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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
幕間皇帝と騎士
208/376

ハツヒナを殺したオーマの処遇

 オーマが目を覚まして祝杯を挙げた二日後、ナタリア城の捜索は終わり、遠征軍の一行はナタリア城に入城する。

それと共に、軍事の最高責任者である三大貴族のマサノリがナタリア城に訪れていた。

 理由は、捕縛してタルトゥニドゥのカスミの下へ送ったバルドールとメテューノから得た情報の報告と、今後の事についての指示を出すためだ。

 そんな事をわざわざ軍の最高責任者の総督であるマサノリ自ら行う事に、ジョウショウは何かしらの理由(特にオーマのろうらく作戦)があると思い、やや緊張気味にマサノリを出迎えた____。




 マサノリの報告の重要な部分を要約すると、以下の内容になる____。


 捕縛したバルドールとメテューノは直ぐに、現在タルトゥニドゥの研究所に居るカスミ・ゲツレイの所まで輸送され、その記憶から情報を抜かれた。

そしてその結果では、スカーマリスにディディアルをハメた黒幕は居ないとの事だった。

 だが、後の更なるスカーマリスからの報告でジェイルレオの死因を知ると、今回でも准魔王がはめられた可能性が浮上した。

 ジェイルレオは、氷属性を扱える何者かによって殺害された。

あの状況で氷属性を扱え、ジェイルレオほどの魔族を暗殺できるような者は、帝国側にもスカーマリス魔族軍側にも居ない。

 そして、この黒幕はRANK4の精神属性が扱える。

精神属性は、RANK2の樹属性か氷属性を経由しないと到達できないことから、准魔王ジェイルレオの不可解な死は、この黒幕による犯行の可能性が高いと思われた。

だが、どちらにせよ、スカーマリスの魔族の者ではないとの結論に至る。


「____と言う訳で、クラースとも意見が一致したが、スカーマリスに居ないのならば、帝国内に潜んでいる可能性が高い。そのため、ここからはこちらで対処することになった。君には別の仕事をしてもらいたい」

「畏まりました。どのような事でもお引き受けいたします」


 ジョウショウは内容を聞く前に“YES”と回答する。

そしてマサノリは、その態度に満足して話を続けた。

いつもの二人のやり取りだった。


「今回の遠征で、このスカーマリスの長を全て排除できていた事が、カスミの情報収集で分かった。そこで、このスカーマリスに生息する魔族をより良く管理するため、本格的に“飼育場”にすべきという事でクラースと意見が一致した。ジョウショウ、お前には引き続きスカーマリスの支配権を広げて、このスカーマリスを“狩場”から“飼育場”に変えていってもらう」

「分かりました」

「とは言え、もうすぐ12月に入って冬となる。領土侵攻は春からになるだろう。だから、今の内に戦力に問題が有るなら、私の私兵や、リジェース地方の攻略をほぼ完了しつつある北方遠征軍だけでなく、西方遠征軍からも兵を回せる。言ってくれ」

「お心遣い感謝いたします。ですが、必要ないかと・・・」

「ほう?そうか?准魔王が居なくなったとはいえ、オーマ達は次のターゲットの攻略に移ってもらうので勇者候補はいない。それに加えてハツヒナが死亡して、ツクヨミもほぼ壊滅しているのだろう?」

「はい。ですが、その分ニジョウ師団長が弔い合戦に燃えております。それに、東方軍は安全で安定している分、野心のある者達には出世しづらい環境でしたから・・・これをチャンスと見る者達も多く現れるでしょう」

「フム・・・目の上のたんこぶが居なくなって、喜ぶ者が居ると?」

「表には出さないでしょが・・・」

「そうか。ならば、他所からの援軍はかえって諍いが起きるか」

「はい」

「分かった。では、後の事はそなたに任せるとしよう。・・・失敗は許されんぞ?」

「心得ております。必ずや成功させ、良質な魔族の素材を安定供給できるようにいたします」

「よろしく頼む。他に確認しておきたい事は?」

「ハッ・・・先程は、ハツヒナの死亡の件、弔い合戦と申しましたが・・・マサノリ様、私はハツヒナを殺したのは____」

「____オーマ・ロブレムではないかと?」

「はい・・・。マサノリ様もそうお考えで?」

「ああ。ハツヒナの死亡の報告を受けて、その詳細を知った時には確信したな」

「左様でございましたか・・・では、いかがいたしましょう?スカーマリスの領土を拡大する中で証拠を押さえますか?今ならハツヒナの死体を発見できれば、カスミの力で、オーマの犯行を立証できます」


 余談だが、ハツヒナの死体は、ミクネが隠蔽している。

ミクネなりに絶対に世に出してはならないと思って、念を入れて隠したが、帝国なら見付け出せる可能性は有る。


「そうだな。バグスを2小隊まわすから、内々に捜索してくれ。そして証拠は見つけ次第、すぐに抹消すること」

「は?・・・処分するのですか?」


主人の意外な回答に、ジョウショウは少しだけ眉を上げた。


「当然だ。奴には“英雄”として死んでもらうのだからな。もし奴を殺して、その死を英雄として国を挙げて祭った後に反乱の証拠が世に出てみろ・・・帝国が反乱者を英雄として祭った事になってしまうだろう?それに奴が犯人だとするのは、世の中に対して第一貴族が平民に敗北したという事実を証明してしまうことにもなる・・・それは絶対にダメだ」

「な、なるほど」

「あの作戦は反乱軍を炙り出すための作戦ではない。勇者や勇者候補を帝国の傀儡にするための作戦だ。奴の死は、そのための“英雄死”以外ありえない」

「畏まりました」


 オーマを裏切り者として扱わないというのは、一見すると寛大にも見えるが、自分達が決めた事には愛国心を持とうが反骨神を持とうが従わせるという傲慢さがある。

ジョウショウはマサノリと長い付き合いだが、そのことに背中に冷たい汗を流していた・・・。


「そのための準備もすでに入っている・・・餌は撒いてくれたのだろう?ジョウショウ?」

「ハッ、言われた通り、あの者達の目がある中で召喚魔法を使いました」

「結果は?」

「戦闘終了後に、見ていたレイン・ライフィードが探りを入れて来ましたから____」

「食い付いたな。ならば、そう遠くない日・・オーマが候補全員を籠絡するまでには、探りに来るだろう」

「あの・・・後学のため、質問よろしいでしょうか?」

「構わないぞ」

「オーマを釣るために、そこまでする必要が有るのでしょうか?」


 第一貴族しか知らない魔術の秘密。当然第二貴族にも教えてはいない。

万が一にも外に漏れれば、自分達の支配基盤も揺るがしかねない。

そんなリスクを抱えるというのは、ジョウショウには少し躊躇いを感じるものだった。


「勇者候補を引き連れて反乱を起こそうと言うのだから、これ位でないと釣れんよ。それに、我々が相手の想定より強いという事実を教えるのは牽制にもなる。フェンダーが居るとは言え、勇者候補全員と正面切って戦うのは、我々でも危険だからな」

「では、前々からこの様に計画されていたので?」

「いや、この案は、クラースが雷鼠戦士団の帝都内での出撃を許した後に出した修正案だ。当初の計画のままでは、オーマを殺す際に雷鼠戦士団ごと葬ることになる可能性も有ったからな・・・それでも負けはしないが、万が一、一人でも取りこぼすと面倒だ。だから幹部たちだけを釣る作戦に変更したのだ」

「左様でしたか・・・ご教授頂き、ありがとうございます」

「構わんよ。他に聞いておきたい事はあるか?」

「いえ、十分でございます」

「そうか、ではスカーマリスの事は任せるぞ」

「ハッ!」


_____と、マサノリとジョウショウが会ってそんな会議をしている頃、クラースも“黒幕の魔族”を捕縛するため動いていた。



 クラースは、黒幕が魔族の者で、タルトゥニドゥにもスカーマリスにも居ないのならば、人間社会に潜伏しているだろうと考えた。

そして、帝国の動きと、黒幕の魔族の動きが連動している事から、敵はドネレイム帝国、それも首都ドネステレイヤに居る可能性が高いと判断し、“魔族が帝国に入り込むスキが有ったのはいつだ?”という疑問から、魔王大戦後の国が混乱している時期だろうと推測する。

 そうして、魔王大戦後に帝国で作られた組織・団体を全て調べ上げて、クラースは黒幕の魔族が潜伏しているであろう居場所に目星を付けた。


 それはビルゲインだった。


 リデルが言っていた通り、クラース達の捜査の手が自分達に伸びてくるのに、さして時間は掛からなかったという事だった_____。

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