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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第五章:幻惑の勇者ろうらく作戦
251/377

サンダーラッツ意識調査(4)

 ヴァリネス・イザイアから聴取_____。


「カワイイ男の子よ!!」

「・・・・・」

「帝国も魔王もぶっ倒して・・・ぶっ倒してもらって、そうして築いた地位に胡坐をかいて、若くてカワイイ男の子たちを囲って生きるのよ!!」

「・・・・・」

「目指せハーレム!!」

「・・・・・」


ヴァリネスに幻惑を仕掛けて、オーマに付いて行く理由を問うたベルジィ。

返って来たヴァリネスからの答えは、今までで一番くだらないものだった・・・・。


(フラン以上の人物が居ましたか・・・・まあ、私も人のこと言える人間では・・・・いや、さすがにこの人には言えますね・・・)


 ベルジィも、自身は欲望(BL)に忠実な方だと自負しているが、さすがに魔王の問題や帝国の問題など、世の命運を左右するときにまで欲望を持ち込むことはしない。

だがヴァリネスは、それらの問題に加えて、オーマの抹殺という身近な人間の問題も絡んでいるというのに、自分の欲望に忠実だった。

サンダーラッツの隊長達からヴァリネスの話を聞くと、“無敵な人”という扱いがされているとベルジィは感じていたが、今その理由が何となく分かってしまった。


(・・・なんだか力が抜けてしまいました・・・アホらしいです)


 ヴァリネスと会話を始めたベルジィは、フランからの話を聞いたとき以上にうんざりしてしまった。

とはいえ、ヴァリネスはサンダーラッツ幹部の中で一番オーマと付き合いが長い人物だ。

ならばやはり、この人物からもオーマの人物評を聞いておきたい。

そういう訳で、ベルジィは会話を切り上げたくなる気持ちを堪えて、何とか会話の軌道を修正して、オーマのことを聞き出すのだった_____。



 「____まあ、ここまで来ると腐れ縁ね。軍学校の頃から付きまとっていたから、もう十年以上だもん。十年以上も命を懸けた戦場で苦楽を共にしていたらねえ・・・」

「“付きまとっていた”というのは、どういう意味ですか?」

「そのままの意味よ。好きだったから」

「え!?す、好き!?・・・こ、恋をしていると?」

「恋ってわけじゃないかも・・・軍学校に入ったときに同期で一番イイ男はとりあえず口説くつもりだったから・・・あいつも若い頃は結構可愛かったのよ」

「と、とりあえず・・・」


この一言で、ベルジィの人生において、ヴァリネスが最も軽薄で欲望に忠実な人間となった・・・。


「それでアプローチしていたんだけど、ことごとくスルーされてね。当時のあいつは今より輪をかけてクソ真面目だったから、デートに誘っても“勉強や鍛錬をサボる気は無い”って断られていたの」

「そ、それは・・まあ、軍学校に入ったら皆そうじゃないですか?卒業しないと職に就けませんし、鍛錬を怠ると戦場で命を落とすことになりますし・・・」

「そお?べつに少しくらいなら、いいじゃない?」

「・・・ヴァリネスさんは何のために軍人に成ろうと思ったのですか?」

「男を漁るため」

「ああ・・・・そうですか・・・」


ヴァリネスは恥じることなくサクッと答えた。

どうやらヴァリネスはその当時からヴァリネスだったようだ・・・。

ベルジィは、ヴァリネスとの付き合いは短いはずなのに、“ああ・・らしいなぁ”と思ってしまった。


「は、話の腰を折ってすいませんでした・・・もう聞きませんので続けてください」

「そう?えーと・・んで、軍学校を卒業した後も、同じ兵団に入団して付きまとっていたんだけど、軍に入ってからのあいつは更に無鉄砲になったね・・・世のため人のため国のため・・騎士道だかなんだか知らないけど、自己犠牲の精神が強くて突っ走っていたの。もう、危なかっしくて見てらんなかったわ・・・で、あいつのそんな態度が気に食わなくなって来て・・・“こいつを死なせるのは何かムカつく”って思って付きまとっていたら、一緒に無茶する羽目になって、デネファーさんや団員達に“命知らずの突撃コンビ”なんて言われるようになったのよ。冗談じゃないわよ。私はメチャメチャ命が欲しいっての!ついでに言えば男も欲しいっての!!」

「は、はぁ・・・」

「まあ、要は当時のあいつは、本当に目的意識が強すぎて周りが見えていない奴だったのよ。だから指揮官としては未熟って評価だったわ。だから、あいつが第一貴族に抹殺されそうになって、帝国の本当の顔を知って落ち込んでいた時は、可哀想と思う気持ちもあったけど、それ以上に良かったと思っていたわ」

「良かった?」

「結果として成長したからね。周りも自分も客観的に見れるようになったわ」

「指揮官として成長したのですね」

「そうね。あそこで死んでいたり、生き残っても腐ったままだったりしたら意味が無いから、結果論でしかないけど・・・でも、そんな訳で、今の団長はそこそこやる奴よ。盲目的に帝国に従っていた頃と違って、自立した目的意識もあるし・・・“こいつに最後まで付き合ってやろう”ってくらいには思っているわ」

「そうですか・・・・」


 ベルジィは、最初はヴァリネスから話を聞くのが面倒だったが、ヴァリネスがオーマを指揮官として評価している発言が聞けると、やはり話を聞けて良かったと思った。

“オーマを見極めるため”という理由が邪魔して、オーマが部下から悪く言われていない事に安心し、オーマが褒められると嬉しくなっている自分を理解できないまま・・・。

 そしてその後は、サンダーラッツの結成時に雷鼠戦士団という名前について愚痴っていたとか、素人童貞である事を気にしているなどといった趣味嗜好の話をヴァリネスからブツブツと聞かされてから聴取を終えた。






 最後のサンダーラッツ幹部のヴァリネスから聴取を終えたその日の夜____。


「何だかんだで部下からの評判は良かった・・・これは評価できるわ」


ベルジィは、サンダーラッツ幹部たちとの会話を思い返しながら、オーマという人物に高評価を付けていた。

 ベルジィが個人的に高評価できた点は、“何だかんだ”という点だ。

サンダーラッツ幹部から話を聞いた時、全員が諸手を挙げてオーマの全てを認めているわけではなく、オーマの嫌な部分や、弱点といったネガティブな部分にも考慮した上で、皆がオーマを慕って短所となる部分をフォローするつもりでいた。

 付け加えて、そういった短所の部分を指摘するのに、彼らはまるで躊躇が無かった。

 ベルジィに幻惑を掛けられているとはいえ、普通は言いたくない事や口にしてはいけないと感じている事については、口を開くのに躊躇するアクションが出るものだ。

だがサンダーラッツ幹部たちからは、それが無かった。

恐らく、普段から団長であるオーマに対して、自分の意見を言うときや、オーマの悪い部分を指摘するときに躊躇していないのだろう。オーマが部下達と作った兵団内の雰囲気が分かるというものだ。

節度は有るけど遠慮は無い・・・そういう空気なのだろう。

下からの意見に耳を貸す人物ならば、指揮官としては勿論、人の上に立てるとベルジィは評価できた。


(それに反乱軍には、すでにベルヘラの領主や、ゴレストの団長とオンデールの団長も加わっている・・・)


彼等ならば、反乱軍のリーダーになるオーマの担ぎ手としては十分だろう。

それに、もしオーマが傲慢になって独裁を始めたとしても、今の帝国に反抗する気骨を持つ者達だ。毅然とした態度でオーマの暴走を止めるだろう。

 オーマ自身の人としての器、そのオーマをリーダーとして担ぎ上げる者達、反乱軍の態勢は万全だろう。

これに“数”が加われば、ドネレイム帝国やココチア連邦とも渡り合える勢力になるとベルジィは予想する。


「なら後は___」


___後は、自身が直接オーマを見極めて、お互いの相性を調べるだけだ。

この結論に至ったベルジィはこの後、どんな口実で二人きりになるか?二人きりになったらどんな話をしようかと考えて夜を過ごす・・・・・ベルジィはワクワクしていた_____。

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