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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
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ダマハラダ砂漠の戦い(5)

 「うぉおりゃーーーーー!!」


 アデリナの砂壁盾隊とイワナミの重歩兵隊が衝突した後、両隊と砂壁盾隊に纏わりついていたロジの突撃隊とが入り乱れての乱戦になると、アデリナが躍動し始める。

自分達の突撃を止める程の好敵手との戦いに心躍らせているというのが理由なわけだが、それだけではなく、その裏には一抹の不安もあった。


(こちらの勢いを削がれたら、レンデルの隊とイワナミの隊の両方を相手にするのは、うちの子達でも厳しいはず・・・なら、早い内に敵指揮官を鎮めないと!!)


流砂突撃を止められた状態での二対一は自分達に分が悪いと踏んだアデリナは、イワナミを狙って単騎で突撃を仕掛けた______




 「オーマ!_____」

「ミクネ______」


 だが、このアデリナの動きは、ラヴィーネ・リッターオルデンがサンダーラッツと接敵した事で、ラヴィーネ・リッターオルデンもまたミクネの振動結界に入った事により、ミクネが察知していた。

そしてまた直ぐに、ミクネからオーマに報告が行き、オーマからの指示がミクネからメンバーに送くられる。




 _____ガィイイイイイン!!


「あぐっ!?」

「次!_____」


_____ズガァアアアアン!!


「うわっ!?」

「よし、次____いや、いた!」


 纏わりつくサンダーラッツ突撃兵と、立ち塞がるサンダーラッツ重装歩兵を振り払い、アデリナは指揮官であるイワナミを見つけ出す。


「行くよぉ!!」


 目標を発見したアデリナは、魔力を出し惜しむことなく費やして術式を展開。

単騎での流砂突撃をイワナミに仕掛ける____


______ズゥォオオオオオオオオオオ!!


「ッ!?あれは・・・アデリナか!?」


 イワナミが、敵味方入り乱れて怒号が飛び交う中で、自分に迫りくる気配を感じてそちらを向けば、荒波の様な砂に運ばれて突撃してくるアデリナが視界に入る。


「ウィンド・アーマー!フレイム・ウォール!」


 突進してくるアデリナを見て、イワナミは咄嗟に今纏っている炎の鎧だけでは足りないと判断。

風の鎧で炎の鎧を強化し、炎の壁も用意する____


「_____甘い!!小手先だよ!」


______ガギャァアン!!


「ぐおっ!?」


____だが、速攻で発動した即席の防護魔法では、態勢十分で勢いの付いたアデリナの突撃を抑え込むことは出来ず、アデリナのラージシールドに弾かれて、その巨体を持ち上げられてしまった。


「よし!_____ハァッ!」


 イワナミを吹き飛ばし、隙を作ったアデリナは、早々にイワナミを“沈める”ため、更に魔力を練り上げて勝負に出る。

魔力を練り上げて、流砂の速度を加速し、砂の量も増やして、自分の体を地上から10メートル以上高い位置へと運び出し、自身の決め技の威力を上げるための勢いと高さを作った。

 そして、その高い位置から跳躍_____更にここで、アデリナはまた別の土属性魔法を使う。


「マグネット・コーティング!」


 使った魔法は、“マグネット・コーティング”_____。

特殊STAGEの“性質変化”で“磁石”を錬成してその身に纏った


「ッ!?」


アデリナがその重量たっぷりの重装に磁石を纏わせると、イワナミは一瞬自分の体が浮いた様な錯覚になる____そして直ぐに、その感覚が間違いではなかったと気が付いた。


「もう既に私にも!?_____さっきの突撃か!?」

「その通り!!死んでもらうよ!」


イワナミは先程の衝突で、既に自分の鎧にも磁石を付けられているのだと分かった。

だが、そうだと分かったところで、この時点では、もうイワナミに打つ手は一つしか無い。

 磁石同士は引き寄せ合う____逃げられない。ガードするしかない。

だが、重たい重装鎧に両手のラージシールド、更には流砂突撃で増やした砂を合わせたアデリナの総重量は数トンにもなろう。

これに、その重さでの落下速度と、磁石の引力で加速が付いた威力は、イワナミの膂力を持てしても無事で済むことは無い______


_____ズンッ!!


 人が落下したとは思えない重量感のある衝撃音が周囲に響く・・・。

数メートル離れた所に居る兵士達でさえ、地面が揺れたのを感じ取る程の威力。

人間ではまず助からずにミンチになってしまう。

イワナミも例外ではないはずだ・・・・直撃していれば______


 「大丈夫ですか!?イワナミ隊長!」

「ああ・・・流石だ。助かったよ、ジェネリー嬢」


アデリナがイワナミを捉えて圧し潰そうとした刹那、オーマから援護の指示を受けていたジェネリーが滑り込んでいた。


 これは、本々のオーマの作戦だった。

本々ジェネリーは雷鼠戦士団重歩兵隊隊長補佐ではあるのだが、今回の戦いで、他の勇者候補は単騎で運用する中、ジェネリーだけは部隊に組み込む運用をしていた。

何故なら、このイワナミの隊がラヴィーネ・リッターオルデンとの戦いにおいて、最も重要でプレッシャーになる役目を負うことになると分かっていたからだ。

 突撃・奇襲が得意なラヴィーネ・リッターオルデンとの戦いでは、前衛が崩されない事が何よりも肝心。

なので、ミラージュ・アングリフを使ったラヴィーネ・リッターオルデンを炙り出すだけではなく、この役目を負うイワナミの重歩兵隊を補強するのが、ジェネリーの本当の役目だった。


 「な、何だってんだい!?」


 この事態に、アデリナは心に猛獣から突進を受けたかのような衝撃を受ける。

イワナミを援護する人物が現れた事にではない。

これだけの乱戦ならば、誰かが気が付いて、自分達の指揮官を守るために自分とイワナミとの間に割り込んでくる可能性は十分あると思っていた。

だからこそ、アデリナはこの技を選択して“決め”に行ったのだ。

 アデリナは、誰かが間に入って来ても、その人物ごとイワナミを圧し潰すつもりでいたのだ。それが出来る自信も有った。

だが結果を見れば、その間に入って来た人物は、圧し潰されるどころか、片手で総重量数トンにもなる自分を持ち上げており、もう片方の手に剣を持ってカウンターまで用意しているのだ。

こんな事は、アデリナがこの世で最も尊敬している最強の主であるフレイスにだって出来ない。


(この子がジェネリー・イヴ・ミシテイス!?フレイス様と同じ勇者候補・・・潜在魔法での単純な腕力ならフレイス様以上なのか!?)


 アデリナは、初めて見るフレイスと同じ勇者候補の力を前に、初めてフレイスと出会ったときと同じような衝撃を受けていた。

そして、更にそれ以上の衝撃を、今度は物理的に受けることになる_____


_____ゴォオオオオオオ!!


「_____来る!?」

「はぁあああああああ!!」


ジェネリーが、炎を纏わせた剣でカウンターの一撃を放つ_____


_______ジュゴォオオオオオン!!


アデリナ自慢の魔法が付与されたラージシールドが簡単に融かし斬られ、アデリナの体と纏わせていた砂が焼け飛ぶ。


「ぐっ!・・・・あ、あがあぁああ!!」


ジェネリーの斬撃の衝撃は、一撃でタフなアデリナの体の感覚を奪い、炎は砂を纏ったアデリナを蒸し焼きにするほどに強力だった。

ジェネリーは、たったの一撃でアデリナを戦闘不能へと追いやる程の重傷を与えた____。


_____だが、アデリナは生き残った。


(あ・・危なかった・・・・この技を使っている最中じゃなかったら死んでいた・・・)


 イワナミを仕留めるために纏っていた砂は、圧し潰す力を増幅するために増量されたものだが、それがそのまま防御力にもなっていたため、アデリナは死を回避できていた。

 アデリナは勇者の候補にまでなる強者の力を見て衝撃を受けるも、その攻撃に耐えられた事に、重傷を負いながらも心の底から安堵していた・・・・ジェネリーは追撃を打つ態勢に入っているにも拘らず安堵していた。


 理由は、この一撃に耐えれれば十分だからだ。追撃まで受ける必要は無いからだ。


「ジェネリー!!」

「ぬっ!?」


 今度はジェネリーとアデリナの間に、フレイスが入り込んでくる。

そう、イワナミのそばにジェネリーが居たように、アデリナのそばにはフレイスが居るのだ。


「行くぞ!ジェネリー!!」

「ッ!受けて立つ!!」


そして、氷の刃と炎の剣が交差した_____。

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