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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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悪女の狩り(1)

 ナタリア城の攻略が終わったので、少し時系列を整理しよう____。


 ベーベル平原での戦い後、シュウゼンからオウミ方面に向かう魔族部隊を発見したとの報告を受けた帝国軍は、ジョウショウ達ナタリア城攻略部隊とオーマ達オウミ迎撃部隊の二手に別れる。

それから両部隊とも出発して二日目には目的地のナタリア城とトウカイ道へ到着し、翌日三日目にはジョウショウ達攻城部隊がナタリア城への攻撃を開始した。

 オーマ達迎撃部隊は敵部隊への偵察を行って敵が二手に分かれるのを知ると、自分達もサヤマ湖とトウエツ街道の二手に分かれて進軍。

そして翌日の四日目。両組とも目的地に到着して昼を過ぎた頃、ハツヒナ・サレン組がサヤマ湖でシーヴァイス軍と、オーマ・ミクネ組がトウエツ街道でジェイルレオ軍との交戦を開始する。

 戦いは、同日の午後になると、サレンがサヤマ湖で准魔王シーヴァイスの撃破に成功する。

それと同じ位の時間帯に、ジョウショウ達攻城部隊も、准魔王であるバルドールとメテューノの捕縛に成功して戦いの決着をつけ、後は城の制圧と残党狩りだけとなる。

 そして残すは、オーマ・ミクネ組の、グレイハウンドの群れを召喚して逃走を始めたジェイルレオの追撃戦のみとなり、准魔王達との戦いは大詰めを迎えていた_____。






 現在ジェイルレオは、シーヴァイスと合流するため、サヤマ湖方面へと逃走しおり、オーマとミクネは二人で追跡していた。

 二人は、ほぼ同じ速度で横一線に走っている。

オーマとミクネでは、足の速さ(潜在魔法の能力)にもアマズル森に対する適正にも差があるため、ミクネの方が圧倒的に速いはずなのに、二人の追跡速度は殆ど変わらない。

 ミクネがオーマのペースに合わせているのかと言えば、そういう事ではない。

アマノニダイの村が襲われる可能性が有る状況で、ミクネは周りに遠慮する人物ではないし、オーマも合わせてもらおうとは思う人物ではない。

ミクネは確かに必死にジェイルレオを追いかけている。

 ミクネがオーマと変わらぬ速度になってしまっているのは、ジェイルレオから追跡の妨害を受けて、それの対処に迫られているからだった。

 ジェイルレオは自身の持つ魔道具からスケルトンを召喚し、追跡している二人に嗾けていた。

召喚されたスケルトンは、低級のアンデッドで、戦闘力は人間とさほど変わらず、武器も何も持っていない。

それもそのはずで、このスケルトン達は普段、魔法の研究の作業員や、魔法効果を試す実験体にしているもので、戦闘用ではない。

ジェイルレオは、そんな戦闘用ではない魔道具も持ち出して、なりふり構わず逃げていた____。


 「カカカカカ」

「くそ!またか!?邪魔だぁ!!」

「はぁあああ!!」


 目の前に現れたスケルトン達に、オーマとミクネは速攻の攻撃魔法を叩き込む。

スケルトンは、ミクネの強風でバラバラになり、オーマの炎で浄化し、ミクネもオーマも苦戦するどころか現れたと同時に瞬殺してみせた。

 だが時間稼ぎとしては効果的だった。

ミクネ達がジェイルレオに追い付くためには、潜在魔法を更に強化するか、風属性の飛行魔法を使いたいところだが、要所要所で低級アンデッドをけしかけられて邪魔される。

近隣の村を襲われる可能性が有るため、放って置く事も出来ず、対処している間にまたジェイルレオとの距離が離れてしまう。

追跡自体は、風魔法でジェイルレオの居る凡その方向から空気を吸い寄せ、潜在魔法で強化した臭覚で匂いを辿れるので、姿を見失っても追いかける事は出来ているが、現状距離は縮まっていない。

 そんな調子で、いつまでも距離を縮められない状況に、ミクネは苛立っていた。


「ミクネ!焦るなよ!奴の魔法か魔道具かは分からないが、必ず限界は来る!」

「___ッ!分かった!!」


 焦るミクネをオーマは励ます。

これにミクネは、素直に気を取り直して元気を出した。

共に連携してジェイルレオと戦ったからなのか、その前より強い信頼関係が二人の間に出来上がっていた。


 ところで、オーマの励ましの言葉は的を射ている。


 ジェイルレオ自身の魔力にも、魔道具の魔力にも限界はある。

そして今、そのどちらも底が見え始め、ジェイルレオの方にも焦りが出ていた。


「おのれ!あの娘ぇ!!しつこいのぉ!!やはりレジネスハートで・・・いや」


 中々距離を離すことが出来ない状況にイラつき、ジェイルレオは虎の子のレジネスハートを使うべきかと考えたが、直ぐにその考えを捨てる。

虎の子のレジネスハートは、この戦いではあと一回しか使えない。

ならば万が一に備えて、使いどころは慎重でなくてはならない。何とかレジネスハートを使わず、距離を離したいところだ。


「せめて、上級・・・いや、中級の魔獣でも使えれば・・・・無理か・・・」


追跡を振り切れず、ただ自身の魔力と魔道具を消費しているだけの現状に、いよいよ限界だとジェイルレオが感じ始めた時、ジェイルレオの前方の上空で2体のグレーターデーモンが飛んでいるのが見えた。


「ぬ!?お、おい!!お主ら!!」

「____ッ!?ジェイルレオ様!?」


 グレーターデーモン達は、ジェイルレオに気が付くと直ぐに下りて来た。


「お主らは何処の者じゃ?」

「シーヴァイス軍の者でございます、ジェイルレオ様。サヤマ湖での戦闘を終えて、周囲の偵察を命じられておりました」

「シーヴァイスの!?そうか!」


 相手がシーヴァイスの部下と分かって、ジェイルレオは安堵する。

そして、准魔王としての威厳を捨てて、グレーターデーモン達に助けを求めた。

 この時のジェイルレオには、この2体のグレーターデーモンが本当にシーヴァイスの部下なのかを疑う余裕すらなかった_____。


「お前達手を貸せ。こちらの相手は予想以上の戦力で退却するしかなかった。お主らは追撃してくる帝国軍を抑えろ」


「「御意!」」


 それを聞いて、グレーターデーモン達は“主人の命令通り”、ミクネ達の方へと飛び去って行った____。


「ふぅ・・・助かったわい・・・」


 グレーターデーモン達を見送りながら、ジェイルレオは少しだけ気を休めた。

 退却してきたと言うのは准魔王として恥ずべきことで、部下にも同じ准魔王にも示しが付かないが、ジェイルレオはそんな事気にしない。


「バルドールあたりなら准魔王のわしが逃げたと知ったら激怒するじゃろうが、シーヴァイスなら大丈夫じゃろ」


少しだけ体と魔力を回復させながら、そんな風に楽観的に考えていた。


_____ドゴォオオオオン!!


「始まったの。では、行くか・・・」


そして、ミクネ達とグレーターデーモン達の戦いの開始を告げる爆発音が響くと、ジェイルレオはまた直ぐに退却を開始するのだった____。




 「チクショー!!あのネコジジイ!まだこんな奴をけしかけて来る余裕があったのか!?」

「大丈夫だミクネ!今の俺達なら直ぐに片付く!!」

「おう!」


 突然のグレーターデーモンの強襲にミクネは驚くも、オーマの一言で直ぐに落ち着きを取り戻す。

オーマを信頼しているというものあるが、その信頼の根拠の一つに、ミクネ自身もオーマとの連携が上がっているという自覚があるのが大きな要因だった。


(オーマと一緒は戦い易いんだよなぁ・・・)


オーマは、180センチの長身に強面の顔という見た目に似合わず、ミクネと連携する際は上手く押し引きして、ミクネに動きを合わせてくれていた。


(余計なプライドが無いんだろうなぁ)


 オーマの言動からは、“俺がやる!”とか、“そうは言っても小娘だろ?”といった、ミクネの周りに居た大人にありがちな言動が無いのだ。

オーマは、しっかりと自分とミクネの戦力を把握した上で、戦いの状況に合わせて柔軟に動いていてくれている。

今も、恐らくグレーターデーモン2体を即行で倒すならミクネがアタッカーを務めた方が良いと考えたのだろう、ミクネに励ましの言葉を伝えながら前に出て牽制の速攻魔法を放ち、敵を引き付けてくれていた。


(プライドが無い___ってより目的遂行意識が高いのか?なら、反乱に関しても具体的に進めているのかな・・・)


 ミクネはこれまでずっと、オーマ達が帝国の反乱組織である可能性を頭の片隅に置きながら一緒に戦ってきた。

結局のところ、初対面の時以降オーマ達から尻尾を掴ませてくれることは無かったが、それでも所々(特に、第一貴族のハツヒナやジョウショウといるとき)では、その言動から何かを腹に抱えている様に見える時があった。


(オーマやヴァリネスは信用できる・・・もし、本当に反乱を考えているなら____)



 “自分もその反乱軍に加わりたい!”



 ミクネはそう思い始めていた_____。

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