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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第五章:幻惑の勇者ろうらく作戦
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らぶらぶ・タクティクス・オペレーション(3)

 しばらく支払いで揉めていたオーマとロジだったが、結局は割り勘という形で治めて店を出た。

それからウィンドショップを楽しむため、二人で商業区域の商店街へと足を運んだ_____。




 今日の商店街は過ごし易い天候のおかげで、いつも以上に人通りが激しくなっている。


「今日はまたすごい人だな・・・」

「買い物をする人も多いですし、じっくり見て回るってワケには____」


____ドンッ!


「____っと!?」

「おっと・・・」


激しい人通りの中で、人と接触したロジがよろけて転びそうになると、オーマは咄嗟に肩に手を回して、よろけたロジを受け止めた。




 「ぁあーーーーーーーー!!らぶらぶ・タクティクス・オペレーションNo00915ォオオオオ!!」

「あう・・・また、らぶらぶ・タクティクス・オペレーション・・・」

「出やがったな・・・」

「ふ、副長・・・何度も申しておりますが____」

「___分かっているわよ!!でも気になるんだもんッ!!視界に入って来るんだもんッ!!羨ましいィ!!チクショーがぁ!!・・私もアレ、やりたいのォ~~~!!」

「ハ、ハァ・・・」

「うざい・・・ウザすぎる・・・らぶらぶ・タクティクス・オペレーション・・・」

「・・・ちなみにどっち側をやりたのですか?」

「んなこと聞いてどうすんだよ、イワ」

「いや、ただの好奇心だ。深い意味は無い。強いて言うなら、吐き出させれば、少しは副長のストレス発散になるかなと思ったくらいだ」

「なるほど」

「ただ黙らせるよりはマシかも、ですね。それで副長、どっちですか?受け止める側?受け止めてもらう側?」

「両方!!」


「「・・・・・」」


ヴァリネスはズバーーーン!!という効果音と共に胸を張って答えた。

立派な効果音が鳴っていたが、目が血走っていて涎も出ていてカッコ良くはなかった・・・・というよりキモかった。

メンバーは皆ドン引きしていて、“何で聞いちゃったんだろう?”と後悔していた。


「____さ、行きましょう」

「そうだな」

「いつベルジィが現れるか分からない」

「そうそう。俺達任務中だしな」


そして皆で無かった事にすると決めた。


「何よぉ!!あんた達が答えろって言ったんでしょーーがぁあ!!」

「分かった分かった」

「宥めるんじゃないわよ!ウェイフィー!馬鹿にしてるわね!!」

「別に馬鹿にしてない」

「もう行きましょう、副長」

「そうです。人が多いから二人を見失ってしまうかもしれません」

「キィーーーーーーーー!!」


ヴァリネスの叫びが、サンダーラッツのメンバーにだけ(ミクネの魔法のおかげで)響き渡った_____。





 「____さて、これからどうするか」

「そうですね、ここからはアドリブですから迷いますね」

「やっぱ、ナナリーとシマズのアドバイス通りで行くか?」

「はい♪」


 何故この作戦の肝であるはずのデートプランがアドリブになってしまったのか?

オーマに言い訳させてあげるとすれば、それは今回の作戦にヴァリネスが乗り気ではなかったからだ。

 作戦会議で、BL好きのベルジィを釣り上げるためムードが出るデートプランを考えようとなったとき、一番の頼りであるヴァリネスが、「ロジくんと他の人間がイチャつくプランを考えるなんて世界が滅んでもイヤッ!!」____と、頑なに意見を出さなかった。

 仕方なしに、ヴァリネスを除くメンバーで考えようとなったわけだが、他のメンバーの殆どがオーマを素人童貞とイジって来てはいたものの、実はクシナ、ロジ、イワナミ、ウェイフィー、サレン、ミクネ、レイン、ジェネリーの恋愛経験も、オーマのことが言えるほど達者なわけではなく、大差が無かったのである。

そのため、良いデートプランが出せずに苦戦したのだ。

唯一、ぶっちぎりで経験豊富なのはフランだったが、フランの提示したデートはオーマでは到底真似できない内容な上、女性陣からも不評だったので却下となった。

 そこでサンダーラッツの一同は、フランに負けず劣らず経験豊富な上でまともなナナリーや、既婚者であるシマズと連絡を取って、二人に事情を話してアドバイスを求めたのだ。

二人はバージアの街に詳しくないながらも、

「現地のデートスポットを調べて、何かを鑑賞できる場所に行くと良いと思います」

「そういう場所なら、それをネタに自然と会話ができるから、話題に困らず盛り上がれます」

「いくつかピックアップして、後は二人で決めるといいのでは?」

というアドバイスをもらったのだった_____。




「このバージアでの定番のデートスポットだと、美術館と水族館が在るらしいぞ。ジデルはどっちが好みだ?」

「そうなんですね・・・ボクは芸術は疎いのであまり興味を持てませんが、水族館には興味があります」

「お?俺もだ。芸術品は帝都で第一貴族に呼び出される度に見せつけられていて、見ているとトラウマが蘇って来て嫌な気分になるから好きじゃない」

「苦労していますもんね、団・・・オルスさんは」

「はは・・・じゃー次は水族館にでも行ってみるか?」

「はい♪」


ロジがニコッと笑うとオーマも心が弾んだ。

何だか、作戦を出しにして、ロジと本当にデートしている様な気持ちなっていた。

そうしてオーマとロジは、お互いに割とノリノリでデートを続けるのだった____。






 オーマ達が作戦を実行している中、商人に扮したフレイス率いるラヴィーネ・リッターオルデンの斥候部隊を乗せたキャラバンがバージアの街の入り口に到着した_____。


「付きましたよ」

「ありがとう。協力に感謝する」

「構わないですよ。ココチア連邦議連からの命令ですし、お代も貰っていますから」

「そうか、ではな____」


 フレイスは、商人と荷台でそんな会話をした後、他のメンバーと共に馬車から降りる。


「ここがバージアか・・・」

「海から遠いせいなのか、ココチアより空気が乾燥しているように感じますね。肌がカサカサだ・・・保湿クリームが欲しいですね」

「何を軟弱な事を言っていますの?ミューラー。男でしょ?」

「いや、私は乾燥肌だから辛いのですよ。それにコレルにもあった方が良いでしょう?」

「____無用。私は貴様の様に軟弱ではない」

「う・・け、けど、フレイス様の美しさが損なわれない為にも必要だろう?」

「ッ!?・・・どんな事が有ってもフレイス様の美しさが損なわれる事など無い!貴様、フレイス様を侮辱するのか?今すぐ溺死させてやろうか?」

「そ、そんなつもりは無いですよ!まったく・・・フレイス様と戦争のことになると、ただでさえ過激な性格が二乗されるんだから・・・」

「ふん・・・フレイス様のことを思えば当然だ」

「お、おう・・・」


ミューラーは、コレルの好戦的な性格だけでなくフレイスに対する溢れんばかりの愛情にも、ドン引いていた。

 この、ミューラーが愚痴をこぼしてコレルが棘を刺し、最終的にコレルの性格にミューラーがドン引きする____という流れは、ラヴィーネ・リッターオルデン幹部たちの日常のやり取りなので、ロルグもフレイスも気にする事はなかった。


「フレイス様、言われた通り商人達からバージアの街の地図を手に入れました」

「ご苦労だ、ロルグ」


 コレルとミューラーのやり取りは捨て置いて、ロルグは副団長アーグレイの代わりにフレイスのサポートを務める。

これもいつもの事だ。

フレイスが少数で行動するときは、アーグレイに兵を任せてロルグを供に連れて行き、ロルグがアーグレイに代わりフレイスの参謀役を務めている。


「これから如何いたしますか?この街は軍事区域、商業区域、居住・農村区域に分かれているようですが・・・」

「変装しているとはいえ、16人での行動は怪しまれるだろう。予定通り四人一組で別行動だ。先ずは街の中心部である商業区域を見て回ろう。夕方に酒場で合流だ」

「分かりました」


ロルグが、“聞いていたな?行け!____”とでも言う様に、ラヴィーネ・リッターオルデンの視暗弓隊のメンバーに顔を向けて顎をしゃくる____


「「_____!」」


そのロルグの仕草だけで、視暗弓隊から選抜された小隊はパラパラと通行人に紛れて街に同化していった。


「よし。私達も行くぞ」


「「了解____」」


それからフレイスの一言で、ロルグ、コレル、ミューラーの三人もフレイスの後に続き、街に潜り込んで行った_____。

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