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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
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ダマハラダ砂漠の戦い(2)

 フレイス達ラヴィーネ・リッターオルデンは、“ミラージュ・アングリフ”という技で部隊全体を透明化させて、サンダーラッツを奇襲しようとしている。

オーマ達サンダーラッツは、先ずはこれを打ち破り、ラヴィーネ・リッターオルデンの姿を炙り出さなくてはならない。

敵の索敵なら、サンダーラッツ内にはフランやクシナといった索敵魔法が得意な者も居るし、今回は通信役をミクネが一人で背負っているので、通信兵の三人も居る。

だが、その者達を置いてオーマはラヴィーネ・リッターオルデンを探し出す役目を、勇者候補であるジェネリーに頼った。


 ラヴィーネ・リッターオルデンの幹部一人、ミューラーは帝国の諜報機関バグスも青ざめる程の隠密だ。

戦闘力こそラヴィーネ・リッターオルデン幹部達の中では最弱だが、索敵・隠密は時空魔法が使えるフレイスを除いてラヴィーネ・リッターオルデンでトップだ。

他の幹部達の戦闘力が高いから隠密能力に特化させたと言った方が適切ではある。

どちらにしろ、サンダーラッツ幹部達はオーマ自慢の優秀な魔導士達だが、ミューラーの隠蔽魔法を打ち破れるのかと問われれば疑問が出てくる。ミューラーはそれほど優秀だ。

ミクネやサレンならばミューラーの隠蔽魔法も確実に打ち破れるだろうが、ミクネは通信塔、サレンはフレイスとの決戦という重要な役目がある。

ならばジェネリーこそ適任だろうという結論になり、実際に戦闘が始まると、ジェネリーは直ぐに姿の見えないラヴィーネ・リッターオルデンを捕捉していた_____。



 ジェネリーは索敵魔法を得意としていないが、それ以上の索敵能力を持っている____それは“感覚”だ。

潜在魔法を最高ランクで扱えるジェネリーが、その力で“視覚”“聴覚”“嗅覚”といった感覚を強化すれば、それは最早人間の領域ではない、野生の動物や魔獣なみ・・いやそれ以上の感知能力を発揮する。

 ジェネリーは以前にフレイスと対峙した事で、フレイスの匂いを覚えている。

これを潜在魔法RANK4(神経)で嗅覚を強化して、フレイスを探し出したというわけだ。

普通の魔導士では、たとえ潜在魔法RANK4を扱えたとしても、この状況下でたった一人の人間の匂いを嗅ぎ分ける事など凡そ不可能だが、ジェネリーはこれを可能にした。



 「全部隊へ通達。8時の方向からの奇襲に備えて防御陣形」

「分かった!」


 オーマの指示を読み取って、ミクネは直ぐにその指示を各隊長達に伝える。

そうしてサンダーラッツは、ラヴィーネ・リッターオルデンの奇襲に備えて動き始めた。



 ラヴィーネ・リッターオルデンの“ミラージュ・アングリフ”は、本来ならばサンダーラッツでは打ち破るのは困難な技だ。

ミューラーの隠蔽魔法だけならばともかく、フレイスの水属性魔法とサスゴットの疾風槍隊の風属性集団魔法も切り崩さなければならないからだ。

これをサンダーラッツだけで打ち破るなら、同じ水属性と風属性の組み合わせで、ロジの突撃隊とフランの遊撃隊の集団魔法をタイミングよく合わせて打ち破るか、炎属性のイワナミの重歩兵隊か、クシナの砲撃隊の集団魔法を使わなくてはならない。

 だが、この三パターンの内どれでも打ち破れる保証がない上に、打ち破れたとしてもその後が大変だ。

ロジの突撃隊とフランの遊撃隊にやらせれば、敵を炙り出すだけに二部隊も使う事になるので、その後の手数が足らなくなる。

イワナミの重歩兵隊は前衛の要で、突撃の得意なラヴィーネ・リッターオルデンの攻撃を受けなくてはならないのでそんな余裕は無い。

クシナの砲撃隊はミクネ同様に後方に置いているので、今は距離が離れすぎている。

 そのためオーマは、またも勇者候補のジェネリーを頼った。


「ミクネ、ジェネリーに引き続き予定通りにラヴィーネ・リッターオルデンを炙り出せとも頼む____」

「おう!____」

「____了解!」


 ジェネリーはミクネからオーマの指示を受けると、そのまま匂いで敵との距離を測りながら、イワナミやクシナの隊の集団魔法を遥かに超える魔力で、炎属性の魔法術式を展開する。


「行けぇーーーー!!」


そして、そのまま術式を完成させて、この辺一帯を焼き払ってしまうのではないかというほどの高火力の火炎を、何でもない何も見えない景色に向かって走らせた_____


_____ズゴォオオオオオオオオオ!!______ボジュゥウウウウウウ!!


 誰の居なかった景色に向かって炎が進むと、突如として水蒸気が発生する。

ジェネリーの火炎がフレイスの水魔法を蒸発させたのだろう。

その証拠に、オーマは自分の目で、発生した湯気の中にラヴィーネ・リッターオルデンの影を見つけた。

 それと共に直ぐにミクネから連絡が入る____


「オーマ!敵を確認!数はおよそ千五百!間違いない!ラヴィーネ・リッターオルデンだ!全部隊揃っている!」

「ん?そうか、分かった・・・」


オーマはミクネからの報告に、“コレルの隊も居るのか?”と、後方からの支援を得意とする水突弾隊もこの奇襲に参加している事に一瞬疑問を抱いたが、この状況と、次のこちらの打つ手には影響しないだろうと判断して、予定通りの指示を出す。


「ミクネ、“カウンター”だ」

「了解!_____」

「_____了解です!兄様!」


奇襲してくる相手を炙り出せたのなら、その勢いを利用しない手は無いと、オーマはカウンターを選択。

そして、ここでも出し惜しみせず勇者候補の力を使う。


「フフン♪行きますよ!改良された“パッゾ・フルゴラ”です!」


 オーマからのオーダーに応えるべく、レインは自身最大最強の一撃を用意する。

STAGE8(融合)で魂まで雷と同化する一撃____。

昔ならば、暴走必至のレインの禁じ手だったが、魔導士として成長し、改良を加えた事で、フルパワーで攻撃しても理性を保てるようになっていた。

そのため、火力は今まで通りでありながら敵味方も区別でき、更には範囲と狙いが正確になった事で、精度が向上している。


「____行きます!」


レインは改良された自身最高の魔法で雷の女神となって、並の軍なら・・・いや、ラヴィーネ・リッターオルデンでさえも、全滅させられるほどの一撃を放った_____。


(よし!良い一撃だ!これで決まってくれても良いぞ!)


レインの用意した一撃は、正にオーマのオーダー通りで、例えラヴィーネ・リッターオルデンでもフレイスが居なければ防げるものではないだろう。

だが、フレイスはミラージュ・アングリフを使うために魔法を使用していたため、態勢は不十分のはず。

それでもフレイスの事だから、防御を間に合わせて全滅は防ぐだろうが、完璧には防ぐことが出来ないはず。

オーマはこの一撃で、ラヴィーネ・リッターオルデンの戦力を大きく削ぐことが出来ると踏んだ_____


_____ドンッ!!______バリバリバリバリィイイイイイ!!


大きな光を放って稲妻がほとばしり、その直後に爆発が起きたかの様な雷鳴が轟く______結果は、オーマの予想に反して、ラヴィーネ・リッターオルデン全部隊が無傷だった。


「なっ!?なんだとぉ!?」


オーマは遠目でその事実こそ確認できていたものの、何故ラヴィーネ・リッターオルデンがレインの一撃に無事でいられたのかには、理解が及んでいなかった。

オーマは距離が遠くて、雷鳴の前の鈍い打撃音を聞き取れていなかったのだ。

 だか、その鈍い音を聞き取れていたミクネには、この事態が理解できていた。


「オーマ!カウンターだ!」

「え?・・・ああ、だからカウンターをレインに___」

「____違う!向こうのカウンターだ!レインのカウンターにカウンターを入れられた!やったのはフレイスだ!!」

「なっ!?」


ミクネから報告を受けるも、オーマはその事実にさえ理解が及ばなかった。

ただ、“やったのはフレイスだ!!”という言葉だけが頭の中に残り、フレイスの異常な強さに対する恐怖心が蘇ってきていた_____。

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