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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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烈震の勇者ろうらく作戦会議2

 ベーベル平原の戦い後、オーマは事後処理の報告と次の行動の打ち合わせのためにジョウショウ達と会議を行った。

完勝だったため、事後処理については特に変わった話し合いは無く、次の行動は補給部隊が到着して補給を終えてからナタリア城へ侵攻することに決定した。

 オーマは最初、会議中にハツヒナから何かされると警戒していたが、予想外にも彼女がオーマにちょっかいを掛けることは無かった。

それどころか、ウザネをけしかけてくる事さえなかった。

オーマにとってはそれが却って不気味で、オーマはこれからの彼女の行動に対して警戒心をさらに強めるのだった___。


 一夜明けた次の日は、補給部隊が到着するのに三日掛かるため、一行は一日身体を休める。

そして更に一夜明けたその日の夜、オーマは再び勇者候補を除くサンダーラッツ幹部を集めて、ろうらく作戦会議を開いた____。




 「____で?結局何だったんだ?」

「何が?」

「何がじゃない!あのベーベル平原の戦いでの一連の流れだ!どういう事なんだ副長!まだ何も説明を受けていないぞ!」

「団長、落ち着いて」

「まだ会議を始めてすらいませんよ」

「気が早い」

「そうだぜ。まだ、つまみどころか酒すら____」

「第七回勇者ろうらく作戦会議を始める!で?どういう事だ?副長!?」

「始めんの早ッ!」

「うわぁ・・」

「普段はもっとタメるのに・・・」

「あっさり始まりましたね」

「余裕ねーな。団長」

「うるさいぞ!そこ!副長から話が聞けん!」


例の出来事がずっと気になっていたオーマは、集まったメンバーとの談笑もほどほどに、さっさと会議を始めてヴァリネスを問い詰めた。


「まあ、事情を聴きたくても、なかなかヤトリがいない状況を作って会議を開く隙が無かったから、団長が気に病むのは分かるわ・・・。でも、そうなったのは団長が一日中ヤトリと仲良さそうに一緒に居たからなんだけど?」

「う・・い、いや別に仲良くなんて・・・そんな事ねーよ」

「いや、ツンデレるなよ、団長」

「しっかり仲好しになってた」

「仲好しになる作戦なんですから良い傾向ですよ?」

「そ、そうです・・仲良さそうでした・・・何よりです」

「クシナ」

「放っておいてください。ウェイフィー」

「とにかく!事情を話してくれ!本当に何だったんだ!?突然、しかも俺だけじゃなくミクネまで巻き込んで。あれじゃー・・・」

「“ミクネ”ぇ?」

「うふふふふふ♪」

「ほーう」

「お、お前ら・・・」

「で?“あれじゃー・・”何なの?」

「い、いや・・・」

「“あれじゃーミクネが可哀想だ”、って?団長の気持ちも盛り上がって来ていて何よりね♪」

「う、うるせーよ!べ、別にそういうんじゃない!ただ、ミクネはハツヒナが苦手って知っていたから___」


「「ツンデレるなよ」」


「う・・・」


まだ、いまいち素直になれないオーマは、メンバーにからかわれて顔を真っ赤にした。


「き、貴様ら・・・」

「はいはい、怒らないで団長。ちゃんと訳は話すから」

「・・・それで?」

「そのまんまよ。“ミクネはハツヒナが苦手”だから、よ」

「・・・つまり?」

「あーもう!鈍いわねぇ、団長。つまり、ミクネと嫌いなハツヒナを一緒して、そこに団長を置けばミクネは団長を頼るようになるから好感度が上がり易くなるでしょ!ってこと!」

「あ・・・なるほど・・・気付かんかった」

「えー・・・」

「団長・・さすがに鈍すぎます」

「ウェイフィー、シマズ・・・お前達はあの時に気付けたのか?」


「「もちろん」」


二人は自信たっぷりに頷いた。


「なっ・・・」

「ちなみにサレンも気付いてた」

「なっ・・・」

「いや・・だからこそサレンさんが交渉役になってくれたのですよ、団長」

「そ、そういえば・・・なんてこった・・・」


オーマは自分の鈍さに自分で呆れてしまった。


「ミクネはハツヒナが苦手。そして何故だか知らないけど、ハツヒナはミクネに執着している。この二人の関係を利用しない手は無いわ」

「そうですね」

「いい突破口が見つかりましたね」

「ハツヒナが何でヤトリに執着しているのが分かれば、なお良いのだがな・・・」

「そうですね。その理由次第では一気に団長とヤトリさんの距離を縮められるかもしれません」

「あ、それでしたら私、分かりますわ」


 ハツヒナがヤトリに執着する理由の話になると、皆に話すつもりだったのだろうナナリーがすぐに会話に割り込んできた。


「ナナリー?」

「ナナリーが何で知っているの?」

「どうやって聞き出したんだ?」

「いえ、聞いてはいません。ですが、ハツヒナ様の態度で確信しています。あの方はヤトリさんを欲しているのです」


「「・・・は?」」


ナナリーの発言に、メンバー全員が頭にクエスチョンマークを浮かべた。


「欲しているってどういうこと?」

「仲間にしたがっているってこと?」

「ん?・・それはそうでしょ?帝国の人間なんだし」

「申し訳ありませんでした。言いにくいことだったので、誤解する言い方になってしまいましたわ。欲しているというのは、欲情しているという事ですわ」


「「欲情ぉ!?」」


ナナリーの発した言葉に全員が目と口を開き、驚きを隠せなかった。


「よ、欲情って・・つ、つまり・・・」

「れ、恋愛感情を抱いているという事ですか!?」


この手の話に免疫が薄いクシナとユイラは顔を赤らめながら、恐る恐るナナリーに尋ねた。

 するとナナリーは首を横に振って否定した。


「いえ、違います。恋愛とかそんな綺麗な感情ではなく、もっとドス黒い、一方的に欲求を満たす感情です。暴力的で、尊厳を踏みにじるような・・・」

「え、ええ・・・」

「そ、それってどういう・・・」

「あの方は真正の“ドs”ってことよ、ユイラ」

「はぁわあ!?」


ナナリーが二人の疑問に率直に返すと、返された二人は目と口を開けたまま固まってしまった。

二人よりは免疫が有る他のメンバーも驚きが隠せなかった・・・というよりドン引きしていた・・・。


「ま、マジかよ・・・」

「本当の意味で欲情しているという事か・・・」

「ま、間違いないのか?ナナリー?」

「はい、まず間違いなく。ハツヒナ様はヤトリさんに対して性的興奮を覚えています。そう感じる事が二回ありました。一回目の時には勘違いかとも思いましたが、二回目の時には間違いないと確信しましたわ。ヤトリさんがハツヒナ様を嫌いな理由が分からないと言っていたのも、ハツヒナ様に性的な目で見られている事に不快感を抱きつつも、そういった事に経験がないから、上手く周りに伝えられなかったのだと思いますわ」

「いわゆる、“変な目で見てくる気持ち悪い人”って感じなのね」

「う、うわぁ・・・」

「ひく」

「やばい人だったんですね、ハツヒナ様って・・・」

「だ、団長?ハツヒナに恨まれたんですよね?だ、大丈夫ですか?」

「いや、こんな話聞いた後じゃー、めっちゃ不安だよ」

「団長、めっちゃ変な汗かいている・・・」


ハツヒナのヤトリに対する執着心の正体を通じてハツヒナの本性が分かり、オーマはハツヒナの恨みを買ってしまった事を後悔し始めた・・・。



 「ど、どうすんだよ?そんなもん作戦に利用できるのか?」

「できなくはないでしょうが・・・」

「すごく非人道的になりそう・・・」

「きもい」

「そうですね・・・さすがにヤトリさんが可哀想です」

「もし、万が一の事が起こったら可哀想では済まないだろう」

「い、いや、さすがに無いんじゃないか?ハツヒナ様も第一貴族だし、この作戦のことは知っているだろ?」

「はい。そんな人格でありながらヤトリに手を出さず、欲望を隠しているあたり、理性は働いているかと思われます」

「でも、どっちにしろヤバイな理由よね・・・。まさか、あの女がそんな感情をミクネに抱いていたなんて・・・」


当初は利用しようと思っていたヴァリネスでさえも、理由が理由なだけにブレーキが掛かってしまう。

そんな欲望を抱えているなら、正直ミクネに近寄らせることすらしたくない・・・。

 一同の中にしばらく沈黙が流れてしまった__。



 考え込んだ末、オーマが団長としての決断で沈黙を破った。


「却下だな・・・。そのネタは万が一のことを考えると使えない」

「むう・・仕方ないか」

「まあ、でもほら?団長とヤトリさんの距離を縮める突破口は、もう開いているわけですから」

「確かに・・・ベーベル平原の戦い後の二人を見ていると、そんなネタに頼らずとも上手く行きそうな気がする」

「地道なポイント稼ぎで十分かもな」

「賛成だ。ヤトリに万が一の事が起こった場合、他の人間も巻き添えを食うかもしれない」

「危険」

「じゃー、今後はハツヒナとは距離を置きつつ、ミクネに対しては地道にポイントを稼ぐって事で___」


「「賛成!」」


 一同は、すでにハツヒナのオーマに対する恨みとヤトリに対する欲望が制御不能になっている事など知る由も無く、今後のろうらく作戦の方針を決め、詳細を詰めるのだった___。

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