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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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後ろめたくて(2)

 「ご馳走様でした」

「お粗末様でした」


 ミクネが用意してくれた食事を平らげ、お茶を飲んで一息つく。

 ミクネが作ったのは、“雑炊”という東方地方の米を使った一般的な料理で少し薄味だったが、疲弊して食欲も湧かない今のオーマにはちょうど良い味付けで、腹が減っていないにも拘らず、全て平らげる事ができた。


「しっかり食べれたな。良かった」

「味付けが絶妙だった」

「そうか?今は濃い味付けは嫌だろうと思って薄口にしたんだ。正解だったな♪」

「そ、そうか・・・ありがとう」


 元々の味付けではなく、ミクネの気遣いだったらしい____。

ミクネの意外に気づかいが出来る様に驚き、それが嬉しくもあるが少し気まずい。

 理由は言わずもがな、ハツヒナの暴露が心に引っ掛かっているからだ。

気を使われ過ぎると、後ろめたさが前に出て来て、気まずい気持ちになる・・・。


(____いっそ自分から切り出そうか?)


気まずい思いに耐えられず、オーマはそんな事を考えてしまう。

そして____


(いや、だから、どう説明するんだよ・・・)


____と、直ぐに冷静に戻る・・・・頭の中でこんな事を繰り返している。

そんな堂々巡りが続くもどかしい時間が、目が覚めてから続いていた____。


 この件に関しては、話をするべきなのだろうが、どう切り出せば良いものか・・・更には、どう説明すれば良いのかもオーマには分からなかった。

きっと、どう説明しても、後ろめたい気持ちを拭い去ることは出来ないだろう。

だが、それで済むならマシかもしれない。

騙されたと敵意を持たれて、ミクネと対立することになりはしないだろうか?


(ミクネと戦うのは、嫌だなぁ・・・)


 勇者候補の一人、“戦巫女”ことヤトリ・ミクネとの対立____

 今現在のミクネの魔導士としての成熟度を考えると、まだ成熟していない時期に戦った“氷結の勇者”フレイス・フリューゲル・ゴリアンテ、“閃光の勇者”レイン・ライフィードとの戦い以上の死闘になるだろうこと間違いなしだ。


 だがオーマがミクネと戦いたくない理由は、そんな事では無かった。


(そういえば、ヴァリネスが言ってたっけ・・・)


 “あの子との相性はそう悪くない”とヴァリネスが言っていた。

そう悪くないどころか、これまでの時間、特にベーベル平原以降では、ミクネは今までの勇者候補の誰より接しやすく、やり易いと思った・・・・・人見知りが発動しない任務中だけだが。

 それでも、今までの勇者候補の中で一番気が合うと思った。

一番気が合って尊敬できる人物とは戦いたくないものだ_____と言うよりかは、嫌われたくないものだ。


(だけどなぁ・・・)


状況的に厳しい気がしている・・・。




 オーマは答えが出せず、話を切り出せない。

二人きりでそんな調子なら、当然気まずい空気となっていく・・・。


「・・・大丈夫か?オーマ?」

「えっ!?」


となれば、当然ミクネから声が掛かるに決まっていた。


「どうしたんだ?やっぱり美味しくなかったか?」

「い、いやいやいや!そんなことは無い!マジで美味しかった!」

「じゃー、体調か?」

「え。あ・・ああ。ま、まあ疲労は有るが、そこまででもない」


と、オーマは反射的に返事してしまい、後悔した。


(くそ、疲れているって言って寝ちまえばよかった・・・)


逃げるチャンスがあったのにバカ正直に答えてしまった。


「だったら____」

「ん?」

「・・・後悔しているのか?」

「えっ!?」


____心の中を読まれた!?・・・などと一瞬本気でボケてしまった。


「ハツヒナと戦った事・・・後悔しているのか?」

「あ?ああ・・・いや、して無いよ」


全然違う内容だったので、“何だ、そんな事か”といった具合でオーマはあっさりと返した。

それに対してミクネは、少しだけ顔を赤らめて微笑んだ・・・。

 オーマに自覚は無かったが、結果としてこの態度が、“ミクネのために帝国の第一貴族と戦ったことに全く後悔は無い”というのをミクネに雄弁に伝えていた。

 オーマは、ハツヒナの所為で作戦の事をミクネに知られて、気まずいという事しか見えておらず、他の事はまるで見えていなのだ_____甲斐性無しである。

だが、それが勘の鋭いミクネには、かえって良かったのかもしれない。


「なら、オーマ。話してくれないか?」

「え?」

「オーマが第一貴族の連中に命じられた“作戦”ってやつだよ」

「ヴぇ!?」


 それしか見えていないオーマは、いきなりその話を切り出されて動揺する事しかできなかった。


「後ろめたい気持ちが有るのは何となく分かっている。でも私はオーマの言ったこと信じるからさ。話してくれないか?」

「ミクネ・・・」

「最初から私を帝国と戦う仲間に誘うつもりだったのだろう?」

「え!?そ、そこまで分かるか!?」

「プッ・・・だってオーマ最初に私と会った時に、“俺はコイツと一緒に帝国と戦える自信がこれっぽっちも無い!!”ってキレたじゃないか」

「ヴぁ!?」


 言われて、オーマはようやくミクネとの初対面の記憶を蘇らせた。


(そーーーだった!!そういえば、俺もうっかり口を滑らせていたんだった!!)


最初に暴露したのは自分だった事を思い出し、気まずさは更に増して、顔を覆いたくなってくる。

だが、その甲斐あって、オーマは今の自分の視界の狭さに気が付いた。


(じゃー、ミクネは今まで俺達が帝国の反抗勢力と見ていたって事か・・・・あ、そういや作戦会議でヴァリネスが言ってたわ・・・)


 ミクネと行動する様になってから、あまりにノリが有っていたので、その事も忘れていたし、ミクネの態度からも気が付かなかった。

オーマ自身はそのことに自己嫌悪したが、その事を忘れていたおかげで、勘の鋭いミクネがオーマに気を許すようになっていったというのも有るのだから、今回は特に運が味方してくれたのだろう。

変に意識していたら、ミクネは心を開いていなかった可能性が有るのだから_____。


 ミクネは、今までずっとそういう目で見て来て、今回の事で確信を得たという事なのだろう。

そして、その上でミクネはオーマを信じると言ってくれているのだ。

それは、つまり____


(・・・・・)


オーマの中である種の期待が生まれる・・・・・そして決心する。


(どちらにせよ、説明しない訳にはいかないもんな・・・)


ならば、信じるからと聞いてくれる今が最も良いタイミングなのだろう。

邪魔も居ない、状況としても“あり”だ。

ミクネを仲間に誘うなら、今が一番だと判断する。


「分かった。全部話すよ」


そうしてオーマは、ミクネに事情を話し始めた____

 オーマなりの言葉、オーマなりの誠意で・・・嘘はもちろん言わない。話を取り繕ったり、盛ったりと言ったこともしない。

ただそれでも、“嫌われたくない”、“自分の事を少しでも知ってほしい”という気持ちで、最初から細かいところまで正直に話す。

ろうらく作戦を言い渡されたところからではなく、“救国の英雄”となった後から、“ドブネズミ”になるところ___自分の中で、帝国の見方が変わったところから全てだ。

 オーマは、ミクネに対しての後ろめたい気持ちを、少しでも拭い去りたかった。

全てを話して楽になりたかったという事である。

 相手によっては、くどくどと言い訳がましいと思われ、逆効果になる可能性もあるが、オーマは止まらなかった。止められなかった。

 オーマはミクネに甘えている。オーマ自身で、それを自覚できてしまうほどだ。

だからだろう、そんなオーマの言葉に嫌な一つ顔せず、話を聞いてくれるミクネは聖母のようで、オーマはそのミクネの母性に引き付けられるのだった____。

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