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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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ヤトリ・ミクネとの初対面(5)

 ヴァリネス達は、ぶっちゃけ過ぎたオーマを抱えて、一旦アズマ神社を去って行った。

一人残されたヤトリは、オーマの言った何気ない一言が気になっていた____。


「もしかして、本当に帝国と戦うつもりなのか?・・・ダークエルフのサレンが一緒にいる理由も、実はそういう事なのか?」


ヤトリの直感が何かを感じ取り、どんどん疑惑を膨らませてくる。


「それにずっと気になっていたが、奴の後ろにいたメイドと、帝国の一般武装とは違う女・・恐らく第二貴族のあの女も、相当な力を持っている・・・」


巫女の二人をフッ飛ばして、社務所から出てきた時に見た防護魔法からそう感じていた・・・。


____帝国に対抗する力を付けようとしているのだろうか?


 帝国の平民軍人であるオーマとヴァリネスだけなら気にしなかった。いや、仮に本当に帝国と戦おうとしていたとしても、その二人だけなら無謀だと思っていただろう。

だが、帝国の第二貴族(領地持ち)や、オンデールの要人も居るならば話は変わってくる。

それらと関係した、それ相応の規模の勢力組織が在るのかもしれない____そんな考えが浮かんでくる。


「遠征軍という立場を使って、各地で帝国の反乱分子を集めている?・・・いや、私がそう思いたいだけか?」


 普通に考えれば、ヤトリのこの考えは飛躍し過ぎだろう。

ヤトリ自身も、そう思う理性は残っている。

 ヤトリ自身が、帝国をどうにかするために反抗勢力を作りたいと考えている。或いは、対抗勢力があるなら、そこに加わりたいと思っているから、“そうであってほしい”、“そうに違いない”と、希望を抱いているだけなのかもしれないとも思う。

だが____


「でも・・・何か引っ掛かるんだよなぁ・・・」


ヤトリの鋭い感が何かを告げている気がした。

そうしてヤトリは一度、今回の一件を自分なりに考え直してみることにした____。


 改めて考え直してみると、サレンとそれに匹敵しそうな人間が二人も帝国平民の戦士団と共に行動しているというのは、おかしな話である。

雷鼠戦士団が“ドブネズミ”と呼ばれる様になる前、“救国の英雄”と呼ばれていた頃の武勇はヤトリも知っている。

だがそれでも、帝国にはそれ以上の存在がいる事もヤトリは知っているし、第一貴族がこんな強者たちを平民に預けておく性格でもないと思っている。

そこから考えても、サレン達と行動を共にしている事や、スカーマリス捜査を任されているというのは、違和感が有を抱かずにはいられなかった____。


「オーマ・ロブレム・・・縁起の悪い名だが、奴と奴の周囲には何かある・・・」


ヤトリは冷静に考え直したうえで、オーマ・ロブレムという人物に興味を抱くのだった____。





 次の日、再びアズマ神社を訪れたオーマ達一行は、昨日ヤトリにふっ飛ばされた巫女の二人に社務所に案内され、再びヤトリと面会した。

一日たったが、ヤトリとオーマとの間の空気は相変わらずだったため、オーマを後ろに下がってもらった。

そして、オーマが一人ブスッとしている中、ヴァリネス達は今一度ヤトリにスカーマリス捜査の協力を丁寧に仰いだ。

 そして、その結果は___


「___いいぞ」

「・・・はっ?」

「えっ?」

「ヤトリさん・・・今、何て?」

「だからぁ・・引き受けると言ったんだ。お前達のスカーマリス捜査に協力してやるよ」


「「ええーーーー!!?」」


「・・・・・フンッ」


____結果はまさかのOKだった。

昨日の態度から一転、OKを出して来たヤトリに、オーマ以外の者達から驚きの声が上がった。

その一同のリアクションに、ヤトリは “面倒臭い”と言った様子だった。


「うるさいなぁ・・社務所の中では静かにしろ。ババアもいつも言ってるじゃないか」

「い、いや・・・じゃがなぁ?」

「一体全体、何が起きておるのじゃ?」

「昨日はあんなに拒絶していたのに・・・」

「それも縁起が悪いとか、わけわからない理由で・・・」

「団長とアホみたいな喧嘩までして・・・」

「きゅ、急にどうしたのですか?」

「別に・・・。一晩冷静になって考え直して、スカーマリス捜査はやるしかないと思っただけだ。そんで、帝国の連中と組むなら、恐らくお前達が一番マシだろう?」

「・・・俺は縁起悪いけどな」

「シッ!団長は黙ってて!」

「兄様・・。流石に今日まで引きずっているのは大人気ないですよ」

「ふん。だって、名前は一生の物だ。一日で済む話じゃないだろう?」

「ま、まあ、仰りたい事は分かりますが、今は抑えてください」

「ふぅ・・・分かったよ・・・」


ブツブツといじけるオーマを、オーマの両サイドにいるレインとジェネリーが宥める。


「・・・昨日は一体何があったのですか?」


ヤトリに魔法でふっ飛ばされて事情が分かっていないシュウゼンは、オーマとヤトリの態度にずっとクエスチョンマークを頭に浮かべていた。


「ア、アハハハハ!気にしないでください!シュウゼンさん!」

「ちょ、ちょっとだけ、いざこざがあっただけだから!」

「そ、そうです!別に気にする事のほどでは無いですよ!」

「はあ・・・」


まったく腑に落ちないシュウゼンだったが、ヤトリの性格の事を考えると聞くのも怖かったので、それ以上は追及しなかった。


「と、とにかく!これで決定ね!」

「はい!これからよろしくね!ヤトリ」

「よろしくお願いします。ヤトリさん」

「よろしく。戦巫女と謳われる貴方と肩を並べて戦える機会をもらえて嬉しく思う」

「おー。よろしくな」

「・・・・・」

「ちょっと!団長!?」

「オーマさん」

「ああ、分かっているよ!・・フンッ!一応、礼は言っておく」

「フンッ!“一応”なら別に要らん!」

「んだとぉ!?」

「なんだぁ!?」


オーマもヤトリも眉を逆八の字にして、再び睨み合う。

だが今回は直ぐに、ヴァリネスがパンパンと手を叩きながら割って入って来た。


「はいはいはい!そこまで!そこまでよー?これから、一緒に命を懸けて戦うのだから、仲直りしましょうねぇ?お姉さんと約束よ?」

「そうです!仲よくしましょ?ね?」

「賛成でーす」

「お二人共、これからは戦場で味方になるのですよ?」

「むぅ・・・わ、悪かった・・・」

「・・・フンッ!許してやる」

「んだと!?」

「兄様」

「くっ・・・」

「あはははは・・・」


OKはもらえたが、普段楽観的なヴァリネスでさえ、この調子で大丈夫だろうか?と心配になって、空笑いが出てしまうのだった____。


 こうして、オーマとヤトリの間に妙な確執が出来てしまったが、何とかヤトリに同行してもらえる事となった。

説得が成功してアヅチ城に帰って、その事をウザネに報告すると、ウザネは心底驚いていた。

絶対に失敗すると思っていたらしい_____。

ヤトリと会った今では、その発言に嫌味が無いと分かる。

 とにもかくにも、ヤトリとスカーマリス捜査をすることになった一同は、出陣準備とジョウショウにこの事を報告するため、一旦ヤトリと別れミカワに帰還するのだった____。

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