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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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ベーベル平原の戦い(4)

 ヤトリの力を当てにしに来たと言って現れたハツヒナ。

オーマ達が頭の中で“何で指揮官自ら?”と疑問を抱いていたため、最初にそれに反応したのはヤトリだった。


「い、いや、何言ってんだ。お前の作戦は順調だろ!私の力なんかいらないだろ!このままお前達だけでやれよ!」

「ああ、そうなる・・・」

「そこまで苦手ですか・・・」


先程の自分の発言を180度回転させて、ヤトリはオーマの後ろに身を隠した。


「えー・・ですが、この後私達は敵軍後衛の相手をしなくてはなりません。そうなった場合、敵の飛行部隊と指揮官のグレーターデーモンの上級魔法を警戒しなくてはならないのですよ?」

「じ、自分達だけでやれよ!お前ら帝国軍は優秀なんだから、できるだろう!」

「ああ、そうなる・・・」


その前の自分発言も180度回転させて、ヤトリはハツヒナにシッシッと手を振った。


「ふ~・・相変わらず意地悪ですわね。でもヤトリさんも聞いていらっしゃるでしょう?今回の遠征はヤトリさんやサレンさん達の力を当てにした編成なのですよ?いくら私達が優秀でもそういう編成である以上、ヤトリさんのお力をお借りしないと手が足りないですわ。ね?だから、“私と二人で”敵の飛行部隊の対処に行きましょう?」

「嫌だーーーーーーーーー!!!!」


ヤトリは絶叫を上げた___。


「な、何でお、お前なんかと二人で行かなきゃならないんだ!?」

「それは、ヤトリさんなら一人で敵部隊を殲滅できて、私は指揮官だからですわ。味方と動きを合わせるのに必要でしょう?」

「え?そんなこと___!?」


“そんなことは無い”と言いかけたオーマの口をウェイフィーが塞いだ_____。


 オーマの思っている通り、ヤトリはともかく、ハツヒナが同行しなければならない理由は無い。

むしろ味方の主力部隊の指揮官が離れるのは、帝国軍の層の厚さならば代行できる者は居るだろうが、決して良い案ではない。

 だが、ウェイフィー達はヴァリネスの意図を理解していたため、ハツヒナが何故そうまでしてヤトリと二人になりたいのかは理解できなかったが、ハツヒナのこの提案に乗るのだった。


「なるほど。ハツヒナ様の言う通りですね」

「え?おい!サレン!?」

「確かに、飛行部隊に乱戦に持ち込まれたら被害が拡大しますし、上級魔法を使えるグレーターデーモンも相手にするなら精鋭をぶつけた方が被害は少ないですね」

「まあ♪さすが天下のサンダーラッツ。良く状況を分かっていらっしゃいますわね♪」


「「いえいえいえ♪」」


「おい・・・」

「ヴー・・・?」


ハツヒナと一緒に笑顔を見せる三人に対して、ヤトリは青ざめ、オーマは少し納得いっていなかったが、“まー確かにそうかも?”と、塞がれている口で唸っていた。


「では、ここはハツヒナ様とヤトリさんが二人で向かうという事で___」

「決まり」

「では私は各隊へ連絡します」

「はい♪ありがとうございます♪」


テキパキと話を進める三人に、ハツヒナは本当の笑顔を見せる。

 だがもちろん、三人はハツヒナのために話を進めているわけではない。



 ヤトリを爆発させるために煽っているだけだった



「ふ、ふふ・・・ふ、ふざっっっけんなーーーーー!!!」


 そして三人の作戦は成功した_____。

三人は、してやったりと顔を見合わせてニヤリと笑った。


「わ、私は絶っっっ対に嫌だぞぉ!!何でよりにもよって、この女と二人なんだ!!」

「でも、さっきは出番が欲しいって・・・」

「だから何でこの二人なんだ!?私はこいつが嫌いだと言っているだろ!!学習能力無いのか貴様らは!?」

「つれないですわね~」


ハツヒナは内心の欲情を抑えながら、心底残念そうな表情を見せる。


「でもやっぱり、飛行部隊とグレーターデーモンには少数精鋭で当たった方が良いと思いますよ?」

「なら、私とサレンでいいだろう!?こいつは要らない!!」


「「いえ、ハツヒナ様は必要です!!」」


「まあ♪」

「なっ・・・」


三人に声を揃えてきっぱりと言い切られてしまい、ヤトリは言葉を失った。


「ですから、ハツヒナ様と共にお願いします」


「「お願いします」」


「お願いしますわ♪ヤトリさん♪」

「あ・・ああ・・・・」


 三人とハツヒナは笑顔でヤトリに詰め寄った。

オーマはサレン達が何をしたいのかは分からなかったが、ウェイフィーに口を塞がれた時に、自分は成り行きを見守った方が良いと考え、ずっと黙っている。


「うう・・・」


 四人に詰められて、ヤトリは後退る。

もしサレンが魔法を封じていなければ、恐らく何かやばい魔法をぶっ放していただろう。

だが今はそれが出来ず、只々追い詰められる。


 そして____


「嫌だーーーーー!!!」嫌だ嫌だ嫌だ!!イヤだったら嫌だーーーーー!!!」


____泣き叫んだ。


「お、おい、お前達・・・」


オーマは、さすがにヤトリが可哀想になって、ヤトリを追い詰めた三人に、“何故そんなに追い詰める?ヤトリがハツヒナを嫌っているのは知っているだろ?”と、咎めるような視線を送った。

だが三人は、そのオーマの視線を無視して互いに顔を見合わせていた。“頃合い良し!”と___。


 「ふう・・・ここまで嫌われているなんて、困ってしまいますわ・・・」


ハツヒナは、内心では困るどころかヤトリの泣き顔が見れて最高に興奮していたが、表面だけはしっかりと困って見せた。


「___あの、ハツヒナ様」

「はい?」


 心の内で愉悦に浸っているハツヒナに声を掛けたのはサレンだ。いや、交渉役を務めるのがサレンだ。

サレンは自分で、この場でのハツヒナとの交渉役は、帝国で客人待遇を受けている自分が適任だと判断していた。


(がんばれ、私!)


もう自分はオンデールに居た頃の大人しいだけの自分じゃないと、仲間のため、オーマのため、勇気をふり絞った。


「どうでしょう?ハツヒナ様?私自身は、ハツヒナ様とヤトリさんのお二人だけで十分だとは思うのですが、ヤトリさんがこの様子では万が一の事が有りますので、私とオーマ団長も同行する、というのは?」

「え・・・」


ハツヒナは心の中で“ざっけんな!”と思ったが、ギリギリ顔には出さずにいられた。


「えっと、ですが・・・」

「ハツヒナ様も第一貴族の方ですから、私の“力”はご存じですよね?」

「え、ええ・・」


ハツヒナは当然サレンの力を知っている。そして立場も知っている。

その二つを知っている以上、サレンの発言は、たとえ第一貴族のハツヒナでも無下にできるものではない。

 これは、サレンが自分の力の事を知っているかと聞いて、言外に自分の立場がどういうものであるかをハツヒナに意識させるという、サレンなりに知恵を絞った交渉術だった。


「私も同行すれば、ヤトリさんがやり過ぎても抑えられますし、取りこぼしてもフォロー出来ます」

「で、ですが、サレンさんはもちろん、団長のオーマ殿まで一緒というのは____」

「御心配には及びません。我らが団長は魔導研究のため、サレン様に付き添う様にカスミ所長より命を受けております」

「う・・・」


ここでシマズがカスミの名前を出し、カスミの意向をハツヒナに意識させ、サレンの交渉を援護する。


 これにハツヒナは何も言えなくってしまう。


 当初ハツヒナは、オーマ達が邪魔するようなら適当にあしらうつもりでいたが、帝国の第一貴族にもアマノニダイの巫女にも影響力が強いカスミの名を出されては譲るしかなかった。


「そ、そうですか・・お二人のお手を煩わせるのは私としては心苦しいですが、そういう事でしたらサレン様とオーマ殿がよろしいのでしたらご協力いただきますわ」

「そんな・・・心苦しいなどとは思わないでください、ハツヒナ様。この戦場に来ているのも、帝国に来ているのもそのためなのですから。私はオンデールのラルスエルフの代表として、両国との間に友好的な関係を気付きたいと考えております」

「(___チッ)ありがとうございますわ、サレン様。私も帝国とオンデールとがより良い関係になる事を望んでおりますわ」

「ありがとうございます。ハツヒナ様」


ハツヒナの返しに、サレンは明るい声で返事して頭を下げた。


(デティット!アラド!私、反乱軍としても、オンデール特使としても上手くやれているよ!)


第一貴族相手に上手く事を進められて、仲間の役に立てた事をサレンは内心で喜んだ_____。

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