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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第五章:幻惑の勇者ろうらく作戦
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幻惑の勇者ろうらく作戦会議3(2)

 「____クソッ!ダメだ!」


 クシナから意見が出た後も、その案のリスクの高さから、他の案が無いかを検討していたサンダーラッツ一同。

だが、深夜になって日を跨いでも、クシナ以上の意見が出ることはなかった。

長間会議を続け、意見を出し続けた事もあって、休息は挟んでいたものの、一同には疲労が見え始めている。

それと良案が出ない事も重なって、苛立ちや諦めといったネガティブな空気が漂って来てもいた・・・。


「やっぱり、クシナの案でいいんじゃね?」

「でも、その後の事を考えると____」

「____その後のことはその後のことでいいだろ?案が出ないなら、一か八かやってみるしかないだろ」

「その決断は早すぎます。会議を終わらせたいからって、いい加減な事言わないでください。フラン」

「いい加減じゃねーよ。クシナの方こそ苛立って決めつけて来てんだろ?」

「そんな事!____」

「あー・・なんか疲れて来たぞ・・・寝ていいか?」

「ダメですよ、ミクネさん。しっかり考えましょ?」

「んな事言ってもなぁ・・だったらサレン、いい案は無いか?」

「それは・・・正直ありません」

「だろ?なら、もう寝ちまおーぜ」

「ダメですよ」

「ちぇ・・・お利口さんだな」

「うーん・・・良い意見が出ない・・・というより、意見そのものが出なくなって来ていますね・・・」

「そうだな・・・」

「“そうだな・・・”ではありませんよ、ご主人様。ご主人様の所為ですよ?」

「はあ!?な、何故だ!?」

「誰かが意見を言う度に、ご主人様が険しい表情で詰めるから、意見を出しづらくなっています」

「そ、そんなつもりは・・・でも、それで言ったらお前の言い方だって、人を小馬鹿にする様な言い方になっているぞ」

「ええ!?そ、そんな事ありませんよ!適当な事言わないでください!ご主人様!」

「適当じゃない!本当だ!」

「そんなはず!!____」

「だーーー!!もう!うっさいわね!!」

「ちょ・・・おい、副長」


話し合いが一向に良い方向へと進まず、全員に疲労とストレスが出て来くると、お互いが文句を言って苛立ちをぶつけ、小競り合いが出始めた。

 今までもこんな風に会議が凍る場面は何度もあった。

だが今回は、ろうらく作戦や反乱計画と、今までに無い大きなものを背負っていることに加え、今までのろうらく作戦の中で一番に全く進展して行かないという現状もあって、それらのプレッシャーや焦りが相当なモノになっている。

更にフレイスのとも近い内に戦う羽目になるかと考えると、皆は気が気ではなかった。

 この雰囲気に危機感を抱いたオーマは、団長として皆を諫めようとした。


「お前達、冷静になってくれ。互いを罵り合っても事態は好転しない」

「んな事ぁ分かってんだよ!けど団長____」

「何ですか!!フラン!団長に向かって、その口の利き方!止めなさい!!」

「ぁあん?クシナ、なんか言ったかよ?」

「言いましたよ?ついに耳までおかしくなりましたか?このバカは?」

「んだとぉ!?」

「二人共、うざい」

「そうだ。落ち着け二人共」

「なっ!?わ、私はフランを窘めようと_____」

「うるさい。騒いだら一緒」

「な!?ウェイフィー・・・」

(不味いな・・・逆効果だった・・・)


皆はオーマの想像以上にストレスと溜めていたのか、オーマの言葉は皆の口喧嘩に拍車を掛ける結果になってしまった・・・。


「だいたい、この会議だって団長が招集したんだろ?なあ、団長?なら、ある程度の情報や対策を用意できなかったのか?」

「それは・・無理だ。伝言が届いたのは今日で、緊急だったんだ」


半分八当たりの様なフランの言葉に、オーマは若干イラッと来たが、ヴァリネスの抑えが利かなくなっている今は、自分が抑えるべきだと冷静に受け流した。


「とにかく、皆抑えてくれ、怒りに任せてものを言っても良くない事は分かっているだろう?」

「そうですよ、皆さん」


 皆が苛立ちを見せる中で一人、冷静で穏やかなままだったロジが、オーマの自制して皆を説得する姿を見て加勢に入って来た。

普段から皆に思いやりを見せているロジの言葉は誰も無視できない様で、ロジが説得に加わると、皆の表情が変わり、留飲を下げ始めた。


「そりゃー分かってんだけどさぁ・・」

「でも、団長だってミクネのときにブチ切れてた」

「それは詫びただろ?な?ウェイフィー」

「ボクからもお願いです。ウェイフィーさん」

「う・・・ゴメン。言い過ぎた」

「フランも、さっきのは団長への八つ当たりでしたよね?」

「わ、分かったよ・・・そんな目で見ないでくれ、ロジ・・・申しわけない団長。苛立っていたとはいえ、部下の俺が取っていい態度じゃなかった」

「ああ、治まってくれたのなら、もういい」

「ちぇ・・・ダサかったな・・さっきの俺」

「まあ、フランはいつもダサいですが」

「んだぁあ!?蒸し返すのかよ!クシナ!」

「いいえ、今のはお詫びのジョークですよ♪」

「___たく、相変わらずジョークのセンスがねーなー」

「フフフ♪・・そうですね」


オーマとロジが賢明に説得したおかげで、皆の苛立ちが治まる。

そして、クシナとフランのいつもの軽口が出ると、ムードはいつものサンダーラッツのものへと戻った。


「ありがとう、ロジ。助かったよ」


 オーマはこの皆がストレスを溜めている中で一人、ずっと懸命にオーマの味方をしてくれたロジに感謝の言葉を送った。

仲間内で言い争いが起きたとき、いつも賢明で穏やかでいられるロジの人間性は、オーマの助けになってくれている。

オーマはロジという存在の有難味を再度実感した。


「気になさらないでください、団長。ボクにとって団長は恩人ですから、どこまでだって付いて行きます。お役に立てることのなら何でも言ってください」

「ロジ・・・」

「団長・・・」


感謝を伝えるオーマと、恩を伝えるロジの間に、何やら良い雰囲気・・人によっては“こいつらデキてんのか?”という雰囲気が漂う・・・。

そして、その空気が漂った時、オーマ達に現状を打破する光が差し込んだ____


_____ホモォオオオオオオオオオオオ!!


「「____!?」」


 突如として表れた禍々しい気配に、一同は即座に反応し、警戒する。

その警戒心の中には、僅かながらに歓喜も含まれていた。

_____覚えのある気配だ。

ベルジィに関係していると思われるこの気配は、気配こそ恐ろしいものだが、ベルジィを捜しだすヒントにもなるため、一同は警戒しつつも現状を打破する光明が差し込んだ様な気持ちだった。


「なあ、皆?」

「うん。この気配、覚えている」

「いつかの気配だ」

「でも何で?近くにベルジィが居る?」

「見張られてんのか!?」

「ミクネ!生物探知と魔力探知の魔法だ!可能な限りの範囲で調べてくれ!」

「分かった!」

「サレンも準備をしておいてくれ!」

「はい!」


 オーマの指示を受けると、ミクネとサレンが魔法術式を展開する。

サレンが源属性魔法を準備している中で、ミクネは探知の風を周囲3キロメートルまで送り、その範囲の動くモノ全てと、その魔力を調べる・・・。


「誰もいない・・・」

「そんなバカな!?」

「ちゃんと調べたのですか!?」

「本当だって!私の腕を疑ってんのか!?レイン!?」

「い、いえ、そういうわけじゃないのですが・・・」

「でも、だったら今の気配は_____」

「____あのー・・・すいません。私です・・・」


「「はあ?」」


皆が騒ぐ中で、ユイラが申し訳なさそうに手を上げて、そう言った_____。

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