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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第五章:幻惑の勇者ろうらく作戦
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サンダーラッツ意識調査(3)

 フラン・ロープから聴取____。


「____でさ、そん時に全く気の利いたこと言えなかったんだよ、団長って。情けねー」

「はぁ・・・」

「そこんとこ行くと俺様は違うね。俺ってさ____」

「_____」


フランからオーマの話を聞き始めてしばらく・・・フランは“再び”自分の自慢話を話し始めた・・・。

“再び”・・・そう、もう何度かこんな事が繰り返されている。


(め、面倒な・・・)


ベルジィが効きたかったことは、こんな事ではない。

フランはそんなベルジィのことなどお構いなく、ますます調子に乗って饒舌になり、ベルジィ(ソノア)に熱い視線も送って来る・・・。


(何でしょう・・・ぶっ飛ばしたいですね・・・)


それはもう大変なストレスにございます。

最初はベルジィもちゃんとオーマの人物評を聞こうとして話を戻していたが、何度話を戻しても途中で絶対に自分の話に戻って来るのだ。


(はぁ・・・)


なので、もう諦めた・・・・ベルジィは自分の幻惑の術中なのに諦めてしまった・・・。


「まったく・・・このフラン様が団長として認めて、尊敬だってしてんだから、もっとちゃんとモテろってんだ」


一応オーマのことを認めてはいるらしい_____だが、


(この人の意見は参考になりません)


ベルジィは、フランは軽薄そうに見えて、実は本当に軽薄な人間だったのだと理解し、早々にフランからの聴取を切り上げるのだった_____。






 ロジ・レンデルから聴取____。


「オーマ団長は・・・一言で言えば恩人です」

「恩人というのは?」


 ロジがオーマをよく慕って“恩人”と言っているのは、サンダーラッツの中では有名らしく、ベルジィもこの約一ヵ月の間に、ソノアの姿ではゴットン商会の事務所で・・ジュネッサの姿ではサンダーラッツ一行が酒場に飲みに来たときに耳にしていた。

オマ×ロジを推奨しているベルジィは、これに興味津々だった・・・。

少し趣旨がズレているが、オーマのことを聞けるなら結果オーライだと自分に言い聞かせ、ロジの話に耳を傾けていた。


「ボク・・・昔はグレていて、帝都では悪ガキだったんです・・・」

「ええええ!?」


 ロジはその見た目と声が中性的というだけでなく、物腰も柔らかく言葉遣いも丁寧なので、サンダーラッツの幹部の中で一番育ちが良さそうだな、という印象だった。

ベルジィは意外過ぎるロジのカミングアウトに、驚きを隠せなかった。


「ボクも団長と同じく、両親を戦争で亡くして、帝都の孤児院に引き取られたのですが、そこでの過ごし方は団長とは真逆だったと言えます」

「真逆?」

「団長は“何故両親が死ななければならなかったのか?”、“どうすれば戦争が無くなるのか?”とお考えになって勉学に励んでいたそうですが、ボクは両親が死んだことがとにかく悲しくて、戦争が憎くて仕方が無くて、周囲のモノ全てにその怒りをぶつけていました・・・。人より魔力が有ったせいで、一般人相手には喧嘩で負けた事も無かったのです。すぐにチンピラ達のお山の大将になっていました」

「そうですか・・・」


その頃に犯した罪は消えないだろうし、許される事ではないが、両親を亡くした子供が荒れること自体は仕方が無いだろうと、ベルジィは複雑な気持ちになった。


「そしてボクはそのまま暴れ続けて、気が付けば、“自分は何でもできる!”、“誰にも負けない!”、“誰の力も要らない!”・・なんて、考える様になってしまい、いよいよ危険なほど調子に乗ってしまっていました・・・。そして危険な人たちに手を出してしまったのです」

「危険な人?裏社会の犯罪組織かなんかですか?」

「いえ、帝国軍人です」

「ええ!?な、何故ですか!?」

「あの頃は世界の全てが憎かったので、そもそも人に危害を加える事に明確な理由は無かったのですが・・・ただ、八つ当たりでしょうか?戦争を特に憎んでいて、嬉々として人を殺しに行く軍人達を軽蔑していました・・・親を殺されたわけでもないのに、殺し合う馬鹿な奴ら・・・ボクが痛みや死の恐怖を教えてやれば、少しはまともになるかもな____なんて」

「まあ・・・その生い立ちでしたら、気持ちは分かります。でも、また無茶な真似をされましたね」


いくら喧嘩に明け暮れていて、魔力も強かったと言っても、軍人・・・それも世界最強ともいえる軍隊の兵士に挑むのは無謀だろう。

愚かな事だが、それだけ当時のロジの憎しみは強かったのだろう。


「・・・結果として、恐怖を味わったのはボクの方でした」


____だろうな。当然の結果と言える。むしろ____


「よく無事でしたね。未成年と言っても軍人相手に喧嘩を売るのは・・・特に軍事国家である帝国は、軍隊の権威なんかも気にするでしょうから_____」

「____はい。帝国では、軍人に手を出せば、正当防衛で殺されても文句は言えません。軍事国家であるため、軍人の権利は強く保証されています。ボクが殺されなかったのは、最初に挑んだ相手が良かったからです」

「どんな相手に挑んだのですか?」

「・・・オーマ・ロブレムです」

「ええ!?オーマ団長にですか!?・・・な、何故?」

「孤児院でよくオーマ団長の話を聞かされていたのです。オーマ団長は孤児院に居た頃、両親を亡くした悲しみにもめげずに勉学に励んでいた優等生だったらしく、何かにつけて“オーマ君はああだった___”とか、“それに比べて貴方は____”などと、比較されてうんざりしていました。ボクはオーマ団長のことを、自分と育ちが似ているのに優等生であった事も、軍人になった事にも理解が及ばず憎んでいたのだと思います。それで帝国軍人に喧嘩を吹っ掛けようとしたとき、真っ先に標的にしてしまいました。それで無惨に敗れて・・・・これがボクと団長の出会いです」

「はぁ・・・・」


 ロジがオーマのことを恩人と呼ぶくらいなので、それなりに劇的なエピソードが有ると思っていたベルジィだったが、その内容は予想とは全く違うエピソードだった。

ロジの青年期が荒れていたというのも、オーマを憎むほど嫌っていたというのも、今のロジの姿からは全く想像できない・・・。


「それで・・どうしてオーマ団長が恩人になったのですか?」

「それは・・・団長がボクを打ちのめした後、“どうして俺に喧嘩を仕掛けて来たんだ?”と、声を掛けてくださって・・・ボクは喧嘩に負けた悔しさで思わず、団長を憎んでいた事や、両親を亡くした悲しさ、戦争をしたがる軽蔑すべき人間達といった、世の中に対する怒りを全て団長にぶちまけました・・・」

「・・・・・」

「団長は黙って聞いてくれていました・・・。そしてボクが話し終えた後に____」

「____正しい道を歩めと諭してくれた?」

「フフ・・・」

「?」

「もし、そうだったら、危なかったですね」

「え?」

「そんな事を言われても当時のボクは絶対に納得していなかったはずです」

「・・・では、オーマ団長は何と言ったのですか?」

「・・・“もっとちゃんと復讐しろ____”と・・・」

「はぁ?」

「“君の怒りと憎しみは尤もだ。だからちゃんと世の中に対して復讐するべきだ”って・・・」

「ちゃ、ちゃんと?」

「“君がただ憎しみのまま暴れたって、君を不幸にした世の中は変わらない、君を不幸にする世を作った奴らは気にもしないだろう。そういうヤツらに思い知らせる一番の方法は、そいつら以上の良い世の中を作る事だ。だから君が世の中に復讐したいなら、君を不幸にしたやつら以上の正義を世の中に示して、世の中を平和にしろ。そういうヤツらに復讐したいなら、その方法がいい”・・・と」

「な、なんというか・・・ぶっ飛んでいますね」

「クス・・・はい。当時のボクもそう思って頭が混乱しました。でも、団長はそのままボクの手をつかんで、“手伝ってやる”と言って無理矢理に引っ張って行きました・・・その日から団長に鍛えられて・・・暫くして軍学校に入って、卒業後はサンダーラッツに入って・・・そうやって一緒に過ごしていく内に、団長の勇敢さや誠実さに惹かれて慕う様になっていました」

「____ホモォオオオ!!・・・あ、いや・・そして恩人だと思うように?」

「当時を振り返って、“もし、あの時に団長に拾われていなかったら、どうなっていただろう?”って、そんな事を考える時がありますが、きっとゴロツキのまま暴れ続けて、裏社会の人間になって、何処かで惨めに死んでいただろうな・・・って」

「そうですか・・・」

「だからボクは、団長に捨てられない限りどこにだって付いて行くつもりなんです」

「そうですか・・・話を聞かせて頂きありがとうござます____」


最後にロジの固い決意を見て、ベルジィはロジとの話を終える____。

 ロジから聞いた話は、ベルジィの中で大変に有意義なものだった。

オーマの人どなりを知れたこともそうだし、ロジの生い立ちとオーマとの出会いと関係性も興味深かった。


_____ホモォオオオオオオオオ!!


反省すべき事あるとすれば、少し・・・いや、だいぶ趣味の方に寄ってしまったという事くらいだ_____。

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