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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第五章:幻惑の勇者ろうらく作戦
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思い溢れて・・・

 「オルスさん、今日はありがとうございました」


デパートの屋上で暫く夕陽砂漠の景色を眺めていたロジが、オーマへの感謝の言葉をぽつりと呟いた。

 オーマはロジの言葉が作戦上ではなく、本心で感謝を述べている言葉だと察して疑問を抱いた。


「何だ?急にどうした?礼を言うのはむしろこっちだろ?」


 今日してきた事は、あくまでベルジィを探し出すための作戦であって、ロジのためではない。

少なくともオーマの理性ではそうだ。

そのため、礼を言うなら文句ひとつ言わずに作戦を遂行しようとするロジに対して、オーマが上官として感謝する場面だろう。

少なくともオーマの理屈ではそうだ。

 だがオーマは、“理性”や“理屈”ではない部分でロジの感謝の言葉の意味を薄々感じていたが、それを口に出すのは恥ずかしくてロジに聞き返してしまった。


「今日は本当に楽しかったんです。普段、一緒に居るのも十分に楽しいのですが、何と言いうか・・・今日は・・・本当に・・特別に楽しかったです・・・」

「そ、そうか」


薄々感じていた通りだった_____。


「・・・変ですよね?こんな・・男同士で・・・・」

「あ、い、いや、そんなことは無いだろう。少なくとも、俺も今日一日一緒に過ごせて楽しかった」


オーマは恥ずかしくなりながらも、何か言わなくちゃいけないと、何とか言葉をふり絞った。


「あ・・・・」


そのオーマの言葉に、ロジは頬を赤く染めてくれた。その表情に、オーマは一層心をかき乱される羽目になった。


(あー、何を言っているんだ、俺は・・・なんかもう、よく分からなくなってきた・・・・・もう、ロジが嬉しそうだし、それでいいか?何か、可愛いし・・・)


もうオーマの中では、作戦上で言っているのか、作戦上のフリをして本心で言っているのか、自分でも分からなくなっていた_____。






 「う~ん・・・う~ん・・・」

「あ、またヴァリ姉様の熱が上がりました。ハンカチを取り替えます、ウェイフィー」

「ほい・・・ウォーター」


オーマとロジの二人が頬を赤らめて甘酸っぱい会話をしているのを見て、ヴァリネスはいよいよ寝込んでしまっていた・・・。


「な、なんだかなぁ・・・」

「もう副長のことはレインに任せて放っておけ、フラン」

「そうです。それよりサレン?」

「はい。大丈夫ですクシナ。いつでも行けます」


いよいよベルジィを見付け出すチャンスが来るだろうと、ヴァリネス以外のメンバーは警戒を強め、サレンも源属性の魔法術式を展開して準備を始めた____。






 (な、なんでしょう・・・この気持ち・・・嫌だ)


当のベルジィは、やはり盛り上がっている二人の様子を見ていても興奮することは無く、先程より更に不快感を強めていた。


(おかしい・・・別に男同士の絡みが嫌になったわけでもないのに・・・・どうして?この二人・・・オーマさんのあの表情が気に入らない。気に入らないのに目が離せない・・・・)


ベルジィはあの二人の雰囲気が気に入らない事にも、それなのに目が離せない事にも、自分自身で理解が及んでいなかった。


(私はどうしてしまったの?オーマさんは私にとって・・・・・どういう人なの?)


そして、オーマのことをどう思っているのか、自分でも分からなくなっていた・・・。






 その頃、フレイスはロルグ、コレル、ミューラーの三人を連れて街を散策していた。


「思ったより活気があるな」

「はい。小国の街にしてはずいぶん栄えていますね。シルクロードでの交易のおかげでしょう」

「ふん・・・金に意地汚い商人連中を使って栄えたところで、何だというのですか。武力と誇り失くして国の発展は有りません」

「コレル・・・またそんなことを・・・考え方がスパルタ過ぎませんか?」

「事実でしょう?軍事力が無いくせに金だけは持っているから、ドネレイムとココチアの争いに巻き込まれて代理戦争する羽目になっているのでしょう?」

「それスラルバンが悪いのですか?原因は大陸制覇の野心を持つドネレイムとココチアでしょう?」

「いえ、スラルバンが悪いです。周辺国が野心を持って軍備を強化しているというのに、軍備を怠ったのですから。商人使って栄えている以上、他の国の様に“お金が無かったから”という言い訳も通用しません」

「き、厳しいですね・・・」

「世の中はそうでしょう?弱肉強食です。弱いままなら食われるだけです」

「おう・・・」


相変わらず慈悲の無いコレルの発言に、ミューラーも相変わらずのリアクションをしていた。

二人共相変わらずなので、フレイスとロルグの二人も相変わらずスルーしている。


「そろそろ日が暮れますね。フレイス様、仲間と合流するために酒場に向かいますか?」

「ああ、そうだな・・・いや、待て。あの建物は何だ?ずいぶん大きいな」

「バージアデパートですね。フレイス様の仰る通り、この街で一番大きい建物です」

「デパートなら今の時間に見てもあまり意味が無いのでは?」

「ですわね。買い物する場は、人通りの多い時間帯の方が見るべきものが多いと思いますわ」

「一応、屋上は解放しているらしいですが・・・」

「ふむ。なら街を一望できるか?・・・よし、最後に寄って行こう。この街の様子を上から見ておきたい」


「「了解」」


三人はフレイス様の申し出に二つ返事で了解し、一行はデパートの屋上へと向かった____。






 フレイスが向かっているとは知らず、オーマとロジは今も良い雰囲気の中で見つめ合い、ベルジィはその光景に不満を感じるままだった。


「あ、あの・・・オルスさん」

「うん?」

「きょ、今日は楽しかったですね」

「ああ。・・・って、ハハ、また同じ事言っているぞ」

「ハハ・・・そうですね」

「ハハハハ・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「あ、あの・・・」

「うん?」

「今日は楽しかったですよね?」

「ああ。・・・いや、またじゃないか、一体____」

「___なら、またしませんか?」

「え?」

「こ、今度はその・・“ちゃんとしたヤツ”で・・・」

「え、えっと・・・」




_____ダメ!!


 自分でも、どうしようもないほど思いが溢れてしまい、ベルジィは心の中で叫んだ。

もう、ベルジィは考えるのを止めていた。

もう、オーマという男が、他の誰か・・・いや、“自分以外の誰か”と楽しそうにしているのが、嫌で嫌で仕方が無いのだ。

もう、ベルジィはそれを受け入れた。

認めたからこそ、溢れる思いは止まらなかった____




「だ、ダメですか?」

「いや、お、俺も楽しかったから・・ダメって事は・・・」

「なら、いいですか?」

「・・・・・」


 ロジの誘いにオーマは言葉を詰まらせる。

次また行くとしたら、それはもう、“作戦”ではない。


_____じゃー、今日一日のデートは完全に“作戦”と呼べるものだったのだろうか?


心の中でそう疑問を持つと、オーマは否定できない。ロジとのデートは楽しかった。

今日のデートが作戦と呼べないのなら、次回に作戦じゃないデートするのも変わらないのでは?

ならば、ロジからの誘いを断る理由は無い・・・・それとも断りたくないから、こう考えたのだろうか?


(・・・もう、考えるのは止めよう。今日は楽しかった。それが答えでいいじゃないか)


困惑し続けて来たオーマは、もう考えることを放棄して、今の自分の気持ちを答えにした。


「そうだな。また二人で出かけようか?」




____やめて




「本当ですか!?いいんですか!?」




____よくない




「ああ、今日は楽しかったからな、また出かけよう」




____やめて




「はい♪」


ロジがニッコリと笑うと、オーマもそれに釣られて微笑んだ。




_______もう・・・無理




「じゃー・・・」

「はい」

「じゃー、今日は・・・」

「はい」

「今日は・・・ここまでか?」

「ここまでにしますか?」

「し、しないのか?」

「しなくても構いません」

「・・・・・」

「・・・・・」




____ギリィイイ!


 見つめ合う二人の空間に、中年女性の歯ぎしりの音が届く。だが二人には、全く耳に入っていなかった。

その事に、中年女性は更にギリギリと歯を食い込ませた。




「ここまでにしなかったら・・・どうするんだ?もう、日も暮れる・・・」

「そうですね。できることは限られますね」

「そ、それって・・・」

「だから・・・それをするのか?しないのか?ではないでしょうか・・・」


ロジは瞳を潤ませて、オーマを見上げていた_____。




____ダメェエエエエエエ!!




「・・・・・」


ロジのその表情にオーマの思考は停止して、体は吸い込まれるようにロジの肩に手を置いた_____瞬間、ベルジィの中で限界が来た。


「オ____」

「オーマ・ロブレム!!」


「「_____!!??」」


だが、ベルジィがオーマの名を叫ぶ前に、誰かがオーマの名を叫んだ。

 オーマとロジ、ベルジィ、サンダーラッツのメンバー、その場に居る全員が声のした方を見ると、そこには商人服を着ていながら、神話に出て来るヴァルキリーの様に美しく覇気のあるオーラを纏った女性が、オーマを睨んで立っていた_____。

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