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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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准魔王との戦い(12)

 「___行くぞ!」


オーマからの指示を聞いて、ミクネは敵指揮官との距離を詰める____。


「ぬう!?」


 潜在魔法で強化されたミクネの身のこなしは、先程、同じく潜在魔法で肉体を強化してオーマとの距離を詰めたジェイルレオより速く、ジェイルレオが一呼吸置く間もなく、ミクネはジェイルレオの間合いに入ってきた。

 ミクネに一瞬で距離を詰められて、ジェイルレオは焦り、動揺を隠せなかった。


(ふざけおって!!あの男ならともかく、この小娘と接近戦なんぞやっておれんわ!)


決して接近戦が得意ではない上、相手が相手なだけにジェイルレオは嫌がり、なんとか距離を空けようとする。

だがそれに対しても、ミクネは簡単に食い付いてきて攻撃を仕掛けてきた。


_____ズガガガガガガガガガ!!


「ぬぅううううう!!」


 ミクネは小柄な体格を活かした、コンパクトで素早い動きで連撃を叩き込む____。

 ミクネが華奢な体つきのため、重量感の無い攻撃に見えるが、潜在魔法で強化された肉体に風の攻撃魔法を加えたミクネの連撃は、准魔王のジェイルレオにとっても重くて速い攻撃で、全てを薙ぎ払う竜巻の様だった。


_____ズガガガガガガガガガ!!


(い、いかんわい!こんな猛攻は、わしでは到底抑えきれん!魔道具かグレーターデーモンを____)


そんな考えが頭に過ったジェイルレオは、右手人差し指に付けた上級防護魔法を発動する魔道具の指輪を使い、防護魔法を発動して防御を強化すると、空にいるグレーターデーモンの様子を確認した___。



 「ファイヤーボール!」

「ファイヤーボール!」


グレーターデーモンはオーマを相手に魔法の打ち合いを行っていた。

恐らく、ミクネがジェイルレオと戦っている間、オーマがグレーターデーモンを牽制する作戦なのだろう。


___ボウッ!____ボボウッ!


 両者が同じ魔法を同じタイミングで発動_____。

両者が相手に向かって火球を飛ばし、両者が相手の火球を受ける。

 オーマに向けて放たれたグレーターデーモンのファイヤーボールは、オーマが近くの木をハルバードで切り倒し、それが盾変わりとなり防がれた。

 それに対して、グレーターデーモンに向けて放たれたオーマのファイヤーボールは、グレーターデーモンが避ける必要もなく外れて、グレーターデーモンの周囲の枝葉を焼いただけだった。

そして次のターン_____


「ファイヤーボール!」

「ファイヤーボール!」


二人は、ほぼ同格の魔導士なのか、再び同じタイミングで同じ魔法を発動していた。


___ボウッ!____ボボウッ!


 このターンの打ち合いも先程と同じ結果だった____。

オーマが標的を外したのに対して、グレーターデーモンは防がれこそしたものの、標的を正確に捉えていた。

 ジェイルレオはミクネの攻撃を防ぎつつ、そのグレーターデーモンとオーマの戦いを分析する。


(魔法のコントロールはグレーターデーモンの方が上か?ならば、このまま小娘の攻撃を防いでおれば、グレーターデーモンがあの男との打ち合いに競り勝って、わしの援護に入ってくるか?)


 もしそうなれば、自分は魔道具を使わなくて済むなとジェイルレオは考えてしまった。

この出し惜しみした考え方が、戦場においては害となる発想だという事など、百年経って腑抜けてしまったジェイルレオには気付けなかった。


(よし!このまま防護魔法を維持しつつ、召喚魔法の準備で良かろう♪)


 グレーターデーモンが援護に入って来て、敵にスキができるのを期待して、ジェイルレオはその時に手数を増やせるように召喚魔法の準備に入る____。


 ジェイルレオが召喚魔法の準備をしながら戦いの行方を見守る中で、グレーターデーモンとオーマの魔法の打ち合いは3ターン目に入り、そこで変化が起きた。


「キャプチャー・ロック」


 ここでオーマが発動したのは、土属性のトラップ魔法だった。

多数のこぶし大の石が網目状に広がり、グレーターデーモンを覆うと、ガシィイイイ!!と音を立てて固まって岩となり、グレーターデーモンの体と蝙蝠羽をロックした。


「ゴッ!?」

「ふぅ・・・ようやくだ。奴を捕らえるのに二発も使っちまった・・・」


 オーマは、捕えたグレーターデーモンの姿を確認してから、一息入れて愚痴こぼした。


 オーマがファイヤーボールを“わざと”外していたのは、相手に打ち合いで分があると思わせて油断させる意図も有ったが、その他に、空中にいるグレーターデーモンの周囲の木枝がトラップ魔法を使うのに邪魔になるからという理由も有った。

 オーマは土属性魔法もトラップ魔法も得意ではない。

何よりオーマの土属性の魔法練度はSTAGE4(放出)に入ったばかりでSTAGE5(発生)まで届いていないので、ウェイフィーやサンダーラッツの工兵隊の様にグレーターデーモンの周囲に突然罠を発生させるといった芸当はできなかったのだ。


(ウェイフィーだったらもっと上手くやるんだろうが、まあ、いい。とりあえずは成功だ)


下手くそながら作戦自体は成功したので、オーマは気を取り直して、今度は得意の雷属性の術式を展開する。

そして、空中から落下するグレーターデーモンにタイミングを合わせて上級電撃魔法を発動した。


「レールガン!!」


_____バチバチバチィイイイイイン!!


「____ガッ!?」


 グレーターデーモンは何とかオーマの土属性トラップ魔法は解除できたが、レールガンの防御には間に合わず直撃を受けた。

そして、上級電撃魔法の直撃を受けた事で、大ダメージを負っただけでなく、感電して身体が痙攣し、動くことも声を上げる事もできなくなった。


「___よし!」


 グレーターデーモンの動きを完全に止めたオーマは、そこから距離をとる。

グレーターデーモンに止めを刺す絶好のチャンスだというのに、追撃はしなかった。

代わりに、土属性の防護魔法術式を展開して、ミクネに合図を出した___。


「今だ!ミクネ!」

「おう!行くぞ!!」


オーマから合図が来ると、ミクネは「待ってました!」とそれまで溜めていた魔力を開放し、そのまま一気に術式を練り上げた。


「しもうた!!」


 ミクネの尋常ならざる魔法術式を見てジェイルレオは絶叫した。

 今まで魔道具の防護魔法でミクネの攻撃を防げていたのは、ミクネが手を緩めていたというのも有ったのだ。

そしてミクネが手を緩めていた理由は、自分とグレーターデーモンを大技で同時に攻撃するチャンスをオーマが作るのを待っていたからだった。

 この事に寸でのところで気が付いたジェイルレオは、魔道具を出し惜しんだ事に後悔しながら、即座に自身最高の魔道具を使う決断をした。


「レジネスハート起動!!」

「くらえ!!轟爆風!!」

「アース・ウォール!」


____ズドォオオオオオオオオオオン!!


ミクネが魔法を発動すると、ミクネを中心に爆発が起きたような勢いで竜巻が発生し、辺り一帯のあらゆる物を切り裂き、吹き飛ばしていった_____。




 「ふぅ・・・」


 オーマは、ミクネの攻撃に巻き込まれ多少の傷を負うも、防護魔法を間に合わせていたため無事だった。

そして、土属性防護魔法を解除すると直ぐに周囲の状況把握に努める。

 先ず、オーマの視界に入ってきたのは、ミクネの魔法の餌食になって体中をズタズタに切り裂かれて死亡したグレーターデーモンの死体。それからオーマと同じ様に周囲の状況確認をしているミクネ。

そして、その次に視界に入って来たのは、全身に傷を負いながらも、飛行魔法で空中に逃げて、召喚魔法術式を完成させていたジェイルレオだった____。

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