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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第四章:烈震の勇者ろうらく作戦
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烈震の勇者ろうらく作戦会議?(後半)

 烈震の勇者伝説を話し終えて、オーマは杯を傾けて喉を潤す。

すると、伝承を聞いていたメンバーから疑問が飛び、話は烈震の勇者の能力に移った。


「地震を起こしたって事は、土属性ですか?」

「いや、違う。土属性でももちろん地震は起こせるが、広範囲は難しい。勇者候補で今現在一番の魔力量を持つサレンでも頑張って、数キロだろう。歴代の勇者がどれ程かは分からないが、流石に土属性で数十キロメートルの範囲は現実的じゃない。数十キロにも及ぶ地震を起こせた秘密は膨大な魔力量だけじゃない。この力の正体は風属性だ」

「風属性?風属性でどうやって地震を?」

「“振動”だよ。風属性の特殊STAGEの性質変化で、振動を起こせるようになったらしい」

「振動・・・」

「ヤトリ・ミクネも、この烈震の勇者と同じく、風属性の特殊STAGEで振動を起こせる」


「「へぇ~・・・」」


ヤトリ・ミクネの力の正体、“振動”というキーワードにメンバーは関心と興味の声を漏らした。


「振動・・・確かに、程度によっては凄まじい効果を生みますね」

「どれくらい操れるんだろう?」

「そりゃー勇者で、魔王を倒すほどなら、かなりえげつないレベルで使用できるんじゃないか?」

「振動って、“音”の正体でもありますよね?なら、声や音も操作できるのでしょうか?」

「その辺も自在なら、相当えぐい能力になるな」

「どうなんですか?団長?」


ヤトリ・ミクネの力に想像をめぐらした隊長達は、“答え合わせがしたい!”といった感じで、全員がオーマの顔を覗き込んだ。


「資料では、ある程度周波数も変えられると記載があった。今は高音と低音を使い分ける位しかできないそうだが、将来的にはあらゆる音や声を作り出せるかもしれない。だが、振動を起こせるから、今現在でも自分の声を離れた所に居る相手に届けたり、遠くで喋っている声の振動をキャッチして、会話の内容を聞き取れたりできるそうだ」

「・・・つまり、魔道具無しで通信と盗聴ができるって事?」

「その通りだ。しかもその射程距離も、攻撃魔法と同じく数十キロと予想される」


帝国の最新の通信魔道具とほぼ同じ性能という事になる。


「チート」

「戦闘以外でも優秀な能力ですね」

「・・・ん?じゃあ、ろうらく作戦中に会話を聞かれる可能性が有るってことだよな?」

「そうだ。だから、内密な話は必ず、盗聴を防ぐ防護魔法を使用して話さなくてはならない」

「・・・それを突破される可能性は?」

「有るかもな・・。今のところ、そういう事例はないそうだが・・・」

「それって、マズイじゃんか!」

「作戦が立てられない」

「何でそんな余裕なんですか!?団長!?」

「そりゃー、今はサレンが居るからな」


「「あ、そっか・・・」」


サレンのあらゆる魔法を封じる静寂の力ならば、どんなレベルの盗聴魔法でも聞かれる心配はない。

オーマは、ヤトリ・ミクネの戦闘資料を目にした時、ヤトリ・ミクネの能力に戦慄しながらも、サレンが加わってくれた事に心の底から安堵していた。


「後、戦闘面だが、戦術規模の範囲攻撃も恐ろしいが、その力を単体に使った場合もやばいからな?」

「どういう事?」

「ヤトリ・ミクネの振動魔法は、範囲を狭めれば狭めるほど振動数を上げられる。自身の武器に付与する位の規模なら、対象を原子レベルに分解できる超振動を起こせるそうだ」

「はあ!?ちょ、ちょっと待って下さい!団長!」


秀才のクシナが、最初にオーマの言葉の意味を理解して声を上げた。


「原子レベルに分解できるって・・・じゃあ、ヤトリ・ミクネはあらゆる物質を破壊できるという事ですか?」

「その通りだ」


「「ぶぅーーー!!」」


ようやく意味を理解したメンバーは一斉に吹き出した。


「ついでに言えば、魔法で超振動を起こすから、魔法も破壊できる」


「「ぶぅーーー!!」


メンバーは再び吹き出した。


「ま、魔法を含めたあらゆる物を破壊できるって・・・」

「チート能力」

「なんつーか・・・勇者って“アレ”だよなぁ・・・」

「まったく・・・我々庶民を何だと思っているんだ?」

「そういえば私・・・昔は天才なんて言われて得意気になっていました・・・アホらしいです」

「いや、クシナ。お前は間違いなく天才だよ。・・・ただ、勇者候補に挙がる子達が異常なんだ・・・」


「「はあ・・・」」


ヤトリ・ミクネの能力にドン引いた一同は、“やってられない”といった感じになって愚痴をこぼす。

そして、最後にため息を吐いた後、フランが不吉な事を口走るのだった。


「なあ・・・まさか、レインちゃんの時みたいに、ミクネちゃんとも戦闘になったりしないよな?」

「ギクリ・・・」

「おい・・・どうしたんだよ、団長」

「ギクリって・・・まさか、対立する可能性が有るのですか?」

「・・・・・」


言われてオーマは冷たい汗を垂らす・・・。

 お互いの立場を考えれば、有益な同盟国の地位を持つ者同士なのだから対立するわけがない。

だが、資料とクラースの話から考えれば、ヤトリ・ミクネは今までの勇者候補の中で、最も対立する可能性が高い人物だった。

 オーマは、ヤトリ・ミクネの性格を皆に話すべきか迷ってしまった。


「何か知っているの?」

「知っている事があるなら教えてください。団長」

「そうです。彼女にも、ろうらく作戦を仕掛けるのですから、情報は多い方が良いです」

「隠したってしょうがないわよ」


いつの間にか資料を読み終えたヴァリネスもオーマに詰め寄って来た。


「・・・はぁ。分かった」


オーマは観念する事にした。


「実はクラースから聞いたんだが____」


オーマはクラースから聞いた話を皆に聞かせた_____。


「「ぶぅーーー!!」


そしてメンバーは三度吹き出すのだった___。


「ちょ・・・そんなヤバイ子なんですか!?」

「真正面から第一貴族に喧嘩を売るって・・・」

「副長よりイカれてる・・・」

「ってコラ!ウェイフィー!」

「でも確かにやべーな。仲間にしても完全にトラブルメーカーだぞ」

「フランを上回るトラブルメーカーだな」

「ってオイ!イワ!」


 メンバーもプロフィールの方の資料は目を通していたので、直情的な性格というのは理解していたのだろうが、ここまで考え足らず、向こう見ずとは思っていなかったらしく、初めて話を聞いた時のオーマと同じ様な反応が返って来た。


「まあ、そういう訳で、接し方にはかなり注意が必要だろう」

「そこまでバカだったら、いつ戦闘になってもおかしくないんじゃね?」

「戦闘になった場合も想定しておいた方が良いのでは?」

「絶対死人が出る」

「やっぱり勇者候補の三人に頑張ってもらう事になりますかね?」

「戦ったらどうなるのかしら?あの子達・・・」


 ヴァリネスが何気なく呟いた疑問を切っ掛けに、話は“今わかっている四人の勇者候補の中で、誰が一番強いか?”という話題へと移った___。


「___やっぱサレンちゃんじゃね?魔法を封じることが出来るわけだし?」

「だが全員での戦いになったら、潜在魔法まで封じる事はできない。なら、ジェネリー嬢に勝つのは難しいだろ?」

「不死身ですもんね」

「ヤトリ・ミクネさんの“あらゆる物質を破壊できる力”って、ジェネリーにも通じるのでしょうか?」

「さあな。でも、その力じゃなくてもヤトリ・ミクネの攻撃範囲なら、ジェネリーにもサレンにも射程距離外から攻撃できるだろ?」

「一方的に殺れる」

「でもそれで言うなら、レインさんじゃないですか?彼女はたとえ数十キロの距離も一瞬でゼロにできますから」

「レインには、そもそも攻撃を当てること自体が難しいしな・・・」

「トータルバランスは一番よね。あの子」

「いや、サレンも見た目に反して、えぐい反応速度しているぞ?」

「確かに・・・魔獣に強襲された時も、簡単に上級魔法で迎撃していましたもんね」

「いやいやいや。肉弾戦なら、それこそジェネリーちゃんでしょ?潜在魔法の力は彼女が一番。防御は言うまでも無く、攻撃だって非常識だぜ?」

「ストーンバジリスクを素手で殴り殺していましたからね」

「思い出しただけでも、寒気がする」

「ジェネリーの不死身の肉体。レインの閃光の速度。サレンの静寂の魔法封じ。ヤトリ・ミクネの全てを破壊する烈震の力・・・どれも凄まじいですね」

「そこだけ切り取ると、まるで神話のお話ね」

「全員チート」

「た、頼もしい限りじゃないですか。・・・ちょっと度が過ぎる気がしますが」


「「はぁ・・・」」


話題にして改めて感じる勇者候補の非常識な強さに、全員が溜息を吐きつつ酒を煽るのだった___。




 現実から逃げるように飲み始め、お酒が進むとメンバーはすっかり酔っぱらっていた。


「らからぁ・・・らんちょーが悪いのらッ!!」

「ンらとぉ?ヴァリネぇすぅ・・・どうしてそうなふ?」

「らんちょーが、もっろカッコよければ、この作へんも上手くいっれいらのら!・・・らんらのよぉ・・・ちーと勇さに、らいいち貴族ぅ・・・さらには魔族の相手まですることになっへ・・・らんちょーがもろイケメンんらこうはならなあぁ!!」

「ヒック・・・ふくちょー・・・それは団チューがカワウソです・・・ん?かわいいです・・・あれぇ?」

「ロシのいふとおり、かわいそーれす!ふくちょー!それにぃ・・・らんちょ―は男前でふぅ・・・。ちょっろらけ、かいしょーが無いだけでふ・・」

「かいしょー?」

「・・・たわしの視線にれんれん気付いてくれまへん」

「目が座ってふよ?クシナぁ?」

「たしかに・・・その目つきに気が付かんのはまずひ・・」

「なんらとー!?だんちょーピンチじゃねーか!クシナの殺気に気が付いていなひとは!?」

「違いまふぅ!これは恋するオコメの視線でふぅ!!」

「オコメぇ?・・・お米って美味いよなーー。東の地に言ったら皆で食おう」

「んお!お、お米らったらお任せを!良い飯屋を知っているであります!!」

「ほんろかぁ!?さすがイワなのら!ならば、貴様には米を任せる!!米でたのむ!!」

「りょーかいであります!!」

「ぬっふっふっふ♪これで、この作戦はかっかも当然だ。何せ※を手に入れたからなぁ♪」

「ヤキトリのツクネさんがどんな女性れもコメに落としてしまえば、こっちのもんれすもんね!さんがらんちょーです♪」

「焼き鳥のつくねぇ?そんなつまみが何処にあふ?おらぁ食ってねーぞぉ!?」

「あらしもだぁ!どういう事よぉ!?デネファーらん!?」

「いや・・・お前らがどういう事だよ・・・」


作戦会議だと聞いていたのに、騒がしかったので様子を見に来てみれば、全員がすっかり“デキ上がっている”のでデネファーは呆れ果てていた。

結局この日は、作戦会議ではなく、飲み会になってしまうのだった・・・。

 そして次の日、全員が二日酔いで貴重な休みを丸一日潰すことになったのだった___。

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