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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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准魔王との戦い(11)

 時を少しだけ戻して、サレンとシーヴァイスが死闘を繰り広げている頃_____。

トウエツ街道では、遠距離攻撃の打ち合いを制し、敵指揮官護衛のアルケノン・ミノタウロスを罠に嵌めてチャンスを作ったオーマ達が、作戦の最終段階に入っていた。

そして、オーマとミクネの二人が、敵指揮官ジェイルレオとグレーターデーモンとの距離を詰めて戦闘を開始していた____。




 「____行けぇ!!螺旋旋風!!」


_____ズゴォオオオオオオオ!!


「ぬう!?」

「グッ!?」

「グレイトフル・ハリケーン!」


 ミクネが発動した風の魔法(螺旋旋風)は何人の攻撃も通さぬ壁となり、ジェイルレオとグレーターデーモン達の魔法を弾き、更にはその三体の身動きも鈍らせる。


「今だ!オーマ!」

「ケラウノス!」


 ミクネからの援護で時間を稼いでもらったオーマはすでに魔法術式を完成させており、ミクネの合図で自身最高の電撃上級魔法を発動した。

 グレーターデーモン2体は、一体が防護魔法を間に合わせその轟雷を防ぎ切り、もう一体は雷に一瞬打たれながらも、空へと逃げてダメージを軽傷で済ませる事に成功した。

 ジェイルレオの方はミクネの螺旋旋風に防護魔法を展開していたため無防備になるかと思われたが、自身の持つ魔道具の杖、“覚めない悪夢”の力で防護魔法を持続させて、オーマのケラウノスを無傷で防ぎ切っていた。

 そして、すぐさまグレーターデーモンに指示を出した。


「小娘を釘付けにせい!」

「御意!ファイヤーボール!」


ジェイルレオは、空に逃げたグレーターデーモンにミクネを牽制させる。


「ヒャッハーーー!!」


それから潜在魔法で自身の肉体を強化し、老いを感じさせぬ素早い動きでオーマとの距離を詰めて接近戦に持ち込んだ。


「アイシクル・クロウ!」


ジェイルレオはRANK2の氷属性の魔法で接近戦用の氷の爪を錬成する。

そして潜在魔法も、もう一段引き上げて肉体をさらに強化してオーマに襲い掛かった____。


(___速え!)


 潜在魔法で肉体が強化され、速度が上がったジェイルレオの攻撃に、オーマの身体は追いつけなかった。


(躱しきれない!?)


何とか体をねじって躱そうとしたが躱し切れず、ジェイルレオの絶対零度の爪がオーマの胸肉に入り込む。


「____ぐっ!?」

「オーマ!」

「____ぐは!?」


 だが、そのまま肺まで抉られるかというところで、オーマは突然横に吹き飛ばされて、かすり傷を負っただけで済んだ。


「小娘ぇ!!」


 オーマを横に吹き飛ばして助けたのはミクネの飛び蹴りだった。

ミクネはグレーターデーモンにファイヤーボールで牽制されるも、その身のこなしだけでファイヤーボールを掻い潜り、オーマとの距離を詰めていたのだった。


「くらえ!!」


そして、身のこなしだけでグレーターデーモンの牽制を躱し、ジェイルレオの攻撃からオーマを助けたミクネは、既に攻撃魔法術式を完成させて反撃の準備を整えていた。


「振動砲だ!!」


____ビャォオオオオオオオオ!!


「ヒャッ!」


攻撃魔法の打ち終わりのスキを突かれたジェイルレオだったが、左手の小指に嵌めた指輪、“無邪気なイタズラ”というトラップ魔法の効果を持つ魔道具の力を発動し、自分自身を落とし穴に落とすことでミクネの攻撃を躱すことに成功する。


「ヒャッヒャッ♪そんな攻撃は食わんわ!知恵が足らんのぉ♪所詮小娘じゃわい」

「はん!別にいいんだよ♪」

「・・・何じゃと?」


ミクネのスキを作るために挑発したジェイルレオだったが、ミクネにあっさり流されただけでなく、不可解な事まで言われて眉をひそめた。


「ギャァアアアアアア!!」


 ミクネの発言の答えは、直ぐに後ろから聞こえてきた悲鳴で答え合わせが出来た。

 一体のグレーターデーモン(オーマの攻撃に防護魔法を間に合わせた方)が絶叫して、口、目、耳といった穴という穴から緑の血を流して絶命した。

ミクネはジェイルレオに魔法を撃つ際、避けられても良いように自身の攻撃魔法の射線上にグレーターデーモンも入る角度で魔法を放っていた。


「ぬぅ!?」

「ミクネ!」

「ハハッ!このジジイは小賢しいから、何かあると思っていたんだ!」

「はは・・・すげーな」


 オーマは周りに聞こえるか分からないくらいのボリュームで呟いた。

それは、人が本当に物事に感心したときの声のボリュームだった。


 今回、初めて本格的にミクネと連携して戦って分かった事だが、ミクネはかなり戦い馴れていた。

戦い方に工夫があり、最小の行動で最大の効果を得ようとし、またそれをごく自然にできる人物だった。

こういった戦い方は、分かっていても実際の戦闘で再現するには、やはり戦い慣れていないと上手くは行かないものだ。


 どうしてこうまで戦い馴れているのかとオーマは疑問を持ったが、少し考えてすぐに答えが出た。


 ミクネは帝国の第一貴族を危険視しており、どうにかしようと本気で考えていた人物だ。

つまり本気で帝国と戦う事を想定して、そのための訓練や学習もして来ていたのだろうし、魔族を相手に実戦訓練もやって来たのだろう。

魔族相手に戦って経験を積んできたので、訓練生上がりのジェネリーはもちろん、海賊の相手ばかりだったレインや、訓練が森での狩りばかりだったサレンより、ミクネは実戦慣れしていた。

 オーマがこれまでに出会った勇者候補達の中で、実はミクネが一番戦闘経験値の高い人物だったという訳だ。


(・・・もっと苦戦すると思っていたが、これは_____)


 魔族の長とグレーターデーモン2体______。

ミクネが居れば負けないと思っていたが、それなりの苦戦は覚悟していた。

だが実際に戦闘が行われると、ミクネはその能力だけでなく、経験値も活かして戦いを有利に進めてくれた。

更に____


(この獣人のジジイ・・・実力は確かだが、指示や動きが雑だ・・・)


 最初は敵指揮官の魔力に驚き、恐怖心もあったオーマだったが、直接手を合わせて相手が実戦慣れしていない事に直ぐに気が付いていた。

そのため、先程は接近戦を挑まれて後れを取ったが、それ以外のこれまではオーマ自身もある程度敵の動きを予測することができ、敵指揮官の魔法に対して素早く対応することができていた。


(___行ける!)


想像以上に実戦慣れしているミクネと、想像以上に実戦慣れしていない敵指揮官を見てオーマは勝利を確信しつつあった。


(問題はこのジジイの持ち物だ・・・。一体いくつ魔道具を持っているんだ?)


 最初の遠距離での魔法の打ち合いからここまで、敵指揮官がいくつもの魔道具を使用するところを見てきた。

身に着けている装飾品の数から、まだ多くの魔道具を持っている事は容易に想像できる。


(このジジイ自身の魔法は風、炎、氷と出ている・・・なら、土や水の属性とその系統の技はこいつ自身から出る事は無いだろうが・・・)


先の落とし穴を見る限り、魔道具の多様性はその限りでは無いだろう。

むしろ自分の弱点を補う魔道具こそ多く取り揃えている可能性が高い。


(体力と集中力が残っているうちに奴に魔道具を使わせ、打ち止めにしたいところだが・・・)


何かあればすぐにグレーターデーモンを使うあたり、使うのを出し惜しんでいるように思える。


(こちら側がミスして少しでも手が空けば、召喚魔法を使う可能性だって有る・・・そういった意味でもやはりグレーターデーモンが邪魔だな)


オーマの中で優先事項が決まり、そのまま作戦も決まった。


「ミクネ!パターン2に変更だ!」

「おう!」


オーマ達は戦い方を、敵指揮官を直接狙う作戦から、指揮官以外の戦力を先に削ぐ作戦に変更する。

 その指示を聞いて、今度はミクネが前に出た____。

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