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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第六章:凍結の勇者ろうらく作戦
274/377

凍結の勇者ろうらく作戦会議1

 FD921年 4月_____。

 春が訪れ、大陸中心部では過ごし易い暖かな気候がやって来ている。

一方で、大陸南部のサウトリック地方は、この時期になるとすっかり暑くなり、平均気温は35℃を超える。

オーマ達は、雷鼠戦士団の本隊と合流するため、バージアからドネレイム帝国領の最南端にあるグレイパ駐屯地へとやって来たが、この辺りの気候も既に平均気温は30℃を超えていた。

北方遠征軍として、リジェース地方の気候に慣れてしまった雷鼠戦士団にとっては、堪える暑さだろう。

だが、サンダーラッツの幹部達、並びに勇者候補の中で、その事を気にする者は一人も居なかった・・・・。




「本ッッッッ当!!どうすりゃいーのよ!!?」


 ベルジィが仲間に加わって、歓迎会もやって暫く喜んでいたのも束の間、グレイパ駐屯地にやって来て本格的に軍事行動に移行する段階になると、皆はフレイスの脅威を思い出し、そのことで頭が一杯になって暑さを気にする余裕すら無くなっていた。

何だったら、あのフレイスと再戦する羽目になって、恐怖で背筋を凍らせている者もいた。


「はぁ・・・また、あの人と戦わなくてはならないのですね・・・」

「しんどい・・・ってか怖い」

「あの頃でも既に手に負えていなかったってのに、今は・・・何だありゃ?」

「今は、更にとんでもない強さになっていましたね・・・」

「っていうか理不尽だろ?時間なんて止められたら、さすがの私でも何もできないぞ」

「ミクネ、ボコボコにされちゃいましたもんね」

「クソ・・・あんなしっかり負けたのは初めてだ・・・」

「落ち込むな、ミクネ。相手が悪かったんだ」

「いや、それ、あんま慰めになってないぞ、オーマ」

「う・・・すまん」

「それでもミクネは善戦した方だろう。他の面では互角の戦いに持ち込んでフレイスの時空属性を暴いたのだから・・・私なんて殆ど何もできなかった」

「いえ、ジェネリーはフレイスの手の内が殆ど分かっていない状態で戦う羽目になったのですから仕方が無いですよ。私は二人以上にどうにもなりませんでした。体術でも上を行かれて、雷属性対策は完璧でしたし・・・」

「レインにとっては天敵ね」

「誰にとってもだよ」


「「はぁ・・・」」


 グレイパ駐屯地に到着してから休む暇も惜しんで、“第十一回勇者ろうらく作戦会議”と言う名のフレイス対策会議を開いたサンダーラッツ一行だったが、出て来る発言は全てフレイスの異常な強さに対するネガティブな言葉で、会議はすっかり冷え込んでいた。


「唯一の対抗手段はサレンの静寂の力なわけだが・・・」

「んー・・・サレン?ズバリ聞いちゃうけど・・フレイスに勝てる?」

「ズバリ言いますが、無理です」

「即答だな。責めはしないが・・・」

「すいません。でも正直に申し上げて、厳しいですよ。フレイスさんは術式速度も段違いでした。他の魔法ならともかく、源属性魔法だと向こうの方が速いので、普通に戦ったらフレイスさんの時空魔法を封じる前に時を止められてしまいます。・・・フレイスさんがミクネ相手に時空魔法を使用した時の様に、私個人が防御に徹すれば、時空魔法の影響を受けずに済みますので、一対一の戦いに持ち込むことはできますが、それ以外の部分でもこちらの分が悪いので・・・」

「時空魔法の影響下から逃れても勝ち目がない?」

「はい・・・。仮に、事前に誰かに魔法阻害の結界を張っておくという手も一応ありますが・・・」

「あいつは他の信仰魔法も潜在魔法も、おまけに体術も半端じゃないから、時空魔法無しでも一対一は難しいもんな」

「サレン、その結界って集団にはできないの?」

「数人規模ならできますが、維持するのが困難ですし、再発するのに時間が掛かり過ぎて連発できません。それに術式速度も落ちますから・・・」

「実用性が無いってわけか・・・」

「うーん・・・サレンの力でも勝算が立たないとは・・・」

「ッ・・・」


実は自分の強さに自信が有ったサレンだったが、フレイスには敵わないと感じて悔しさを滲ませた。

唯一の対抗手段であるサレンがそんな様子なので、フレイス対策に光明が差すことは無く、やっぱり会議の温度は低いままだった。

 策を練る前にムード事態に敗北感が漂っていたため、ムードメーカーのヴァリネスはこれではいけないと、フレイスについて別の話題を投げかけた。


「他の魔法って言えばさ、フレイスってRANK3の属性は何なのかしら?」

「そう言えば・・・時空属性を持っているなら、重力属性か幻影属性を持っているはずですね」

「・・・まさかベルジィみたいに両方とかないよな?」

「やめてフラン」

「でもフレイスなら可能性が____」

「____考えたくない」


皆がフレイスの才能を恐れて、嫌な想像をしていると、ベルジィがスッと手を上げて発言した。


「フレイスは幻影属性ですよ」


「「_____!?」」


「彼女は私と同じく、幻影属性を持っているはずです。ついでに言えば重力属性は持っていません」

「ベルジィ・・・」

「何故そう言い切れるんだ?」

「先ず重力属性を持っていたのなら、ミクネさんの風魔法に苦戦はしないでしょう。時空魔法という奥の手を明かさずに済んだはずです」

「ああ、確かに・・・重力魔法なら相手を引き付ける事も吹き飛ばすこともできるからな」


 簡潔に説明すると、RANK3の重力属性は標的の人物や一定の範囲に重力を発生させるのは勿論、主に術者を中心に引力や斥力も発生させる事ができる。

STAGE5(発生)までの練度が有れば、どこからでも重力・斥力・引力を発生させられるので、もしそこまでの重力属性魔導士が存在していれば、かなりの脅威だろう。

もし、この力をフレイスが持っていたのなら、ミクネの風魔法を使った攻防一体の戦法も、重力で打ち落とすなり、斥力で引き離すなりして対処でき、奥の手である時空魔法を温存できただろう。


「そして、私はずっと私の幻影魔法や幻惑魔法が、何故フレイスに対してああも効果が薄く簡単に看破されたのかを考えていたのです。魔法や毒に対する耐性が強いだけでは説明が付きませんから」

「なるほど、RANK3以上の属性は耐性を持つことが難しいはずだ。それでもフレイスが幻影属性に対して高い耐性を備えていたのは____」

「____フレイス自身が幻影属性を扱えるからだと言いたいのね?」

「その通りです」


「「・・・・・」」


 魔導士は自分の扱える属性に対して、熟練度を上げる最中で高い耐性を備える事ができる様になる。

フレイスに対して幻影魔法も幻惑魔法も効果時間が短かったのは、これが原因だ。


「____でもそれって結局、ベルジィの幻惑の力でも、フレイスには敵わないってことよね?」

「う・・・まあ、そうですね」

「そうなのですか?一瞬でも誤魔化せる可能性が有るって事では?」

「フレイス相手に一瞬でもスキを作れるなら有益ですよ?」

「いや、もう無理だレイン・・・」

「ほえ?何故です?兄様?」

「奴はもう“見た”・・・」

「あう・・・」


 フレイス程に武術と魔術に長けた経験豊富な者なら、一度見た技は殆ど二度目は通じないだろう。

ベルジィは既にオーマを助けるために、自身の幻影魔法と幻惑魔法を見せてしまっている。

恐らく、もう迎撃手段を用意しているだろう。次はもう通用しないと考えた方がいい。


「で、でも、ほら!逆を言えば、フレイスの幻影魔法には対抗手段が有るという事ですよね!?ね?ベルジィ?」

「そうですね・・・フレイスの幻影属性がどれほどの練度を持っているのかは分からないですが、あの魔力量なら、ドーピングすれば防げるかと・・・」

「ドーピング?」

「どういう事?」

「ああ、そういえば教えていませんでしたね。私の特技の一つです」

「いや、というよりベルジィの魔導士としての力量は殆ど知らない」

「飲み会で聞いた話は、王宮暮らしの事とバージアの潜伏中の小話と・・それと____」

「BL好きのド変態野郎だった話だけですもんね♪」


「「はっ?」」


ユイラの盛大なぶっちゃけに、初耳のシマズとナナリーの目が点になった・・・。


「ちょ、ユイラ!?」

「ユイラ、友人とはいえ、ぶっちゃけ過ぎです」

「そうです。ベルジィが可哀想です」

「そうですよ、ユイラ。私はド変態女です。“野郎”ではありません」


「「そっちかい」」


「アハハハハ♪それは失礼しました、ベルジィ」

「おお・・これは・・・・」

「まあまあ・・フフッ♪」


 ベルジィが入りたての頃はギクシャクしていたが、本々気が合う二人だったのだろう、ベルジィとユイラはバージアからここに来る道中ですっかり親友関係に戻っていた。

新参のベルジィが同僚のユイラと打ち解けている姿を見て、シマズとナナリーも嬉しそうだった。


「はいはい。二人が仲良く変態だってのは分かったから、話を戻すわよ。それでベルジィ?その、ドーピングって何?」

「そうですね・・・会議も進んでいませんし、気分転換に私の変態能力・・・違った、変態の私の能力について説明しましょう」

「“変態”は否定しないんだな・・・」

「それどころか開き直ってネタにして来ましたよ」

「タフな性格しとる」

「好きな物を好きだと胸を張って言えることは、素晴らしいですよ」

「そうだぞ、サレン」

「で、ですから私はBLには興味無いですよ!ミクネぇ!」

「おーい、そこの勇者候補諸君。ベルジィの話を聞きたいのよー?」


「「あう・・・すいません」」


「もう・・・遮って悪かったわね、ベルジィ。話してちょうだい」

「分かりました____」


 こうして、ベルジィは皆の気分転換にと、自身の能力についての解説を始めた_____。


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