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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第五章:幻惑の勇者ろうらく作戦
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ぶちまける者達(1)

 バークランド大戦以降、オーマは再びフレイス・フリューゲル・ゴリアンテと巡り合った。


 再会したフレイスのその容姿は、当時の面影を残しつつ、更に美しい女性になっていた。

再会したフレイスのその人格は、相変わらずの妙な言い回しで好戦的だが、以前より風格が出ていて覇気も強く、騎士道に益々磨きが掛かっていた。

 それらにも驚いたオーマだったが、何より驚いたのはやはりその強さだった。

再会したフレイスのその戦闘力は、当時の近接型の信仰魔法と潜在魔法で強化した体術を組み合わせるという近接戦法を軸に、体力、魔力、肉体速度、反応速度、術式速度と、全てがレベルアップしていた。

 オーマは、フレイスは当時まだ十代であったとはいえ、既に人間の限界値まで磨き抜かれており、伸びしろはもう無いと勝手に思っていた。

フレイスは当時すでに、“人としてこれ以上は無い”と思えるほど強かったからだ。

なので、心のどこかで、再開してもまた何とか対処できるのではないかと判断していた。


 “さすがフレイス!勇者候補の筆頭だ!”______そう思えただろう、あの頃までの強さなら・・・。


 だが、そんなのはただの幻想だったと思い知らされた_____どころではない。

ジェネリーとレインを圧倒した時点でもフレイスにそう思わされたのに、フレイスには更に上が有った。

最早、相手を褒める余裕どころか、その強さを理解する余裕すらない。“そんなバカな!?”状態だった。

あそこから更に上が有るなんて、オーマの想像の範疇を遥かに超えていた。

 そして、その中身を見た感想も、“そんなバカな!?”だった。

RANK4時空属性___。この属性による魔法で、人の過去を覗いたり、時を止めたりする事ができる。

意味不明・・・というより意味を考えることを放棄したい気持ちだった。

オーマは、こんなフレイス・フリューゲル・ゴリアンテを攻略しなくてはならない。



_____どうやって?



 普通に口説く?_____無理だろう。

ここまで因縁がある相手に、一から人間関係を築いて恋愛に発展させるなんて無理が有る。

 そういえば以前、素直に事情を話してみるか?って、言っていた_____無理だろう。

既にフレイスは事情を知っている。その上で、闘志をむき出しにしてやる気満々だ。

 では戦って屈服させるか?_____これは可能性が有る。

フレイスは騎士道を重んじている上に戦闘狂なので、強者に対しては身分や国籍に係わらず一定の敬意を払ってくれる人物だ。バークランドのお国柄、弱肉強食と実力主義に理解がある。

国ではなく、彼女自身を屈服させてなら、傘下に入ってくれる可能性は高い。

ただし____


(だから、どうやって勝つんだよ・・・・・)


 そう、あくまでも“勝てたら”の話だ。それが絶望的なんだろ、って話なのだ。

今のフレイスの姿を見て、オーマは全く勝機を見出せない。勇者候補を四人抱えていながらだ。

それはそうだろう。時間を止められて好き放題されたら、どうにもならない。どうにも出来ない・・・。


「・・・・・」

「黙っていないで何とか言ってくれないか?運命の人よ。やはり私達は巡り合うべくして巡り合った。違うか?」

「フレイス・・・」

「うん?」

「フレイス・・・お前は・・・」

「何だ?運命の人よ?」

「フレイス、お前は_____」


 こんなフレイスに対して、オーマは思いの丈をぶちまけた_____


「____ズルい!!!」


ぶちまけた_____


「・・・・・・・・はあ?」

「そうよ!!チートよ!チート!時間止めるとか何なんのよ!!」


オーマに続いてヴァリネスもぶちまけた_____


「お、おいおい・・・何を言って____」

「___“何を言って”、じゃねぇ!!そっちが何やってくれてんだ!って話なんだよ!!」


そしてフランもぶちまける_____


「は?・・・」

「その通りだ!!物事には程度というものが有るだろう!!」


イワナミさえもぶちまけた_____


「そ、そっちもか・・・」

「こっちもですよ!フレイス!貴方はもっと正々堂々とした方だと思っていました!」


クシナも負けずにぶちまける_____


「い、嫌・・正々堂々やっただろう・・・」

「何処が?弱い者いじめ」


ウェイフィーもチクリとぶちまけた_____


「なっ!?お、お前!よりにもよって弱い者いじめだと!?」

「そうですよ!見損ないました!!」

「・・・・・お前もか・・・ロジ・レンデル」


ロジでさえもぶちまけずにはいられなかった_____もう、ヤケクソだった。


「「チート!チート!チート!チート!」」


「な、何だぁ?」


 そして、何処からか用意したのか、“チートは止めろ!!”、“一般人に人権を!!”と書かれた横断幕を広げ、“チート反対”のハチマキまで巻いて抗議活動を開始した______完全にヤケクソだった。


 「「チート!チート!チート!チート!」」


「あ・・・・・」


「「チート!チート!チート!チート!」」


「・・・・・・・」


「「チート!チート!チート!チート!」」


「う・・・・・」


「「チート!チート!チート!チート!」」


「う・・・さい・・・」


「「チート!チート!チート!チート!」」


「うるさーーーーーーーーい!!」


「「ヒィッ!?」」


 フレイスは遂にブチギレた_____。


「な、何なのだ!貴様らぁ!!せかっくの再開だというのに、戦うどころか駆け引きすらせず騒ぎおってぇ!!そんな真似して恥ずかしくないのかぁ!!?」

「恥ずかしいわよ!!でも、しょうがないじゃない!!あんたチートなんだもん!!」

「そうです!!そっちこそ、そんなチートな事して恥ずかしくないのですか!!?」

「酷い!!」

「我々一般人を虚仮にするのもいい加減にしろ!!」

「時間止める人なんかと真面に勝負できるわけないじゃないですか!!」

「やってられっかよ!!」

「な、なぁ・・・・・」


完全に開き直ってヤケクソになったサンダーラッツに、フレイスは顔を引きつらせた。


「・・・ひ、開き直りおって・・・大体、私を卑怯と罵るが、お前達にも勇者候補は居るだろう!?」

「馬鹿にしないでもらおう!!私達は貴方ほど非常識ではありません!!」

「そうだ!!私達はあくまで、常識の範囲内での非常識だ!!!お前と一緒にすんな!!」

「な、何だ、“常識の範囲内での非常識”って・・・」

「貴方は度が過ぎると言っているのですよ!!兄様達が可哀想です!!」

「そうです!やめてください!」


気が付けば勇者候補の四人もヤケクソになっていた。

 因みにだが、この四人が相手の力を“チートだ!”と思ったのは、これが初めてだった・・・。




 「あ、あはははは・・・・」


 ベルジィはサンダーラッツの様子を見て、何とも言えない表情をしていた。

フレイスが言う様にオーマ達を情けないとも思うが、フレイスの能力を知ってしまったから、“仕方が無いか・・・”とも思い、チート能力を持つはずの勇者候補四人も加わった“チート反対運動”を生暖かく見守っている。




 「「チート!チート!チート!チート!」」


「・・・・・・・」


「「チート!チート!チート!チート!」」


「・・・・・・・」


「「チート!チート!チート!チート!」」


「・・・・ったく」


「「チート!チート!チート!チート!」」


「うるさーーーーーーーーい!!!」


「「ヒィッ!?」」


 フレイスは再びブチギレた_____。


「ハァ、ハァ・・・まったく・・・・______ッ!」

「うっ!?」


いい加減うんざりしたフレイスは、ギッ!とオーマを睨みつけて、このバカげた抗議活動を止めさせた。


「オーマ・・・オーマ・ロブレム・・・・・」

「な、なんだよ・・・」

「なあ、オーマよ・・・頼む、そんな情けない姿を私に見せないでくれ。自分の将来の夫がそんな姿をさらしているのを見るのは耐えられん」


「・・・・・え?」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」


___________________________________________________________________は?



 場の空気が一変した______


「な、なんだって?」

「お、夫ぉ?」

「ど、どどどどどどど・・・・?」

「どういう事ですぅぅう?」

「か、彼女は何を言っているのですか?」

「私が知るか!」


フレイスの“夫”発言で、サンダーラッツ一同は過去一混乱してしまった。

 一方のラヴィーネ・リッターオルデン達は_____


「????????????」

「えーーーーとぉお?」

「ど、どゆ、どういう・・・フ、フフフフフレイス様まままま?」


ラヴィーネ・リッターオルデン達も過去一混乱していた。


 「フ、フレイス様ぁ?わ、私の聞き間違いでしょうか?い、今、その男を“夫”と呼んだ気がしたのですが?」

「その通りだ。聞き間違いでは無いぞ、コレル。私はオーマを夫と呼んだ。運命で結ばれた将来結婚する男なのだ、当たり前だろう?」

「へ?へ?へ?」

「フ、フレイス様・・・オーマを“愛する人”とか、“運命の人”と言っていたのは、気取っていたのではなく本気だったのですか?」

「気取る?何のことだ?私は最初から本気だ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


「「うそぉーーーーーーーーー!!??」」


ラヴィーネ・リッターオルデン達の絶叫が砂漠を照らす夕陽へと昇って行った_____。

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