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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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准魔王との戦い(14)

 サレンがシーヴァイスと一騎打ちを始め、オーマとミクネがジェイルレオを追い詰めている頃、ナタリア城(バルドール城)の攻略組も攻撃開始二日目にして事態を大きく動かそうとしていた。

 状況を変えたのは、ナタリア城の城門から20メートルほど離れた場所で陣形を組んで城門に攻撃中のウザネ直属の青龍騎士団ブルードラゴンナイツだった____。




 「各隊!アクアランス・ウェイブ準備!!」


「「了解!!」」


 東方遠征軍第二師団師団長のウザネが、戦場の騒音をかき消す程の声で叫び、命令を出す。

そして、命令を受けたブルードラゴンナイツの各隊長の指示の下、兵士達は水属性の集団攻撃魔法の準備に入る。


「ヤラセルナ!ウテッ!」


「「・・・・・」」


_____ドンドドンドンドンドン!!


 帝国軍の一部隊が魔法術式の“ため”に入ったのを見て、ナタリア城の城壁の上に配置されているスカルメイジ砲撃部隊が、一斉にブルードラゴンナイツに向かって砲撃を開始する。


「ハイロック・ドーム展開!!」


「「了解!!」」


 その敵の砲撃に対して、ブルードラゴンナイツは何もしない。

代わりに、その数メートル後方に展開している、ハツヒナの東方防衛軍第二師団所属の土蜘蛛騎士団デーモンスパイダーナイツが一部の護衛部隊を残して、ブルードラゴンナイツを守るため、準備していた集団防護魔法を発動した。


____ドゴゴゴゴン!!ゴゴンゴン!!


デーモンスパイダーナイツの一糸乱れぬ集団魔法によって造られた岩のドームは、てんでバラバラに撃ちこまれたスカルメイジ部隊の魔導砲撃ではビクともしない。


「こちらも行くぞ!撃てぇえーーーー!!」


____ズゴォオオオオオオオ!!


 更に、その後方の丘の上で陣を敷いているアマノニダイ軍が、シュウゼンの号令で遠距離砲撃を行う。

帝国軍ほど上手く集団魔法の効果を得られてはいないが、それでも城壁の上でブルードラゴンナイツを攻撃している一部隊を殲滅し、敵の攻撃数を減すことに成功する。


「今だ!撃てぇええええええ!!」


 そして、味方の援護で十分に準備ができたブルードラゴンナイツの集団魔法がナタリア城城門に撃ちこまれた。


____ズドドドドドドドドドドド!!


鋭利な槍が混じった津波を受け、ナタリア城の正門はいくつもの風穴を作り、メキメキと悲鳴を上げた。

そうして城の内側に水を漏らし、ギギギと呻きながらも、それでもまだ人を通さぬ門として機能はしている。


「ふん。だが、次で行けるだろう・・・。もう一度だ!アクアランス・ウェイブ準備ぃ!!」


「「了解!」」


 後もう一撃で門が開くと見たウザネは、再びブルードラゴンナイツに集団攻撃魔法の指示を飛ばした___。



 その城門攻撃組の左右に、周囲の敵を掃討する遊撃組が居る。

左手がウザネの東方遠征軍第二師団所属の砂兎戦士団サンドラビットウォリアーズで、右手はヴァリネスが指揮官代行を務めるサンダーラッツだ。


「索敵をしているユイラから入電!敵伏兵確認!2時の方向にストーンバジリスク2体!3時の方向にソル・リザードマン100!___ッ!?」


 ナナリーがヴァリネスにユイラからの通信内容を報告しているところで、城壁の上の敵が召喚魔法を発動し、ヴァリネス達の足下で魔法術式を光らせた。


____ゴゴゴゴゴ!


その召喚魔法で、ヴァリネス達本隊の周囲に、スケルトンナイト約40体のアンデッド歩兵部隊が現れる___。


「副長!?」

「また!?これで何度目よ!?各自応戦しなさい!」


「「了解!」」


 城の周りで遊撃を行っているサンダーラッツは、幾度となくこのアンデッド召喚攻撃を受けていた。

アンデッドに有効な炎属性を持つ者が多いサンダーラッツにとっては大した敵ではないが、こちらの陣形、間合いを無視して何度となく襲って来られるのは、戦闘経験豊富なヴァリネス達でもうんざりする思いだった。


「ナナリー!イワの部隊は!?」

「問題ありませんわ!罠やアンデッド召喚を発動されても、リザードマン部隊を相手に陣形を維持して応戦できていますわ!」

「なら何とかなるわね!」


 前衛の重装歩兵隊が崩れれば、この様な乱戦では退却するしかなくなるだろう。

この苦しい状況でも持ち堪えみせるサンダーラッツの命綱にヴァリネスは心の中で感謝した。

 もっとも、イワナミの隊にはジェネリーがいるので、いざとなれば何とでもなるのだが・・・。


「召喚を行った術者はフランに狙撃させなさい!それとクシナ達に伏兵のストーンバジリスクへ砲撃命令!ソル・リザードマン部隊にはロジくん達を直ぐに向かわせて!」

「了解しました____」

「ったく・・・損な役回りね」


一通りの指示を出して、ヴァリネスは溜め息と愚痴を一つずつ出して一呼吸置く。


 城門攻撃組の周囲の敵や罠を食い破るヴァリネス達の役割は、この攻城戦で一番の激務だろう。

特に、地上の伏兵やトラップに、城壁の上からの攻撃魔法、アンデッド召喚と、次から次へと変る状況に対応するべく指示を出すヴァリネスの負担は相当なもので、城の攻略二日目にして既にヴァリネスには疲労が溜まっていた。


「だからって泣き言は言えないわよね。ベーベル平原じゃサボらせてもらったわけだし・・それに___」


 ヴァリネスは周囲を十分に警戒しながらチラリと城門の方を見る。

見れば、ナタリア城の25メートル以上ある高く厚い門は、あちらこちらが欠けており、何もしなくてもギギギギと呻き声を上げている。

更に付与されている防護魔法も弱っていて、今にもその効果が消えそうになっている。

城壁の上の敵魔術部隊が補強したりしているが、直ぐにアマノニダイ軍とヒノカグヅチに砲撃されて手が回っていない。


「・・・この分なら、もうすぐ城門を突破できるもんね」


そうなれば、この攻城戦は今日にも決着が付くだろう。


「今日の夜にはお酒が飲める!___よし!」


 夜には祝杯が挙げられる事を期待して、ヴァリネスは敵と戦いつつ、門が開いた後の城内に突入するタイミングを計るべく、更に味方に指示を出した___。



 帝国軍のナタリア城攻略は、この様な攻防が初日から行われていた。

 東方遠征軍第二師団(四兵団)と東方防衛軍第二師団(ツクヨミが居ないので三兵団)から、それぞれ攻撃組と護衛組を一団ずつ出し、城門攻撃組を編成。これを三組作る。

残った東方遠征軍の一兵団(砂兎戦士団)と、サンダーラッツが遊撃組として城の周囲の敵を掃討し、城門攻撃組の護衛を最小にして、一人でも多く集団魔法に参加できるようにする。

更に、ジョウショウのヒノカグツチとアマノニダイ軍には後方からの砲撃で城門攻略組をサポートさせる。

そして、城門攻撃組が集団魔法で城門を攻撃。

護衛組が集団防護魔法で、城壁の上に居る敵の攻撃から攻撃組を守る。

これを魔力が続くまで行ったら次の組と交代する、というのを繰り返す____。

 城への攻撃開始初日から、二日目の今日まで、帝国軍はこのルーティンを繰り返して来た。

 ジョウショウが選んだ作戦はこの様に、ヤーマル砦の時の様に敵を誘い出したり罠にかけたりといった工作はせず、力技の城攻略だった。

敵が城に対して何の補強もしていない事を知って、ジョウショウが工作などしても無駄な労力と時間を割くだけになると考えたからだ。

だが、こうした小細工無しの攻撃は、遊撃組と砲撃組が周囲の敵を減らしていけば、それだけ城門攻略組の効率が上がる事となり、二日目の今現在には、ヴァリネスやウザネが言う様に城門突破まであと一息というところまで来ていた。




「撃てぇーーーー!!」


____ズドドドドドドドドドドド!!


 そして、ブルードラゴンナイツが先程と同じ流れで再びアクアランス・ウェイブの集団魔法を発動すると、ズドガァアアアアン!!と爆発音に似た絶叫を上げて城門は砕かれるのだった・・・。


「通信兵!各隊へ城門の突破報告!」

「了解」

「我々は突入するぞ!!」


「「おう!!」」


 ウザネの指示で城門突破の報告が各隊へと上がる。

 それは当然、城壁周囲に居たサンダーラッツにも入った。


「副長!門が開きましたわ!」

「了解。城門攻撃組の動きは!?」

「ブルードラゴンナイツはそのまま城内へ突入しました。護衛のデーモンスパイダーナイツはそれを援護しつつ、後退しています。全て予定通りですわ!」

「そう、なら私達もブルードラゴンナイツに続くわ!総員!!城内へ突入するわよ!」


「「了解!!」」


 ヴァリネスの指示が入ると、各隊の隊長達は直ぐに兵をまとめる。

そしてサンダーラッツも、イワナミの重装歩兵隊を先頭にナタリア城へと突入するのだった___。

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