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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
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ダマハラダ砂漠の戦い(15)

 「行く」


小さく鋭く呟いたウェイフィーが魔法術式を展開する____。

少し場にそぐわぬ会話も有ったが、ロルグ対ウェイフィー・ナナリーコンビの二対一の戦いが始まった。


「ハイウィンド!」


_____ズゥオオ!!


「むっ!?」


 先制はナナリーの風魔法の牽制だ。ウェイフィーが魔法術式でタメに入ったのを見ての行動だった。


「はぁ!」


______ドンッ!!


 ロルグは標的を牽制してきたナナリーの方に合わせて、地を蹴った_____。

そのダッシュ力は相当なもので、地面が爆発したような音が鳴り、瞬きする間にナナリーとの距離を詰めていた。

 だがナナリーはこれに反応できている。

直ぐに風魔法と潜在魔法で加速して旋回。反時計回りに回りながらロルグとの距離を離す。

単に後ろに下がって距離を取るというわけではないところが肝心。

ナナリーはロルグのダッシュに反応出来ていただけではない、ウェイフィーの魔法の準備時間も把握していた。

 ウェイフィーは樹属性魔法で樹木や蔓を錬成し、自分の身の丈ほどもあるスリングショットを五つほど工作していた。

ナナリーは、これらの射線上に入らないように旋回していたというわけだ。


「くらえ」


______ドンッ!!

______ドンッ!!

______ドンッ!!

______ドンッ!!

______ドンッ!!


人間サイズのスリングショット五台から、一斉に人の頭部程の大きさの石が放たれる。

 しかもこの石は、ただの石ではない。性質変化で硬い鉄鉱石に変化した石だ。


「すぅ____」


ロルグは背後から飛んでくる石弾の気配に気づくと、小さく息を吸って魔力を練り上げる。

そして体を反転、両手に持った剣を振り回す_____


_____ガガガガガンッ!!


五回の斬撃____五発全ての鉄鉱石の石弾を、ロルグは一太刀で両断した。


「ちぇ・・・」


 それを見てウェイフィーは追撃を諦める。

理由は、ロルグが錬成した剣以外で信仰魔法を使わなかったからだ。

こちらからの追撃か、自身の反撃用に温存しておいたのだろう。余力を残している相手に追撃は出来ない。

 やむを得ず、ウェイフィーはフットワークを使って、ナナリーと同じ様に反時計回りで回り始め、ロルグを翻弄しにかかる_____。


(結構自信が有ったのに、あのおっさんに斬撃だけで防がれた・・・くやしい)


 先のスリングショットは、弾が鉄鉱石で硬く、重量もあったのに加え、人間サイズのスリングショットで発射したために速度もあったのだ。

さすがに仕留められるとまでは言わないが、それでも炎魔法も使って対処するはずで、追撃をする事は可能だと思っていた。

だが結果は見ての通りで、ロルグは余力を残して対処してしまった。


(・・・あの剣もヤバイ?多分、金属性で錬成した物・・・副長とは違うタイプ?)




 様々な金属を様々な形状で錬成できる金属性魔法だが、金属性魔導士は大きく3タイプに分けることが出来る。

 一つ目は、ヴァリネスの様に、錬成する金属も形状も多種多様にするタイプ。

二つ目は、准魔王バルドールの様に、ほぼ一つの金属を一つの形状に絞って、それに特化するタイプ。

最後の三つめはその中間、フェンダーやハツヒナの様に、金属も形状も幾つかに絞ってバランス良く戦力を整えるタイプだ。

ロルグという金属性魔導士は、この中でバルドールと同じ特化型の金属性魔導士だ。

そして、バルドール以上の特化型の金属性魔導士だ。

特化型の金属性魔導士と言っても、バルドールはトラップ魔法など、ある程度の魔法は扱えていた。

だがロルグの金属性魔法はたった一つ、鋼の諸刃の剣のみだ。

この金属魔法のみを鍛え上げてきた魔導士だった。

 それがどういう事になるのかと言えば、例えるなら、鍛冶職人が同じ金属で同じ武器を造ったとしても、使う炉や、職人の腕によって剣の切れ味や強度に違いが出るのと同じで、金属性魔法もその金属と錬成する武器の強さは金属性魔導士の魔力や熟練度によって違いが出るのだ。

ロルグは金属性魔法を鋼の剣一つに絞る事によって、その強度と切れ味を他の魔導士より強化できるようになるだけでなく、その刃の長さ、重量、握りの感触に至るまで、全てがロルグに合う様に改良してあり、しかもそれを錬成する毎に寸分たがわぬ形で錬成できるように修練してある。

 金属性魔導士のタイプの違いとはつまり、目的の違いなのだ。

チームプレーに重きを置いているヴァリネスは、仲間をサポートすることも考えて、仲間が扱う様々な武器を錬成できるようにしたり、オーマと連携を取る時に使うヌティール合金のような、仲間の属性に合わせた金属を錬成したりして多種多様な金属性魔法を覚えていった魔導士だ。

フェンダーなんかは、皇帝ルーリーを守るために一人でどんな戦場、どんな相手でも戦える様にと、個の強さに重きを置いて、錬成する金属と武器を厳選して魔法を修得している。

 そしてロルグは剣術に重きを置いて金属性魔法を修練してきたのだ。

武人である自分に誇りとこだわりを持っているロルグにとって金属性魔法とは、自身の剣術を活かすためのモノでしかないのだ。

 ロルグが扱う炎魔法もそうだ。一応、対魔族様に“ホーリー・フレイム”というアンデッドに有効な炎を錬成する性質変化の魔法を持っているが、それ以外の魔法は殆どが凡庸。つまり、部隊連携のための最低限の魔法しか覚えていない。

唯一優れている魔法は、剣に炎を纏わせる魔法だけだ。それに特化している。

ロルグという戦士は、魔法を主武器とするのではなく、魔法を主武器である剣技のために扱うという、物理特化・・いや、剣術特化という稀有な魔導士なのだ。


 それともう一つ、ロルグがフレイスを除くラヴィーネ・リッターオルデンで最強と謳われる理由となっている力が有る_____。




 ウェイフィーは、自身の攻撃をロルグに剣技のみで防がれた事で慎重になり、戦い方を変える。


「フッ!」


_____ザザン!


「くっ!?」


土属性の速攻で、砂を飛ばして目潰し_____ウェイフィーは、ナナリーの援護をもらって強攻撃を狙う戦法から、二人で小技を使って隙を見せずに相手を削る慎重な戦法へと変更する。


_____シュババババババ!


砂の目潰しに続いて、速攻魔法で植物の棘を散弾にして飛ばす_____


「____ハァッ!」


ロルグは魔力を込めて、剣に纏わせている炎の火力を上げてガード_____


「シッ!」


_____ズドドドドドドン!!


ウェイフィーの攻撃はまだ続く。またも速攻魔法で今度は石弾を散弾にして飛ばし、ロルグに休む暇を与えない。


「シァアッ!!」


______ガガガガガガン!!


砂で視界が殆ど塞がっている状態でありながら、ロルグは全ての石弾を切り落とした。


「気配切りが上手いですね。ですが、それは予想出来ました____ハァッ!」


ここでナナリーが援護_____


______ズゥオオオオオ!!


ナナリーは、ロルグが切り落とした石弾を風で分解しつつ巻き上げて、再びロルグの目潰しに使う。


「くっ!またか!」

「よし」


______ズドドドドドドン!!


ナナリーの援護を受けたウェイフィーがまたも石弾を放つ_____。

今度はしっかり当ててダメージを与えるために、速度と硬度を上げてある。


「_____ッ!!」


______ズがガガガガガン!!


視界を奪われたままのロルグだったが、再び気配のみでウェイフィーの石弾を全て切り捨ててしまった。


「ッ!_____これなら!」


ロルグの防御の合間を狙って、ナナリーが追撃で用意していた風の刃を飛ばす____


______ズゥオオオオオ!!


「ハァッ!!」


______バシィイイイイン!!


「「なっ!?」」


だがロルグは、この風の刃も感知して鋼の刃を合わせて防いでしまった・・・。


(気配切りだけでこれだけの攻撃を?なんて感知能力・・・____まさか!?)


そして、この一連のロルグの防御でウェイフィーは気が付いた。


「ナナリー!!潜在魔法RANK4!!」

「!?」


ウェイフィーの発言にナナリーは納得の表情を見せた______。


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