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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
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ダマハラダ砂漠の戦い(4)

 「「ウババアババババババババァアーーーーーーーー!!」」


 オーマからの指示を受け、ロジはオタ____突撃兵たちを連れて、ラヴィーネ・リッターオルデンの先頭に居るアデリナの砂壁盾隊へと突撃する。


「あははははは!いいねぇ!いいねぇ!!やっぱりあの突撃隊は楽しいよ!!」


見た者全て・・・あの勇者候補達でさえ色々な意味で恐怖するロジの突撃隊の異様な姿を、アデリナは嬉々として迎えている。

これは、前の戦いでロジの隊の突撃を見ていて知っているから_____というわけでもない。

むしろ、知らないからこそ楽しんでいた。


「見なよ・・あの楽しそうな表情。決死の突撃だってのにさ、相変わらず戦うのが好きなんだろうねぇ♪」


____そう、アデリナ・・・というより、ラヴィーネ・リッターオルデンの者達は、ロジの突撃隊の“本質”を知らないので、彼らを自分達と同じ、或いはそれ以上の戦闘狂だと思って好ましく見ているだけだった・・・。


「個々の能力はそこまで高くないはずなのにさ・・・いや、そんなことは無いか。あれだけ荒ぶっていながら____」

「ハイアクア・アーマー展開!」


「「ウヴァーーーーー!!(了解!!)」


「_____しっかり、レンデルの指示で集団での魔法を増幅できている。以前より魔力も連携も上がっているし、大したもんだ。けどねぇ・・・術式展開!!」


「「オウッ!!」」


 アデリナが自分の部隊に号令を出すと、砂壁盾隊も一気に魔力を練り上げて、土属性魔法術式を展開する。

そして、ロジの突撃隊との距離が30メートルを切ったところでアデリナが合図を出し、砂壁盾隊は集団魔法を発動した。


「流砂突撃!!」


______ズゥォオオオオオオオオオオ!!


 砂壁盾隊の集団魔法が発動されると、砂壁盾隊の兵士達の足下に大量の砂が錬成され、流砂が発生した。

流砂は魔法を発動した兵士達の足下を取るが、そのまま兵士達を鎮めるではなく前へと運び出す。

その速度は、集団魔法で発動しているがために凄まじい加速で、並の魔導士の潜在魔法で強化した脚を優に上回っている。

砂壁盾隊の兵士達は、本々全員が重量級な上に重厚な鎧を身に着けているというのに、ロジの突撃隊の突進速度と殆ど変わらない速度だった。

 この“流砂突撃”こそ、重装歩兵の砂壁盾隊が突撃を得意としている理由だった。

重装鎧と両手にラージシールドを持っていながら、この加速が出来る。

しかも足を動かしていないので、兵士達は戦闘の構えを維持していられる。

更に、砂壁盾隊の兵士達は自分達の魔法なので沈まないが、ぶつかる相手は流砂に足を取られるので、衝突の際に不利になる。

重量とスピードを両立し、態勢も有利になれるという突撃戦法だ。

 この砂壁盾隊の流砂突撃で、これまで突破できなかった相手は殆どいない。

身内のフレイス率いる氷演武隊ぐらいで、サンダーラッツも例外ではなく、特にロジの突撃達とイワナミの重歩兵隊はこの流砂突撃の餌食となった苦い経験がある。



 「行きます!荒波!!」


「「ヴァアアアアアアア!!(了解!!)」


 かつて自分達を粉砕した砂壁盾隊の流砂突撃を前に、それでもロジは怯むことなく突撃兵に命令を出し、突撃兵たちに“ハイアクア・ウェイブ”を集団で発動させる。

魔法が発動すると、その波は突撃兵が纏っていた水の鎧と相まって凄まじい勢いで突撃兵を運び出して、突撃隊の突進速度を上昇させた。

大きな波の流れによって突撃の勢いが増した突撃隊は、まさに大きな津波と化してアデリナの砂壁盾隊に襲い掛かかる_____


「ほう?前には無かった技だね。成長している・・・面白い!!」


人を呑み込む津波と化したロジの突撃隊を前に、アデリナもやはり臆することは無く、嬉々としてロジ達の荒波にツッコんで行く_____


 流砂のよって勢いが増したアデリナの砂壁盾隊。流水によって勢いの増したロジの突撃隊がぶつかる_______


______ズバシャァアアアアアアアアン!!______ズドドドドドドドドド・・・


 流砂と流水の衝突_____今回は砂壁盾隊の流砂突撃に軍配が上がる。

ロジの突撃隊は、勢いと速度こそ砂壁盾隊の流砂突撃を上回っていたが、パワー負けしてしまった。

軽装のロジの突撃隊と重装鎧にラージシールドを持った砂壁盾隊とでは本々の重量が違う。

ロジの突撃隊も水を纏う事で重量は増しているが、それは砂壁盾隊も同じで砂を纏っていた。

そのため、本来の装備と兵士の体格の重量差がそのまま結果に出てしまった。

重量+スピード=破壊力の方程式が成立する突撃勝負では、ロジの隊の方がどうしても分が悪かったというわけだ。

 加えて相性の差もあった。

水属性の津波はあらゆるモノを押し流し、全てのモノを呑み込むが、吸収に弱く、水分を吸収してできている流砂とは相性が悪い。

アデリナ達の流砂突撃は、ロジ達の水属性魔法を吸収し弱体化させることが出来ていた。

 そうしてアデリナと砂壁盾隊は、ロジの突撃隊を弾き飛ばしたわけだが_____


「織り込み済みだ!!これからだ!頼むぞ!ロジ!それに、へんた・・・突撃隊!」


オーマはアデリナの砂壁盾隊とロジの突撃隊とでは、ロジの隊の方が分が悪い事など百も承知だった。

オーマの狙い・・突撃隊に期待している事は、この後だった______


「「ウヴァァアアアアアアアアア」」


「!?」


 砂壁盾隊に潰されたか見えた突撃隊だったが、ハイアクア・ウェイブの波の力を利用して態勢を維持。流砂に対しても、水の鎧で足を取る砂を洗い流して沈まない様に工夫して、砂壁盾隊に纏わりついた。

突撃隊に纏わりつかれた事によって、砂壁盾隊の流砂突撃の勢いが弱まって行く・・・。

ロジと突撃隊は、身体を張ってアデリナ達の流砂突撃の勢いを弱めて見せた。


「あの水の鎧と波は、私達に打ち勝つためのものじゃなくて、流砂に呑まれずに私に密着して、こちらの勢いを削ぐ為のモノだったのかい!?・・・すごい根性だね・・・フフ♪」


いくら水属性魔法で流砂に呑まれずに済むとは言え、アデリナ達の突撃に体を張って纏わりつくなど、狂気の沙汰としか思えない。

水属性を持ち、ロジを崇める恐れ知らずの狂信者達にしか出来ない芸当だろう。


「最初からレンデルの隊で私達と勝負する気は無かったって事だね・・・そうか、一騎当千の勇者候補が複数人居るなら、私らを止めるのに二部隊使う事になっても手数が足りるって計算か・・・なら、次は____」


オーマの意図を悟ったアデリナは、直ぐに次の展開を予測し、気持ちを切り替える____だが、サンダーラッツの方は、既に準備万端だった。


「フレイム・アーマー展開!!」


「「了解!!」」


 ロジの突弾隊に続いて前進していたイワナミと重歩兵隊が、集団魔法で炎の鎧をその身に纏う。

そしてイワナミは、続いて突撃命令も出す____


「突撃するぞ!ロジの隊ごと焼き尽くすつもりで行けぇ!!突撃ぃいいいい!!」


「「うぉおおおおおおおおおおお!!」」


 イワナミの重歩兵隊が突撃を開始。

その距離はあっという間に、20メートルを切ってしまい、アデリナ達に仕切り直す暇を与えない。

ミクネの通信網による連携で、イワナミ達は完璧なタイミングでアデリナ達を捉えたのだった。


「チィ!新たに集団魔法を発動する時間が無い!出来る準備は覚悟だけだね・・・お前達!!前から新しいのが来るよ!!このまま行くから気合入れな!!」


「「おお!!」」


スキを突かれるタイミングになってしまったが、砂壁盾隊の兵士達も歴戦の強者らしく、アデリナの一声で動揺を払い覚悟を決める。

 そして、ロジの突撃隊を引きずったまま、イワナミ達の作り出した炎の壁へと突っ込んだ_____


_____ズドォオオオオオオオオ!!


 凄まじい衝突で焼けた砂が舞い飛び、砂の焼けた匂いが周囲に広がる・・・今度の衝突は互角。

視界が開ければ、オーマの目には乱戦となった砂壁盾隊と重歩兵隊の姿があった______。

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