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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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オーマvsハツヒナ(4)

 ハツヒナの猛攻に晒される中で、オーマは作戦を実行に移すため、雷属性の魔法術式を展開する。

ハツヒナの方は、術式を展開したオーマを見ても気にする様子もなく、速攻で錬成した鉄製の刀を抜き放った。


「サンダー・アーマー」

「ッ!?」


そのハツヒナの斬撃に対して、オーマは低級の防護魔法を速攻で発動した_____が、低級の防護魔法でハツヒナの攻撃が防げるはずも無い。


「ぐ!っ」


 大半が予想する通り、オーマはハツヒナに切り付けられる。

幸い、ハツヒナは“決め”ではなく、“削る”作業を意識していたので毒は無く、傷を負うだけで済んだ。

 だが、ダメージを与えたハツヒナは、このオーマの動きに警戒した。


(何故、低級の防護魔法を?・・・・・確かめておきますか)


ハツヒナは戦いの流れを掴んで、順調にオーマを追い詰めているため冒険はせず、オーマの意図を図るため、再び速攻の金属性魔法で簡単な鉄の針を多数錬成する。


「鉄騎万尖!」

「今だ!」

「____!?」


 ハツヒナが錬成した針を放射しようしたその時、オーマは再び性質変化の魔法で、先程発動した低級電撃防護魔法と反対の極性の電撃をハルバードの先端に流した。

 ハツヒナの体には、先程のオーマの低級電撃防護魔法の電気が微弱ながら残っており、ハツヒナの錬成した針にも纏わりついていた。

オーマがそれと反対の極性の電気を発生させたことで、ハツヒナの刀と鉄騎万尖がオーマのハルバードの先端へと引き寄せられた。


「よし!」

「へぇ・・・なるほど、そういう事ですの」


オーマは相手の武器を奪って、“してやったり”という表情を浮かべた。

だがその一方で、ハツヒナは武器が奪われても動じてすらいなかった。


「色々できるものですわね、その力」


などと、少しだけ感心した様な感想を述べるだけだった。

当然だ。ハツヒナの武器はこれだけではない。戦法もこれだけでは無いのだから。

最も、オーマはそんな事、百も承知なのだが・・・


「アース・ウォール」


 ハツヒナは後ろに飛びながら、目の前に土の壁を造り、反撃に出るであろうオーマを牽制をする。

それから炎魔法の術式を展開しつつ、同時に壁の土を性質変化で火薬に変えて攻撃しようとした。

だが____


「ファイヤーボール!」

「!?」


 ハツヒナが土の壁を火薬に変えた瞬間、オーマの方が先に炎魔法を発動して火薬に火をつけた。


____ボガァアアアアン!!


「くっ!?」


 ファイヤーボールの勢いも有って、激しい爆発がハツヒナを襲う。

だが、既にある程度距離を置いていたハツヒナには大したダメージにならなかった。


(狙っていましたわね・・・金属製の武器を奪えば、土属性の性質変化と炎属性のコンビネーションを使うと読まれていましたわ・・・)


だが、手の内を読まれても、ダメージの薄いハツヒナは冷静なままだ。

 そして、今度はハツヒナの方が、オーマの次の手を読み返す。


(この動きは私にダメージを負わせるため・・ではないでしょうね。だからと言って、後先無しでやった事ではないはず____なら!)


“状況を打破するための大技を繰り出すチャンスを得るため____”という答えを導き出す。

 そして、そう判断したと同時に、先手を取るため、薬物属性の魔法術式を展開する。

念の為、オーマからの速攻の可能性を考慮して、武器は針ではなく防御も可能な刀にする。


(逆にこちらが決着をつけて差し上げますわ!!)


 爆発の煙が薄まって相手が見えてくると、オーマはハツヒナの予想通り雷属性の魔法術式を展開していた。


「ハハッ!」


予想通りのオーマの姿を見て、ハツヒナは嬉々として毒刀を手に走り出した。


「私が一歩速かったようですわね!!」


 オーマを見れば、まだ術式を完成させてはいなかった。

ハツヒナの毒刀の完成の方が速い。最大のチャンスがハツヒナに到来する。これを捨て置く理由は勿論ない。

 ハツヒナはここで決めるつもりで、攻撃に出る。

自分が攻撃する前に、オーマが術式を完成させてしまうかも等とは考えない。


(間に合わせますわ!!)


ハツヒナは、これまでの戦いで一番と言えるほどの速度で鋭くオーマの懐に切り込んだ_____。


「はぁあああああ!!」


 そして毒刀での渾身の抜刀術を繰り出す_____


「セウド・フルゴラ!」


 オーマも魔法を発動し、その身に稲妻を纏う_____


「遅い!!」


_____ザンッ!


 オーマがハツヒナに電撃を浴びせるより、ハツヒナの抜刀術の方が一瞬速くオーマを切りつけた_____


「がっ!?」


 毒を流されて、オーマは電撃を纏っている状態のまま動けなくなる。

オーマの手からハルバードが滑り落ちた・・・。


「アハハハハハハ!決まりですわ!」

「オーマぁああああ!?」


 ハツヒナの勝利の叫び声が森中に響き渡る。

少しだけ回復してきているミクネの悲鳴も暗い夜に木霊した。


「さあ!覚悟なさい!私に傷を負わせたこと!ミクネとの仲を邪魔したこと!すべて精算させていただきますわ!た~っぷりと後悔させて差し上げます♪」


 オーマに毒を流すことに成功して、勝利を確信したハツヒナは勝ち誇り、これからオーマとミクネに行う“調教”を想像して、興奮で顔を赤く染めようとしていた____


____グシャ!


「かへっ!?」


そのハツヒナの恍惚とした表情が、オーマの拳で潰された_____


「がはっ!な、なじゃ!?」


完全に無防備でオーマの拳をもらってしまったので、顔がつぶれるどころではなく、脳も揺らされてハツヒナの視界がグラリと揺らされる______どころでもない


____バリバリバリィイイイ!!


「____ッ!?」


オーマの拳がハツヒナの顔を潰した後、刹那遅れてオーマの電撃がハツヒナを襲い、その体から自由を奪った。


「・・ッアァ!!」


ハツヒナを感電せることに成功したオーマは、ここで勝負を決めるため、そのままラッシュを仕掛ける____


(がぁ・・・が・・・な、何故!?)


 体が全く動かせなくなったハツヒナは、頭の中で“何故”を連呼し続ける・・・だが、ハツヒナには全く持って答えが出せなかった____。



 オーマがこの作戦を思い付くきっかけになったのは、閃光の勇者レイン・ライフィードとの死闘。

そこでレインが見せた最後の奥の手“パッゾ・フルゴラ”____自分の意識すら雷と融合させる狂戦士化の魔法。これからヒントを得た。

もちろん、オーマには属性融合(STAGE8)などという高度な技は使えない。

だが、自分自身に電撃を流すことは出来る。


 人間の体は脳からの電気信号が神経をつたって体を動かしている。

つまり、神経に直接電気を流せば、自分の意志や毒とは関係なく体を動かせるということでもある。

 オーマは自分自身に電気を流して、毒に侵された体を脳の信号ではなく、魔法の電気で動かしているのだ。


 魔法で体に流している電気は、どれだけ電力を抑えても脳の電気信号とは比べ物にならないほどの電力だ。

当然肉体は蝕まれる。

神経をつたって脳にも衝撃が来て、意識が飛びそうにもなっている。

この戦いの後、自分自身がどうなってしまうのかも分からない。

それでも、ミクネの様子を見た時、僅かながらにハツヒナの毒から回復して来ているのが見て取れたので、ハツヒナさえどうにかできれば後は何とかなると判断したのだ____。



____ドカァアン!!___バキッ!_________グシャ!


 オーマの攻撃は不規則でテンポはバラバラだ。攻撃箇所も、頭部、腕、腹、肩とバラバラだった。

まともに攻撃が入ったのは、最初だけ。これは本当にただ運が良かっただけだった。

外からの電気ショックで無理矢理体を動かしているも同然なので、その動きも稚拙で、先程までの洗練された動きは見る影もない。

それでも電撃さえ当て続けていれば、ハツヒナを感電させ攻撃し続ける事が可能だ。

 全く動けず、無防備に打たれ、耐え続けるしかないハツヒナ。

攻撃こそできているものの、自分自身を蝕みながらな上、まともな攻撃にならないオーマ。

両者の一騎打ちの最後は、互いに消耗しながら、オーマが倒しきるか、ハツヒナが耐えきれるかの我慢比べとなった____。



 ____ガンッ!___ドムッ__ガ__ガ・・・

元々不規則で弱々しかったオーマの攻撃が、更に遅く弱々しくなっていく・・・。


(く・・・くそ・・・・もう・・・意識が・・・・・)


 電気ショックで無理矢理を動かし、自身の体を酷使し続けてきたオーマが限界を迎える。

それでも攻撃し続けた。

負けるわけにはいかないと・・・この女だけは許してはならないと・・・。


 そして、オーマの意識は、この戦いの決着を自分で確認できぬまま、遠のいていくのだった____。

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