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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
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ダマハラダ砂漠の戦い(12)

 追い詰められて、覚悟を決めたフランは勝負に出る。

そしてフランが勝負に使用した魔法は、今サスゴットが使っている、彼らのお得意の“フリーリーブロウ”だった。

 自分の意志で動かせる風を起こし、手に持った弓を捨て、ショートソードと幾つかの矢をフリーリーブロウの旋風で操り始める・・・・この魔法の使い方まで、サスゴットと疾風槍隊がやる戦法だった。

 それを見たサスゴットは、眉間にシワを寄せた。


(ここに来てモノマネだと!?とことんふざけた奴だな!!)


 確かに、フランは魔導士としての実力はあるので、それなりに様にはなっている。

恐らくサスゴットの部下達に対してなら通用するだろう。

だが____


(私に通用するわけが無いだろう!!)


怒れるサスゴットは、応戦する様に魔力を上げて旋風の威力を高める。

そして、腰や背中に備えたハチェットとジャベリンを旋風にばら撒き、風で操作する。


「はぁあああああ!!」

「フンッ!!」


_____ズゥォオオオオオオオオ!!


 短剣と矢を散りばめたフランのフリーリーブロウの旋風攻撃と、ハチェットとジャベリンを散りばめたサスゴットのフリーリーブロウの旋風攻撃。

その勝負の行方は_____などと勿体ぶる価値は無い。

 当然この勝負の結果は、魔力を激しく消費していてフリーリーブロウの扱い自体にも慣れていないフランにではなく、フリーリーブロウの扱にも長け、余力も残しているサスゴットに軍配が上がる。

サスゴットのフリーリーブロウの旋風に乗ったハチェットが、フランが操っていた全ての武器を瞬く間に打ち落としていた_____


「くそっ!これでもダメか!?こうなったら____」


全ての武器を撃ち落とされたフランは、自棄を起こしたかの様にその身に纏うフリーリーブロウの旋風のみでサスゴットに特攻を仕掛ける。


「・・・・・」


軽薄なフランらしからぬ特攻_____。だが、サスゴットに特別驚く様子は無い。


(ふん、貴様にそんな度胸は無いだろう。何より、そんなことしても意味が無い。思っていた通りフェイント・・・いや、囮だな。本命は最初に捨てた弓だろう?)


 フリーリーブロウを使った戦い方に慣れているサスゴットは、この攻防の中でその旋風を探知機がわりにもしており、フランの手からフランが投げた弓に向かって風が伸びているのを察知していた。

そして、それが分かったときに、フランの勝負手が読めていた。


(全ての武器を失い、最後はヤケクソの特攻____と、見せかけて、手放した弓と矢を風で引き寄せての近距離からの一矢____これが本命だろう?いくらフリーリーブロウは威力が落ちると言っても、私のフリーリーブロウは並みではない。奴の中で私のフリーリーブロウを突破できる攻撃は、上級の風属性魔法か、潜在魔法で強化した肉体で引き絞る強弓の一矢くらいのはずだ・・・それを踏まえて、この状況から計算すれば答えは簡単!)


フランの作戦を読み切ったサスゴットは、フランからの弓矢の一撃に備えた防御に入る。

だが_____


「______」

「______」

「______」

「_____!?」


フランは何もせず、本当にそのままサスゴットの間合いに入ろうとしている。

フリーリーブロウで弓と矢を引き寄せる様子が無い・・・。


(何だ?違う作戦?・・・いや、そんなはずは無い。これしか私に勝つ方法は無いのだから・・・奴だってこの戦いは、“負けられない”戦いだと分かっているはず・・・)


だが、そう思うサスゴットの考えとは裏腹に、フランはそのまま距離を縮め、その身をサスゴットの旋風に引き裂かれながらサスゴットの間合いに入って来た_____。


(まさか本当に特攻!?何故!?仮にそうだとしてもそれでは私に勝てないはず!何をする気だ!?本当にここから有効な手が有るのか!?)


 実はそんなものは無い_____。

サスゴットの考えている通り、フランの持ち駒でサスゴットのフリーリーブロウを突破できるのは、魔力をしっかり溜めてからの上級魔法か、潜在魔法で強化した肉体での弓矢攻撃のみだ。

そのため特攻を仕掛けたところで、実際にこの距離とこの状態では、フランがサスゴットに“勝つため”の有効な攻撃手段は無い。

サスゴットは“何がしたいんだ!?”と困惑する____フランはここに来て、ようやくサスゴットに“迷い”を持たせることが出来た。


(痛ってぇ~~~!!けど!・・ハハッ!やってやったぜ!)


 実を言うと、フランの作戦は、本当にサスゴットが言う様に弓矢が本命だった。

サスゴットが気付かなければ、そのまま弓矢を風で手繰り寄せて一撃を見舞うつもりだった。

ただ、それが読まれた時のために保険を用意していただけだ_____いや、保険と呼べるかどうかも怪しいが・・・。


 サスゴットがフランの決め手を上級魔法か弓矢しかないと判断し、その事とこの状況から計算してフランの決め手を予測した様に、フランもまた、フリーリーブロウを使えばサスゴットは自分の決め手は上級魔法ではなく、弓矢だろうと予測すると計算していた。

サスゴットはフリーリーブロウの扱いに長けているだけあって、必ず弓の存在に気が付くだろうと踏んだのだ。

 更に、サスゴットはフランをペテンと決めつけていたので、その身を犠牲にする特攻は読まれないとも踏んでいた。実際には、読んだものの有効性が無いと判断してその考えを捨てただけだったが・・・。

 フランは、どちらでも良かったのだ。

弓矢が読まれれば、特攻してそのまま間合いを詰めるだけだし、読まれなければ弓矢を放っていた。

 フランがサスゴットの旋風にその身をさらす覚悟が出来た時点でフランの作戦は二段構えになっており、この駆け引きはフランに軍配が上がる様になっていたというわけだ。


 さて、そこで問題になるのが、フランはこのまま間合いを詰めて何をするのか?という事だ。

本命の弓矢を囮にし、その身を切り裂かれながら入ったサスゴットの懐で、フランはどうするのだろう?


 サスゴットが言う様に、実際にフランにはここからサスゴットに勝利する手段は無い。

だからこそ、サスゴットはこのフランの特攻を予想はしても気に留めなかったのだ。

ただでさえ“負けられない”この戦いで、その後に勝利につながる事の無い手は打たないだろう_____と。

 だが、これこそが、この二人の勝敗を分けた本当の理由だ。

この駆け引きでサスゴットが敗れた本当の敗因は、サスゴットがフランの作戦と覚悟を読み間違えたというより、二人の性格____物事の考え方に違いがあったという事なのだ。


 正反対の二人は物事の解釈も違う_____。


 サスゴットにとって、“負けられない”という事は、“勝たなければならない”という事だ。そう解釈する人物だ。

これに対してフランは、“負けられない”という事に対して、“負けなければ勝たなくてもいい”という解釈をする人物なのだ。

この互いの物事の考え方により、この状況での判断の違いが起きた。それが作戦の違いに表れ、サスゴットは読み違いをして、フランにチャンスが巡って来たというわけだ。

ただの価値観のすれ違いだったのだ。

あえてフランの勝因とするならば、物事に対するフランの柔軟な発想がモノをいったというところか・・・・・そう、フランはサスゴットに勝つために間合いに入ったわけでは無かった。

 オーマからの命令も、サスゴットに勝てとも、疾風槍隊を撃破しろとも言われていない。

“部隊同士で衝突したら負けないようにしておけ”____と、言われただけだ。

だから、勝つ気も無いのに命懸けの特攻で懐に入ったフランがする事、それは時間稼ぎだ。

つまり_____


「サスゴット!覚悟しろぉ!!」

「ッ!?」


___________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________チュ♪


「ん!?」


キスをする事だった______。

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