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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第五章:幻惑の勇者ろうらく作戦
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ベルジィの企て5

 サンダーラッツをこの街から排除するというこの作戦において、ベルジィが最も難しいと感じていたのは、ターゲットのオーマとどうやって二人きりになるのか?という点だった。

普通に食事に誘ったり、傭兵として仕事を依頼したりといった事では、必ず他の誰かが同行してくるだろう。

他にも例えば、異性として見ていると打ち明けてデートに誘ってみるという手も考えたが、これも遠くから監視される可能性が有る。

 ユイラから聴取して分かった事だが、ソノアは一時期ベルジィかもしれないとサンダーラッツに疑われていた。

そのため、下手な行動を起こせば再び怪しまれる可能性が有り、自分の幻惑の術を確実に打ち破れるサレンの静寂の力の存在を知った以上、これは絶対に避けたい。

かといって、ソノア以外のキャラクター(ノワール、ジュネッサ、もしくは新たに作成するキャラ)ではオーマと接点自体が無いため、デート等に誘うのは更に怪しい。

 更に、今回彼らは以前の帝国スパイ(バグス)と違い、ゴットン商会という歴とした身分を用意してこの街に滞在していて、その活動も順調で、この街の商人と住人から一定の信頼を獲得している。

変な行動をとって無理矢理排除しようとすれば、この街の警備団や商人達に怪しまれてしまう可能性も有る。

 改めて考えてみると、ベルジィがオーマに対して毒を盛り、二人きりになって幻惑の力を仕掛けるというのは、容易な事ではなかった。


「でも、これで何とかなりそうね」


 彼らの飲み水に毒を盛る事に成功したベルジィは、ロジから注文の会計を済ませて帰宅する。

そして次の日の昼、この時間ならもう毒入りの水に手を付けているだろうと予想し、ベルジィは作戦の次の段階に移行するべく、バージア警備団の事務所へと足を運んだ_____。






 それから時間が経って、ゴットン商会の事務所____。

今日はロジとクシナだけではなく、ヴァリネスとオーマも、昨日の内に商談をまとめる事ができたため、今日は休みになって、事務所で寛いでいた。


「なっはっはっはっは!昨日もまた一つ商談を成立させてやったわ!」


 ゴットン商会の事務所で、バージア支部支部長のネリスことヴァリネスが豪快に高笑いしている。

というのも、昨日の商談はヴァリネスのおかげでまとめる事ができたため、その事にヴァリネスは得意気だった。


「うーん・・・・・」

「は、はぁ・・・」


商売が順調でも作戦が好転しないと意味はないのだが、恐らく気晴らしも兼ねているのだろう感じて、オーマとクシナは苦笑いしつつもヴァリネスを咎めなかった。


「すごいですね、副長。おめでとうございます」


そして、ロジだけが素直にヴァリネスを賞賛していた。


「ありがとう♪ロジくん♪はー・・私ってやっぱり天才」

「すごい商才ですよね!」

「フフン♪全く、こんな事なら軍人になんかならずに商人になって金持ちになった方がよっぽど簡単にハーレムを・・・今からでもそうしようかしら?」


余りに商売が順調なので、自分には商才が有ると自覚したヴァリネスは、調子に乗ってそんな事を言い始めた。


「え?・・・副長、サンダーラッツを抜けるんですか?」


ロジが悲しそうな表情でそう言うと、ヴァリネスは即行で意見を180度変えた。


「いやーん♪そんなわけないじゃない!ロジくんを置いてサンダーラッツを抜けるわけないじゃない」

「本当ですか?良かった・・」

「ふふん♪カワイイ♪」

「まったく・・・何やってんだか・・・_____おい!」


「「ッ!?」」


 ヴァリネスのノリを毎度の事だと思いつつ呆れていたオーマだったが、事務所の外から不穏な気配を察知すると、直ぐに皆に注意するよう呼びかけた。

そして全員が警戒した数秒後、武器を持った大勢の人間が事務所に断わりも無く入って来た。


_____ドタドタドタドタッ!!


「な、何!?」

「動くな!!我々はバージア警備団の者だ!大人しくしろ!」

「け、警備団?警備団の人が何故・・・?」


四人全員が困惑する中、警備団を名乗った指揮官らしき人物がそのままオーマの前に立って口を開いた。


「貴様がオルス・ロイゲルだな?」

「え?そ、そうですが、何か?」

「貴様に殺人容疑が掛かっている。警備団事務所まで同行してもらおう」

「何!?」


そう言うと、警備団の兵士達が問答無用でオーマを拘束し始めた。


「そんな!?」

「ちょ、ちょっと待ってよ!!彼はそんな事してないわよ!!」

「貴方が雇い主のネリス・ザイヤスだな?一応貴方にも来てもらおう。共犯の可能性が有る」

「な!?ま、待ってよ!話を____」

「____詳しい話は事務所で聞くから!とにかく一緒に来い!抵抗するな!!」


そう言って今度はヴァリネスも拘束される。

さすがに街の警備団と揉めることは出来ないため、オーマもヴァリネスも抵抗はせず、そのまま連れて行かれてしまった。


「あ、あの!すいません!」

「どういうことなのですか!?」


二人が連れて行かれるのを黙って見ていることは出来ず、ロジとクシナは困惑しながらも食い下がろうとした。


「先日軍事区域で起きた殺人事件に関して、オルス・ロイゲルに殺人容疑が掛かっております。面会を望むのでしたら、国の法律に則って第三者の弁護人を立ててください。では、失礼します」

「あ・・・」

「ちょ、ちょっと!」


警備団の指揮官はそれだけ言うと、そのまま部下と共に事務所を去ってしまった_____。




 「・・・な、何とかしないと」

「そうですね」


突然の出来事で、まだ事態が呑み込めていないロジとクシナだったが、サンダーラッツの団長と副長の二人が捕まってしまった以上、自分達が何とかしなくてと奮起する。


「私は今すぐ他のメンバーと連絡を取って事務所に集合させます」

「分かりました。ボクはソノアさんの店に行って、弁護人になってもらえないか頼んでみます」


困惑しながらも二人は、今できることを行動に移すのだった____。





 ソノア・エリクシール_____。


「____来たわね」


警備団に幻惑の力を使った後、ソノア・エリクシールで待機していたベルジィは、一人の人間が店に向かって走ってくる足音を聞くと、オーマとヴァリネスの拘束が上手く行って、作戦が次の段階に入ったことを理解し、気を引き締めた。


_____バンッ!


「ソノアさん!大変です!」

「ジデルさん?急にどうしたのですか?」


慌てて店に入って来たロジに合わせて、ベルジィもソノアの姿で何事かと困惑して見せる。


「実は、ネリス様とオルスさんが警備団の人に連れて行かれてしまって・・・!」

「ええ!?な、何故ですか!?」

「そ、それが、詳しくは分からないのですが、殺人容疑だと・・・」

「殺人!?ま、まさか、あのお二人に限って・・・本当ですか?」

「絶対に無実です!信じてください!ネリス様もオルスさんも、そんな事をする人ではありません!」

「そ、そうですか・・いえ、そうですよね。それで?私のところに来たのは?」

「詳しくは分からないのですが、弁護人を立てる必要があって、ソノアさんのお力をお借りしたくて」

「そういう事ですか、分かりました。私でよければ、弁護人をお引き受けいたします」

「本当ですか!?ありがとうございます!」


ロジは天からの助けとでも言う様に勢い良く頭を下げた。


「気になさらないでください、ジデルさん。お二人には贔屓にして頂いていますし、何より無実なら放ってはおけません」

「本当に助かります。この街でこういう事態が起きた時に頼れるのはソノアさんしかいませんから」


そう・・まさにこの、“こういう事態が起きた時に頼れるのはソノアさんしか___”を利用した作戦だ。


「それで、ジデルさんはこの国の法律と弁護人については?」

「すいません。全くと言っていいほど知りません」

「そうですか。いえ、そうですよね、普通はそうです。えっと・・弁護人を立てるためには役所で書類を作って提出しなければなりません。すいませんが役所に行って来てもらえますか?私は一足先に警備団の事務所に行って、お二人に面会できるか掛け合ってみます」

「分かりました!では、警備団の事務所で会いましょう!」

「はい!では___」


ソノアに言われて、ロジは疑う事なく直ぐに店を出て、駆け足で役所へと向かった。


「ふぅ・・ようやくね」


 ベルジィは作戦が上手く行ったことにホッと安堵しつつ、閉店作業を始める。

そして店を閉めた後は、作戦の最終段階を遂行するべく、再び警備団事務所へと向かった____。

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