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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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准魔王との戦い(18)

 メテューノからの攻撃命令を受けて、前衛のワイバーン部隊を先頭に、アルケノン・ミノタウロス、スカルドラゴンライダー達上級魔族が後に続いて、降下突撃の勢いをつけるため、急上昇する。

それ以外の魔物達は前衛の突撃をサポートすべく、魔法術式を展開した____。




 「・・・・・・」


 ジョウショウはその敵の攻撃動作を見てもニヤついた表情を変えずにいた。

これはジョウショウの中で敵の動きが予想通りだった事を意味する。

そして、予想通りならば特に言う事は無いため、予定通り進めるだけだと無言で右手を上げ、ジョウショウ自身も魔法術式を展開した。


「インフェルノ・ウォール発動!!」


「「了解!!」」


「フレイム・アーマー展開!!」


「「了解!!」」


ヒノカグヅチの重装歩兵隊のみ、砲撃隊をカバーするため上級防護魔法のインフェルノ・ウォールを集団魔法で発動して炎の巨壁を作り、他の部隊は中級の集団防護魔法を発動して炎の鎧を身に纏う。




 「防御に入った!?」


メテューノは、てっきり先の速攻に続いて波状攻撃を仕掛けてくるものだと思っていたため、相手の行動に面食らう。

だがそれも一瞬の事だった____


「___!?あの男の術式・・そういう事か!」


メテューノは敵の総大将ジョウショウの魔法術式を見て、相手の意図に気付く。


(今から兵に別の指示を出しても間に合わないね・・余計に被害が出る。・・・仕方が無いね!)


 前衛が降下態勢に入っているため、今更命令を変えられない(補足をすると、変えられないタイミングでジョウショウが術式を展開した)。

そのため、部下達にはそのまま降下突撃を実行させ、自分だけ作戦を変更して予定とは別の魔法術式を展開する。


_____ズドドドドドドド!!_____ゴォオオオオオオオ!!


 魔族軍後衛の部隊が、前衛の突撃部隊を援護するべく牽制の攻撃魔法を放つ____。



 魔族側の魔法攻撃は強い。

特に上級魔族のグレーターデーモンとボマー・ヘルコンドルの魔法攻撃は強力だったが、集団魔法の効果を得られていないので、その攻撃もヒノカグヅチ重装歩兵隊の集団防護魔法で作られた炎の壁に阻まれてしまう。

 もっとも、この牽制攻撃は帝国側の魔法攻撃の第二波を想定して実行したものなので、帝国側が防御に入っているなら牽制など必要無かっただろう。

必要ない上に、簡単にかき消されてしまったため、その分降下突撃する前衛部隊に負担が圧し掛かる。

それでもやっぱり作戦を変えられないため、メテューノは構わず突撃命令を出した____


「「グギャァアアアアアアア!!」」


_____ギューーーーーーン!!


 魔族軍の前衛部隊が降下突撃を開始する。

ワイバーン部隊を先頭に、スカルドラゴンライダー部隊、アルケノン・ミノタウロス部隊が続く。

 そして、スカルドラゴンライダー部隊が降下しながらRANK2の金属性魔法を発動。オリハルコン製の大型のクロスボウを錬成した。

狙うは最も強力な防護魔法インフェルノ・ウォールを発動している重装歩兵隊で、スカルドラゴンライダー達が各々ヒノカグヅチ重装歩兵隊の小隊長達に狙いを定める。

だが、相手の心臓目掛けてクロスボウを発射しようというところで、ジョウショウが魔法術式を完成させた。


「____来い。叢原火(そうげんび)


 ジョウショウが地面に敷いた魔法術式がより一層輝きを強めると、空中に一体の幻獣が姿を現した_____。



 ジョウショウが召喚したこの“叢原火”とは、東方の地で崇められている幻獣で、東方の地では“妖怪”とも呼ばれている。

見た目は胴体の無い初老の男性の生首で、その大きさは全長5メートルも有り、炎を纏った車輪が5輪、自転しながらその生首の周りを回っている。




「チッ!やっぱり召喚魔法だった!人間の癖に!」


 メテューノはジョウショウの召喚魔法を見て、苦虫を噛みつぶした様な表情で苛立ちを露にした。

というのも、メテューノは帝国の第一貴族が強敵だと認めてはいたが、それでも人間であるが故、召喚魔法まで扱えるレベルだとは思っていなかった。

 従属魔法で比較的簡単に召喚魔法が扱える魔族と違い、他の種族が召喚魔法を扱うには契約魔法でなければならず、それには相当高い信仰魔法の練度が必要になり、人間では生きている間に到達するのは不可能と言われている領域だ。

帝国基準で言えばSTAGE7にもなるもので、メテューノが驚くのも無理は無かった。

 ところで、STAGE7といえば帝国ではカスミ・ゲツレイしか届いていないとされる領域なのだが、ヒノカグヅチの兵士達に驚いた様子は無い。

 それを見て、ヒノカグヅチの中に交じって出番まで待機しているレインは、ジョウショウがこの召喚魔法を使ったのが、これが初めてではないのだと理解した。


(やっぱり・・・兄様が言っていたように帝国第一貴族だけが持っている魔法技術が有るみたいですね)


 ジョウショウの召喚魔法とヒノカグヅチのリアクションで、世で言われている帝国の魔法技術のレベルはウソであり、情報工作というのが明らかになった。

 本当はもっと帝国の魔法技術は進んでいて、第一貴族達が独占しているのだろう。

 これを知った上で改めて考えてみれば、出身や血筋などが魔法の才と関係無いのだとしたら、少しでも多くの才人を発掘して自国の軍事力を高めるのは当然で、それと同時に自分達の権力が盤石になるよう開発した魔法技術の一部を自分達だけが独占して置くというのも支配階級として当然なのだろう。

レイン自身も支配階級の人間なので、妙に納得できてしまった。




____ビュン!!ビュン!!ビュビュン!!ビュン!


 突如現れて妖怪に、スカルドラゴンライダー部隊は攻撃を止める事ができず、そのままクロスボウを発射する。


____ボジュウウウウウ!!


 オリハルコン製の巨大なクロスボウから放たれたオリハルコンの矢は、叢原火の炎を纏った車輪によって焼き消されてしまった。

これがヒノカグヅチの帝国兵だったならば、防護魔法を貫かれていただろう。

ジョウショウが召喚した叢原火の火力は、ヒノカグヅチの集団魔法さえ凌駕していた。


「やれ!叢原火!!」

「ゲェッ♪ゲェッ♪ゲェッ♪」


 ジョウショウからの指示が出ると、叢原火は不気味な笑い声を上げて、炎を纏った車輪を回し始める。

車輪の自転も生首の周囲を回る回転速度も、回れば回るほど速くなり、速くなれば速くなるほど炎の激しさが増していく____。


「___チィ!迎撃しな!!」


 すでに魔法術式を展開していてメテューノは手が埋まっている。

そのため、叢原火への攻撃をアルケノン・ミノタウロス部隊に命令した。


「「グォオオオオオオ!!」」


「___させん!メガフレイム!」


 だが、アルケノン・ミノタウロスが仕掛けるより速く、ジョウショウが速攻の上級魔法を発動する。


「チッ!あの召喚といい、この速攻といい鬱陶しいね!!」


 召喚魔法、速攻の上級魔法と、人とは思えぬほどの魔法の手腕を見せるジョウショウに、メテューノはいよいよ苛立ちを隠せなくなり捨て台詞を吐く。

それもこの後の展開が分かってしまっている故、仕方が無い事だった。


____ズゴォオオオオオオオ!!


「「グォオオオオオオ!!」」


 叢原火に向かっていたアルケノン・ミノタウロス達に、ジョウショウが放った業火が襲い掛かる。

一人での速攻攻撃魔法でありながら、凄まじいその火力に、アルケノン・ミノタウロス達は絶命こそ免れるが、ダメージを負って身動きが取れなくなる。


「ゲェッ♪ゲェッ♪ゲェッ♪」


そして叢原火が準備万端整えた笑い声を上げると、激しく回転して燃え盛る車輪を発射した_____。


____ゴォボオオオオオオオオゥ!!


「「____ッ!?」」


「「ギッ!?_____」」


「「______!!」」


 叢原火の火炎車輪は空を駆け巡り、敵飛行部隊に大ダメージを与える____。


 後衛のフェイク・フェニックスとグレーターデーモンは、炎耐性を持っているのに加え、防御魔法も間に合わせたため無事ではあった。

中衛のヘルコンドルとボマー・ヘルコンドルは機動力が有るため回避しようとした。だが、ボマー・ヘルコンドル部隊とヘルコンドル部隊の左右の部隊は回避できたが、ヘルコンドル部隊中央は回避が間に合わず直撃を受け死亡。

前衛に至ってはワイバーン部隊がほぼ全焼して落下。集団防護魔法を発動中のヒノカグヅチに衝突して全滅。

アルケノン・ミノタウロス部隊も、ジョウショウのメガフレイムで動きを止められていたので、叢原火の業火を無防備で受けてしまい全滅。

スカルドラゴンライダー部隊はオリハルコン製の鎧のおかげで辛うじて無事だったが、スカルドラゴンの方が焼き消されてしまい落下。落ちた所をヒノカグヅチの砲撃隊に狙われて全滅した。


 結果、メテューノの精鋭飛行部隊は半壊した____。


 「なめんじゃないよ!!親父ぃ!!」


 だが、メテューノは激しく怒りを顕わにして叫び、完成させた魔法術式をカウンター気味に発動した。


_____ズゴゴゴゴゴゴ!!


 メテューノのそばに一体の雷を纏った竜が現れる。

メテューノが部下を見捨てて、土壇場で作戦を変えて発動したのは召喚魔法だった。


「クゥェエエエエエエエエエエ!!」


 召喚された雷竜は、奇声を上げながら口から電撃を放ち、叢原火を撃ち貫いて見せた____。

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