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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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准魔王との戦い(17)

 城門が開き、帝国兵が城壁内に侵入していく中、総大将のジョウショウは先程と変わらぬ小高い丘の上で、無傷の自身直属の兵団、ヒノカグヅチを侍らせて戦況を見ていた。

城壁の上にいる敵砲撃隊は攻め込まれているので、こちらに砲撃する余裕は無いだろうし、自分達のところまで来た敵兵はとっくに片付けているため、高みの見物という訳だ。


 ジョウショウはサンダーラッツ遊撃隊長フラン同様に、潜在魔法RANK4(神経)を持っているので、神経を研ぎ澄まして視力を上げられる。

そんな能力を持って、開けた景色で誰にも邪魔される事も無く戦況を見ることが出来るため、戦況の細かい変化までジョウショウは見逃さない。

そのため、メテューノの飛行部隊が動き出した事にも直ぐに気が付いた。


「・・・長が居るか?」


 ただの上級魔族が指揮する精鋭部隊の可能性も有るが、本丸から出撃したならば敵の総大将が、城門が開いたところで打って出る決断をした可能性も有る。

魔族側にちゃんと状況判断ができる者が居るなら、魔族側はもう直接ジョウショウを狙わぬ限り勝利が無い事は分かるはずである。


「ふむ・・・」


 ジョウショウは、自身が今発動している潜在魔法を更にもう一段強化して、敵飛行部隊を観察する。

 敵飛行部隊はこちらに向かって一直線に進んでくる。

こちらの総大将を狙う部隊と見てよさそうだ。

速度も有る。

下は乱戦となっているため、殆ど邪魔されず進んでくる。

 だが途中、城壁の上で援護に徹していた帝国の一部隊が、その飛行部隊を補足し、集団魔法で迎撃を行った。


「_____!!」


 帝国兵は土属性の集団魔法で強化された岩の槍を大量に発射した____。


「_____!!」


 敵側はそれに対して、一体だけが魔法を発動する____。


____ズドォオオオオオオオオ!!


「ぬっ!?」


 一体の魔族が魔法を発動すると、視力を強化したジョウショウだけでなく、ジョウショウの後ろに居る兵士達でも目で見て分かるほどの旋風が吹き荒れる。

どんな魔法かまでは分からなかったが、その風魔法は飛行している魔物全員(遠くではっきりしないが凡そ500)を防護する規模でありながら、帝国兵の集団魔法で打ち出された岩の槍を簡単に吹き飛ばし、更には連れている飛行部隊の飛行速度を加速させる役割もこなしていた。


「___並の魔族ではない!」


 500体もの飛行する魔物を護る規模。帝国軍の集団魔法を弾く威力。その規模と威力の魔法を、相手の攻撃に間に合わせて発動する術式速度。

この様な芸当をたったの一人で可能にする魔族など、ジョウショウの知る魔族の中で該当する者はいない。

 ジョウショウは、まず間違いなく相手はこちらのターゲットの魔族の長だろうと確信した。


「フフッ、来たか・・・逃がさんようにせねばな・・」


 ジョウショウはスッと右手を上げる。

それだけで意図を察したヒノカグヅチの副長はジョウショウの横に歩み寄る。


「予想通りだ。作戦パターンA」

「御意」


 会話もそれだけだった。それだけでヒノカグヅチの副長は直ぐに各隊長に指示を出す。

それと同時に、アマノニダイのシュウゼンのところにも通信を送り、この場から離れるよう指示を出す。

そして敵の強襲飛行部隊を迎え撃つ準備に入る。その準備には一分と掛からなかった。

 その間に、相手の強襲部隊が地上からの迎撃を躱して城壁を超え、丘の上に居るヒノカグヅチへと迫る。

その近づいてくる一団を見て、普段冷静で大人しいジョウショウは細い目をカッと目を見開きながらニヤリと笑った。


「はっはっはっ!!これはこれは!大盤振る舞いじゃないか!結構結構!!」


 戦いを前にして闘争心が湧いて来たのだろうか?____それもある。

だがジョウショウが笑ったのは、それだけが理由では無くて、敵が近づいて来た事で、はっきりと敵部隊の編成が確認できて、その部隊編成が破格であるがために笑ったのだ。


 敵の強襲部隊の編成は、前衛にワイバーン約200体、中衛にヘルコンドル約100体、後衛にフェイク・フェニックス約150体という構成だ。

この辺は別に特別では無い。

数も質も良い、滅多にお目に掛れない部隊構成ではあるが、“破格”というほどではない。

 この強襲部隊を“破格”としているものは、その周囲を飛ぶ上級魔族達だった。

 ワイバーン部隊の手前の最前列にアルケノン・ミノタウロスが6体。中衛のヘルコンドル部隊の少し上にボマー・ヘルコンドルが4体飛んでおり、少し下にはスカルドラゴンライダーが8体。後衛のフェイク・フェニックス部隊の更に後ろにグレーターデーモンが10体飛んでおり、総勢28体もの上級魔族が編成されている。


 ちなみに、スカルドラゴンライダーとはヤギに似た頭部を持った体長3メートルほどの悪魔種族で、RANK2の金属性を扱えるのが特徴だ。

その力を使って、竜の鱗も貫くオリハルコンを錬成できる。

金属性が扱えるため、攻撃方法は多彩で射程距離も選ばない。

オリハルコンで鎧を作れば物理防御力も魔法防御力も上級魔族で上位に入る。

それに加え、古くから有るスカルドラゴンライダー種族固有の儀式で、殺した幻獣種の飛竜をアンデッド化して使役する術を持っているため、飛行能力と機動性も加わり、攻守・機動性・魔術と全てにスキが無い。


 上級魔族が30体近くも入っている魔族部隊など、ジョウショウはこれまで見た事が無かった。

過去の資料でも、魔王大戦でしかこれほどの部隊構成は記録に残っていない。

正に“大盤振る舞い”であった。

 だが、それらの上級魔族以上にジョウショウを高揚させる存在が敵部隊最前列中央に居た。


「・・・ハーピィ?だが、あの翼は・・竜族?・・・混血種?亜種か?どちらにせよ、フフッ♪面白い!」


“捕まえたらカスミも喜びそうだ!”____なんてことも思いながら、異質で圧倒的な気配を放つ女魔族に闘争心を剥き出しにして、ジョウショウは楽しみを待ちきれない様子で指示を出した____。


「全軍!あの竜の翼を持つハーピィをターゲットと断定!砲撃隊は敵前衛に向かって速攻!」


「「了解!!」」


 ジョウショウの怒号の命令は、向かってくる敵部隊に聞こえる程で、やや密集した陣形のヒノカグヅチ全員にまで響き渡る。

 そしてジョウショウの怒号が響くと直ぐに、ヒノカグヅチは全部隊が炎属性の魔法術式を展開し、赤い輝きを放った____。




 「ッ!?来るわよ!____!?」


____ドンドドンドンドンドン!!


メテューノが部下に警戒するよう促すや否や、ヒノカグヅチの砲撃隊が速攻でファイヤーボールを発動してくる。


___バシィ!!


メテューノは自慢の強脚で敵の火球を蹴り飛ばすと、感心した様な声を出した。


「へぇー、速攻でこの威力・・・なるほど。この部隊が総大将の部隊で間違いないね」


 メテューノはこの敵部隊からの攻撃でそう判断する。

メテューノが受けたファイヤーボールは速攻で発動した中級魔法でありながら、そういう次元ではない威力を持っていた。

事実、メテューノは片足で難なく払い除けたが、後ろに居るワイバーンたちは大ダメージを受け落下する者が居たり、直撃を受けた者に至っては即死する者も居たりした。

通常の速攻では、こうはならない。



 集団速攻魔法____。

集団魔法を速攻で合わせることで、高速かつ高火力の攻撃を実現する魔法攻撃手段。

 ただでさえ息を合わせるのが難しい集団魔法を速攻で合わせなければならないため、その難易度はサンダーラッツでも実演不可能であり、第一貴族の中でも、三大貴族やジョウショウの様な軍団長クラス直属の兵団に配属される精鋭達だからこそ実演可能な高等技術である。



 「狼狽えるんじゃないよ!!」


帝国軍の高速で高火力な魔法攻撃に魔族側は一瞬動揺が走るも、そこはスカーマリスの准魔王の精鋭、大将のメテューノの一声ですぐに持ち直す。


「敵の第二波が来る前に仕掛けるよ!前衛はダイブの準備だ!後衛はしっかり援護しな!!」


攻守が入れ替わり、今度はメテューノが攻撃命令を出した___。

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