒナ以上の剣技を持っており、潜在魔法RANK5の力で毒を防げるので、オーマ以上に簡単にハツヒナに勝ててしまうだろう。

ロルグはドネレイム帝国でも軍団長になれるほどのレベルだ。

一騎士団の一隊長が持つには明らかにオーバースペックだろう。

ウェイフィーが嘆くのも無理のない事かもしれない・・・。



 「そうか・・・だが、デスクワークや社交界といったものが嫌いでね。どこかの軍団長をやるよりラヴィーネ・リッターオルデンの一隊長としてフレイス様と共に戦場を駆けている方が性に合っている」

「お前達ラヴィーネ・リッターオルデンの幹部達は全員そんな事を言う・・・」

「まあ、そうだな。フレイス様の強さに惹かれて集った者達だからな」

「そのせいで、お前達は指揮官も末端の兵士達も強い・・・」

「自分達の部下を鍛えるのは当然だろう」

「戦う方は堪ったもんじゃない・・・ずるい」

「・・・・・」

「卑怯」

「・・・・・」


妬みごとを言い続けるウェイフィーに、ロルグはやや呆れ気味だった。


「ずる過ぎる」

「ふぅ・・・それで?ずるいずるいと言うが、ずるかったらどうなのだ?」


言われてウェイフィーの表情が、相手を妬む暗い表情から一転、気合の入ったものになって、ロルグを目で射貫いた______。


「_____絶対に負けたくない」

「クッ♪・・・素晴らしい!!」


ロルグの表情が、相手に呆れる表情から一転、気合の入ったものになった______。


 「ナナリー!」

「グレイトフル・ウィンドカッター!!」

「____おっ?」


 ウェイフィーの声でナナリーが攻撃を開始する。

先程までの速攻の初級・中級魔法とは違い、上級魔法だった。

ウェイフィーがロルグにブチブチと妬みごとを言っている間に、魔力を溜めていたようだ。

 だが、それでも潜在魔法で強化されたロルグの肉体を切り裂くことは出来ず、ロルグの動きを阻害するのがやっとで、ロルグには余裕が有った。


「やれやれ・・・今のは時間稼ぎだったのか?そちらも随分とずるいのではないか」


先程までの事は時間稼ぎだったと分かり、ロルグは再び呆れ顔になった。


「だったらどうなの?」


言われてロルグの表情が、相手に呆れる表情から一転、気合の入ったものになった_____。


「_____受けて立つ!」

「ちぇ・・・」


ウェイフィーの表情が、気合の入ったものから一転、呆れたような表情になった_____と同時に速攻で魔法を発動_____


_____ザザン!


「チィ!___やはりか!」


再び砂による目潰し____。

ロルグは来ると分かっていたが、ウェイフィーの速攻が速すぎる事と、ナナリーの上級魔法で動きを抑えられていたため、分かっていても躱せなかった。

 そしてウェイフィーは、ロルグとの距離を取りながら魔法術式を展開。

ロルグの態勢が整うギリギリ手前まで魔力を溜めてから、棘の散弾を打ち出した_____。


「____またか!!」


______ズゴォオオオオ!!


だが、ロルグはやっぱり目を潰されていても棘の散弾を感知しており、剣に炎を纏わせてそれらを焼き払う。


「どうした!?先程と同じ攻撃だぞ!!こちらの能力は暴いたのだろう?工夫しないか!」

「うるさい。分かっている・・・」


ロルグの挑発にウェイフィーは、再び妬み顔を出して愚痴る。

ウェイフィーもこの戦法が通用しない事など、百も承知している。


(でも、このおっさんが強過ぎて、属性の相性まで悪くなっているんだもん・・・)


 ウェイフィーの思う通り、この二対一はウェイフィー達にとって属性の相性も不利に働いている。

 ウェイフィーの最も得意とする樹属性はやっぱり炎に弱い。

ウェイフィーは耐火性のある樹木を錬成する事も可能だが、ロルグの魔法剣を防げるものではない。

そして、ナナリーの風魔法はロルグの潜在魔法で強化された肉体防御力を突破できない。

通信兵であるナナリーの風魔法は一級品のものではあるが、ロルグの潜在魔法で鍛えられた肉体は、素の物理防御力・魔法防御力ともに高く、固い皮膚や鱗を持つ魔獣のようで、それを更に潜在魔法で強化しているので、先程のナナリーの上級魔法の様に、多少動きを阻害することは出来ても、ロルグの肉体を引き裂くには工夫が必要だろう。

ロルグのスキを突くしかない。それも今の様に多少のスキではなく、完璧なスキを作る必要が有る。

結論として、二人は通常の中距離・遠距離攻撃では、ロルグにろくにダメージを与えられないのだ。


(だからって・・・)


 だからと言って、ロルグ相手に二人が距離を詰めて接近戦をするなど論外だ。

あの魔力、あの剣技を“無呼吸連斬”で間断なく使われたら、二人共あっという間にあの世行きになってしまうだろう。

結局のところ、ロルグ相手に二人は距離を取って戦うしかなく、その中でロルグに完璧なスキを突いて大技を決める以外に選択肢がない・・・のだが_____


「フッ!」


______ズガガガガガガン!!


ロルグにスキが生まれる様子は全くない。

フランの様に持久戦で追い込むことも、サスゴットの様に挑発も通用しない。


そして____


「相手の戦力を量っていたのが自分達だけだと思うなよ?こちらも十分に把握できた。攻撃に移らせてもらう____」


「「____!?」」


今度はロルグの方から打って出るのだった_____。

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