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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第五章:幻惑の勇者ろうらく作戦
257/378

らぶらぶ・タクティクス・オペレーション(1)

 FD921年3月中旬____。

サウトリック地方の気候はすっかり温かくなって、ここバージアの街を歩く人々はストールを取って肌を露出する人ばかりになる。

4月に入れば日差しが強くなって肌が焼けるので、この3月中旬がサウトリック地方で一番過ごし易い時期と言えるだろう。

そんな心地良い気候が続いているからだろう、人々は活気づいており、街は賑やかになっていた。

 この日、ベルジィもカフェで一人浮かれていたが、その理由は他の人々と違って、心地の良い気候のおかげという訳ではなかった_____。



(ま、まだかしら・・・)


 ベルジィはコーヒーの入ったカップに口を付けながら、周囲に怪しまれない様に目だけでチラチラと辺りを見回し、待ち人であるオーマが来ていないかを確認している。

待ち合わせをしているのなら堂々と待てばよいのだろうが、ベルジィ自身がオーマと待ち合わせをしている訳ではないので、こんな様子だ。

 オーマを見極めようと、ベルジィがオーマを誘って待ち合わせているわけではなく、オーマには内緒でベルジィは一人でオーマを待ち伏せていた。

なので、ベルジィは今日オーマがこの店に来ることを知っているが、オーマはここにベルジィが来ている事を知らない。

自身の姿も幻惑の力で変えており、今はソノアでもジュネッサでもノワールでもない、ぽっちゃりとした中年女性の姿をしている。

 何故こんな姿でオーマを待ち伏せているのかと言えば、その理由は3日前に遡る_____。






 3日前、ノワールの部屋にて____。


「ジデルさんがオルスさんに告白したぁあ!?」

「はい!そうなんです♪もう、ヤバくないですか!?」


 いつもの様にソノア・エリクシールに寄るついでにノワールの部屋に遊びに来ていたラシラ(ユイラ)だったが、この日の二人の会話はいつもと違っていた。

いつもは二人でBL本の話題で盛り上がるのだが、この日はラシラの所属する傭兵団の団長と雇い主の職員との恋のうわさで盛り上がっていた。

そして、オル×ジデを推奨しているノワール(ベルジィ)は、この話にしっかり食い付いていた。


「それで、何と、今度二人でデートするそうですよ♪」

「デート!?」

「はい♪ジデルさんがオルス団長を誘ったんですよ!顔を真っ赤にしながら、服の裾を掴んで・・・こう、如何にも、“勇気をふり絞っています!”みたいな感じで!!」

「ゴ、ゴクッ・・・そ、それで、オルスさんは何と?」

「照れくさそうに顔を赤くして、“ま、まあ・・・別に一緒に出掛けるくらいなら____”だって!」

「キャーーーー!!」


_____ホモォオオオオオオオオオオオ!!


  ノワールは気心知れた相手の前なので、躊躇することなく腐のオーラを開放した。

そうやって興奮していたので、ラシラがどんな表情で見ていたかは分からなかった。


「そこでノワール!一緒に二人のデートを覗きに行きませんかッ!?」

「ええ!?で、でも、さすがに不謹慎では____」


____などと言ってみるものの、内心では興味津々だった。


「いえいえ、どうせ二人だけの世界を作っているでしょうからバレませんって!デートの待ち合わせも、3日後の朝10時にカフェで、ってところまで掴んでます!」

「ちゃ、ちゃっかりしていますね、ラシラ・・・」

「抜かりが無いと言ってほしいです」


この場合はどっちでも一緒だろう____などと思いながら、この時のノワールは苦笑いで済ませて、見に行くのを躊躇していた。

 だが、それからずっとこの事が頭から離れず、結局は居ても立っても居られなくなって、一人でオル×ジデのデートを覗きに来たのである______。






 ベルジィがユイラの知らない所で待ち伏せること数分、ジデル(ロジ)が店にやって来た。


「いらっしゃいませー♪」

「あ、カフェオレを一つ・・・後、いちごパフェも」

「かしこまりましたー♪」


 店に来たロジが席に座って注文をする。

ベルジィは気配を殺しつつ、その様子を頭のテッペンからつま先まで眺める・・・。

 ロジはいつもの商人服ではなく、白くきれいな布地に白い刺しゅうがされた服を着ていて、爽やかでしっとりとした色気を出しつつ、清楚なイメージも保っている。


(ほほー・・・気合が入っているわね、ロジさん。肌も髪質もいつもより良いわ。コンディションをちゃんと整えている・・・)


 そういえばと、ユイラがノワールの家に来た帰りに、ソノア・エリクシールでいつもより高級で高品質な洗髪剤や化粧水を買って帰っていたのを思い出す・・・。


(もしかして今日のために?・・クフフフフ♪)


 中性的な顔立ちに良質な髪と肌、しっとりとした色気も持ちつつ清楚な雰囲気も感じるその姿は、胸板を見て初めて“もしかして男か?”となるくらいで、パッと見では女性と間違うほどだ。

そして何より、美しい・・・・。


(仕上がりはバッチリね!ロジさん!)


 ロジの姿を見て何故かベルジィがグッと小さくガッツポーズをしていた_____。




 「おーい、ジデル」

「あ、オルスさん♪」

「___ッ!」


ベルジィがロジの姿を見て期待値を高めていると、オーマもカフェに到着した。


(ほほ~う・・・)


 ベルジィは、今度はオーマの姿をじっくりと観察する。


(いつものゴツイ鋼鎧じゃない。特別お洒落ってわけじゃないし、派手さも無い服・・・。けど、身綺麗で髭もきれいに沿っているし清潔感がある・・・いいでしょう!!)


オーマの年相応な色合いで清潔感のある服装は、“気合を入れたわけではないが、相手に失礼の無いようにしました”といって感じで、“無難”とも表現できるものだったが、それがむしろベルジィにとってはポイントが高かった。

男性からの誘いでありながら、“デート”だと理解している服装だったからだ。

ベルジィには、このオーマの意識だけでも十分満足なポイントだった。


(___ッ!!っと・・・ふぅ・・危うく例のオーラが出るところでした。姿を変えたとはいえ、怪しまれる可能性が有りますからね)


 ベルジィはサンダーラッツの皆に幻惑を仕掛けたので、もちろん彼らが自分の放つ“腐のオーラ”を警戒している事も知っている。姿がいつもの三人と違うとはいえ、抑えた方が良いだろうというのは理解している。そのため、緊急用に気配を消せる特別な隠術魔法薬も一本持参している。

だが何より、こんな事で二人のデートの邪魔をしてはいけない・・・。

 ベルジィは、自分から放たれるオーラを二人のために必死に抑え込み、二人のデートの行方を見守るのだった・・・。


______ホモォオオオオオオオオオオオ!!


(あ、ユイラ・・・)


 ベルジィが自身の欲望を抑えている中、離れた席でユイラは抑えられずに一人悶絶していた。

ベルジィから見ればモロバレだったが、ロジに気付かれていないのが幸いだった。




 ベルジィとユイラの二人が、ロジとオーマのデートをそんな風に見守っている一方で、二人とは違って禍々しいオーラを放っている者と、それに戸惑う一団も居た_____。



 「殺す・・・・・殺す・・・殺す殺す、ころすころす・・・コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス_____!!!」

「____って、落ち着いてください!副長!!」

「離せぇ!!イワぁ!!あのクソ団長を今すぐ殺さないと____!!」

「だ、ダメですってば!!」

「くわぁあああああーーーーーー!!!」


 ヴァリネスが一人、凄まじい殺気を放ちながらドス黒いオーラを纏っている。

幸い、ミクネとレインの二人が風属性の隠蔽魔法を連結魔法で強化し発動しているため、姿も気配も音も匂いも完全に消すことができているので周囲には気付かれずに済んでいるが、一緒に居るサンダーラッツの面々は気が気ではなかった。


 「副長、あれは作戦。作戦です」

「そうだぜ、会議で決まったじゃんか。落ち着いてくれよ・・・」

「そうよ!!あれは作戦!!私がロジくんとイチャイチャするための作戦!!らぶらぶ・タクティクス・オペレーションよ!!」

「だ、だせぇ!!何だ!?その作戦名!??」

「ら、らぶらぶ・・・?」

「団長よりセンス無い・・・」

「はぁ・・・・」


そんな訳で、サンダーラッツの他の面々は、荒ぶる人外に呆れる・・・いや、怒るヴァリネスを必死に宥めていた・・・。


 こうして、約一名この作戦に発狂している人物がいるが、サンダーラッツによるベルジィを見つけ出すための作戦が実行されるのだった____。

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