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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第三章:静寂の勇者ろうらく作戦
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ドワーフ遺跡の決戦(3)

 戦闘開始序盤で、ディディアルは自身の予定通りの状況を作ることができた。

その事にディディアルはほくそ笑み、サレンを消耗させるため、嬉々として指示を出す。


「クククク♪さあ!次だ!」


 ディディアルの指示で、別方向から新たなグレーターデーモンが二体、先程と同じ様に上級魔法を撃てる態勢で、霧の中から姿を現した。


「__!?」

「グレーターデーモンがまた!?」

「今度は二体です!」

「クソッ!!何て戦力だよ!!」

「サレン様!?」

「大丈夫!」

「ナパーム!!」


 一体目のグレーターデーモンの撃ち終わりを狙って、別のグレーターデーモンが自身の最強魔法を放つ。

そして、魔法を撃ち終わった一体目のグレーターデーモンは霧の中へと身を隠した。

 サレンは先程に続き、自身最高の風の防護魔法グレイトフル・ハリケーンを維持してオーマ達を守っている。


「ナパーム!!」


 二体目が魔法を撃ち終わると、三体目のグレーターデーモンが上級魔法を放つ。

そして、三体目のグレーターデーモンの魔法が撃ち終わる頃、霧に身を隠して魔法の準備をしていた一体目のグレーターデーモンが現れて、上級魔法を撃ち放った___。

 この要領で、三体のグレーターデーモンが霧から出入りして、代わる代わる上級魔法を撃ち続ける。

その間、サレンはずっと防護魔法を維持する羽目になり、ディディアルが何もしなくても魔力を消耗していくのだった。


「____ッ!!」


(ククククク♪)


みるみるサレンが消耗していき、順調に作戦が進んで、ディディアルは愉悦に浸っていた。


 だが、この愉悦と、サレンにばかり意識を取られていた事が油断につながった。


 サレンが強敵で、意識を向けなければならない事も、オーマ達がディディアルにとってはそこまでの脅威とはならない事も事実だが、オーマ達は決して、この戦いの足手まといではない。

人質と見立てても、油断して放って置いて良い相手ではなかったのだ。


「レールガン!!」


オーマの声と共に光が一線、グレーターデーモンに向かって伸びた___。


_____バチバチバチィイイイイイ!!


「グガァ!?」

「!?」


 一体のグレーターデーモンが、オーマの電撃魔法の直撃を受けて打ち落とされた。

ディディアルはその予期せぬ事態に驚き、慌てて周囲を確認すると、“どうして今まで気付かなかったんだ?”と思うくらい簡単に異変に気付いた。


「何故、霧が晴れている!?」


ディディアルが周囲を確認すると、霧が晴れて視界が開けていた。


「クソ!そういうことか!だから風の防護魔法を!」


ディディアルは、この状況を見て、サレンが何故風の防護魔法を使用したのかに気付き、この状況を理解した。


 本来、炎属性の攻撃を防ぐなら、水や土の方が向いているはずだが、土だと視界を遮ってしまうし、水だと余計に霧を発生させてしまう。

だからサレンは、風の防護魔法を使用したのだと思っていた。

 だが、サレンが風の防護魔法を使ったのは、それだけが理由ではなかった。

この風の防護魔法を広範囲に広げる事で、グレーターデーモンの攻撃を防ぐだけでなく、周囲の霧も吹き飛ばし、エレメンタルフォッグの居場所を特定していたのだ。


 反撃の態勢が整っていたオーマ達は、エレメンタルフォッグの居場所が分かると直ぐに動き出していた。

皆で連携して、ヘルハウンドとデスサイズトータスを掻い潜ると、エレメンタルフォッグ二体を即座に滅殺した。

 そして、エレメンタルフォッグを倒すと、オーマ達は隊を二つに分けた。

一つは、デティット、ヴァリネス、ウェイフィー、ロジ、イワナミの五人の、地上で魔獣達を掃討する陸戦部隊。もう一つは、オーマ、クシナ、フラン、アラドの四人の、グレーターデーモンを攻撃する対空迎撃部隊だ。

 そうして、サレンの風魔法の範囲外で残っていた霧も無くなって、隠れられなくなったグレーターデーモンを攻撃して、サレンを援護していた。



「___フッ!」

「くらえっ!!」


___ビュビュン!!


アラドとフランの二人が、グレーターデーモンに向けて矢を放つ___。


「クッ!」

「ヌッ!?」


速度も威力もグレーターデーモンに有効な二人の強弓だったが、グレーターデーモン達は辛うじてこれを躱す。

だが___


「もらった!フレイムレーザー!」

「グゥオオオオ!!」


 サンダーラッツの名狙撃手であるクシナが、グレーターデーモンが矢を躱す方向を予測して、一体のグレーターデーモンの翼を炎魔法で貫いた。

翼を失ったグレーターデーモンはそのまま地面へと落下した___。

 いかにグレーターデーモンでも上級魔法をタメ無しで撃てる訳は無く、霧が無ければ敵を前にして魔力をタメる事などできない。

 二体のグレーターデーモンが地に落ちて、攻撃に隙間ができると、サレンに反撃の余裕が生まれる。

これを逃すサレンではない。

 サレンは、すぐさま攻撃魔法の術式を展開する。


「____チィッ!仕方があるまい!」


ディディアルも、舌打ちしながら魔法術式を展開する。


 そして、両者の魔法が発動した___。


「ハイアクア・スピンニードル!」


サレンが発動した魔法で、無数の水の針が発射され、地上に落下してスキだらけになっているグレーターデーモン二体を襲う。


_____トストストストス


水の針は茹で上がった芋に竹串を刺すかの様に、滑らかにグレーターデーモンの頭部に突き刺さり、グレーターデーモン二体を絶命させた。

 そして、オーマ達対空迎撃部隊も、残ったグレーターデーモンを打ち落とすべく魔法術式を展開しながら狙いを定める。

 だが、そのグレーターデーモンの身体は、再び濃い霧の中へと隠れてしまった。


「___むっ!?」

「また霧が!?」

「あの野郎・・・またエレメンタルフォッグを・・・」


 ディディアルが発動した魔法は召喚魔法だった。

ディディアルは打ち落とされたグレーターデーモン達は捨て置き、サレンがその二体を仕留めている間に、再び炎と水のエレメンタルフォッグを召喚し、霧を発生させていた。

さらに____


「出でよ!グレーターデーモン!」


 再びサレンの魔力を削るべく、霧に隠れながら、もう一体グレーターデーモンを召喚した。


(手痛い出費だな・・・)


上級魔族三体___。

再び態勢を立て直すため、ディディアルも膨大な魔力を支払う羽目になった。


(仕方あるまい・・・あの小娘を倒す本命は、既に用意してある。“そいつら”が小娘を殺せるところまで消耗させれば良いのだ)


 サレンを含む、先行討伐隊を殲滅するための罠と戦力は既に準備ができている。

ディディアルの役目は、この作戦を遂行する上での不測の事態に対処することだ。

 手痛い出費ではあるが、作戦を遂行するためとディディアルは割り切る。

実際、サレンは再びグレーターデーモンの攻撃から味方を守るため、防護魔法を発動し、魔力を消費する羽目になる_____。


「グレイトフル・ハリケーン!」


 サレンは再び風の防護魔法を発動し、グレーターデーモンの攻撃を防ぎつつ、エレメンタルフォッグの居場所を特定するという、前回と同じ戦法を試す。

だが、同じ手は通じず、召喚されたエレメンタルフォッグ二体とも、サレンの魔法の効果範囲の外に置かれているらしく、居場所の特定はできなかった。

とはいえ、前回と違い、今回はオーマ達対空迎撃部隊の援護がある。

オーマ達は、霧の出入りのタイミングを見計らい、空飛ぶグレーターデーモンを打ち落とそうとした。

 だが今度は、ディディアルも霧だけではグレーターデーモンを守るのには不十分と感じて、手を打ってきた。


「バッド・ラック・バット」


 防護魔法でグレーターデーモンを守るとサレンを牽制できないため、召喚魔法で低級の魔獣を呼び寄せ、身代わりの盾を用意した。

またも出費がかさむが、上級魔族を倒されるよりはマシだという判断だ。

 こうして、サレンはグレーターデーモンからオーマ達を守り、ディディアルはオーマ達からグレーターデーモンを守るという形で消耗戦が始まった。


 ディディアルは、この消耗戦は自分に勝算が有ると踏んでいた。

実際、この消耗戦が有利に働いているのはディディアル側だった。

サレンは、オーマ達を守るために最高の防護魔法を維持し続けている。

それに対して、ディディアルがグレーターデーモンを守る場合は、低級魔獣を呼ぶという比較的簡単な魔法を、数が減って来たタイミングで発動していれば良い。

魔力の総量はサレンの方が多いが、お互いの魔力の消費量はその比ではなく、サレンの消費の方が圧倒的だった。

このまま行けば、サレンの方が先に魔力の底が尽きるだろう。


「クソッ!!」

「ダメだ!届かねぇ!!」


 オーマ達対空迎撃部隊もその事を理解していて、何とかグレーターデーモンを打ち落とそうと色々な戦法を試すが、霧とバッド・ラック・バットに視界を遮られ、オーマ達の攻撃はグレーターデーモンまで届かなかった。

 だが、この消耗戦は程なくして終わりを迎える。

ディディアルは、このまま順調にサレンを消耗させられると踏んでいたが、この状況をデティット達陸戦部隊に打破される。

 デティット、ヴァリネス、ウェイフィー、ロジ、イワナミの五人は、地上に居る魔獣部隊を掃討すると、デティットの風魔法で霧を払い、エレメンタルフォッグの居場所を特定した。

そして、ロジとイワナミが、それぞれ炎と水のエレメンタルフォッグを消滅させた。

更には、ヴァリネスとウェイフィーが土属性で投石器を造ると、オーマ達対空迎撃部隊に加勢して、バッド・ラック・バットの数を減らしていった。

 霧も晴れ、低級魔獣の数も減ると、オーマ達は標的のグレーターデーモンの存在をしっかり視認できるようになる。

そうなれば、的を外すオーマ達ではない。


「レールガン!」

「フレイムレーザー!」


「「グゥゥオオオオオオオオ!!」」


グレーターデーモン二体は、オーマとクシナの攻撃魔法の直撃を受けて落下する。

そして、地に落ちたところをフランとアラドに狙われ、頭部を矢で射貫かれて死んでいった___。


「チィッ!だが、まあいい・・・」


またも、せっかく召喚した上級魔族を倒されたディディアルだったが、作戦自体は順調だったので、取り乱すことは無かった。

 見ればサレンは、十分に魔力を消耗している。


「フフフフフ・・・頃合い良しだ!」


 戦闘中盤。手痛い出費を支払ってきたが、サレンを消耗させることに成功したディディアルは、いよいよその力を手に入れるため、作戦の最終段階へと移行するのだった___。

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