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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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悪女の狩り(5)

 リデルからの予想だにしない殺害予告に、ジェイルレオの思考は止まっていた。

リデルらしい冗談か何かかとも思ったが、言った後にリデルが放った殺気は本物だった_____。


「な、何を言っておるのじゃ!?お主!?ま、魔王様の為にわしを助けに来たのではなかったのか!?」

「・・・何でよ?アンタみたいな負け犬を助けて何になるのよ?引きこもり過ぎて忘れた?魔族は力こそ全て。元魔王軍幹部だからって、敗者に情けは無いわ」


 言いながらもリデルの視線と殺気は更に冷たくなり、周囲に居る野鳥や野ウサギたちが逃げ出し始める。

ジェイルレオもその小動物達と同じ様に脱兎のごとく逃げ出したかったが、リデルに向けられた殺気に足が震えて動けなかった。

代わりに、カチカチと音を鳴らしている歯を精一杯開いて、リデルの命乞いを始めた。


「ま、待ってくれ!相手が悪かったんじゃ!相手があの戦巫女ではければ____」

「でも、もう心が折れているでしょ?タルトゥニドゥに行くとか言い出していたし・・・もう帝国との戦いじゃ使えないわ」

「あ・・・ああう・・・い、いや!待ってくれ!そうじゃ!戦えずとも、わしが居れば新たな魔道具が____」

「強力な魔道具を作るには、それに見合う素材が必要でしょ?アンタを倒した連中を倒せる魔道具をアンタが作れるとは思えないわ。私が自作した方がマシ」

「う・・・うああ・・・」

「ふぅ・・・___諦めろ」


リデルは、会話を止める合図の代わりに、氷属性の魔法術式を展開する。


「ヒッ!?な、何じゃぁあ!?」


リデルが練り上げた魔力は圧倒的で、ジェイルレオは勿論、先程まで戦っていたヤトリ・ミクネ以上だった。


(な、何故!?魔王軍の隠密部隊の隊長でしかなかった小娘が、何故これほどの魔力を!?)


 元同僚とは思えぬ、自分とかけ離れた魔力を持つリデルに驚愕し、それと同時に自分では絶対に抗える相手ではないと示されてしまった。

“自分はこの女に殺される____”そう頭に過ったとき、ジェイルレオは悲痛な叫びを上げた。


「な、何故じゃあ!?だからと言って、何故わざわざ殺しに来たぁあ!!役立たずなら、殺す価値も無かろうがぁあ!!」

「あら、そんな事無いわよ?」

「は?」


 喉から血が出そうなほどのジェイルレオの叫びに対するリデルの返事は、酷く軽いものだった。


「アンタみたいなのでも、死ぬ事で魔王軍に役立てる事が有るのよ」

「な・・・なん____」

「____それ。レジネスハートよ。それを私が使えば、あの女の神の予言を私も扱えるようになるわ。魔王様の予言が本物かどうか確かめられるのよ。それってアンタの心臓に埋め来られているから、殺さないと取り除けないでしょ?」」

「あの女?神の予言?な、なんの話____」

「___ああ!いいの、いいの。別にアンタは知らなくても。どうせこれから死ぬんだから」

「ヒッ!い、いや、待ってくれ!詳しく話せば___」

「____死になさい♪」


リデルは最後に優しい笑顔を見せて、氷結魔法を発動した。


「いぎゃあああああああああああああ!!!」


そして、ジェイルレオの断末魔が、誰にも聞かれることなく木霊するのだった_____。






 ヤトリ・ミクネの潜在魔法はRANK5(内臓)で、肉体の免疫力なども強化できる。

そのため、毒を撃たれたとしても、大抵の毒は自力で解毒回復できてしまう。


「ぐ!・・・ぬ・・ぬぅうう!」


 潜在魔法に全ての魔力と集中力を使って、ミクネは体を回復させていく。

そして、少しずつではあるが体を動かせるようになり、立ち上がれそうになる。


____プスッ


「あぐぅう!?」


だが、もう少しで立ち上がれるというところで、再びハツヒナに針を刺されて、倒れ込んでしまう。


「フフッ♪」


 ハツヒナは、そのミクネの苦しむ様子を、この上なく楽しんでいた_____。



 ミクネはハツヒナに捕まって以降、ずっとこの調子で嬲られ続けていた。

日はすっかり落ちている____。

起き上がろうとするたび針を打たれ、体中に激痛が走る。酷い痛みだった・・・。

不意打ちされたときとは違い、今度の神経毒は、刺されるたびに激痛を伴う、ハツヒナの拷問用(調教用)の毒だった。



それでもミクネは、自分を奮い立たせ、何度でも立ち上がろうとしていた。

 だが長い拷問の末、気持ちだけでは体が追い付かなくなり、遂にミクネの膝がガクンと折れた。


「が!?」


体力と魔力の限界だった_____。


「アッハハハハハハ♪遂に限界ね♪でも、そうねぇ・・さすがと言ってあげますわ、ミクネ。この針にここまで耐えた者は居りませんから」

「う・・うるさい・・・こ、こんなの・・・大したことない・・・」


 ミクネは矢で射貫くような視線をハツヒナに向ける。

体を動かせないながら、並の者なら思わず怯んでしまいそうになる殺気だったが、向けられたハツヒナは嬉しくて仕方が無いといった様子だった。


「体力と魔力に加え、その気の強さ・・・もう、本当に・・・最高ですわ♪」


 ハツヒナは楽しんでいた。

ミクネの針を受けて見せる苦悶の表情、それでも心折れることなく敵意を向けてくる反骨精神、その全てがハツヒナの性癖を刺激するものだった。


「フフフ・・・あ、あは!・・ハハッ♪アハァ♪」


 そして、これからその精神を折り、屈服させて、その表情を快楽で堕落したものへと変えていくことを想像すると、ハツヒナの興奮は最高潮に達した。


____ビリビリビリィ!


 ハツヒナは魔法で錬成した剣でミクネの衣服を切り裂いた。

本当は手で無理矢理引き裂きたかったが、ミクネの衣装は最高級の魔道具で物理防御力も高いため仕方が無い。


「ヒッ!」

「あらァ♪」


少しムードが下がると思っていたハツヒナだったが、ミクネが初めて恐怖で悲鳴を出すと、途端に上機嫌になった。


「あらあらあら~♪そんな表情を見せて誘わないでくださいませ、ミクネ♪じっくり時間を掛けようと思っていますのに、抑えられなくなりそうですわ」

「く!・・来るなぁ!」

「そうそう・・・“まだ”そうやって反抗してくれていた方が盛り上がりますわ♪」


 そう言いながらハツヒナは、シルクで覆われているのかと思うほどのきめ細かく滑らかなミクネの白肌に指をなぞらせる。


「ああ・・・素晴らしいですわ」


その指先から伝わる感触の心地よさに、ハツヒナはうっとりした表情を見せる。

それとは対照的に、ミクネは表現しようの無い程の生理的嫌悪感に晒され、ミクネの限界が顔を見せ始めた。


「____オ・・オーマァアアアア!!」


ミクネは恐怖に飲み込まれそうになるのを、血を吐き出したような声を出して拒絶する。


「ふぅ・・・これから夜を共にする相手が居るというのに、他の者の名を叫ぶなんて、悲しいですわ・・・でも、まあ?他人に頼りたくなっているというのは良い傾向ですわ」


 ミクネの様な性格をしている人物が他人に頼りたくなっているという事は、本能的にもう自分ではどうにもできないと諦めているということでもある。

ならば後は、その“頼りたくなる他人”を自分にすれば、ミクネはもうハツヒナに依存して落ちていくだけである。

 調教の効果を実感し、更なる調教を行うため、ハツヒナは自身の指をミクネの肌で滑らせながら、ミクネの下腹部へと持って行く____。


「ヒィ!?や、やだぁあああ!!」

「残念。こんな場所では助けなど聞こえませんよ♪」

「____聞こえているよ!糞野郎!!」


「「ッ!?」」


 二人の言葉の間にオーマの声が差し込まれた____。

 ハツヒナが声のした方を向けば、その視界に赤い光が広がった。


「ファイヤーボール!?」


オーマの不意打ちだったが、ハツヒナは咄嗟にミクネとの距離を空けてこれを躱した。


____バリバリバリィイイイ!!


「ッ!?二発目!?」


ハツヒナが交わしたところに、オーマの雷属性の追撃が入る。


「アースウォール!」


だが、これにもハツヒナは反応して、防護魔法を間に合わせた。


「チッ!」


自身の不意打ち攻撃を防ぎきったハツヒナに、オーマは舌を打つ____。



 ハツヒナとミクネとの距離が近すぎたのが悔やまれる。

そうでなければ、初手で雷魔法を使えたが、二人の距離は炎魔法でもミクネを巻き込むほどの距離だったため、声を出して注意を向けさせ距離を作ったせいで、不意打の効果を半減させてしまった。


「ミクネ!無事か!?」

「オ・・・マ・・・まぁな」

「よ、良かった・・・」


不意打ちは当たらなかったが、ミクネを済んでのところで助け出せてホッとする。

 そしてミクネの無事を確認すると、オーマはハツヒナを睨みつけ、怒号を飛ばした。


「ハツヒナァア!!てめーやってくれたな!!」

「・・・・・・」


 オーマに怒号を飛ばされても、ハツヒナは無言で無表情だった・・・。

だが、その気配は変わっていて、周囲の温度が下がって行くのが分かった_____。

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