ショートストーリー お金の隠し場所
七十一歳になる私・工藤は良く忘れる。
先日も金を隠した場所を忘れてしまっていた。
と言うのは息子が
度々金をせびりに来る。
息子は二十五歳になるのだが
働きもせず
パチンコや競馬にうつつを抜かし
金が無くなると工藤のところに
やって来て金をせびるのだ。
そんなある日工藤は息子に金を取られたたまるものかと
ある場所に金を隠したのだが
その隠した場所が分からなくなってしまった。
思い当たるところを探すのだが
サッパリ分からない。
どうしたものかと悩んでいたが
悩んでも隠し場所が分かるはずがない。
二、三日は生活費に困らなかったが
隠した金の場所が分からなければ
あと五日後には年金はいるが
さぁ 困ったと
思った瞬間金を隠した場所を思い出したのだ。
そして石油ストーブのタンクの中を覗いてみると
金がない。
ここではなかったんだと思ったが
確かにここに隠していた。
このところ息子はやってこない。
不思議に思っていた。
そして年金が入ると息子がむしんにやって来たので
息子に石油ストーブの中にあった金を取ったのかと聞くと
そうだと白状した。
金を隠した工藤は隠し場所を忘れていたが
息子は親父の隠しそうなところをチャンと知っていて
失敬したらしい。
何おか言わんやだ。
二日間ほどの生活費が捻出出来ない。