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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
184/358

准魔王との戦い(16)

 帝国軍によるナタリア城攻城戦は、城の城門が開いたことで次のフェーズに移っていた____。


___ズドガァアアアアン!!____バカーーーン!!____ドーン!!ドドン!ドン!!


「「うぉおおおおおおお!!」」


「「ゴォアアアアアアアア!!」」


 城の城壁の外と内、そして城壁の上と、門が開いてから、あちらこちらで魔法の爆音と兵士達と魔物達の怒号、そして悲鳴が木霊している。

 その中で最も騒がしいのは、やはり城壁の上だった。

 魔族側が最も有利に戦っていた場所であり、遠くからの砲撃を除けば、ほぼ一方的に攻撃できる場所。

当然門が開けば、城内に侵入する帝国軍の邪魔にもなるので、最初に攻撃を行う必要が有る場所でもある。

 そこにいる魔族軍は砲撃隊が多いため、接近戦に向いてはおらず、今度は魔族側が一方的に攻撃される形になっていた。


「ウテッ!」


「「・・・・・」」


 圧倒的に不利になった状況だが、恐怖を知らぬアンデッド兵は倒される運命になってもただ黙々と帝国軍に攻撃魔法を撃ち込む作業を繰り返している。


____ドン!!ドドン!ドン!!ドンドン!!


 帝国兵に向かってアンデッドたちの火球が飛ぶ。

そこにサンダーラッツ突撃隊長のロジが、滑り込むように間に入って魔法を発動した。


「ハイアクア・ウォール!」


____バシュン!!バシュバシュン!!バシュン!!


 追い込まれても逃げも恐れもしないアンデッド達の攻撃魔法を、ロジは自分一人の防御魔法で防ぎ切る。

逃げも恐れもする感情を持つ人間であるが、だからこそ戦況が有利になれば、炎が燃え上がるかの様に攻撃に勢いが増し、先程まで顔に出ていた疲労はどこかへと飛んで行っていた。


「突撃してください!」


 そして戦況が有利になって、隊長が勢い付けば兵士達も勢い付くというものだ。

・・・もっとも、ロジの部下達にはあまり上記の内容は当てはまらないが____


「「ジョジョガイジュマジジャアアアアアアア!!!(了解しましたーーーー!!)」」


____ドォゴォオオオオオオン!!


 サンダーラッツ突撃隊の兵士達が敵陣に突っ込んでいく。


____バカァアアアアン!!____ドコォオオン!!____ズドドドドドドド!!


突っ込んだ突撃兵士達は、そのまま敵兵のスケルトンメイジの骨をバラバラにし、エレファントマンの巨体に雪崩込み、リザードマンにかぶりつく____。

正直どっちが魔族か分からなくなる様な荒ぶり方で突き進んで行った。


「次は___」


 兵士達の活躍で余裕ができたロジは、次の相手を探す____。

周囲を見渡せば、ロジ達が進んでいる城壁の進行方向にも、その反対方向にも、召喚魔法を準備しているグレーターデーモンの姿が映った。


「いけない!皆さん!____」

「ロジ!!大丈夫だ!」

「お任せを!」


敵の召喚魔法を阻止するためにロジが命令を出そうとした刹那、二人の聞き慣れた声が聞こえてきた。


「行け!!」

「フレイムレーザー!」


____ビュン!!___ゴウッ!!


「「グォオオオオオオ!?」」


 声を上げたのは、別ルートから城壁の上に上がって合流したフランと、城壁の下でイワナミの隊に守られながら援護攻撃を行っていたクシナだった。

二人は声を上げると同時に、自身の最も得意とする遠距離攻撃でグレーターデーモンを狙撃し、重傷を負わせて召喚を未然に防いだ。

そしてそこに遊撃隊と突撃隊が雪崩込み、グレーターデーモン達をミンチに変えるのだった____。


 「フラン!」

「おう!ロジ!相変わらず突撃隊はイカれてんなー?どっちが魔族か分かんねーから危うく攻撃するところだったぜ」

「失礼ですよ、フラン。皆さん真面目なんですよ」

「おー・・・マジか。この超ド天然」

「はい?」

「何でもねえよ」


サンダーラッツ突撃隊と遊撃隊は城壁の上で合流して、その隊長の二人はそんな軽口を交わしている。

その様子を、少し離れた所から、ヴァリネスが眺めていた。


「・・・別ルートから城壁の上に上がった2隊が合流した。他の場所も順調だし・・城壁の上と本丸の周囲はもう大丈夫ね」


 これから更に帝国兵が門から入ってくれば、城壁の上も城内の施設も一刻ほどで制圧できるだろう。

となれば、残すは本丸の城と、今回のターゲットの敵総大将になる。


「どうしようかしら・・・。本丸に行く前に、このまま他の施設の攻略でも_____ん?」


“切り札”が有るとは言え、敵総大将は危険な相手なので、どうしたものかと頭の中で考えながら周囲を見渡していると、ヴァリネス達に近づいてくる部隊が居た。


「あれは・・・ウザネ?」


近づいて来たのは、ブルードラゴンナイツの近衛を10人ほど連れた師団長のウザネだった。


「ヴァリネス・イザイア!」

「お疲れ様です。ニジョウ師団長」


 戦場ゆえ、ヴァリネスは軽い会釈で挨拶してウザネを迎える。

ウザネの方も同じく、戦場ゆえに時間を掛けぬよう、来て早々に本題に入った。


「戦況はこちらに有利になるばかり。周囲の城壁も後は後続の部隊が片付けてくれるだろう」

「同感です。こちらも別々のルートから城壁に上げた部隊が合流したので、本丸の攻略および敵の総大将の捕獲に移ろうかと考えておりました」

「そうか、さすがだな。ならば話は早い。その役目、私が代わろう」

「・・・はい?」


 今回の作戦では、事前の会議でヴァリネス達サンダーラッツが敵の総大将の捕獲を請け負う事になっていた。

 “切り札”を持っているという事と、自身の東方軍の被害を減らしたいというジョウショウの考えだとヴァリネスは思っている。

その時の会議には勿論ウザネも居たはずなのだが、ここに来て代われと言われヴァリネスは少し困惑した。


「私が代わりにやってやると言っているのだ。ジョウショウ閣下はお前達でも大丈夫だと仰っていたが、お前達では被害が大きくなって大変だろう?我々ブルードラゴンナイツの方が魔族との戦いに長けているから被害を最小に抑えて敵総大将を捕縛できるだろう。お前達には他の施設の制圧を任せたい」

「・・・・・」


 ウザネの強引な言い分を聞いて、ヴァリネスは内心でため息をついた。


(はあ・・・強欲)


 つまりは敵総大将の捕獲などという“美味しい所”を、他の軍団、まして平民の人間に譲りたくは無いというのが本音なのだろう・・・。

作戦会議ではジョウショウが居た手前、強くは反対できなかったが、戦いが始まり、兵が入り乱れれば、役目を奪っても結果さえ出せればいいと考えたのだろう。


(こういうところはやっぱり第二貴族ね・・・でも___)


 ヴァリネスは不満な顔を一切見せず返答した。


「分かりました。確かにその方が被害は少なくて済むでしょう。お願いいたします」


 これはヴァリネスの本心だった。

とっくの昔に帝国に愛想が尽きて、反乱軍まで結成したヴァリネス達にとって、命の危険を冒してまで帝国のために上げる手柄など無い。

立場上、今はまだ耐えているが、そもそも帝国のために戦う気自体がさらさらないのだ。

ウザネの提案(というより命令)はヴァリネスにとってはむしろ望むところなので、第二貴族のウザネを不快にさせてまで断ることは無い。

 ヴァリネスの返答を聞いて、ウザネは満足そうに頷いた。


「素直で結構。では悪いが___」

「“悪い”などという事はございません。あの子にはウザネ様と合流する様に指示を出しておきます」

「うむ。では本丸の門の前で合流するよう伝えてくれ」

「畏まりました、ニジョウ師団長。ご武運を____」

「そちらもな____」


 用件が終わると、ウザネはまた近衛を連れて立ち去って行った____。




 「よろしかったのですか?」


ウザネが立ち去った後、ヴァリネスの隣に居た通信兵のナナリーが心配そうに声を掛けてきた。


「何で?戦わずに済んで、願ったり叶ったりじゃない?」

「それはそうですが・・・あの方が・・・」

「それは大丈夫でしょ。また強くなっているし、あの子・・・・てか、そもそも“死なない”し。ウザネの相手にしたって私達と違って同じ階級だし。前のウザネとのやり取りから見ても上手く立ち回るわよ」

「そうですか」

「じゃーそういう訳だから、数人をイワナミの隊まで伝令に走らせて。それと城壁の上に居る、ロジくんとフランにもこちらと合流する様にね」

「分かりました」

「それじゃー移動するわよ!他の部隊と合流、城の施設の制圧に移る!」


「「了解!」」


 ヴァリネスは、ウザネがわざわざ面倒を引き受けてくれた事に感謝して、他の部隊と合流するために本隊を連れて移動を開始した____。

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