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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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准魔王との戦い(8)

 湖の中から姿を現したシーヴァイス____。

 その第一印象は、“超巨大なウミヘビ”といった印象を持つだろう。

顔は竜や蛇?下顎が発達していて鋭利な牙が生えそろっているので、深海魚のようにも見える。

体は青白い鱗と青黒い鱗でゼブラ柄になっていて、体長は30メートルを超える巨大サイズだ。

 これほど巨大な生物はファーディー大陸には存在し無い。

そのため、周囲とこの生物との対比があまりに非現実的で、“大きくて迫力がある”では済まない存在感と威圧感があった。

その見た目だけでも、十分に人は足をすくませ、戦意を失うだろうが、この存在は見る人が見れば更に恐ろしい生物だと分かる。

 それはこの生物の体を覆う鱗だ。

青白い鱗も青黒い鱗もピカピカと金属の様な光を放っていて、まるで鎧だった。

実際にこの鱗は並みの金属では比べ物にならないくらい硬く、アダマンタイトやオリハルコンの様な伝説的な金属を用意して初めて比較できる硬度なのだ。

 そして、肝心なのはこの鱗には魔力が宿っているという事だ。

ただ硬いだけでなく、魔力を宿して魔法に対する抵抗力も備えた鱗。

これに、30メートルにも及ぶ巨体がスッポリと納まっている。

しかもその魔力も、並の人間どころか才のある人間でも到達できないほどの最上級魔族の魔力だ。

 この生物の皮膚はそれだけで人間にとって伝説級の防具と同等の防御力が有る。

 帝国の軍人用の鎧も強力で、硬度も魔力もある代物だが、サンダーラッツなどの遠征軍が着ている鎧は中級魔獣のゼオノトプスの皮膚を加工して、人間の魔道具職人が魔法を付与した物だ。これではこの生物の鱗の防御力には到底及ばない。

体の大きさ、肉体の強さ、魔力の量、全て非常識で伝説として語られるような生物という訳だ。


 いや、“ような”ではなく、実際に語られている____


「知っているわ・・・この生物」


 サレンはこの生物が語られた伝説を読んだ事が有る____。


 魔界に住まう海の怪獣で、海での戦いならば魔王を除いて一番と謳われる存在。

前回の魔王大戦で魔王によって召喚され、魔王軍の幹部の一人として人類と戦い、複数の国家を亡ぼす災害規模の被害を人類に与えた。

魔王軍幹部でも1・2を争う剛の者、あらゆる海の厄災の頂点に立つ存在___


「____リヴァイアサン」


自分が読んだ伝承の記憶で、サレンはシーヴァイスの正体を理解する。


(___どうなる?)


 そして、相手の正体が分かると、サレンの中で迷いが生まれた。“勝てるのだろうか____”と。

サレンは、シーヴァイスから同じ元魔王軍幹部のディディアルと戦った時以上のプレッシャーを感じていた。

 勇者候補VS准魔王の一対一の戦い。これは勇者候補の方が基本的には有利のはずだ。

特に、今居る勇者候補達の中で現時点で最強であるサレンは、一対一でも十分に元魔王軍幹部である准魔王に勝利する力を持っている。

だが目の前の存在は、その姿とこの状況、これまでの展開で、“戦いとは、そう単純なものではない”と雄弁に語っていた____。


 先ず、肉弾戦については語る必要すら無いだろう。

あの巨体とサレンでは比べるのも馬鹿らしいだろう。大事なのは戦術だ。

 シーヴァイスは頭が回る。情報戦では、敵の正体を知ったばかりで、その能力については何も分かっていないサレンに対して、シーヴァイスはこれまでの戦いでサレンの手の内を引き出している。

 そして地形適性だ。

海洋魔獣のシーヴァイスにとって、水辺での戦闘は圧倒的に有利なはずだ。


「それで湖で待ち伏せを・・・」


湖を戦場にしたのは、主力がリザードマンだからなのではなく、自分の為だったという訳だ。


「あのマッシブ・タイダルウェイブも敵を叩くためではなく、自分が本領を発揮するための準備だったのね・・・ッ!そうだ!ツクヨミの皆は!?」


 サレンはふと我に返り、シーヴァイスに吹き飛ばされたツクヨミの兵士達を思い出す。

そして、視線をシーヴァイスから水面に向ければ、直ぐにツクヨミの兵士達を確認できた。

 ツクヨミの兵士達は、湖に投げ出されながらも、生き残っていた。

その状況を見てサレンはほっと胸を撫で下ろす。だが、次の瞬間には強力な魔力を感じ取り、サレンは再び視線をシーヴァイスに戻すことになる。

視線を戻してみれば、シーヴァイスは電撃魔法の術式を展開していた____。


「いけない!」


 サレンは顔を青くしてそう叫び、直ぐに準備していたダイヤモンド・ショットを発動し、更に味方を救うため、新たに土属性の魔法術式も展開する。

その動きを見て、今度はシーヴァイスが大きな口をサレンに向けてゴパァと開けた。

 その様子はまるで標準を目標に合わる様だった。


「ッ!」


 それを見て嫌な予感を覚えたサレンは、咄嗟に土属性の魔法を解除して回避行動をとった。


_____ズドォオーーーーーーーー!!


サレンが回避行動をとったのとほぼ同時に、シーヴァイスの口から、まるで稲妻が走った様に見えるほどの速度で大量の水が放水された。


_____ズドォオーーーーーーーー!!


 シーヴァイスの口から放水された水は凄まじい貫通力で、サレンのダイヤモンド・ショットを簡単に打ち消して、森の木々を薙ぎ倒し、山の岩壁をくり貫き、岩山に直径2メートルほどの綺麗な風穴を空けた。

 ウォーターブレス_____。

リヴァイアサンであるシーヴァイスの特技の一つ。

ポイズンブレスの様に毒などの付属効果は無いが、シンプルに破壊力が有る。

その威力と速度は人間なら達人クラスの魔導士の水属性上級魔法に匹敵する。


「あんなものをタメ無しで撃てるなんて・・・」


 ウォーターブレスは魔法ではない。そのため術式を作る時間は必要なく、即座に発射できる。

タメ無しで水属性上級魔法を撃てるようなものだ。

シーヴァイスの見た目以上の怪物ぶりに、サレンは戦慄して益々顔を青くした。

 そしてシーヴァイスの電撃魔法の準備ができると、これからサレンは更に顔を青くすることになる。


「ライトニング・ボルト」


シーヴァイスが魔法を発動し、湖に電撃を走らせた____。


______バリバリバリィイイイイ!!


「「____ッ!?」」


電気を流され、感電させられたツクヨミの兵士達は、身体が麻痺して悲鳴を上げることすらできずに感電死していった。

辛うじて生き残った者達も、湖の中で身動きできなければ溺死するだけだった。


「ツクヨミの皆さん!!」


サレンが絶叫するも、返事をする者どころか、湖から顔を出す者すら二度と現れなかった_____。


「ぜ、全滅・・・」


実戦で味方の全滅を初めて目の当たりにしたサレンは言葉を失ってしまった・・・・。


「フン・・・これで残りは貴様だけだ」


 “お前もすぐに奴らの後を追わせてやる___”そう後に続きそうな勝ち誇ったシーヴァイスの声に、サレンは嫌悪感を抱いた。

そしてそれと同時に、自己嫌悪にもなっていた。

 その理由は、当然ツクヨミを助けられなかった事だ。

頭の隅では将来敵対する相手と分かっているが、それでも味方として共に戦っていた彼らを見殺しにした様なこの結果は悔やんでも悔やみきれないものだった。


「シーヴァイス!!」


サレンは珍しく怒りの感情を表に出して叫んだ。


「何を怒っている?足手纏いが居なくなって、これで心置きなく戦えるだろ?」

「うるさい!!」


頭に血が昇っているサレンは、シーヴァイスの挑発に簡単に乗ってしまう。


(ふん・・・)


 サレンのその様子にシーヴァイスは内心でほくそ笑み、そして少しだけ安堵もしていた。

サレンはシーヴァイスを危険な相手と思っているが、シーヴァイスはそれ以上にサレンを危険な相手と認識している。


(これだけやっても勝敗は分からない相手だからな・・・この小娘は)


シーヴァイスは不敵な笑みを直ぐに引っ込めて、怒りと共に魔力を練り上げるサレンを迎え撃つ態勢を取った。


____ドォオオオオオン!!


「____グッ!?」


だがサレンは、シーヴァイスに次の魔法の準備をさせる間も無く、爆発魔法をシーヴァイスの顔面に叩き込んでいた_____。

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