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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
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凍結の勇者ろうらく作戦会議2

 会議が停滞していた事もあって、ベルジィは気分転換も兼ねて自身の能力を改めて皆に解説する。

そこで、ドーピングによって肉体や魔力を強化できることや、幻惑の効果を発揮するための条件など、オーマやヴァリネスが自分を指揮するのに必要な情報を、たっぷり一時間ほど掛けて説明した____。


 「____と、大体こんなところです」


「「・・・・・・」」


他のメンバーのリアクションは、終始“沈黙”だった・・・。


「?・・・どうしました?」

「 “どうしました?”じゃないわよ、ベルジィ。何なのよ貴方は・・・・」

「はあ?」

「“はあ?”じゃないわよ・・・。なんちゅー能力を持ってんのよって話」

「えぐい」

「フレイスの能力がインパクト有り過ぎて分からんかったが、改めて聞くとスゲー能力だな」

「相手を支配できるだけでなく、味方の強化もできるというわけですもんね」

「うん。エリストエルフの長い歴史でも、魔力まで強化できる薬の錬成なんて話、聞いた事も無いぞ」

「ひょっとして、歴史上で一番薬物属性の扱いに長けるんじゃないですか?」

「それは・・・どうでしょう?」


 樹属性や薬物属性は、本々他と比べてバフ・デバフ効果のある魔法が多い。

そしてこれらの魔法は、既存の魔法を扱うにしろオリジナルで開発するにしろ、性質変化(特殊STAGE)の技を使う事が多いので、他の魔法より修得しやすい。

そのため、樹属性魔導士・薬物属性魔導士は、他の属性魔導士に比べて、バフ・デバフ効果を持つ魔法を多く備えられるという特徴がある。

薬物属性魔導士の最高峰のベルジィともなれば、そのバフ・デバフ効果の数・質ともに優れている。

 だがベルジィのすごさは、何よりも規模____つまり“個”ではなく、“群”に対して影響を及ぼせるという点だ。これは、この世界において唯一無二と言っていい。カスミでも出来ない。

 このベルジィの能力を極端に言えば、味方の“個”でも“群”でも強化でき、敵の“個”でも“群”でも弱体化でき、幻惑魔法が通用すれば全てを支配できる能力だ。

これから能力に磨きを掛かて、支配できる敵のレベルの上限も、強化できる味方の上限も上げる事ができれば、バフ・デバフ効果を与える魔導士として、ベルジィに敵う者はサレンが言う様に歴史上にすらいなくなるだろう。


「でもそれなら、例えば勇者候補・・・特にジェネリーさんにドーピングできれば、フレイスさんの体術や氷結魔法に対抗できるのでは?」

「ぬっ!」

「ベルジィ、例えばジェネリーの再生能力なんかを強化できる薬とかも作れる?」

「作った事は有りませんが、可能でしょう」

「おお!」

「どう思う?団長?」

「フレイス相手にはそれでも厳しいな」

「勝てない?」

「ああ、正直に言って魔術と体術に差が有り過ぎる。時間稼ぎなんかの防御策にはなるだろうが・・・」

「あの氷結魔法で身体能力を奪いながらの魔法と体術のコンボはエグかったですもんね」

「それだけでも割とチートですよね」

「というより、それでけで十分チートなんだよ」

「実際に我々は昔、“それだけ”の能力に大苦戦したわけだしな」

「でも勝てなくとも、そこに対策が打てるのは助かりますね」

「まあ、有効な案ではある」

「そうです!すごいです!ベルジィ♪」

「フフッ♪ありがとう、ユイラ」


 フレイス対策に有効な一案が出た事で、気分が乗って来たサンダーラッツの一同は、そのまま他の要素にも目を向けて、会議を躍らせることにした。


「ベルジィさんの能力が“群”に対しても効果的なバフ・デバフを掛けられるなら、ボク達もラヴィーネ・リッターオルデンに後れを取らずに済みそうですね」

「そうだよ!フレイスもそうだが、次は軍団戦なんだよ!奴らの対策も考えないと!」

「うん?でも兄様達って、一回はあの方々に勝利しているのですよね?」

「ま、まあ・・・一応な」

「だが、ハッキリ言って奇跡的な勝利だ。真っ向勝負じゃ先ずこちらが敗北する」

「はあ・・・前はどうやって勝ったのです?」

「あ!それ私も興味があるぞ!」

「同じくです。あの“バークランド大攻勢”についての武勇伝を聞きたいです」


 勇者候補の面々は、“バークランド大攻勢”でオーマが敵の策を見破って、フレイス率いる強襲部隊を撃破した事で勝利したことは知っているが、そのサンダーラッツ対ラヴィーネ・リッターオルデンの対決内容を知らないので、当時どうやってオーマ達が勝利を収めたのかに興味津々だった。

だがオーマの方は、勇者候補達一同が興味を見せる中、バツの悪い表情だった。


「すまん・・・言いたくない」

「ハハハハハ・・・」


オーマの気持ちが痛いほど分かるクシナも乾いた笑いを見せるだけだった。


「ええ・・・」

「なんだよー・・いいじゃんか、話してくれよ」

「私も聞いてみたいですね。あのフレイス相手にどうやって勝利したのか」

「他の面子が弱かったのですか?」

「そんな事ない。他の面子もかなりヤバイ」

「そうだな。ジェネリー嬢達にとっては脅威ではないだろうが・・・」

「アーグレイさん、ロルグさん、ミューラーさん、アデリナさん、サスゴットさん、コレルさん・・・。フレイスさんのせいで印象が薄くなりがちですが、あの方達も武人としても指揮官としてもハイレベルな人たちです」

「バークランドじゃなくて他の国なら、その全員が一軍を預かっていても不思議じゃないレベルだよ」

「そうかぁ?ロルグやアデリナはともかく、サスゴットは大した事なかったぞ?」

「それはフラン・・単純に、彼にとってお前との相性が悪かっただけだ」

「相性?魔法の属性か何かですか?」

「いや、人間的にだ」

「に、人間的・・・」

「ラヴィーネ・リッターオルデンの幹部たちは、基本的に全員が真面目なんだ。それ以上に戦闘狂だが・・・。その中でも、サスゴットは一番真面目な人間だったんだよ」

「フランみたいな軽薄な人間が嫌いだったのよ。まあ、気持ちは分かるわ」

「なっ!?副長に言われたくねーぞ!副長だって戦場でミューラーを口説いていたらサスゴットにキレられてたじゃねーか!!」


「「ええ・・・」」


勇者候補一同はドン引きした・・・。


「ふん!いいじゃない!そのおかげで、そのスキを突いてサスゴットの疾風槍隊崩せたから勝てたんじゃない!」


「「ええ・・・」」


勇者候補一同はドン引きした・・・。

でもその発言で、勇者候補の五人は、サンダーラッツが何故ラヴィーネ・リッターオルデンに勝てたのかを何となく察した。


「兄様が言いたくないって・・・」

「ええ・・きっと、“そう”なのでしょう」

「それじゃー、自慢する気にもなれないか・・・」

「うーん・・・救国の英雄オーマ・ロブレムを作ったあのバークランド大攻勢の中身がそんなだったなんて・・・・・正直ショックだ」

「ヴァリネスって何気に一番無敵ですよね・・・キャラ的に」


「「まあ、キャラ的にはな・・・」」


「うん?何?貴方達、何か言った?」


「「いえいえ」」


チート能力を持つ勇者候補達から“無敵”と認定されたヴァリネスだった。


 「で、でも、まあ、今回はベルジィが付いていますから、以前の様な奇跡に頼った戦いにはならないかと・・・」

「そうだな。あいつ等ともまともに戦えそうだ」

「さて・・・そうなると_____」


ベルジィのおかげで、フレイスの幻影属性、氷属性、そして体術、更には他のラヴィーネ・リッターオルデン幹部たちにも対策ができた。

残るは____


「____やっぱ、時空魔法だよな」

「うーん・・・ベルジィ・・無理?」

「・・・はい。さすがにフレイスの時空魔法ばかりは・・・」


「「はあ・・・」」


やはり、フレイスの時空魔法が一番のネックだった。

フレイスの時を止める能力に対抗する手段は、変わらずサレンの静寂の力のみで、それだけではどうしても勝算がたたず、会議は再び冷え込んでしまった。


 会議室の中で沈黙が続いていると、誰かが会議室のドアをノックした。


「___どちら様ですか?」

「ハッ!南方防衛軍のリドであります!本国からの命令書をお持ちしました!」

「?どうぞ、入ってください」

「ハッ!失礼します!」


ドアを開けて、リドと名乗った兵士はキビキビとした動作で入室し、オーマに命令書を渡して退出していった。


「・・・・・」


命令書を受け取ったオーマは直ぐにそれに目を通す・・・・そして_____」


「・・・・はあ!?」


____変な声が出た。


「どうしたの?団長?」

「まさか、第一貴族から無理難題を言われたとかじゃないよな?」

「フレイスで手が一杯よ、勘弁してよ」

「いや・・・違う・・・いや、そうかも?」

「?歯切れが悪いな。どうした?」

「いや・・・フレイス対策を向こうが用意してくれるみたいだ・・・」


「「・・・・はあ?」」


オーマに続いて、サンダーラッツ一同も変な声が出た_____。

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