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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第五章:幻惑の勇者ろうらく作戦
232/378

幻惑の勇者ろうらく作戦会議

 ソノア・エリクシールで買い物を済ませたオーマ達は、ユイラたちが手配した宿へとチェックインする。

そして、各自が荷物を置いてから、ミクネの力を借りて盗聴対策の防護魔法を掛けて貰ったオーマの部屋に集まった_____。


 「どうだ?サレン?薬の効果は?」

「はい。すごく良いです。帝国産やエルフ産の物と比べても遜色ないです」

「へぇー」

「そりゃスゲーな」

「さすが評判の店なだけありますね」

「スキンケア用品もすごく良いです」

「最高。お土産にする」

「ですが、美容製品はともかく、魔導士向けの薬品で帝国産やエルフ産の物に負けないって・・・」

「ああ、何か怪しいな・・・」

「何だ?クシナもイワも懐疑的だなぁ。まさか、いきなり“アタリ”引いたって言いたいのか?」

「その可能性は否定できないだろうフラン?ベルジィ・ジュジュは長期間このバージアに潜入しているのだろう?身分を偽って暮らしているなら、彼女の持つ能力と合わせて、薬剤店は一番可能性が高いはず」

「この薬・・・こう言っては失礼ですけど、帝国やエルフほど魔法技術が発展していない地域で暮らす一般の魔導士が作ったとは思えないクオリティです」

「でも、店主の見た目は全然違ったじゃんか。彼女は単独で潜入していて協力者がいないんだから、おかしいだろ?」

「協力者がいない___。という判断はまだ早いのでは?」

「それに、幻影属性なら姿を誤魔化せます」

「けど、魔力は大したこと無かったぞ?」


オーマに索敵を頼まれていたミクネはそう断言した。


「む・・・間違いないですか?ヤトリ様」

「なんだぁ!?イワ、私の腕を疑ってんのかぁ!?後、“様”が取れないなら、せめて“ミクネ”と呼べ!!」

「ち、違いますよ、ミ、ミクネ様」

「ふん!間違いない。あの女は樹属性魔法まで扱える高位の魔導士だが、それ以上ではないし、魔力量も多い方じゃない。魔導士としてのレベルは、ウェイよりちょい下ってところだ」

「そうですか・・・まあ、ミクネ様がそう仰るなら間違いないですね」

「お前、さっきから疑ってんな?」

「で、ですから違いますって!」


_____と、怒るミクネにイワナミが必死に弁明していた。



 ちなみに、ミクネが索敵魔法を使ってもベルジィの力を量れなかったのは、ベルジィが意図的に魔力を抑える薬を使用していたからだ。

ベルジィは普段からそうして自分の力を隠している。

 ベルジィは薬物属性の力と薬の知識で作るオリジナルの薬で、自分の魔力を抑えたり、元に戻したり、場合によっては一時的に増加させることもできる。

こういった効果の魔術系の薬は、世に出ていない。ベルジィ自身も出していないし、出す気も無い。

という訳で、地味ながらこの世界では結構なチート能力といえる。

 そして、薬の効果のため、今回の様に魔法で観測できないというわけだ。

幻影魔法を使用して、人からは別人に見える様にしてから、魔力を抑える薬を飲むことによって、魔法と薬の効果時間の間、魔力も姿も別人になれるというわけだ。

 幻影属性と薬物属性を組み合わせた隠蔽工作ができるベルジィは、サレンやミクネ以上に隠密に長けていると言えるかもしれない・・・。


「まあ、あのソノアって子がベルジィかどうかは置いておいて、薬品の効果が良いなら今後も利用させてもらいましょう。何か本人もこっちに協力的だったし」

「親切な方でしたね」

「何より美人だ。落ち着きがあって知的で且つ癒し系・・・」

「フラン。ダメですよ」

「まあ、いつものフランは放っておいて、団長?これからどうすんの?」

「ああ、そうだな・・・」


 ヴァリネスからの質問が飛ぶと、皆の視線がオーマに集まった。

オーマはその視線を受けて、第八回勇者ろうらく作戦会議を始めた____。


 「先ずは、このまま商人を装いつつ、ベルジィを探し出す。これは慎重に行う必要が有る。クラースには急ぐように急かされたが、こればっかりは時間が必要だろう」

「そうね。ベルジィに関しては色々情報あるけど、攻略に役立つ情報は殆ど無いもんね」

「何処に居るのかも分からない。何故この戦争の妨害をしているのかも分からない」

「その妨害方法も薬物属性と幻影属性を使用しているというだけで、詳しくは分かっていない」

「それにしたって、カスミ様の状況証拠での意見であって確定じゃないだろう?」

「それに加えて、帝国に対してどんな印象を持っているのかも分かっていませんよね?」

「スラルバンの人間なら、スラルバンの後ろ盾をしている帝国には好印象を持っていそうですが・・・」

「分からない」

「おまけに、人物像はほとんど把握できていなくて、その能力は、こちらが攻撃されている事にすら気付けない可能性が有る相手か・・・。なら____」

「____慎重にやらなきゃ、むしろ自殺行為」

「だな・・んで?どうすんだ?団長?」

「サレンとミクネに地道にやってもらうしかない。そう言う訳で、サレン、ミクネ、申しわけないが二人は、今日ソノア・エリクシールでやっていた様に、周囲に魔導士として悟られないようにしながら、索敵魔法を使って街中でベルジィを探してくれ」

「分かりました」

「おう、任せろ!」

「それ以外のメンバーは、ゴットン商会の人間として街に馴染むところから始めよう」

「じゃー、実際に商売も?」

「する必要が出て来るだろう。ベルジィを探すのは時間が掛かるだろうから、商人としてこの街に居ながら、商売もせずにただ街をフラフラしていたら一般人にさえ怪しまれる。副長にはゴットン商会の代表として、この街の商人たちを相手に立ちまわってもらう」

「分かったわ」

「そして、レイン。商売するなら商品を運び込まなくちゃならいから、君にはまたベルヘラに行ってもらう」

「分かりました!お任せください、兄様!」

「じゃー、先ずはベルジィを探しつつ、商人としての届け出と挨拶回り、商品の搬入ってところかしら?」

「そうだな」

「編成は?」


 補足しておくと、今回の潜入作戦のそれぞれの身分は、ゴットン商会の商人役が、ヴァリネス(ネリス)、ロジ(ジデル)、ウェイフィー(フェイ)、フラン(フラップ)、レイン(レイフィード)、サレン(サジェン)、ミクネ(リリネ)の七名で、ゴットン商会に護衛として雇われた傭兵の雷鳴の戦慄団役が、オーマ(オルス)、イワナミ(ワムガ)、クシナ(セリナ)、ジェネリー(ミスティ)、ユイラ(ラシラ)の五名だ。


「商売組の面子は、商人がヴァリネスとロジ、護衛が俺とクシナだ」

「了解です」

「分かりました」

「やったぁ♪ロジくんと一緒♪」

「商品を運び込むのは、レインとユイラ。ゴットンさんによろしく伝えてくれ」

「はい。了解です」

「お任せを!兄様!」

「ああ、それとレイン。ベルヘラからは魔力の回復薬も大量に運び込んでくれ」

「魔力の回復薬ですか?」

「ああ。今回の潜入作戦は、サレンやミクネ、それにレインへの魔力の負担が激しい。でも、ソノア・エリクシールで買い過ぎていたら変だし、ベルヘラの商人が帝国の物を大量に持っていたら怪しまれる」


ベルヘラの物ならベルヘラ商人が大量に持っていても不思議じゃない、とオーマが付け加えると、レインとユイラは納得した。


「ベルジィの捜索組は、サレンとミクネに、護衛役でイワナミだ」

「了解しました。お二人共、よろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いします」

「おう!まあ、何かあっても私とサレンと一緒なら安心だ。心配するな、イワ」

「あ・・・ありがとうございます・・・」

「あう・・イワナミさん・・・」


万が一、ベルジィに襲われた場合、戦力的に自分が一番格下だと分かっているが、イワナミは凹んだ・・・。

少し可哀想だと思ったが、どうしようもないのでオーマは無視した。


「それから、ジェネリー、ウェイフィー、フランの三人は街で情報収集だ。ただし、ベルジィのことは探るな。あくまで商人の立場という範囲内で、この街の事やシルクロードについて聞き込むんだ。深入りするなよ。怪しまれない様に加減してくれ」

「分かりました」

「了解」

「いやー♪こりゃ両手に花だね。二人共、デートを楽しもうぜ!」

「うざっ」

「任務ですよ、フラン隊長・・・」


フランの態度に二人が早速呆れていたが、いつもの事なので、オーマはこれも放っておいた。


「編成はこんなところだ、質問は?・・・なければ会議はここまでだ。各自明日からよろしく頼む」

「お?終わりか?」

「明日からという事は・・・」

「じゃあ、今日は?」


皆の視線が先程より何かを期待する様な瞳で、オーマに集まる。


「今日はもう日が暮れるから、仕事終わりの商人らしく、街に繰り出して一杯やろう」


「「イェーイ!!」」


危険な任務で急を要する事案ではあるのだが、それはそれ、これはこれ。

英気を養おうというオーマの提案に、一同は歓喜の声をお上げて街へと繰り出すのだった____。

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